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カズキとM。(KとM 2話目)
(前回のお話はこちら)
犯人は「良い奴」
わたし「お前、人の作品を隠して何がしたかったんだよ!」
カズキ「ごめん!!ふざけて遊んでたんだ…あの子にも謝ってくるよ」
…話の早い犯人だな。
もしかしてこいつ、良い奴かもしれない。
その後謝罪をし、その問題はあっという間に片付いた。おかげでわたしも「お前の席ねえから!!!」って叫ばずに済んだ。
カズキはクラスも選択科目も違ったのでこの事件がなければ出会ってない人物だったのかもしれない。
これもひとつの出会いだな、と割り切った気持ちを今でも覚えている。
音楽好きの仲間
あっという間にカズキと仲良くなり、カズキの周りの友達とも交流ができた。彼らは音楽が好きだったのですぐに溶け込めた。全員が同じバンドというよりは、いろんな音楽を聞いてカラオケに行くのが日課って感じの遊び方だった。
トミーとかミカとか、みんな元気にしているだろうか。
その中にジュンヤという人物がいた。彼はみんなの中でも特に音楽に詳しい人物だった。
彼は高校一年のわたしの誕生日に、MDカセットをプレゼントしてくれた。
帯には「ジュンヤBEST」と書かれていて、彼がわたしにオススメしたい楽曲がたくさん入っていた。MDの容量いっぱいに!
しかも全てバンドが違っていて、「録音にめっちゃ時間がかかったよ〜」と笑いながら渡してきた。ただしELLEGARDENは4曲あった。
これがかなり嬉しくて、登校中ずーーっと聞いていた。
ジュンヤが選ぶ曲たちは、激しいロックもバラードもJPOPもなんでもあって、どれもかっこいい!
わたしも真似して、わたしもジュンヤにMDをあげてみたけど、あまりヒットする曲がなかったようで少し悔しかった笑
カズキやジュンヤと音楽の話をしてる時が本当に楽しかった。出会いはアレだったけど、18歳になったらELLEGARDENの一緒にライブにいこうぜとか、バンドやりてえよな!とか、高校生らしい夢の話をずっとしていた。
でも、叶わない夢もあるってことを、この時に初めて知った。
高校3年生の春、わたしの誕生日の前に、ジュンヤが死んだ。
黒い現実。
何も考えられなかった。授業なんかうけてられなかった。
ジュンヤが死んだっていう事実が本当なのかどうかもわからなかったけど、周りのみんなが隠れて泣いているのを見て、どんどん事実なんだって現実を押し付けられていった。
何故だ、どうして、どうにかならないのか。
ガラケーを開いては閉じ、開いては閉じ、手がかりを探してはまた閉じ。
どうにもならなかった。
今目の前では、明日緊急の学年集会があると先生が言っている。
明日、みんながこの事実を知ってしまう前に、ジュンヤが生きてるって証明したいとか思っていた。
次の日、残酷な学年集会が終わってしまった。
現実を受け止めきれないみんなと、泣き崩れて動けないミカ。
先に知っていたものの同じく真っ青な顔のカズキ。
とにかくジッとしていられず、みんなでジュンヤの家に行った。
家に着いた。
ジュンヤは、もう黒い縁に囲まれていた。
灰色の空気。
さすがに苦手だとは言いにくくて、ジュンヤのお母さんが出してくれた紅茶を飲んだ。手作りのシフォンケーキとの相性がよくて、これが唯一飲める紅茶になった。
しばらく会話のないおやつを過ごして、お母さんが言った。
「これからも、忘れないでね」
忘れないでね、そうか、もう過去の話で、未来の話はできないのか。
あのMDに入っていたアーティストのライブに一緒に行くことは、一生ないのか。
ジュンヤの一生は、終わってしまったのか。
そこにいたカズキもミカも、そう思ったんだと思う。
ショックで自転車に乗って帰ることもできず、父が車で迎えにきてくれた。
帰り道に線香を買いに行こうと言われ何故か腹が立ってしまい、泣きながら怒った。
父はこの完全な八つ当たりにも優しく接してくれていた。
ごめんねパパ。でも、「線香」って言葉に、人が死んだってわかりやすく理解してしまって、もうどうしようもなかったんだ。
白い未来。
1ヶ月がたったある日、ジュンヤに手を合わせに行った時のことだった。
ジュンヤのお母さんがそういえば、とわたしに手渡した。
「ジュンヤBEST。その3!」
そう帯に書かれた1枚のMDカセット。
中身は、ELLEGARDENが4曲だけ入っていた。
明日は、わたしの誕生日だった。
つづく。
追伸。
この間、ELLEGARDEN復活したんだよ。信じられないよな。
彼らは相変わらずカッコいいけど、なんだか素直に喜べなかったよ。
お前が途中で作り終えてしまったMDのせいだな。
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