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ぷーさんの気まぐれ読書ノート

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私(ぷーさんこと大嶋友秀)がこれまで読んだ本の紹介をするノートです。どの本もおすすめの本になっています。
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2023年10月の記事一覧

『カムイ外伝』白土三平作、小学館文庫

ずっと前から気になっていたのが、『カムイ伝』と『カムイ外伝』だ。1年ほど前に、古本の全巻セットで大人買いしたが、読み出すタイミングがないまま、昨年の暮れまで書斎の本の山に鎮座していた。『カムイ伝』の方は、ずいぶん前に一度、読みだしたが、三巻ぐらいでやめてしまった。漫画とはいえなかなか読み応えがありすぎたからだ。考えてみれば、『カムイ伝』は、江戸時代の専門家である、法政大学の田中優子が、大学のゼミ研究の対象にしているのである。江戸風俗や時代を考察できるほどの情報の宝庫なのだから

往復書簡の魅力

 往復書簡をとは、簡単に言えば、手紙のやり取りです。それも、今回は選んだのは、雑誌や新聞で公開しながら手紙をやり取りしたものです。ここでは、二冊の往復書簡を結びつけて、その面白さに迫っていきます。選んだ本は、『父と娘の往復書簡』(松本幸四郎&松たか子、文春文庫)と『手紙、栞を添えて』(辻邦夫&水村美苗、朝日新聞社)です。  まず、この二冊に共有しているのは、快感でした。二人の親密な人たちのやりとり、あたかも秘め事のようなやりとりを、盗み聞きしているような倒錯した思いをいただ

『雨のことば辞典』倉嶋厚監修、講談社

 今日はいつもと違って辞典を紹介しましょう。こういう書物はがっちり読むというより、ときどき書棚からひっぱりだしてぱらぱらと好き放題にザッピングをしてみると面白いです。この辞典の中には、雨にまつわる言葉だけで、1190語も紹介されているのです。いやあ、こんなに雨を表現できる言葉があること自体が驚きでした。やはり日本は四季が移ろいがあり、その時々に雨も降ります。春雨もあれば梅雨もあり、夏場の夕立もあれば冬の冷たい雨だってあります。最近だとゲリラ豪雨なんていうのもありますね。その時

『悪魔の辞典』A・ビアス著、奥田俊介・倉本護・猪狩博訳、角川文庫

 なんとも怪しげな書名であり、その内容もえげつない毒を含んでいる寄書といえる。辞典だから言葉の解説なのだが、そこは「悪魔」という物々しい言葉で形容される書であるから、言葉や概念のとらえかたも、「悪魔」がかっておりにたりと笑わせる薬がよく効いている。  私はときどき、こいつを書棚から取り出して言葉を意味を引いてみる。その定義の的確さに喝采したくなったり、意味がよくわからなかったり、あまりに毒気に反発したくなったりしたりもする。そして、しばらくすると、その意地悪な見方をふたたび

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』 鈴木 忠平著、文藝春秋

 なぜいつも一人なのか。  著者の鈴木忠平が落合を語るのに投げかけた問いだ。  なぜそんなに孤高であり続けられたのか。  この本を読みながら、私の頭に何回も出てきた問いだ。  野球人として、突出した理論と技術。残してきた圧倒的な数字。選手としても監督としても輝かしい記録。しかしそれに熱くなることなく、いつもクールに見える。薄情なのか、無関心なのか。批判され揶揄される。にもかかわらず、平然としている。どうしてそんなに強くいられるのか。そんな理由を少しでも知りたい。そんな思いで