メジャーとマイナー、武道とエンタメの間で 「第二回敬天愛人アマチュア大会」感想その5


道場で開催という絶妙な密室感が、あたかも「ロフトプラスワン」で公にはできないような話を聞いている感じに近く、自分たちだけ楽しいものを目撃してるんだぞ、という特別感あふれる気持ちにさせてくれる。

「興行」である限り大箱で開催されるのが望ましいが、しばらくはこうした手作り感も楽しみたいというジレンマもある。選手の身内以外の観客がどれくらい来たかは知らないが、こんな好事家は我々だけかもしれない。


観客と言えば、今回「観客頼み」というルールがあった。くじによって有効技が決まり、選手以外全員が有効技を知っている状態で試合が開始され、選手は観客の反応を見ながら有効技を2つの意味で当てていくルールである。

アリキックなどお馴染みの技から、「魔貫光殺砲」「北斗百裂拳」などの現実的ではない技が有効技として設定されていた。

お互い観客の反応を見つつ探りを入れる姿が面白く、有効技が「魔貫光殺砲」だとわかったときには、ポーズをしっかりと溜めてから解き放ち、対戦相手が気持ちよく吹っ飛んで負けたという構図も良かった。

このルールは格闘技よりもエンタメ性のほうが高く、かつて少年時代にやっていた"ごっこ遊び"を良い大人・格闘家がやってみた、という意味合いでもあった。

今回はノリが良い格闘家による試合だったが、このルールは芸人同士でも見てみたい。かつて、『内村プロデュース』という深夜番組で、お互い禁止された行動が設定されている柔道をする「芸人不信柔道」という好きな企画があったのだが、それをわくわくしながら見ていたときを思い出した。

そもそも芸人×格闘技は相性が良いコンテンツだ思っている。原点は何かは定かではないが、もっと以前に放送されていた『リングの魂』の「芸能界柔道王決定戦」ではないかと予想している。

芸人の「リアクションの良さ」も相まって、格闘技ができる芸人を集めて開催すれば、テレビ番組でも放送出来るコンテンツにもなりそうだ。

ちなみに、このルールを考案したのは大川興業所属のピン芸人「オレはゴミじゃない」さんだ。前回のアマチュア大会にも参戦したが、今回はR-1の予選と重なったため(予選落ちしたらしい)、選手としては不参加だった。次回は是非参加してほしい。 


そして、芸人と言えば今大会の裏MVPは前説・実況・進行を担当した大ももちさんなのは間違いない。「巌流島」にも「第一回敬天愛人アマチュア大会」にも出場し、RIZINのイベントではMCもやっている格闘技好きな芸人だ。

試合数が多くても、ダレずに見られたのは(後半は巻きが入っていたが)彼の功績でもある。大ももちさんも、次回大会が開催されたら、また出場して選手も兼務してほしい。


去年のM-1にて一気に人気になったミルクボーイやぺこぱの漫才のように、「人を傷つけない笑い」がトレンドになりつつあるようだ。

格闘技という「人を傷つけない」からもっとも遠い興行に於いて、「観客頼みルール」「環境利用ルール」など、「エンタメ要素」を組み合わせることで暴力性が中和され、「面白さ」に繋がっている。プロレスがそのジャンルの最たるもので、また武道興行では状況設定された"演武"はあると思うが、異種格闘技としては新しい。

「敬天愛人」の最大のコンセプトである「親が子に見せたい格闘技」。これも答えの一つなのだ。

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