シンプル系折り紙創作メモ:アウトライン

はじめに

 この記事では私が普段シンプル系作品を創作をする際に気を付けていることをメモ的に書いてみたいと思います.自分が意識していることを言語化することで読んでいただいた誰かには参考になるかもしれませんし,私自身が後から読み返すことで「この時期はこんなことを考えていたんだな」と振り返れるという意味でもいいかなと考えています.

 さて,本記事のテーマはアウトライン.私が創作をする際にいちばん気にしているところといえます.以下では

  1. アウトラインって何

  2. なぜアウトラインなのか

  3. 創作をする際にどうやって意識しているのか

の3つのステップに分けて解説していきます.よろしければお付き合いください.

1.アウトラインとは

 本記事で扱う「アウトライン」というのは,"何らかの物体を見たときに「その物体」と「それ以外」を分ける最も外側の境界" と考えることにします.難しい言葉遣いになりましたが要はシルエットのことで,「シルエットを徹底的にこだわることで作品がぐっと良くなるよ」みたいな話をしていきます.

2.なぜアウトラインか

 理由は簡単で,「シンプル系の創作においてはアウトラインがほぼ唯一の表現範囲だから」です.以下ちょっと掘り下げてみます.
 以前川畑文明さんから,
「良い造形というのはミクロレベルとマクロレベルでの情報が適切に制御されているものだ」という旨のお話を伺いました.
 ミクロレベルでの情報というのは細部の作りこみのことで,魚類だったら鱗が一枚一枚緻密に作りこまれているとか,人物だったら目,鼻,口などが表情豊かに表現されているといったことが「ミクロレベルで優れた表現」と考えることができます.一方マクロレベルでの情報というのは作品を遠目にパッと見たときに入ってくる概形とかおおまかな形や雰囲気のことです.絵画や写真において「空白の美」みたいな言い回しで評価されている作品は,「主題と主題がある空間において構図を適切に設定することで,パッと見た瞬間に目に入ってくる線とか形がよく調整されている作品である」と言い換えることができます.こういう作品は「マクロレベルで優れた表現をしている」と考えられます(ちょっとこの辺美術的に正しい表現なのか自信がないです).
 ミクロレベル,マクロレベルという単語の意味を先に述べたように考えて川畑さんの発言をとらえなおすと
「良い造形というのは細部の造形とパッと見の印象が適切に制御されているものだ」
ということになります.コンプレックス系の作品を創作したり折ったりしていると,どうしても細部の仕上げを凝ることに意識が行ってしまいがちですが,ときには一歩引いた視点で「マクロレベル」での情報のバランスが適切であるかを考えることが重要だというわけです.これは普段折紙をよくされている方ならなんとなく理解できることかと思います.
 次にこの考え方をシンプル系の作品の創作にあてはめてみると,シンプルな作品というのは細部の造形をできるだけ捨てるようにしてデフォルメを行いますから,制御するのはパッと見の印象だけということになります.逆に言えば造形上アピールできる部分は見た感じの雰囲気だけとなり,必然的に「アウトライン(シルエット)にこだわらないと見せ場がない」わけです.そういったわけで,私が創作をする際にはほぼずっとアウトラインの形状のことを考えているという感じになっています.

3.創作時にどうやって意識するのか

 ではどうやってアウトラインを捉えればよいのかという話になりますが,私がやっているのは絵をとにかくたくさん描くことです.極めて原始的な方法ですが折ろうとしている題材をたくさん観察して,とにかく手を動かして描いてみることで,題材の形状をより感覚的につかめるようになると思います.といってもただ描くというのもそんなに簡単ではないので,アウトラインを意識した描き方として私が取っているものを示します.

a.題材を調べよう

 何よりもまず折ろうとしている題材の形をよく見ましょう.私はだいたいネット検索でなんとかしています.画像検索するだけで題材の様々なアングルからの画像が無数に見られるので,その中から「これは題材の特徴をよく捉えているな」というものを何枚か探し出します.「〇〇 イラスト」とかで検索して,すでに題材の特徴が抜き出してデフォルメした状態のものを観察するのもアリです.さらにこだわるなら図鑑や資料集を探したり,フィギュアを買ってきて観察するのも良いかと思います.

b.模写してみよう

 いい感じの画像・資料が見つかったら,とりあえずできるだけ資料に似せられるように描いてみます.生物なら身体の各部分がどんな角度,バランスで配置されているのか,無生物なら各パーツがどのような形をしているのかを意識しながら何枚か描いてみてください.何も見なくてもそこそこの絵が描けるようになったらけっこう特徴を掴めたと考えてよいでしょう.

c.デフォルメしよう

 作りたいのはシンプルにデフォルメされた形の作品なので,デフォルメの仕方を考えましょう.複雑な曲線や折れ線で描いていた模写の各部分をできるだけ単純な直線の集合に置き換え,「どこまでやっても題材のアイデンティティが失われないか」ということを検討します.ここは本当に妥協なくやった方が良いと思います.シンプル系でオリジナリティを出すならここのやり方次第ですし,決めたデザインを折って実現することになるのは自分なわけですから極力デザイン段階で造形が楽になるように心掛けるのが吉でしょう.

 だいたい上に述べた3つのステップを順に進めたり,ときには戻ったりしながら絵を繰り返し描いて,題材の形を捉えていきます.ずっと折りながら考えるよりも一旦絵を描く時間を設けることで題材を一歩引いた視点から見て,大まかにみた形を捉えなおすことがマクロレベルでの情報制御をする上で効果的なのではないかと思います.

おわりに

 以上,本記事ではシンプル系作品の創作をする際に私が気にしているアウトラインについて,そして創作するときにどうやって気を付けているのかについてまとめてみました.私の文章が折り紙創作をする人,したい人の参考になればそれ以上の喜びはありませんし,何年後かに私自身が読み返して「へえ~~」って思えたらそれもいいなと思います.
 また,この手の創作の方法は人によって本当に千差万別だと思うので,この記事を読んだ人で文章を書くのが嫌いじゃないという人がいたらぜひ「自分は創作時こんなことを意識しています!」ということを書いてほしいなと思ったりもします.読めたらうれしいので.ぜひ.お願いします.(終)

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