見出し画像

公然猥褻、邸宅侵入ー見知らぬ女性の前で下半身露出を繰り返した男

 被告は20代の男性。
 非拘束で、手錠も腰縄もしていない。鼻の高さが特に印象的な、目鼻立ちのくっきりした、イケメンと称せる容姿をしている。初審ではスーツ姿で、細身な体格。ごく普通の真面目そうな人物に見えた。
 彼にかけられた容疑は「公然猥褻」と「邸宅侵入」である。
 見知らぬ女性らの前で下半身を露出すること四回。中には女性の住むマンションに侵入し、女性と二人きりのエレベーター内で露出したこともあったという。
 被告は全面的に容疑を認めている。

事件の詳しい経緯

 被告は大学卒業後、転職を経て携帯電話のショップ店員をしていた。一人暮らしで、交際中の女性がいた。
 被告は時々、インターネットでアダルト動画を見ていた。ある時に見た動画は、男性が屋外で下半身を露出するという内容のものだった。
「アホらしいな。こんなの犯罪やん」と被告は思った。
 しかし、コミュニケーション能力が低いという悩みを持ちストレスを抱えていた被告は、屋外露出がストレス発散になるのではないかと、真似をしたくなったという。
 そうして被告は、逃げやすいようにと自転車で徘徊して、女性を狙うようになった。

一度目の事件

 2018年4月の夜8時。会社員女性の一子さん(仮名)は帰宅途中、道の端で立ち止まって携帯電話を操作していた。その横を、被告が通りすがっていった。
 しばらくすると被告がまた道を戻ってきた。一子さんは特に気にせず携帯電話の操作を続けていたが、やがて妙な気配を感じて視線を向けると、そこには下半身を露出した被告がいた。
 被告は一子さんの目の前で手淫し、その場で精を放ち、地面に体液を残して去って行った。

 被告は一度目の事件についてこう述べている。
「発散できたという思い以上に、してはいけないことをしたと悔やんだ」
「葛藤があったが、衝動が上回った」

二度目の事件

 2018年4月の昼2時。休日の公園で遊んでいた小学生の女児二人は、自転車に乗ったまま下半身を露出している被告に気づいた。
「私たちの方を見ていた。ニヤッと笑いながら見ていた」
 被告はその際は手淫はせず、見せつけるだけで去って行った。被告は夜間にターゲットの女性を探すことが多かったが、この時は人気が女児らの他になかったため決行したという。

三度目の事件

 2018年6月の18時。三子さん(仮名)は自宅マンションのエレベーターで被告と二人きりになった。彼女は特に警戒もせずにいたが、被告が突然「ちょっと見てください」と声をかけてきた。見ると、1メートルもない近距離で、被告が下半身を露出していた。三子さんはエレベーターが停まるまで被告から目を背けた。
 被告はその際は手淫はしなかったという。

 この事件の流れについては、被告と三子さんに食い違うところがある。
 被告はマンション前の50~100メートル前ごろから三子さんをつけていたと申告。
 三子さんは、それよりもだいぶ前のドラッグストアでも被告を目撃しており、思えばその時からつけられていたのかもしれないと言う。

 被告は4月に2度起こした事件の後はしばらく徘徊すらしないようになっていたが「気持ちのコントロールが上手く行かず、見てもらいたいという欲求が上回った」ため三度目の事件を起こしたという。
 エレベーターという密室内で起こした事件ではあるが「危害を加える気はなかった」と、露出をしたいだけで直接的な性暴行を加えようとしたわけではないと法廷で釈明した。

四度目の事件

 2018年9月の23時。四子さん(仮名)は自宅マンションのエレベーターに乗った際に、被告を見かけた。被告も乗りたいのかと思い「乗りますか?」と話しかけるも、被告は無言のまま下半身を露出し手淫をしだした。

 四子さんはこう話したという。
「驚いたし怖かった。夜一人で歩くのが怖くなった」
 被告はこの事件の直前に、恋人の女性を自宅まで送り届けたところだった。夜道で四子さんを見かけ、マンションのオートロックも突破して追ったという。

事件発覚後

 四度に渡る犯行は防犯カメラに記録され、やがて被告は起訴された。三子さんと四子さんは示談に応じ、被告は合わせて40万円の示談金を支払った。
 一子さんは示談に応じなかった。何度も事件を繰り返し、被害者の中には小学生の子供もいるということが許せず、一子さんは厳罰を求めた。

 事件発覚後、被告は仕事を辞めて実家に帰り、両親と兄弟一人と共に四人で暮らすようになった。父親は、被告をしっかり監督し再犯させないと誓約書を書いた。
 被告は性依存障害を治すための病院に通院し、カウンセリングを受けるようになった。知能テストにも心理テストにも異常はなかったが、「感情操作が苦手」と診断されたという。

 検事は懲役6ヶ月を求めた。「身勝手かつ短絡的な犯行。執拗で悪質、卑劣。三度目の事件ははじめの二件よりも悪化しており、追いかけ、密室で振り向かせてでもと、エスカレートしている」
 一方、弁護士は「治療中であり、監視の目もある」として執行猶予を求めた。

判決

 懲役6ヶ月 執行猶予3年。
 つまりは、今後3年間なんの罪も犯さなければ服役をしなくてもよい、ということ。
 たったの5ヶ月の間に四度の事件を起こしたことは重く見られたものの、一部では示談が成立し「許す」との被害者の言葉もあったため。

感想

 四度目の事件の説明の際に「彼女を自宅まで送った後で犯行」といきなり彼女の情報が出てきて、「えっ彼女いるのに性犯罪してたのか」と驚いた。性犯罪者は彼女持ちや既婚者も多いというので珍しいことではないのだろうが、なにも彼女と会ってた直後に別の女性追っかけなくても……。
 裁判の場だからということもあるのだろうが、被告は声が小さく、何度か「もっと大きな声で」と注意をされており、雰囲気も沈鬱としており、コミュ力がないという自称はそうなんだろうなと思えた。

 被告は事件を起こした理由について「衝動的に」と何度も発言しており、検事は「衝動的とか、抽象的すぎる」「コミュ力ないと言っていたが、そういうところだよ」みたいなことを言っていた。「そのままじゃ再犯するよ」みたいなことも言っていた。「衝動的に」というものを被告が具体的に解析せずにいることを検事は咎めたのだろうか。
 見知らぬ女性に露出というのは「驚かせることを楽しむ」「恐怖させることを楽しむ」「露出するだけで女性を恐怖させることのできる自己を誇る」というものだと思う。
 なんで違法なことをしてまで自己を誇り、充足しなければならなかったのか。そういった自己のコンプレックスなどを直視しなきゃ、また自分の弱さを糊塗するために事件を起こしちゃうよ……と検事は危惧したのだろうか?
 実際には被告はそこらへんの分析などできていて、でも大勢に見られている裁判の中で具体的なことにふれるのは恥ずかしくて言えなかっただけかもしれないが。
 それに、別に弱さとかなんにもなくても「そういう性癖なだけ」って場合もありそうだ。そういうのは分析してもどうしようもないので理性を強く持つしかないか。食べ物の好みみたいなもので、食べない我慢はできても嗜好自体は変え難い。
 携帯ショップ店員は大変だとよく聞くし、被告はなんだか暗そうなので、「そういう性癖なだけ」ってよりもやはりストレス発散の示威行為として自慰行為してたのかなと思うが。
 また、検事は被告の起こした事件が本当に四度だけなのかも怪しんでいるようであった。
 被告の犯行は、被害者にとってはトラウマを残す深刻なものかもしれないが、言ってみれば「見せつけただけ」であり、実際に手を出したわけではなく、人によっては「変なの見ちゃった」ですませて通報せず事件化しないこともありそう。
 4月から6月、6月から9月、と犯行を起こしていない期間が長くあることを「露見していないだけでは」と疑われているようだった。
 被告は犯行は四回だけだと言っており、「我慢できた期間もあったのに何故またやってしまったのか」と更に検事に詰められていた。
 被告は容姿が良くまだ若い。犯行当時の恋人とはどうなったのか、別れてしまったのかもしれないがまたつくることはできるだろうし、再就職も難しい年齢ではない。更生するとよいのだが。

 動画にしていました。直接的な描写はまずいかと思いバナナにしましたが、今見ると不謹慎かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?