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傷害罪、暴行罪――酒に酔った勢いで一夜にして通りすがりの四人を負傷させた新成人

 この事件の被告は二人いる。共に20歳の男性である。
 被告Xは、丸顔でまだ少年らしさが残る。
 被告Yは、比べると細面だ。
 二人とも、ちょっと「ヤンチャ系」な感じはするものの、さほど派手でもなく普通の若者に見える。
 彼らが問われている罪は、傷害罪暴行罪である。
 二人は、夜道で通りすがりの人たちに襲い掛かり、一夜にして四人の男性に骨折などの重傷を負わせたという。

事件の詳しい経緯

 事件が起こったのは2018年12月6日の未明。
 清掃業を務めるXと、ラーメン屋で働くYは時たま遊ぶ友人同士だった。Xが成人して飲酒が解禁されたのは、事件からおよそ一か月前。二人はまだ慣れぬ酒盛りをした後で、雑談をしながら夜道を歩いていた。

第一の事件

 その日、一太さん(仮名)は職場の先輩二人と夜の街にいた。酔った三人は、路傍のゴミ箱を蹴ったりしながら騒いでいた。そこにXとYが通りかかった。
「おい、お前ら」
 一太さんはXに呼びかけられたが無視した。すると、突然Xに顔を殴られ、脇腹を蹴られた。
 一太さんは顔面と肋骨を骨折し、しばらく仕事を休まなければいけなくなった。

第二の事件

 友人同士の二太さんと三太さんは、酔っ払いながら街を歩いていた。二太さんは意味もなく道端のカラーコーンを蹴った。
「なに蹴ってんの」
 Yがそう呼びかけ、二太さんとYは口論になった。

 三太さんは「落ち着こうや」と仲裁に入るも、いきなりXに殴られた。その場で三太さんは倒れて意識を失った。近くにはゴミ袋が積み重ねられており、Xはその上に三太さんを放り投げた。
 三太さんは眼底と下顎を骨折し、顔面から大量の血を流した。それからしばらくは顔の半分が麻痺し、眼球を動かすだけで痛みを感じたという。

 二太さんも暴力を奮われ、全治三週間の打撲を負った。

 Xはその時のことについてこう語る。
「Yと二太が言い合ってたから、Yが因縁をつけられたと思った」
「アドレナリンが出ていて我を失ってしまった」
「やめとけとYに言われてハッとした」
 また、「相手も足を蹴ってきた」ともXは証言するが、防犯カメラではXとYが一方的に暴行を仕掛けているだけだった。

第三の事件

 XとYは、立ち寄ったコンビニにいた四太さんの左頬をいきなり一発殴った。四太さんはその場で倒れ、意識不明になった。

法廷にて

 Xは九州出身。実家からやってきた母親が出廷した。
「過去に喧嘩をしたことはないし、犯罪をしたこともなかった。びっくりしました」
「自分の行動に責任を持つようにと、キツく叱った」
「毎日、帰宅したら携帯で連絡させ、休日には実家に帰らせて監督する」
「酒量を減らし、飲む場所も考えさせ、注意してくれる大人と飲ませる」
 Xの母親は大まかに、このように発言した。また、被害者への示談金は母親が払うという。

判決

 Xは懲役1年6か月、執行猶予3年。
 Yは懲役1年、執行猶予3年。

 つまりは、今後3年間なんの罪も犯さなければ服役をしなくてもよい、ということ。
 Xは10万円、Yは5万円を各被害者に示談金として支払い、被害者らは「許す」と、重い刑を望まなかった。
 また、二人には前科もなく、職場でも理解を得られ仕事を継続できていることも考慮された。
 裁判官は「雇用者や周囲への感謝を忘れずに」と述べた。

感想

 私はあまり酒を飲まない。それはただアルコールの味や刺激が好みではないからなのだが、こういう事件が怖いというのも理由の1割ぐらいにはある。
 口論になって手が出てしまった、というのはわからないでもない。だが、次々と四人を襲ってしまうのは理性のブレーキが壊れすぎている。一人を殴った時点で、我に返らないものだろうか? 「戦闘に勝利した」という一種の成功体験に酔ってしまい、勢いづいてしまったのか?
 母親は「喧嘩をしたことはない」と証言していたが、この手の速さで本当に今までなかったのだろうか?事件化しなかっただけじゃなかろうか?
 だが、喧嘩慣れしている者なら「やりすぎたら危険」というのもある程度わかりそうなので、初めての暴力だからこそやりすぎてしまったとも考えられる。
 顔の半分が麻痺したという被害者の怪我の報告が恐ろしかったのだが、完治したのだろうか。後遺症が残るようなものであれば流石に15万円程度では話が収まらないだろうし、きれいに治っていると思いたい。
 お酒は楽しく、飲んでも飲まれるな。

動画をつくっていました。

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