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【TOLOPANの真髄に迫る vol.19】安土桃山の石窯製法を継承したモダンカステラ

カステラが長崎に伝えられたのは、安土桃山時代の話。あの歴史の本で何度も目にした顔であるフランシスコザビエルが来日した際に、教会の神父達によって南蛮菓子とその製法も伝えられたとされている。

200年以上続く鎖国の間にも長崎出島ではオランダ、中国と貿易を続けていた。当時貴重な砂糖が長崎には輸入されており、カステラの発展とともに九州の料理のコクを持たせたのものこの影響と言われている。

これは想像でしかないが、南蛮菓子は実はただポルトガル人が持っていただけで、それに興味を示した事で伝来しただけではないか?と。昔の話は勝手な想像が許されるので楽しいものである。


それはさておき、
TOLOPANで何故カステラを作り始めたのか。

きっかけはFMIの毛利管理栄養士に、「UNOXでカステラを焼けないですか」と依頼されたことからだった。

「できると思います」

と即答した。その時、根拠はなかった。
でも必ずできると確信していた。

今考えれば、カステラを何もないところから作り出した人がいること、それこそが根拠だ。整った機械や情報が多分にある現代の環境でできない訳がない。

現代人において、昔の人ができて、今の人々ができないことに理由があるとすれば、

「やろうとする情熱がないこと」

だけではないだろうか?


TOLOPANのカステラの配合は、伝来してきた安土桃山時代のものほどシンプルではなくなっている。小麦、砂糖、卵に加え、みりん、水あめ、太白ごま油、オレンジにホワイトラム酒に新しくトレハロース(林原)も加えた。必須材料以外の部分に関しては、歴史を守るという「ポスト」ではない発信になる。パン屋として、和菓子に対して「コンテンポラリー」的な発信がしたいのだ。

オレンジの香りは卵との調和を生み、味の部分では酸味と少しの苦味が甘味のマスキングの効果を生む。

ホワイトラムは湯煎で長時間みりんなどと一緒に煮詰めると原料のきび砂糖のように、合わさるとみたらしのシロップのような甘味と香りになるため使用している。

トレハロースに関してはショ糖の甘味度が38%になるため、砂糖の量が減りコクが下がるものの、しっとり感が増すため使用する。さらには、ごま油によるネクター効果によって甘味が増したような錯覚になる。また、ブドウ糖が2つ結合した構造になっているのもポイント。麦芽糖と同じようにブドウ糖が2つの結合でも、結合の仕方が違うため焦げにくい組織であり表面も断面も色鮮やかに仕上がるのだ。

焼きは相棒のUNOXに任せる。
そもそもカステラは、昔は薪を焚いて焼いていたものだったことから、今でも石窯での仕上がりが良いと言われている。そして、UNOXは強制対流から関節加熱を促し石窯状態を作り出せる優れもの。UNOXの蓄熱版(スチームブースト)で一番高い260°Cの時に、一番細かい蒸気を排水に落ちる事なく分散させることで通常のスチーム量の45%アップを実現できるのだ。

泡切りを200°Cの予熱に上記を籠らせた状態でファンを止め、2分に1回を4回繰り返し行い、常温時一回追加で行い温度が上がり荒くなった気泡を整え周りと中の熱を攪拌し全体を細かな気泡にしていく。そして260°Cのオーブンに上記を100%入れながらファンを一番強く回しバット全体に熱が届くように3分。その後ファンを止めて3分。この6分の準備でコンベクション内を石窯状態にできるのがポイント。あとは蓋をして強制対流で仕上げるコンベクションならではの焼き方だ。

ここで重要なのは、木枠でなくアルミバットであること。強制対流時に起こる、周りを蓄熱させる電動熱の働きで中心までの火通りをよくすることができる。そこから生まれる食感の良さはUNOXだからこその仕上がりだと感じる。



地方の菓子や料理は、今では全国どこでも目にするようになったし簡単に手に入る。
西と東の文化も混ぜられ、郷愁はなくなり、日本は一つになってしまっていくのか?
でも、そうした走り出し(知り始め)には一種の感動がある。

都会にいるからには、この情報量の多さの中で、常に走り続けなければいけない。
そうしないと、都会は都会としての価値が薄れていくように思える。

しかし、何かを作る上では都会の文化だけではいけない。
都会にはなしえない、郷土の基盤が重要なのだ。
これは、経験ではなく経験値。この経験値が大きくなることで、情報社会と共存していく「コンテンポラリー」な文化の創造が飲食業界にもできると考えている。

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