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2019.11.7 井上尚弥 対 ノニト・ドネア 何が凄かったのか

大方の予想を遥かに超える死闘となった井上尚弥 対 ノニト・ドネア

本当にもの凄い試合でしたね!

私は学生時代プロボクサーで活躍するのを夢見ていて(プロテスト合格後、重度の頸椎ヘルニアを発症し泣く泣く断念)ボクシングをやるのも観るのも超絶大好きで友人からも生粋のボクシング好きとして知って頂いています。

試合の翌日には友達をはじめ職場の上司、同僚からメールやLINE、Skypeなどで

「昨日井上尚弥やばかったね!」
「決勝にふさわしい好ファイトだった」
「見たけど、あれは凄過ぎた、、、」
「これは高いチケット払う価値あるね!」
「なんか凄い試合過ぎて涙が出た」

と普段はボクシングを観ないと言う方含め多くの感激や驚きの言葉がありました。

しかし同時に
「凄いのは分かるけど、、具体的にどうすごいかはわからないかも。。」
「なんとなくすごいことはわかるけど2人は何が凄いの?他の選手とは何が違うの?」
「なんであんな壮絶な試合になったの?」

という言葉も多く聞きました。
最終的には上司から「ちょっとやっぱ難しい!きみ試合の講評書いて皆んなに配って!」と言われました笑

私は基本的に上司からの命令は大嫌いなのですが、この命令は嬉しかったです!

という事で実際に社内の方達に送った私のレポートをネットでも公開したいと思います。

※以下のレポートはボクシングを普段あまり観ない方にも読んで頂けるように説明長め内容はシンプルに書いています。「うーん、そこはなんかもっと単純じゃないんじゃない??」「そんなん知ってるわ!」みたいに感じてしまう事も記載している点ご了承ください!

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井上尚弥対ノニト・ドネアの試合がなぜ物凄い試合になったのか、2人の何が凄かったのかポイントを以下列挙いたしました!

レポート内「●」「☆」「★」の意味は以下の通り。
●:前提
☆:死闘となった要因
★:井上尚弥またはノニト・ドネアの何が凄いのか

①優れた距離感
●ボクサーは其々自分の「距離」というものを持っています。その距離というのは自分が相手にパンチを確りと当てる事のできる距離と考えてください。通常は相手との距離が遠くなればなるほどパンチを確りと当てる事が難しくなります。
☆今回井上尚弥選手とノニト・ドネア選手の距離はほぼ同じで両者共に同じ間合いで手を出す事が出来ました。ファイトスタイルにもよりますがこの距離が噛み合うと必然的に両者ともに手数が増えパンチの交差が多くなる好試合となる傾向があります。
★尚弥選手がドネア選手と噛み合う距離を持っている事が凄いです。試合を見てもお分かりになったと思いますがドネア選手の方が身長、リーチ共に長かったですよね。サイズ差がありかつ同じく距離感が遠いドネア選手相手に同じ距離で闘えた尚弥選手はいかに自分のリーチより遠い距離感を持っている事が分かります。この遠い距離感を持つというのは対人練習による鍛錬も当然ありますがセンスの部分も多いと個人的には考えていて、遠い距離感というのは井上尚弥選手の一つの大きな特徴でしょう。

②圧倒的なフィジカル力
●ボクシングは見ている以上にめちゃくちゃ疲弊します。。パンチを出すのも疲れますが相手からパンチを受ける際にも同様に体力を消耗します。強烈なパンチを放つ為には強靭な足腰と体幹の筋力が必要で、パンチを避ける、ガードする、クリーンヒットを外して受ける時に威力を吸収する際にもその筋肉は使われます。

☆最後まで2人はパンチを被弾しながらも力強いパンチを出し続けました。またパンチ以外を見ても打たれても打たれても止まらないドネア選手の前進・プレス、そしてそれを受けて瞬時に出入りしてパンチを外しながら打ち続ける尚弥選手の姿はまさに圧巻でした。
★勿論ペース配分やパンチを繰り出す時や相手のパンチに対処する時の身体の使い方が巧みなのもあるのですが、これだけ見応えのある打撃戦を終始続けられたのは尋常じゃない身体の強さ、スタミナがあったからです。特に井上尚弥選手のフィジカルはもう化け物で普通単発でもあんなに強いパンチは打てませんが彼はあの凄まじい強打をなんと連打できてしまいます。強靭という言葉が陳腐になる程に強い足腰、フィジカルの持ち主である証です。

③パンチのバリエーション
●ボクシングにはジャブ、ストレート、フック、アッパー等、種類を分類すると数は決して多くは無いのですが、近い距離〜遠い距離、角度、軌道、打つ体勢などを含めるとバリエーションは無数に広がります。
☆やはり同じパンチでも角度や、軌道が異なるパンチが飛んでくると相手は攻撃を捌ききる事は難しくなります。今回は両者ともにその時の状況に合わせてパンチを変えて打てる選手だったのでお互いに捌き切れず被弾の数も多くなりました。
★特に井上尚弥選手のパンチはバリエーションが本当に豊富です。ガードが空いている部分を抜けてパンチが当たるように毎回打ち方を微妙に変えます。もう身体のあちこちから多彩な角度でパンチが相手目掛けて物凄い勢いで飛んでいくのです。皆さんも印象深いと思われているだろう尚弥選手の得意パンチは戦慄のKOを量産している左ボディーだと思いますが、実は上下へのジャブ、ストレート、アッパー、もう全てが超強力です。こんな事は通常あり得ません。。色んな距離から多彩で破壊的なパンチが打てるのも井上尚弥選手の特筆すべき点です。

④稀代のカウンターパンチャー
☆今回、両者共に相手のパンチに合わせてパンチを打つ事が非常に得意な選手でした。また相手のパンチを待つだけでなく自分からも積極的に攻めてアグレッシブなカウンターパンチャーです。お互いが自ら仕掛ける為コンビネーションの中でも相打ち寸前のタイミングで強烈なパンチを放つので目を離せないとんでもなくスリリングな試合展開となりました。
★尚弥選手、ドネア選手共に相手のパンチの初動に対する反応速度が尋常ではありません。また通常一撃で試合を終わらせる事のできるパンチを持つ相手とほぼ同時のタイミングでパンチを放つ事は相当の勇気が必要ですが、今回の試合ではそんなシーンが沢山ありました。それが出来るのはバンドスピードやタイミングが優れているのは勿論、相手のパンチを外す事の出来る圧倒的なテクニックそして自信があるからこそでしょう。相手のパンチがクリーンヒットしない距離感、絶妙な身体や頭の位置を覚えて自分が攻撃している時も常にその場所へ身体を動かさないと出来ない芸当です。普通であれば、あんな戦慄のタイミングでパンチが交差していたら12ラウンドの中で4回ぐらいは試合が終わっていたのでは無いでしょうか。


⑤クレバーすぎるモンスター
☆井上尚弥選手はご存知の通り2ラウンド目にドネア選手の左の強烈なショートフックを被弾し右目瞼をカットし、眼窩底骨折もしました。それによってパンチを当てるのも外すのにも必要な距離感を失い、それが至高の死闘へと発展するトリガーとなりました。また痛みという側面では鼻もこの時骨折していたのでその部分を触るだけで痛かったはずで、その事も少なからず試合に影響があったと思います。
★これらは彼にとって今まで一度も経験した事のない状況であり、しかも試合の序盤も序盤、2ラウンドで発生してしまいました。隻眼という相手との距離感が不明確になる状態で、激しい痛みにも耐えてそこからフルラウンドを「冷静」に戦い抜きました。余談ですが私も鼻をラウンド中に折られた事があるのですが、まさに悶絶の一言でもう痛すぎてまともに前なんて向いていられる状況ではありませんでした。(そのラウンド終了後速攻で病院直行しました)そんな極限にキツい状況下でも彼が完勝した事はボクシングの実力もですがもうメンタルの整い方がハンパじゃありません。
☆7~9ラウンド、尚弥選手がドネア選手に一時攻め込まれ、負けるんじゃないと思った方もいると思います。(私ももしかするともしかするかもな、、と思ってしまいました)しかし彼は10ラウンドから猛然と挽回し、11ラウンドには強烈な左ボディーでダウンを奪い最終ラウンドまで確りと攻めきり井上尚弥選手が優勢の格好で試合は幕を閉じました。
★実はあの7~9ラウンド、井上選手はあえて捨てて力を最後の3ラウンドの為に体力温存していた事が、後のインタビューやラウンド間の尚弥選手が父・真吾トレーナーへ伝える言葉で分かります。9ラウンドはあわやの展開となりましたが、その後は自身の作戦通り最後の3ラウンド全てでポイントを取る事ができました。
6ラウンド終了時点で10ラウンド以降自分がどのような状態になっているかなんて当然ですが分かりません。4ラウンド後の自分に賭けて3ラウンド全て捨てるというリスクを多分に含む作戦を完遂したボクシングの総合力の高さ、クレバーさ、精神力は本当に素晴らしすぎます。井上尚弥選手のモンスターという異名はパワーのみを指している訳ではない事を世界中に証明したのです。

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以上が私の思う「井上尚弥対ノニト・ドネアの試合がなぜ壮絶な死闘になったのか、2人の何が凄かったのか」です!より細かく語りたい事は幾らでもありますので是非今度飲み会等で語りあいましょう!

また最後に、この試合が多くのボクシングファン達の間で感動的な試合、伝説的な試合と言われているのは2人の決戦に至るまでのバックグラウンドの要素も大きいと私は思っています。以下のネットニュースなどもご覧頂ければより試合がより面白く感じると思います。

https://boxingnews.jp/news/20248/(井上尚弥に援軍、ドネアがナルバエス対策伝授)

https://www.google.co.uk/amp/s/www.daily.co.jp/ring/2018/07/09/0011427623.shtml%3fpg=amp(井上尚弥、ドネアのWBSS参戦に感慨 「以前映像を見て参考にしていた」)

皆様の貴重なお時間を使って最後まで読んで頂き本当に有難うございました!

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