25.Jun.2020

ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語(原題はLittle Women 邦題って付ける意味あるのかな)を遂に、遂に、観てきた。

若草物語は小学校の図書館にあって何となく読んだものの、当時は外国の女の子達の物語、という印象しかなくて、分かりやすい起承転結もないので正直なところそこまで楽しんで読んだ訳ではなかったと思う。

なので私は若草物語のリメイクがどうこうではなく、シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、ティモシー・シャラメという私得でしかないキャストに惹かれて観たのだけど、
彼らの演技よりも(もちろんめちゃくちゃ良かった、このキャスト以外は考えられないほどに)、若草物語という作品の普遍性とグレタ・ガーウィグの脚本に本当に感動して、観に行ってから一週間以上経つというのに、ずっとあの四姉妹のことを考えている。

ネタバレしないで書きたいけどもしかしたらネタバレになっちゃうかもしれない。前情報入れたくない人はここから読まない方が良いかもです。

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リメイクとはいえ、基本的には原作にかなり忠実に作られていたと思う。

メグ(エマ・ワトソン)、ジョー(シアーシャ・ローナン)、べス(エリザ・スカレン)、エイミー(フランシス・ピュー)の四姉妹、そして近所に住む資産家の一人息子ローリー(ティモシー・シャラメ)が主な登場人物として話が進んでいく。

映画では四姉妹が大人になって、それぞれの人生をどう歩んでいくかというところに焦点が当てられているのだけど、観る人は誰しも自分は四姉妹の中なら誰に一番近いか、と考えてしまうのではないかと思う。

四姉妹のそれぞれに共感する部分はあるものの、私はジョーの生き方に近いと思うし、彼女の心の動きを描かれていないところまで勝手に想像して泣いてしまうくらい、共感(というより共鳴に近いかもしれない)してしまった。

予告(https://youtu.be/4_2jNQg-GwI)にもあるけれど、(そして私は予告を観ただけで泣きそうになっていたのだけど)
「女の幸せが結婚だけなんておかしい そんなの絶対間違ってる でもどうしようもなく孤独なの」というセリフのために、あの屋根裏のシーンのためにつくられた映画なんじゃないかと思うくらい、
ボロボロ涙が出てきてしまったし、あの時のジョーの表情と一緒にずっと頭から離れない。

幸せのかたちはひとつじゃないし、四人いたら四通り、百人いたら百通りあるのは当然のことだ。
でもそれと同時に、そのそれぞれの幸せのかたちが、色々な経験を通じてそれぞれのタイミングで変わっていってしまうことも、とても当然のことだ。

どうしてひとつを選ばなければいけないんだろう。この孤独は自分のせいなのか、時代のせいなのか、それとも、何のせいでもないけど受け入れていくしかないのか。
そのことを観終わってからずっとぐるぐると考えています。

ただ、ジョーにとってのハッピーエンドが明確にならないまま終わったことが、私のこれからの希望になると思う。

初めて若草物語を読んだ時には、四女ならではのバランス感覚で上手く生きているように見えるエイミーのことがどうしても好きになれなかったし、ジョーとローリーの結末にも全然納得がいかなかった。

でもこの年齢になって改めて観てみると、エイミーの考え方や生き方が彼女にとっては正解なのだと思うし、私がエイミーに対して抱いていた感情って同族嫌悪に近いのかもしれないとも思った。
ジョーみたいになりたい、ジョーのように生きるべきだ、と思うあまりにエイミーと共通する部分を切り捨てなければいけないと思い過ぎていた、というか。

ジョーとローリーについて、今は、理解が及ばないどころかとてもうらやましいと思う。恋人でも家族でもなく、でも友人では何か物足りないような二人の関係性は、誰しもが得られるものではない。
ただ、やっぱりローリーの行動はティモシー・シャラメだから許されるのでは?と思ってしまわないこともないです、正直なところ。私がジョーだったら相当きつい。

あと、やっぱりアカデミー賞も獲った衣装、素晴らしかった。
四姉妹それぞれにイメージカラーのような色があったこと、ジョーはコルセットやフープ、ペチコートを身に着けていないこと、ジョーとローリーが同じベストを着ていることなど、
単純に画面の美しさとか時代考証とかだけじゃなくて、物語やキャラクターに寄り添っているのが良いなと思う。

https://youtu.be/KvE9QB0YCns
以上の情報はここから得た。この動画とてもおもしろかったです。もう一回観に行こうかなって思っちゃう。

グレタ・ガーウィグ作品は、レディバードも以前観て大好きなのですが、誰にでもある普通のことを普通に撮るのが上手くて、全部自分の物語なんじゃないかと思わせてくれる。
そしてシアーシャ・ローナンとティモシー・シャラメの相性の良さを発見した功績は後世に語り継がれるべき。
次の彼女の作品も楽しみだし、20センチュリーウーマンでの役者としての彼女も好きだったのでまた観てみたい。

他にも、四姉妹とローリーの周囲の役者陣も存在感があって人間味があってとても良かった。
メリル・ストリープってなんであんなにああいうちょっと意地悪な役が似合うんだろう。

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もう一つ、映画とは直接関係ないけど、この映画を母と観に行けたのが私はとても嬉しかった。
大学卒業後に大企業に就職したにも関わらず結婚を機に退職、そして姉と私を産み、今は仕事をしながらも家族のことをいつも大切に思っている努力家の母を、私は自分だったら、と考えてかわいそうだと思ってしまうことがよくあった。
でも、母から「父と結婚するために産まれてきたわけでもないし、あなたたち子どものために生きているわけでもない」という話をこの映画を観たあとにしてくれて、何だか救われたような気持ちになった。

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物語で女のラストは結婚か死の二択だった時代の話が2020年を生きる私にここまで響いてしまうのは一体全体、という思いがない訳ではないのだけど、今の私にとても必要な映画だった。

まだ観てない人は観てほしいです。
女性の話ではあるけど、男性にも、すべての人に観てほしい。
そして何を思ったかたくさん話をしたい。

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