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『The GIFTED』全体&ep1

前回の前提に続いて、1話からユルく分析&感想のターン。
物語論やシナリオ論から話をするとめっちゃ長くなる&分かるにくくなる為なるべく端折って簡潔に(必要なときのみ入れながら)1話目の個人的に「天才!」と思ったところ、ポイントを書いていこうと思います。

そもそもGiftedて何よ?となった方は ↓こちらを先にどうぞ。
※中のリンクからYoutubeで本編も合法&日本語字幕で見られます。


1シーズン全体の流れ

先にちょっと1シーズン通しての全体の構造から……
The Giftedは割とハリウッド的な脚本の作りをしているのですが、その所以が【三幕構成】にあります。

三幕構成とは、『シドフィールドの脚本術』という脚本家のバイブル等で有名になった、物語の展開/構造。全体を以下の3つに分けて考えます。
・1幕目「発端」セットアップの部分。(キャラクター舞台設定を見せる)
・2幕目「葛藤」主人公が達成しなければならない障害との対決を導く
・3幕目「解決」。クライマックスから終息へ。

これらは、基本的には映画向けの分け方ですが、ドラマでも同じ。
更にドラマの場合1シーズンの中の「1話」に対しても同じように、セットアップがあり、展開があり、小さなクライマックスがあります。
(※最後だけ次への「ひき」のために、終息はしないけど)

アイディア メモ-74

※ざっくり↑こんな感じ。感情曲線はモノにより。Gifted用に変更するかも。


どーでもいい閑話 :私はリンダ・シーガ―『記憶に残るキャラクターの作り方 観客と読者を感情移入させる基本テクニック』のが好み。終わりが最初の期待値より上。でも最終的にところで落ち着いて終わる形。Giftedはこっちかもしれないです。


1話ごとの担当/構造


THE GIFTEDの場合、前半は「役ごとにメイン=お当番回」があるつくりです。


1話目=全体の主役=パンの前提設定セットアップ      @GMMTV

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2話目=オーム

3話目=ナムターン

4話目=クレア

5話目=プーン

6話目=モン

7話目=コーン

8話目で一旦全体の展開へ移ります。
実はもう一組双子のキャストがいるのですが、彼らの担当回がないので、もしかしたらここに入る予定だった?という気がしなくも……。ただ全体の流れで言うと、折り返しを少し過ぎたポイントなので、最初から「テーマの再提示」に時間を取る予定だったのかもしれません。

9話目・10話目=ウェーブ
彼は後で1話の細かい部分でも触れますが、重要な人物なので二度分、ラストの方に置かれているのは自然かつ、素晴らしい流れだと思います。

11話目からラストに向けてメインパートが再び走ります。最後の問題が提示され残すところはクライマックスという流れへ。
3幕構成でいうと2部のプロットポイントはここかなと。

主役以外の【Ep主役=サブキャラクター】の状況設定/葛藤/解決が、
1話ごとに(たまに何話か跨いで)明らかにされている構成なのですが
ドラマ全体と組み合わせると……  こんな感じの入れ子構造。
シーズン全体の3幕構成&各話でサブキャラの3幕構成の物語。

アイディア メモ-75

そして、第1話目は一応パンをメインに進めていますが、
パンは全体の主役なので1シーズンで解決へ話を進める為、この回は綺麗に一話完結の3幕構成とはなってません。

※ ここから以下、ネタバレちょいあり

1話 怒涛のセットアップ

1話目は、主役の紹介とともに、まず「全体の前提条件」を明らかにしていく流れです。

学園モノということで、この段階で絶対明かしておきたいのが


・どういう学校か。
 超能力=Giftedを持つクラスについては最初明かされていません。
・キャラクター →主に主人公は誰か
 Giftedクラスのキャラクターは受け持ち回が決まっているので、この一話目で知らせたいのは「主人公」が何者なのか。
・主人公の事情
 どういうアイデンティティ/事情を持っているのか。
・今ある問題

これに加えて、最後に今後の示唆(次の話へのつなぎ)が入ります。

【シーズン全体の目標をはっきりさせる】=1幕目の一番重要なところを入れる必要があるので、「ものすごおおおおおく情報量が多い」前提。

ここで注目したいのが【ナレーション】の使い方!

モノローグ的ナレーションは、日本では割と嫌われている気がします。実際コンテスト審査員他さまざまな諸先生方の話では「モノローグ」はうまく扱えずマイナス要素になりやすい……という意見を多く聞きます。
その反面、海外で活躍してきた脚本家には、逆に、このモノローグこそ話を面白くするスパイスだという意見の方も多く、例えば渋谷 悠(劇作家・脚本家・監督)さん等は自らもモノローグのための本(『穴』)を出してたり…

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                                                                                               @GMMTV

The GIFTEDのスタート:パンの自撮り映像とともに流れるナレーションは、非常に効果的で緻密です。「問いかけ」の形で全体のテーマをチラ見せして、不穏さを匂わせる=今後への「ひき」が見事!
ちなみに、この最初のナレーション部分の<中身>は、時系列的にはドラマ全体の後半部分=未来につながる仕組みになっています。
冒頭で匂わせたあとは、時間を一旦戻して、現在進行形でお話が進み、要所要所でナレーションモノローグが入る形。
「全体の秘密」に関わるフックになるモノローグは必ずパンの自撮り動画と共に現れるのが印象的。映像としてわかりやすい工夫だなと思いました。

【1話あらすじ】

舞台となるのはリッターウィッタヤーコム高校。
成績順番に1~8クラスに分かれ待遇も別れる厳しい校風。
主人公パンは4年生の8クラス(落ちこぼれクラス)に所属する生徒。
1クラスにいる親友の恩恵にあやかりながら、適度にさぼって生活している。
クラスチェンジを兼ねた「グレードテスト」が近づく中、
上昇志向のないパンに対して、親友のナックは、1クラスの上=特別な「ギフテッドクラス」を目指す。
カンニングを企み試験問題を手に入れる二人。
しかし、問題には特別なものはなく……

そして受けたテスト。
パンは響く不思議なスピーカー音に続く特別な「出題」をとき、一人、ギフテッドクラスに合格してしまう。
始まる特別授業、その中で徐々に学園の闇に気づいていくパンだが……

↑ ↑ ↑ 1話のリンク 見てから読みたい方はどうぞ。↑ ↑ ↑

ヒーローズジャーニーとしてのThe GIFTED

そんなThe GIFTEDですが、大きな物語としては、パンをメインに据えた「男性神話(ヒーローズジャーニー)」として読み解けます。
男性神話とは「ヒーローが新しい世界へ出て、変化、成長し、宝を持って帰る」作り。スターウォーズのルークなんかが典型です。
そこにはお約束の流れがあり、大まかには3ステップに分かれます。
The GIFTEDの1話目はその1段階目の前半にあたります。

【1段階目】

平凡な世界
冒険への誘い
誘いへの拒絶
ガイドとの出会い
第一関門

キム・ハドソン『新しい主人公の作り方 ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術』(フィルムアート社)

上記↑ 平凡な世界=8クラスの状況/冒険への誘い=ギフテッドクラスへの招待をメインにした展開です。

注目したい役は、パンの親友ナット
彼はパンより、スタートの段階では外の(新しい)世界寄りにいます。ナットは1クラスで優等生、パンに比べれば上の階級で、表向きGiftedクラスに入れそうなポジション、かつ上昇志向があります。

一方、パンは劣等生ですが、自分にとって安全地帯でもある8クラスの環境に対して(他クラスとの差に納得はいかないながらも)ある種慣れていて、積極的に抜け出ようとはしていません。

代わりに、パンはさらに大きな括り=学校システム全体への疑問をもっているというセットアップ。あからさまに、抜けたい!上に行きたい!ではないリアルさが見事です。
また親友ナットがこのパンの慣れた環境より「ちょっと上」にいることもポイントで、この差=ギャップを生み、物語に強弱をつけてくれます。

普通ならばパンとナットだけでもある意味話が進みそうなものですが、主人公のパンをより上へ引き上げてるのが、Giftedクラスのウェーブ

ウェーブは、上のGiftedクラスのキャラクターの中でも攻略難易度の難しい、いわばライバル・相棒……【協力者】の役割を持ったキャラクター。
ウェーブとパンとの関係をみていくと、反発しながら一つの問題に向かっていく、バディものの王道に綺麗に乗っているのです。
1話でも見事に、ナットと比較させる形で登場しており、クライマックスで、他のメンバーに先駆けて、「能力・性格」が示されます。

だから、Giftedクラスの人数が多くても、「あ、こいつがサブメインか……」と分かる!!!めちゃくちゃよく考えられています。

アイディア メモ-78

主人公の環境=はじまりの村とすると、
誘いに来る外の人=ナット
更に上位=新しい世界を作る可能性を持つグループの協力者=ウェーブ
統治者=現在のシステムを司る校長/先生
1話段階の情報をざっくり仮組するとこんな感じでしょうか?

1話全体の時系列構造表

ほんっと雑ですみませんが、メモは↓こんな↓かんじ。(解説は文字である程度書くので、細かく見たい方は拡大してください。もうちょっとキレイに出来たら後で……)
ちなみに……YoutubeにGMMTV公式が1話を4分割で流しているため、それにのっとって横に4つに分けてありますが、分析はあくまで3幕構成で行っています。隙間の「広告の入り方」についてはまた別途。なお見ていてイラっとする方には、一ヶ月無料なYouTubeプレミア登録を推奨します。

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ストーリーの流れ 3幕

1話はナレーションで必要最低限情報をバランスよく叩き込みながら、クラス階級差をナック/パンの物語(これまでの平凡→外へ)の中に託しています。
そして、もう一段階上位の外である【Giftedクラスへの誘い】……。
1~2幕への分かれ目PPはおそらく試験盗みにいくシーン。そこからバレそうというハラハラへ話が展開しますが、この段階で、重要な小道具として「テープ」が早くも提示されています。このタイミング、伏線として優秀!大事なものは早めに見せるのが鉄則です。ネタバレではありますが、実はこのテープ、2期まで引きずるアイテムで、OP映像他細かくチラホラ映り込んでいたかと……。

物語は、次いで、テープが流れる→Giftedクラスに合格→葛藤=「このクラスにいる自分ってどうなんだろう」へ。この問いが2幕メインディッシュ。
ここからクライマックスの「ナックとの喧嘩、そして決裂」へ進みます。

サブキャラクター情報の出し方

サブキャラクター(Giftedクラスのメンバー)はそれぞれを今後取り上げることになるのですが、「サブメインだよ」をみせるため、念のため軽く「紹介」されます。主に今回はリードとして、「ナムターン」が「Giftedクラスで会いましょう」というセリフで先手を打ち、残りの面子は絵で魅せるバランス。加えて、のちの中心になるウェーブを1幕/3幕の両方で出してインパクトを与えています。 ↓ナムターンとウェーブの位置にも注目↓

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ウェーブですが、1幕/3幕で登場シーンが【対】になっています。
1幕と3幕それぞれのシーンで、ウェーブは「パンとナックどっちがオマケか?」という問いかけ、更にそれぞれ【別の結論】を想像させるような形で去っています。
<ドラマの時間上の軸>としても、最初の方/最後の方と【対】をなしており、美しい構成。「パンの居場所はどこか」という葛藤と間接的ではありますが絡められた台詞選びは芸術的。

同時に細かいところですが、後半に、先生側も校長/Giftedクラスの先生/先生 と微妙な対立軸をチラ見せして、「後で使える」ようにしているのも恐ろしい……。
謎を入れすぎても重くなるのですが、「なんだか不穏」「もしや」程度に収めていて、基本的に、視聴者の気持ちは「Giftedクラスでこの先パンがどうなっていくのか」という点からぶれないで済むという……。

本当にざっくりですが、全体&1話を見ていきました。
次は1キャラごとの紹介回の構造をざっくり見たいと思います。

細かい&小難しくなってない?感覚でもっと言っちゃった方がいい?の塩梅が分からないのですが、ひとまず今回はここまで。
「一応コンテンツ作る側で分析齧った人が、独断と変換見たらこうなるよ」の記事でした。

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