見出し画像

メディアと関わったらメディアがいやになった話

これはぼくがとあるメディアの中の人と会ったらそのメディアが嫌いになった、という話だ。

もっとも、これは現実に起こったことではなく、ただのフィクションにすぎない。

メディアと一口に言ってもテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットのニュースサイト、などがあるが、ぼくが会ったのは、インターネットのニュースサイトみたいなものの中の人だった。

当時、ぼくはとある小さなシステムの会社にいて、営業をしていた。競合する他社のシステムに良くない噂が流れたため、乗り換え先として、ぼくの会社のシステムが、決して多くはない人たちの間ではあるが、話題になったタイミングだった。そのときに、取材をして記事にさせてほしい、と、ネットメディアの記者の人から会社に連絡があった。それで、その時期に予定が比較的空いていたぼくが取材を受けることになった。

記者の人が会社にきて、45分くらい話した。

ぼくは、話すのに苦労した。自社のシステムについて話すだけなら、よかった。

しかし問題は、競合他社のシステムに「不具合のようなもの」があるという話が広がっており、それについても触れざるをえなかったことだった。

「不具合のようなもの」といっているのは システムそのものの不具合があって誰もまともに利用できない、という状況ではなかったからだ。

問題なく使えているユーザーが大多数ではあったけど、不具合が起きたと騒いでいる少しのユーザーの声が、広がっていた。

そしてそういった数少ないユーザーにおいても、半分はユーザーの理解不足が原因で、残りの半分はシステム会社の説明不足が原因で、問題が発生していたのだった。

ぼくは、他社のシステムについて話すとき、そのようなことを説明した。

だけど、実際にメディアにのった記事を見てみると、他社のシステムに不具合が生じている、とだけ至極簡単に書かれていた。

ぼくはこれにはとても落胆した。正確でないことを言って他社を貶めるようなことは、まったくぼくの本意ではなかった。かなり不正確であるし、事情を正しく知っている人からしたらぼくの理解不足に驚くだろうし、競合からしたら憤慨するべきところだったと思う。

そして取材を受けるに際して、ぼくは上司から他社のシステムに流れている噂については正確に伝えるように、とも言われていた。なので上司からもしかられた。

たしかに、人々は正しいことなんか知ろうとしないだろうし、長い記事なんかすぐに読むのをやめてしまうのだろうけれど、ぼくの注意を無視して、記者があまりにも物事を単純化して書いたことに、ひどくがっかりした。

それからぼくはそのメディアを見なくなった。


ここから先は

0字

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?