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Kinky Boots Part 3 - Step one

Scene 4: Two weeks notice
Scene 5: Step One

Scene 4: Two weeks notice

(ローラとエンジェルズがお辞儀をする。
 場面はローラのドレスルームに変わる
 ローラが入り、チャーリーが意識を取り戻す)

ローラ
 「ああ、生きてきたわ。
  みんな私をローラと呼ぶわ。
  それが、、私の名前よ」

 (ローラは急いで新しい衣装に着替える)

 「優しいのね。私を助けてくれようとして。
  とても格好良かったわよ。」

チャーリー
 「君には必要がなさそうだけどね。」

ローラ
 「自分の身の守り方を女は知っておかなきゃ。
  世の中には頭のおかしい人もいるからね。
  顎はどう?」

 (ローラはチャーリーに触れるが、
  チャーリーはその手を振り払う)

ローラ
 「強がらないで。
  あなた頭堅いのね。
  あなたの顎で私のヒールが壊れたのよ」

 (壊れたヒールをチャーリーに投げる)

チャーリー
 「これなら直してあげるよ。
  でもこれ安物じゃないか。」

ローラ
 「凄く高いのよ。でも質は最悪。
  私が履ける靴がまだあるわ。」

 (ローラは他のブーツを履く。
  とても履きずらそう)

ローラ
 「それでもこれがたまらなく好きなの、、」

 (チャーリーは靴ベラを取り出し、
  ローラを手伝う)

チャーリー
 「手伝わせてくれ。」

ローラ
 「ありがとう、ミスター、、
  疑うわけじゃないけど、あなた男よね?」

チャーリー
 「チャーリー。ノーサンプトン出身だよ。」

ローラ
 「ノーサンプトンのチャーリーね。
  さて、2回目のショーを始めなくちゃ。
  自分を普通だと思ってる人達が
  みんな待っているのよ。
  あなたも自由に楽しんで。」

チャーリー
 「親切にありがとう。
  でも戻らなくちゃ。
  明日の朝には僕の工場で
  従業員を解雇する必要があるんだ」

ローラ
 「私をキンキーと呼ぶのでしょ?
  オスカーワイルドが言っていたわ。
  ”自分でいなさい。
   それ以上も以下もないの"ってね。」

 (ローラはショーに出る。
  エンジェルクラブのステージに変わる。
  音楽が流れ、エンジェルズが登場する)

エンジェルズ
 ♪ ローラ ローラ ローラ

ローラ
 ♪ レディース、ジェントルメン、
  そして自分をさらけだせない人達、、
  見渡してみて、欲しいものがあるはずよ。」

 (ショーを見ているチャーリーを摑まえる。
  チャーリーはぽかんとブーツを抱えたまま。
  ローラはウィンクをし、チャーリーは走り去る)

ローラ
 「今の見たかしら?
  たった一度のウィンクで男を消してみたわ。
  勿体ないわねえ。
  エンジェルズは彼に会いたがっていたのに。
  そうよね?」

 (エンジェルズは聴衆に向かって
  愛想を振りまく)

ローラ
 「心配しないで。あなた達は安心よ。
  彼女たちは無害よ。
  でもここはライブシアター、だから、
  何が起こるかはわからないわ」

 ♪ 期待は置いてきて
  よく見なさい
  足からお尻まで
  映画みたいなスタイルでしょ、、

 (プライス&ソンのオフィスに場面が変わる。
  涙を目に浮かべたトリシュをチャーリーが見ている。
  デスクの上にはローラの壊れたブーツがある)

トリシュ
 「2週間後に解雇?その後はどうしたら?」

チャーリー
 「言った通り、僕らの株式を買ってくれる人を探すんだ。
  でも次のシーズンで注文が無ければ、
  工場を閉めなきゃいけない。」

トリシュ
 「お願い、チャーリー、
  娘は学校に通い始めたばかりなの。
  これが制服よ、、
  私には頼れる夫もいないのよ、、」

チャーリー
 「すまない、トリシュ。
  でもチャンバースが解約した今、
  僕らに出来ることはそれしかないんだ。」

トリシュ
 「それだけが原因だと思っているの?
  悪いニュースだ、でも頑張れ、おしまい。
  母が言っていたことのようだわ。
  明日は明日の風が吹くってね。
  雑談をありがとう、チャーリー。
  せいぜい頑張って。」

 (トリシュは立ち去る)

チャーリー
 「違うんだトリシュ、そうじゃないんだ。
  僕はただ、、僕たちは、、」

 (エンジェルクラブに場面が戻る)

ローラ
 ♪ まるでシャザム!(シャザム!)
  これが私
  そうよ
  ローラ(ローラ)

 (場面はオフィスに戻る
  チャーリーは次はドンと向き合っている)

チャーリー
 「みんなに解雇通知をしているんだ。
  その間に工場を引き払うんだよ。」

ドン
 「馬鹿言うんじゃねえ。
  俺はお前も俺も子供の頃から働いてるんだぞ。
  プライス&ソンの3代目みたいなもんだろ。」

チャーリー
 「ほぼ全靴工場が生産を止めているんだ。
  奇跡でも起きなきゃ、、何が出来ると?」

ドン
 「好きにしろ、でも俺を解雇は出来ねえ。
  学校の頃を思い出せ。
  俺をお前のラグビー部から脱退させようとして、
  どうなったか覚えてるだろ?」

チャーリー
 「階段から僕を突き落として、停学処分になった」

ドン
 「そうだ、でもチームには残ったろ。」

(ショーに焦点がいく)

ローラ
 ♪ Je Suis!(Je Suis!)
  そうよ私が
  漆黒の
  ローラ(ローラ)

(チャーリーはローレンと話している)

チャーリー
 「他にどうしろっていうんだい?
  誰も欲しがらないモノは作り続けられないよ。」

ローレン
 「なら欲しがるモノを作るのよ。」

(音楽が止まる)

チャーリー
 「”欲しがるモノ”だって?」

ローレン
 「彼らが欲しいと思うものよ。
  商品を刷新するのよ。」

チャーリー
 「ここは靴工場だぞ。靴しか作れない。」

(音楽が流れ始める)

ローレン
 「別に誰もが欲しがるモノってことじゃないわ。
  ホイットコム工場のようによ。
  あそこはどんな天気でも履ける
  ハイキング用の靴を作っていたじゃない。
  それで工場が救われたのよ。
  トビーズはサンダルを作ったわ。
  生き残れた工場は小さな市場から需要を見つけて
  そこに狙いを定めていたのよ。
  ただ突っ立って「何も出来ない」と
  嘆いていたわけではないわ。」

(靴工場のアラームと、チャーリーのオフィスの電話が鳴る。
 ロンドンに場面が変わり、二コラが靴屋の前に立っている。
 電話をしている。
 チャーリーは電話を取り、机の上の何かを探す)

二コラ
 「私のウェディングシューズがまだ売られているわ。
  でも私の花婿さんはどこに行っちゃったのかしら」

チャーリー
 「ごめんね、ニック。
  まだ取り込み中なんだ、、」

二コラ
 「まだ出ていないってこと?
  チャーリー、私たち予約しているのよ。
  今日のホールを逃したら、
  フィッシュ&チップスのお店で挙式することになるわ。」

チャーリー
 「それはそれで面白そうだね」

二コラ
 「本気で考えてくれてる?」

チャーリー
 「ニック、僕らに見世物ウェディングって必要かい?
  本当にそれって僕らの為なのかな?」

二コラ
 「自分が何者になるかを、世間に知らしめるものよ」

チャーリー
 「たったいまジョージとドンとマギーとトリシュに
  2週間後解雇すると伝えたところなんだ、、」

二コラ
 「ああ!マギーに介添え人になって欲しいと
  頼み忘れちゃった!
  彼女きっと喜んでくれるわよね?」

チャーリー
 「それより給料を見る方が重要かもね。
  ニック、900ポンドもする靴を一回きりだけ履いて
  華やかな式を挙げることよりも
  みんなに仕事に残ってもらえるようにすることの方が
  僕らのためじゃないかと思うんだ。
  小さな市場のことさ!」

(チャーリーは壊れたローラの靴をふと見つめる)

チャーリー
 「小さな市場、、」

二コラ
 「どんな市場よ?」

チャーリー
 「”受け入れろ”、”商品を変える”、
  ”供給が少ない小さな市場を見つける”、、
  これこそ完璧じゃないか!」

二コラ
 「頭おかしくなった?」

チャーリー
 「ニック、、婚約は中止だ。」

(チャーリーは興奮した様子でマイクに叫ぶ)

チャーリー
 「ローレン!来てくれ!
  ミスタープラ、、チャーリーのもとにだ!」

(ローレンはチャーリーとオフィスで会う。
 チャーリーはローレンの手をつかみ、
 階段下の裏へ一緒に連れていく
 ローラの曲が再び流れる
 チャーリーとローレンがクラブに現れる)

ローラ(エンジェルズ)
 ♪ (Step in)夢の入り口
    (Where Glam)最高の魅力
    (Welcome)ファンタジーへようこそ
  新しい世界よ(We give good epiphany)

   私の手を取って!
   ここがランドオブ
   ローラ(ローラ)

(ローラがチャーリー達のテーブルに加わる)

ローラ
 「ガールフレンドを連れてくるとわね。」

(チャーリーとローレンは動揺する)

チャーリー
 「彼女はそうじゃなくて、、僕には他の子が、、」

ローレン
 「そういうのじゃないわ。
  彼には他の子がいるのよ。
  私は彼の従業員よ。
  少なくともあと2週間はね。」

ローラ(チャーリーに向かって)
 「何見てるのよ?」

ローレン
 「彼を許してあげて。
  ノーサンプトンでは
  女装した男性は珍しいのよ。」

ローラ
 「冗談きついわ。
  女装師と一緒にしないでちょうだい。
  彼女らはそうじゃないわ。
  ドラグクイーンよ。」

ローレン
 「何が違うの?」

ローラ
 「ドラグクイーンはドレスを着るの、
  そしてクレオパトラのようになるのよ。
  女装師はただ服を着ているだけでしょ、
  でもあそこはあるわよね。
  ウィンストンチャーチルが
  母親の下着を履いているような感じよね。」

チャーリー
 「つまり君は、、」

ローラ
 「それを聞くのはご法度よ。
  それで、この可愛い女の子を首にしたわけ?」

チャーリー
 「紳士靴だけじゃやっていけないんだよ。」

ローラ
 「私は男じゃないわ」

チャーリー
 「君体重はいくつだい?」

ローラ
 「標準体重よ。」

チャーリー
 「男性のね。でも女性の靴を履いているんだよ。」

ローラ
 「そんなところ気にしているとは思わなかったわ。」

チャーリー
 「それは間違いだよ。」

ローラ
 「それでもやめられないわ。」

チャーリー
 「女性用のヒールは男性の体重を支えるようには
  出来ていないよ。
  特別なものが必要だ。」

ローラ
 「私は特別になるために生まれたのよ」

チャーリー
 「君の言うように、女装のプロが沢山いるなら
  君ら向けのずっと履けるブーツを作ったら
  凄くニッチじゃないか?
  翌月ミランで国際靴展示会があるんだ。
  そこで誰も世界に提供したことがないような、
  新しい靴を発表出来れば、
  工場を救えると思うんだ。」

ローレン(やっと気づいて)
 「なるほど!」

チャーリー
 「サンプルを作るために採寸したいんだ。」

(ローラは立ち上がり、スカートを捲し上げて
 脚を出す。
 チャーリーはメジャーを取り出すが、
 ローラに止められる)

ローラ
 「先に聞かせて。
  そのブーツを手にするのは誰?
  ヒントを挙げるわ。
  正解は「君だよ、ローラ」よ。」

チャーリー
 「君だよ、ローラ。」

ローラ
  「どこへ取りに行けばいいの?
  ノーサンプトンのプライス工場でしょ?」

チャーリー
 「いや、持ってくるよ。
  毎回ロンドンに来るさ。」

ローラ
 「私にノーサンプトンに来てほしくないんでしょう?」

チャーリー
 「ああそうだね。」

ローラ
 「残念ね。でも私は人に歯向かうのが大好きなのよ。
  だからこうしてドレスを着ているのよ。
  ノーサンプトンで会いましょ。」

(ローラは去り際に振り返る)

ローラ
 「そうだ、、赤色がいいわ。」

(ローラはクラブに戻る)

(場面はプライス&ソン工場、
 チャーリーはオフィスに一人でいる
 チャーリーは革をデスクに広げる。
 革を切り始め、縫い、型を取って、
 ブーツを作った)

チャーリー
 ♪ 僕の居場所か?
   ただの問題児か?
   何をしているのか?
   ただの詐欺師か?
   ちゃんとやってる?
   どこから始める?
   昔と変わらない
   臆病で落ちこぼれ
   取り繕って
  鼻高く歩いて
  終わりを知っているかのように

  この靴と同じ
  孤独じゃないと
  思い知らされた
  革に穴を
  開けて感じる
  僕の家は
  ここなんだと 見つめ直して
  使命を知るんだ
  僕の使命はこれだよ
  
 「靴だ」

Scene 5 Step One

  (数時間経って、
  従業員達が出勤してくる。
  チャーリーが何をしているのか
  みんな見ようとしている)

チャーリー
 ♪ 今こそ奮い立つんだ
  僕を見てくれ
  これからさ
  新しい始まりだ
  ギアを回して
  始めよう

  一歩
  踏み出すんだ
  前に進もう
  何もなかったけど
  たしかに感じる
  ヒールを再発明した
  ヒーローになれるはず

  不可能に立ち向かおう
  奇跡をおいかけてやる
  最大の山場かもしれない
  でも進むんだ
  最初の一歩

  誰も想像すらしなかった
  僕を見せるんだ
  どこまで行けるか
  自信があるから
  ここからなんだ
  見届けてくれ

  一歩
  踏み出すんだ
  ギリギリの状態を
  良かれと過ごして
  いまは泳いでいける
  だから飛び込むんだ
  正しい場所に

  不可能に立ち向かおう
  奇跡をおいかけて
  人生最大の山場かもしれない
  でも進むんだ
  最初の一歩

  工場ってだけじゃない
  家族なんだ
  誰にもやめさせない

 「このチャーリプライスが居る限り」

   不可能に立ち向かおう
  奇跡をおいかけてやる
  最大の山場かもしれない

  不可能に立ち向かおう
  奇跡をおいかけてやる
  ここが最大の山場だ
  進むんだ
  最初の一歩
  チャーリーボーイを見てくれ
  ここから始まる!

  (チャーリーは誇らしげに
  ワイン色のブーツを持ち上げ、
  従業員達に見せる。
  ローラが工場に現れ、
  ブーツを粗末そうに持ち上げる)