見出し画像

月と太陽

アミュトス「罪の森」&劇団fool「願」
二次創作スピンオフ(非公式)

『月と太陽』


-「罪の森-episode. 3〜月- 」本編終盤から-

コリウスは、敵国に侵入し、
王女の部屋に入った瞬間、、
目にしたその王女は、ベラドンナだった。
ただ黙って、コリウスを見つめるベラ。

コリウス「、、、!!!お前、、」

コリウスは、ゆっくりと、ベラに歩み寄る。
何も言わず、ただ立ちつくすベラ。

ベラ「(コリウスは、優しく私の手を握って涙を流した)」

コリウス「すまない。気づいてやれなくて、、」

ベラ「(、、、そんな顔見たくなかった、、
握った手を引き、国外れの森へと私を連れてきた)」

ベラは、夜空を見上げる。

コリウス「俺は、君が好きだ」

ベラに「愛してる」「一緒に生きよう」を繰り返し言うコリウス。

ベラ「(どうやら、殺さずに逃してくれるらしい)」

コリウス「オレと一緒に逃げよう。生きてほしい」

ベラ「(国が無くなった今。私の生きる意味など無いのに)」

コリウス「オレは、君と一緒に生きていきたい!」

ベラ「(なんて残酷な人なんだろう)」

コリウス「オレが守るから!」

コリウスが、幾度となく話しかけても、
一向に、コリウスを見ず話さなかったベラが、
ふと一言、声に出す、、

ベラ「あぁ。。月が綺麗」

☆コリウス「一緒に行こう!こっちを!オレを見てくれ!!」

ベラは、月を見たまま、、

ベラ「あなたは、、そなたは、帰るべきだ」

ベラは、振り向き、コリウスから剣を取り、手に握らせながら、、

ベラ「妾は、もう、どうなってもいい」

コリウス「どうして?」

ベラ「妾は、国の為に、生まれ、生きてきただけだ。
それ以外の価値など無い」

コリウス「違うっ!オレと出逢うため、、」

ベラ「さようなら」

ベラが向かった先は、
普通の人間が入ってはいけない森、、

「罪の森」の入り口。

コリウス「いけない!そっちはダメだ!」

最初で最期であろう、
優しい笑顔を見せるベラドンナ。

コリウスには聞こないだろう小さな声で、

ベラ「◯◯◯◯◯◯◯◯」

コリウス「行くな!!!行かないでくれ!」

森の奥から、狼の群れが現れる。
その中の一頭は、ベラを襲った狼。コリウスは、その狼に遮られ、ベラを止めることが出来ず、
ベラは、狼達を引き連れ、森の奥深くに消えていった。

コリウス「なんで、、」

使い魔「お前は、あの女の正体を知らないだけだ。
あの女は、罪深き女。「怠惰」という罪人だ」

コリウス「あんたは、、悪魔の化身か?!」

使い魔「我も罪人。人間界で言う、使い魔でもあるな」

人型(ひとがた)に姿を変える使い魔。

コリウス「ベラを返せ!」

使い魔「無理だな。あいつが願ったことだ」

コリウス「違う!あいつの願いは、オレと一緒に生きていくことだ」

使い魔は、バカにしたような笑みを浮かべる。

コリウス「いつか、絶対に、迎えに行くっ!絶対だ!!」

使い魔「一国の王子様が罪人を迎えに?笑わせるな(笑)」

コリウス「国なんか捨てるっ!!ベラの為なら!!!」

使い魔「出来るかな?お前に(高笑い)」

使い魔は、ベラが持っていた一冊の本をコリウスに投げ、
狼の姿に戻り、笑いながら消えていった。

ふと見るコリウス。

コリウス「ソールとマーニ、、北欧神話、、なぜ?」


時は流れ、、

狼の言う通り、
コリウスは国を捨てられなかった。

国王である父を裏切ることも見捨てることも、
出来なかった。

コリウス「(国を捨てられない)なら、ベラが安心して暮らせる国にすればいい」と、
自国を、争いの無い国にする決心をする。

だが、コリウスの国は、ベラドンナの国を掌握した数年後、別国に攻め落とされ、
国王である父も、王妃である母も、
家族全員が殺された。

コリウスは、両親・近衛兵、
幼馴染である騎士ソルの助けにより、
難を逃れ、ソルの住む国へ向かう。

その道すがら、
ソルが止めるのも聞かず、
ベラドンナを連れ出した時の森に行く。

コリウス「、、、ベラと同じだな。私も。。」

剣も持たず、ただあの時の森で狼から投げられたベラの本だけを、持っていた。
罪の森の入り口まで入ろうとするが、、

コリウス「いや。ベラと、ここで暮らすんじゃない!
ベラを、こんなとこから連れ出す!今の私じゃ、ダメだ!」

その時、コリウスは、
ふと、狼の遠吠えが聞こえたような気がした。

コリウス「え?あの時の使い魔、、?」

周りを見ても、狼らしきものはいない。

コリウス「聞き間違いか、、」

ソル「コリウス!こんな所にいたのか!この森は危険だ!すぐ離れよう」

コリウス「あぁ、、」

そして、
罪の森を背に、東へ向かう。

太陽のある国へ。

さらに時は経ち、、
コリウスは、ヨウコウと名を変え、
太陽の王国の騎士となっていた。

争いの無い国になるよう、
ベラドンナリリーが安心して暮らせるような国になることを願い。

-「願-NEGAI-」本編へ-

そして、数十年後、
太陽の国が、争いの無い国になり、
太陽の国の王となった、ヨウコウは、罪の森に向かう。
ベラを連れ出す為に。

深い闇の夜、罪の森に忍び込むヨウコウ。
ベラを必死に探してると、
ふと、眼鏡をかけた黒髪の女性に手を掴まれる。

ヨウコウ「しまった!」
◯◯「あんた、人間だね。なんで、ここに来たの?
ここが、どーいうとこか分かってる?」
ヨウコウ「知ってるさ!罪人が住まう森だろ?」
◯◯「分かってんなら、帰りなよ!喰われるよ?私だって、、」

その言葉を遮るかのように、
ヨウコウ「その角。お前、大罪人だろ?」
◯◯「あぁ、よくご存知で♫私は、ラナンキュラス。あんたは?」
ヨウコウ「オレは、、ヨウ、、いや、コリウスだ。人を探してる。恋人だ!」
ラナン「コリウス??あ、、あぁ、、なるほど。あなたが、、ねぇ(イタズラな笑みを浮かべる)」
コリウス「ベラドンナって名の女性を知らないか?
ベラドンナ・リリーだ!」
ラナン「うふふふ」
コリウス「なんだ?」
ラナン「逢わない方が、いいよぉ」
コリウス「知ってるのか?居場所を?教えろ!!」
ラナン「さぁねぇぇ(イタズラに笑う)」
コリウス「言わないと、殺す!」
ラナン「いやいや。大罪人の私は、死なないよ(笑)」
コリウス「、、、!!!」
ラナン「まぁ、いいや。逢わせてあげるよ!どーなっても知らないけどね」
コリウス「どういう意味だ!」
ラナン「ちょっと待っててよ!連れてくるよ♫」

数十分後。。
ベラ「何?ラナン。あんた、ストレリチアに呼ばれたんじゃないの?」
ラナン「いいから♫」
ベラ「???」
ラナン「ほら!連れてきたよ!」

ベラ「!!!!」
コリウス「ベラ!!迎えに来た!」
一瞬、笑みを浮かべるが、それを隠すかのごとく、
目を背け、夜空を見る。
コリウス「!!その角!!君は、、、」

ベラ「なに?角を見て驚いたの?そーよ。私は罪人。怠惰の罪人」
コリウス「知ってる!別れたあの日、使い魔に言われた!」

ベラ「月が綺麗ねぇ」

コリウスは、あの時のベラの本を差し出す。
コリウス「この本、、」

ベラ「あぁぁ。その本、あなたが持ってたのねぇ。」

コリウス「使い魔から渡された」

ベラ「あぁ。あの使い魔、、めんどくさいことしてくれるわねぇ」
コリウス「そんなこと、どーだっていい!オレと一緒に、ここを出よう!
昔のオレの国じゃない!あの時の国は、もう無い!
争いの無い国に行くんだ!君が安心して暮らせる国だ!」
ベラ「あの国がもう無いのは知っている。
ここは、色んな国の罪人が来る。だから情報も、沢山入ってくる。
あなた、太陽の国の王様なんでしょ?月の民ともに平和に暮らしてる、、」
と、ふと本を開き読むベラ。

コリウス「なら!!」

ベラは、本を荒く閉じ、地面に叩きつける。
ベラ「だから、無理!って言ってるでしょ!!この姿見てよ!」
(高貴な言動から、普通の女性の言動に変わる)

ラナン「あらら〜!怒っちゃったぁ♫」
コリウス「お前は、黙ってろ!」
ラナンを睨むコリウス。
そして、ベラもラナンを睨みつける。
ラナン「あぁ♫ごめんなさい♫ベラも、そういう顔するんだねぇ」
ベラ「、、、、、。」
ラナン「私は退散するよぉ♫森を出る時は、呼んでぇ♫
あんた(コリウス)一人じゃ危険だからさ」

その場から離れるラナンキュラス。

ベラ「、、とにかく、無理なのよ。私はもう。。」
コリウス「なんで?なんでだ?角とか、関係無いだろ!」
ベラ「妾、、いや、私は、罪人(ざいにん)。罪人(つみびと)よ。
だから、この森でしか生きられないの。
それは、あなたも、よく分かってるでしょ?」
コリウス「、、、でも、でも、、
君の願いは、、オレの願いが、、正義が、、」
ベラ「その正義は、あなたが暮らしてきた国で、
あなたが国王となった国で、
仲間や、月の人々と培ったものでしょ?
それを大切にしないと、、」

本を拾い上げ、土埃を払うコリウス。
コリウス「そこまで知ってて、、なら、この本だって、、」

月を見上げるベラ。

ベラ「いいわねぇ。私が一国の王女だった時は、
なにもかもが、めんどくさい、、でも、国の為だから、、って、
自分の思想や願いなんかも、全て捨ててきたから、、」
コリウス「、、、、。」
ベラ「帰りなさい。私のことは、忘れて。ヒザシ、、、だっけ?
あの人は、罪人にはならないわ。させないわ。
だから、あなたが、守ってあげなさい」
コリウス「オレは、君を守りたい」
ベラ「さようなら」

狼の遠吠えと共に、
ラナンキュラスが戻ってくる。
ラナン「終わったかい?」
コリウス「また来る!!!絶対に迎えに来る!罪人でも何でもいい!
俺には、君が必要だ!」
ラナン「諦めなよぉ!」

ラナンを睨みつけるベラ。
ベラ「あんた、これ以上、何か言ったら許さないわよ」
ラナン「恐い♫恐い♫」

コリウス「待っていてくれ!きっと!きっと!」

森の奥深くに消えてくベラドンナ。

ラナン「君には、罪人を外の世界に出すなんて、無理だよ。君だけじゃなく、人間にはね」
コリウス「そんなことない」
ラナン「でも、私には、罪人を人間に戻せる可能性がある。天才だからねぇ♫」
コリウス「何が言いたい」
ラナン「いや♫罪人が人間に戻ったら、外の世界に行けるんじゃないかなぁって」
コリウス「それって、、」
ラナン「あはっ♫さぁてね♫」
罪の森の入り口に辿りつく二人。

ラナン「じゃあね♫また♫」
コリウス「また?、な、、ありがとう」

「羨ましいなぁ〜」と小さな声で言いながら、
消えていく、ラナンキュラス。

コリウス「また、、また来るよ。必ず。」

そして、また時は過ぎ、コリウスは、70歳。
死期が近づき、歩くこともままならず、
従者に頼みこみ、罪の森にやってくる。

従者を無理矢理に帰し、
罪の森の入り口で、木の傍らに倒れ込むヨウコウ。

コリウス「死ぬ時は、お前の傍で、死にたい」と、
ボロボロになったベラの本を読む。

そこへ、狼の群れが、吠えながら、
ベラを連れてやってくる。
ベラ「うるさいわねぇ〜。なんなの?」
大罪人となったベラは、何十年と変わらぬ姿だった。
使い魔「また人間が来たようだ」
ベラ「なら、私じゃなくて、ラナンを呼びなさいよ。めんどくさいわねぇ」
使い魔「、、、、、。」
狼達が、吠えまくる。

ベラは、目の前に、倒れていた老人を見つける。

ベラ「人間って、こ、、れ、?、え?、、コリウス、、?なの?」
コリウス「??!!」
ベラ「ねぇ!コリウスなの?」

ふと目上げて、ベラを見つめるコリウス。

コリウス「、、相変わらず、、綺麗だなぁ」
ベラ「、、、、、あなたは、齢を取ったわねぇ」
コリウス「また、君を迎えに来た」
ベラ「遅いわよ。待つのも、めんどくさいのよ」
コリウス「そうだな(微笑む)」

ベラ「ごめんなさい」
コリウス「私もだ、、」

ふと、コリウスが手にしてた本に目をやる
ベラ「まだ、持ってたの?」

コリウス「太陽と月、、だからな」

ベラ「何が言いたいの?」

コリウス「私と君だ、、」

ベラ「めんどくさい(静かに笑う)」
コリウス「めんどくさいな(微笑む)」

 
ベラ「ありがとう。愛してるのよ。ずっと、、」
コリウス「あの時も、そう言ってくれてたな」
ベラ「聞こえてたの?」
コリウス「当たり前だろ(静かに微笑む)」

コリウスの目が段々と閉じていく、、。

ベラがコリウスを抱き寄せ、
大きな声で、泣き叫ぶ。

ベラが、罪人になって泣いたのは、
後にも先にもこの時だけ。

そして、その泣き声を、かき消すかのように、
狼達は、大きな声で、遠吠えを繰り返す。

罪の森の支配人、
ストレリチアに、見つからないように。

《原作配役》
ベラドンナリリー/月代彩佳
ラナンキュラス/山内里紗
「罪の森」より

ヨウコウ(罪の森:コリウス)/增井豪
ソル/佐京充
「願-NEGAI-」より

※写真※
「罪の森」撮影会写真より
「願-NEGAI-」公演撮影回写真より
※いずれも、TOMIEが撮影した写真です。
(他、一部公式写真有り)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?