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東成瀬村の暮らしを伝え続ける『ふる里館』




____『そうでなければおらほの宝になれないのよ』
そう語ってくれたのは東成瀬村ふる里館で館長を務める櫻田先生だった。
この言葉の真意とは…。

今年で創立35周年を迎えた郷土文化保存伝習施設、ふる里館。
ここには数多くの郷土を学ぶ展示品が飾られている。
創立のきっかけは、村に伝わる文化や古くに使われた農具などを
村独自で保存、展示していこうという取り組みからだった。
ミニマムな総合博物館として歴史や民俗、当時の暮らしなどを伝え続けてきた歴史を知るには欠かせない施設。
今回私はふる里館の魅力を知るべくインタビューをさせていただきました。
ご協力いただいたのは館長の櫻田先生、管理人業務に携わる秋一さん、
今年度ふる里館に協力隊として着任された慎平さん。
皆さんそれぞれの視点でふる里館についての思いを語っていただきました。



インタビューの様子



”ふる里館最大の魅力”

____ふる里館の1番の見所はなんでしょうか??

櫻田先生:
「昭和30年頃、この村は養蚕・林業が盛んで
特に養蚕は全県トップだったの。
その頃実際に使用されていた農具や機織り機などが展示されているんです。
それが全て揃った状態で展示できるというのは貴重なんですよ。」

当時実際に使われていた機織り機が展示されている。



慎平さん:
「私が初めてここに来た時はバラエティーに富んだ展示品だという印象でした。また幼い頃から博物館や資料館などが好きだった私はそういった資料館とはまた別の良さみたいなものを感じましたね、別の場所に行くとよりふる里館の良さみたいなものが見えてくる部分もあると思います。」

____私もはじめてふる里館に伺った際には衝撃を受けました!
私には見慣れないものばかりでしたが、実際にこうした農具を使って作業していたということが目で見てわかるというのは貴重な体験になりました。

秋一さん:
「そうそう、お越しいただいてるお客様はね年配の方が多いんですよ。
70〜80代の方々が『あーこんなのあったね、懐かしいよね』と楽しそうに
お話しされているのを見るととっても嬉しくなるんです。
連休にはご家族でいらしてお孫さんにちょっとした昔話をしたりしてね、
子供たちの学びの場としても役立っているなと感じますね。
お客様の中には自分のお家にある農具を寄付したいなんて方もいるんです」

___実際に使用していた世代の方々は懐かしいと思い出に触れることで
感動して帰られるんですね。

慎平さん
「皆さん、本当に喜んで帰ってくださいます。それがとても嬉しいですね。
ただご覧の通り、うちはエレベーターやスロープがないので
高齢のお客様からすると不便な点もあるかもしれません。
バリアフリーについては今後に課題になってくると思います。」

展示場所に階段がある様子



____バリアフリーが導入されるとこれまで来られなかったお客様も
お越しになれるかもしれないですよね。
いらっしゃるお客様は村内の方が多いんですか??

秋一さん:
「ううん、ほとんどが村外からのお客様なんです。8割以上は県外の方。
本当に日本全国各地からいらしてくれますよ。」

”この村の歴史はこの村で守っていかなければならない”

一方で創立から35年経った今でも
一度も中に入ったことがないっていう村民の方は多いんだそう…。


櫻田先生:
「私は地元の歴史は地元の人が勉強して守る必要があるし、
地元の物は地元の人が管理して地元で展示することに意味があると思うんです。じゃないとそれは『おらほの宝』にならないんじゃないかなって。」


____おらほの宝???

櫻田先生:
「この村の歴史はこの村でしか知り得ないものなんだよね。
前はね村の古文書を解読して解読したものが分からなければ色んな部落に話しっこ聞きに行って、話しっこしてるうちにまた違う古文書の説を探したりして。そうして1個1個歴史を紐解いていって、歴史を学んでいくのよ。」

___歴史を通じて、人と人のつながりが生まれていくんですね。
確かにそうした古文書が一度村を出てしまえば、この村の知らない歴史が増えていってしまうことにもつながってしまいますよね。

秋一さん:
「村の歴史を勉強して、受け継いでいくためにもふるさと館で古文書の
解読にも力を入れて行なっています。」

”村で守り続けるために”

現在古文書の解読に従事されているのは4名の方。
古文書解読辞典を片手に独学で解読を行なっているそうです。
その中でもベテランの方が柴田喜久子さんと古谷眞紀子さん。
柴田さんは生まれも育ちも東成瀬の根っからの『成瀬っこ』
この2人の掛け合いがとっても素敵なんだとか…。


実際に書き起こした古文書


櫻田先生:
「始めた当初はやっぱり時間かかって…本当大変だったと思うよ。
でもそれでも私たちが勉強するんだって意気込みで続けてくれて
今では辞典開かずにスラスラと書き起こせるところもありますね。
古谷さんは古文書の意味を知りたくて、どんなことがあったんだろうって
いう歴史の事実みたいな事を読み解いていくのが楽しい方で
柴田さんは解読した古文書から歴史の背景を勉強していきたい方でね。
2人が話しながら古文書を読んでるとお互いの見解みたいなのが入ってきてそそれがなんとも楽しそうでね。
そんな姿見てるとこの村の歴史が受け継がれている感じがして
嬉しくなるんだよね笑」

___同じ古文書を読んでも違う感じ方や考え方が生まれていくのも
面白さですね。
楽しみながら村を知る機会はすごく貴重な時間ですよね。

櫻田先生:
「そう、だからね学生さんと一緒に古文書合宿とかやりたいんだね!
この村には高校がないからね…難しさもあると思うんだけど地元の高校生とか集めてさ、みんなで古文書読む合宿とかしたら楽しそうかなとか」

___協力隊もぜひそういった企画をしたいですね!
慎平さんはどうですか?一緒にやりたくないですか?笑

慎平さん:
「ぜひやりたいです!
でもそのためにはまず自分自身が歴史を知り、勉強していく必要があると感じています。アイディアを広げるためには知識が絶対必要ですね。」

”それぞれの想いとこれから”

櫻田先生:
「常識は嘘をつく」これがモットーですね。
常識と思われていたこともまた新たな歴史の発見で覆されることもあるんです。だから一つの考え方に縛られず、新しい事をどんどん追求し続けていきたいですね。新しい物や今を楽しんで歴史について学んでいきたいと思います。

秋一さん:
「今ね村の生涯学習でもこの施設って使用されているんです。
だから来たことないよっていう村民の方にも幅広く使ってもらいたいですね。ふる里館に行ったらなんかあるよ!と。
新しいものも古いものも体験できる施設として村で愛されるように
努めていきたいですね。」

慎平さん:
「私は幼い頃から『温故知新』を大事にしていて。
言葉の通り、古きを温めて新しきを知る。
今やっている仕事そのまんまの言葉だと思うのですが、
古いものを知るというのは継承する上での知識のことになり、
新しきを知るというのはその知識が自分の糧になり、
新しいチャレンジに繋いでいけるんのではないかなと感じています。

____『おらほの宝』
村の歴史を知ることでその歴史一つ一つが宝物に変わっていき、
価値のあるものが理解できるようになっていく。
この村での歴史はこの村で守り継いでいかなければならないのだ。
これがまさに『おらほの宝』になっていく姿。
歴史を知ることで郷土への愛が生まれ、
郷土のへの愛がまた歴史を作る糧になっていくのかもしれない。