マガジンのカバー画像

ぷーさんの気まぐれ読書ノート

18
私(ぷーさんこと大嶋友秀)がこれまで読んだ本の紹介をするノートです。どの本もおすすめの本になっています。
運営しているクリエイター

#言葉

往復書簡の魅力

 往復書簡をとは、簡単に言えば、手紙のやり取りです。それも、今回は選んだのは、雑誌や新聞で公開しながら手紙をやり取りしたものです。ここでは、二冊の往復書簡を結びつけて、その面白さに迫っていきます。選んだ本は、『父と娘の往復書簡』(松本幸四郎&松たか子、文春文庫)と『手紙、栞を添えて』(辻邦夫&水村美苗、朝日新聞社)です。  まず、この二冊に共有しているのは、快感でした。二人の親密な人たちのやりとり、あたかも秘め事のようなやりとりを、盗み聞きしているような倒錯した思いをいただ

『雨のことば辞典』倉嶋厚監修、講談社

 今日はいつもと違って辞典を紹介しましょう。こういう書物はがっちり読むというより、ときどき書棚からひっぱりだしてぱらぱらと好き放題にザッピングをしてみると面白いです。この辞典の中には、雨にまつわる言葉だけで、1190語も紹介されているのです。いやあ、こんなに雨を表現できる言葉があること自体が驚きでした。やはり日本は四季が移ろいがあり、その時々に雨も降ります。春雨もあれば梅雨もあり、夏場の夕立もあれば冬の冷たい雨だってあります。最近だとゲリラ豪雨なんていうのもありますね。その時

『悪魔の辞典』A・ビアス著、奥田俊介・倉本護・猪狩博訳、角川文庫

 なんとも怪しげな書名であり、その内容もえげつない毒を含んでいる寄書といえる。辞典だから言葉の解説なのだが、そこは「悪魔」という物々しい言葉で形容される書であるから、言葉や概念のとらえかたも、「悪魔」がかっておりにたりと笑わせる薬がよく効いている。  私はときどき、こいつを書棚から取り出して言葉を意味を引いてみる。その定義の的確さに喝采したくなったり、意味がよくわからなかったり、あまりに毒気に反発したくなったりしたりもする。そして、しばらくすると、その意地悪な見方をふたたび

『村上T〜僕の愛したTシャツたち』村上春樹著、新潮文庫

 ビジュアルというテーマとして、誰もが身近に触れているトピックを選んでいる本を紹介します。これは、著者が気に入ったり、持っているTシャツを紹介することで、その思いや考えを綴っていくエッセイです。そこで知れる村上春樹のこだわりやスタイルを知れるのが面白いです。  例えば、私はこの本を読んだことで、村上さんはほとんどいつもTシャツと短パンで過ごしているのがわかりました。また、どこかに出かけて(例えばレストランとか)、スボンを履いていない方は入場できません、と言われたら、カバンの中

「人生は単なるから騒ぎ」鈴木敏夫、角川書店

 ジブリっていうアニメーションプロダクションを考えると、まず宮崎駿、そして高畑勲を連想するでしょう。日本アニメーション界の監督としても二代巨頭と言えるでしょう。でも、もう一人肝心要な鍵になる人がいます。それはジブリのプロデューサーの鈴木敏夫です。そして、今日紹介するのはその鈴木さんが書いたものです。  まず、この本を読んで私が驚いたのは、鈴木さんのマルチぶりです。プロデューサーであり、クリエーターであり、イノベーターであり、キューレーターと言えるでしょう。あの個性的な宮崎駿や