低失業率でも賃金が上昇しなかった理由

2018年8月11日のツイートより

> https://twitter.com/tomo161382/status/1028170859809202177

ヨーロッパで「ようやく」賃金が上昇してきているようです。

ヨーロッパ中央銀行は2%のインフレターゲットを設定していますが、賃金がインフレ率に伴って上昇してこなければ経済成長を反映したインフレとは言えないと考えて、賃金の上昇率をずっと注視してきたようです。

しかし、好景気で失業率が低下しているにも関わらず賃金が上昇しない状況が続いていました。これはヨーロッパだけでなく、アメリカや日本などの他の先進国でも同じ状況です。

この低失業率と低賃金が共存するというのは現代経済の謎で、従来の経済学では失業率が低下すれば労働市場がタイトになって賃金が上昇するというのが常識で、これまでは現実の経済もその法則に従って動いていました。

では、なぜ現在、失業率が低下しているのに賃金が上昇しないのでしょうか?

この理由には様々な説が唱えられていますが、ドイツとフランスの比較から「労働組合」が大きな鍵である可能性が強く示唆されています。

http://www.ecb.europa.eu/pub/conferences/shared/pdf/20180618_ecb_forum_on_central_banking/Schoenberg_Uta_Paper.pdf

ドイツでは、企業が業種別包括労働協約から脱退することが可能であったため、脱退する企業が増えるにつれ労働組合の力は削がれていきました。それに対し、フランスでは業種別包括労働協約から脱退することは不可能で、労働組合の力は強いまま維持されました。

その結果、ドイツでは失業率が4%を下回るにまで下がったにも関わらず、賃金は停滞をし続けたのに対し、フランスでは失業率が9%以上に高止まりしていますが、賃金は上昇をし続けました。

では、なぜ労働組合の力が削がれると、失業率が低下しているのに賃金が上昇しなくなるのでしょうか?

この部分はまだ解明されておらず、今でも様々な議論が繰り広げられていますが、一つの説には、失業率は待機している労働者の総数を十分に反映していないため、低い失業率であっても労働力の供給はまだ不足していないのではないかということが挙げられています。

そして、最近のヨーロッパの賃金の上昇は、ようやくその待機労働者の供給も尽きてきて、供給が不足し始めたのが原因なのではないかと受け止められているようです。

しかし、その予測が正しいかどうかが判明するにはもう少し時間が掛かるようです。

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