なぜ、僕はリスクを取るのか?

自分のことを「リスクテイカー」だと思っている。リスクは「なくした方がいい」と思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。

なぜなら、誰も立ち寄らないような危ない場所だからこそ、大きなリターンがあるから。それをわかっていれば、「あえてリスクを取る」ことは、僕にとって無謀でも何でもないのだ。

理論の上でリスクを取る

リスクを取ったほうが、リターンは大きくなる。でも、リスクを取ろうとする人はとても少ないものだ。

僕の最初のリスクテイクはパチンコだった。ただし、やみくもに打っていたわけではなく、パチンコの統計理論に沿ったものだ。当時、パチンコの専門雑誌に書いてあったことをそのままやってみた。「1000円あたり、17~18回のデジタルが回ることが損益分岐点」という理論だ。損益分岐点を超える台は、一時的に負けることがあっても確率的には勝てる設定になっているという。

最初は、インチキなんじゃないかと半信半疑だった。まず、本物のパチスロと同じアルゴリズムが載っているというビデオゲームで試してみた。やるたびにお金がかかるわけではないから、検証には最適だった。

「本当に、その通りにやれば勝てる……」

しばらく試してデータをとってみると、損益分岐点を超えた台であれば、トータルでは勝てるのだ。ただ、実際のパチンコ店に置いてある台が、まったく同じとは限らない。僕は実地に出てみることにした。

ところが、やはり理論は同じだった。いい台を選んでも、1日単位では負けることもある。ところが1か月間毎日のように通っていると、確率が収束して理論通りになることがわかった。

それから7~8年はパチプロとして食っていたが、月間でマイナスになったことはただの一度もない。

この理論は、誰にも教えなかった。……わけではない。黙っていても、パチンコで勝っていれば人が集まってくるのだ。「どうやってるの?」そう聞かれて、僕は毎回同じように説明したし、積極的にやり方も教えた。同じようにやれば、誰だってうまくいくはずだと思っていた。

ところが、やればいいだけなのに、なぜかできない。みんな、メンタルが続かないのだ。

そのやり方で数日負けると、我慢ができない。裏技のような、もっと回数が回る新作の台が出ると、そちらに目移りしてしまう。僕はそんな人たちをたくさん見て思った。勝ち続けるには、「一時的な負けに気持ちを左右されないメンタル」が必要だとわかった。

後の僕が大きく儲けることになるFXや株のトレーディングでも、同じことが言えた。投資だけでなく、経営も同じだった。確率統計論に乗っ取って運用し、自分の優位性を保っていれば、ちゃんとリターンが返ってくる。僕はそれを、パチンコと、周りの人の行動で学んだのだった。

フィリピンの不動産バブルにも、人はなかなか投資しない

僕は個人的に、フィリピンの不動産にも投資をしている。なぜなら、あまりに「おいしい状況」があるからだ。

フィリピンの国全体の平均年齢は、なんと24歳。町中が子どもであふれかえっている。日本が戦後に体験した高度経済成長期に差し掛かっていると言ってもいいだろう。これから30年くらいは「人口ボーナス」が待っている。衣食住が満たされていないので消費が増え、人が増えるので不動産が活発になっていく。

また、政策も面白い。フィリピンは比較的「ゆるい」国なので、不法滞在をしてオンラインカジノを経営している中国人が多かった。彼らは、中国に向けてサービスを提供しながら、取り締まられないようにフィリピンに所在を置いているのだ。

そこに手をかけたのがロドリゴ・デュテルテ大統領だ。フィリピンの首都マニラがあるルソン島から南に3000km離れたところに、ミンダナオ島という島がある。デュテルテは、その島のダバオ市長だった。フィリピンで最低の治安だと悪名高かった市で手腕を振るい。最も治安がいい場所に変えてしまった。

彼は中国人の不法滞在者を追い出すのではなく、カジノの特別なライセンスを作った。従来、フィリピンでカジノを運用するためにはPAGCOR(パッカー)というライセンスが必要だったが、新しくPOGO(ポゴ)というライセンスを作ったのだ。それは、フィリピンに住んでいない人を対象とする場合に限り、カジノを運営してもいいというもの。

そのライセンスのおかげで、かなりの数の中国人がフィリピンに移住してきた。裕福な人たちがフィリピンの不動産を借りているから、もともとあった不動産バブルがますます加速している。ちなみに、今は移住者が増えすぎたため、POGOのライセンス発行は停止中だ。

600~700万円の頭金で、1億円の不動産が買える

フィリピンの不動産価値はどんどん上がっており、今は買い時だ。フィリピンでは、1億円の不動産を買おうとしたとき、頭金は600~700万円で済む。買ってすぐに貸すことができて、1年分を前借することも可能だ。それでだいたい500万円くらいにはなるから、リスクは200万円ということになる。

1億円の借金にはなるが、毎月の家賃で支払いをしていけるので、それ以上のお金は必要ない。

それでも確かに不安はある。借り手がいない場合や、途中で出て行ってしまった場合だ。ところが、フィリピンでは購入した不動産を担保にローンが組める。つまり、不動産を手放せば借金がない状態にできるのだ。

今回のコロナの影響などで、一時的に損をすることもあるが、長期的に見たら間違いない投資だと僕は踏んでいる。リスクがあってもとても小さなものだ。

ところが、これを周囲の人に説明しても、みんな投資をしない。資産があって500~600万円を出せる人でも、1億円の借金と聞くと腰が引けてしまうのだ。

もちろん僕は、ずっとフィリピンに関わっていて、フィリピンの良いところも悪いところも含めてたくさんの知識がある。だから、リスクが解像度高く見えているという部分はあるだろう。他の知らない国だったら、こんな金額の投資はできないかもしれない。

それにしても、今のフィリピン事情を知っていれば、まるでお金が落ちているように見える。数学的な観点からのリスクとリターンを把握したうえで、それを拾うか。ただ、それだけの話なのだ。


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