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覚せい剤取締法違反――ポケットに注射器を入れている時に職質された男

 被告は犯行当時49歳の男性。非拘束で、スーツ姿。坊主頭で、眼鏡をつけている。
 被告が問われている罪は、覚せい剤取締法違反である。
 売人から買った覚せい剤を自らの腕に注射したという。被告は容疑を全面的に認めている。

事件の詳しい経緯

 被告は愛知県名古屋市に生まれた。10代で暴力団に入り、17歳の時に兄貴分の男に教えられ覚醒剤を初めて使った。20歳で暴力団を辞め、以降は覚醒剤も使わなくなった。やがて結婚し、妻子と三人で大阪市で暮らすようになった。
 現在の職場には20年ほど勤務しており、勤務態度は真面目なものだという。

 事件当時、仕事が忙しく、被告はストレスを溜め込んでいた。
「休みが取れずイライラしていた。立ち続けで働いた」
 そんな時、被告は職場で「西成区にはクスリの売人がいるらしい」という噂を聞いた。

 2019年1月14日、被告が大阪市西成区太子の交差点に行くと、売人の方から声をかけてきた。正確な量は不明だが、耳かき2杯分程度の覚せい剤を、5千円で購入した。
 被告は車の中で、覚醒剤を水に溶き、注射器で腕に注入した。汗が大量に出てきただけで、気持ち良さは一切なかったという。「変なことをしてもうたな」と被告は思った。

 翌日、2019年1月15日。
 通勤中の被告は、警察官から職務質問を受けた。その時、被告の服のポケットには、前日に使った注射器が入っていた。被告は覚醒剤のことを打ち明けて自首し、尿検査を受けた。尿からは覚醒剤が検出され逮捕となったが、すぐに釈放された。
 被告は事件のことを職場に伝えたが、特に退職を迫られることはなく仕事を続けている。

法廷にて

 「みなさんに迷惑をかけて申し訳ない」と被告は法廷で反省を述べた。ストレスを溜めないように職場では忙しくない部署に変えてもらうことを検討し、魔が差さないように一人にならず、出来る限り妻と行動を共にしたいという。

 情状証人として被告の妻が出廷した。逮捕後、「ごめんね、ごめんね」と被告は涙ながらに妻に謝ってきたという。
 被告は仕事が忙しく、妻にも時々愚痴をしていた。妻は、事件によって別れたりするつもりはなく今後も生活を共にする意思があり、被告の趣味である釣りを一緒に行うなどしてストレス発散の手助けをしたいと語った。

 検事は懲役1年を求めた。
 弁護士は執行猶予を求めた。

 裁判は二回以上に及ぶものが多いが、この事件は初公判で判決の下される即決裁判となった。

判決

 懲役1年6ヶ月 執行猶予3年。
 つまりは、今後3年間なんの罪も犯さなければ服役をしなくてもよい、ということ。

 被告が妻子を養っており、20年間真面目に勤続していたことが評価された。「刑に服せば返って立ち直る機会を失う」と裁判官は述べた。

感想

 裁判が一回で終わる即決裁判というのは、これが初めてだった。容疑を全面的に認めており、被害者がいるわけでなく、比較的シンプルな事件だからか。
 傍聴してから動画用に文を書くまでに半年ぐらい経ってしまったためこの事件について記憶が朧げなところがあるが、被告の妻について「いい人そう、穏やかそう」とメモされていた。
 クスリで楽しくなれた上での逮捕なら本望かもしれないが、汗かいて終わりってのは同情というか残念というか、割りに合わない。気持ちよかったらまた使いたいと思ってしまうかもしれないので、汗かいただけでよかったと思った方がいいのだろうか。

動画にしてました。



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