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死者の告発シリーズ第三弾 女郎花2

死者の告発シリーズ第三弾 女郎花2
げに恐ろしきは人間である。

スエさんは、言っていた
「私は六歳で生まれたの」彼女はそう言い張った。客の一部は「面白いやつ」と苦笑い、一部の客は「頭の悪いくるくるパー子」と笑い、残りの客は気持ちが悪いと引いて、他の子に変えたらしい。

貧しい農家生まれのスエさんに父親はいつも言った。
「飯食う地蔵は要らねえ。役に立たねえ」
邑の外れの地蔵さんを拝んでいたような気がする。その時だけ神妙だったが。いつも握り飯や野菜をくれる地蔵さんだ。ありがたくないはずがない。

だけどあれは、村の衆が地蔵さんにあげた供物を盗んでいたんだ。今になって思い当たる。

スエさんは六歳で廓に売られた。五歳までは小さい子たちと遊んでいたし、抱き合って寝ていた気がするが記憶が抜け落ちてている。彼らの顔はのっぺらぼうなのだ。もしかしたら、スエさんの上にも兄や姉にあたる人がいたんではないか? 顔どころか姿形もぼんやりしている。

第一、   彼らだって、どこへやられたか、わかったもんじゃない。あの父親のことだもの。

第二に母親はどうしたのさ。記憶に出てこない。
まっ、まさか弟が生まれてまも無く、かあちゃんも売られた?

だからスエさんには五歳までの歴史はないらしい。学校にいってないスエさんの勘定はいつも六が一だった。

しかしなぜか父親の顔だけはしっかり覚えている。思い出す度、恐怖に襲われて悲鳴を上げたスエさんを廓の釜焚きじっちゃんだけはかわいがってくれたらしい。

廓は地獄だった、、、。


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