ファジーカス

今こそ知りたい!日本バスケットの「救世主」ファジーカス・ 日本代表を世界の常勝軍団へ

 2019年3月30日にコートジボアールで開かれた国際バスケットボール連盟(FIBA)の理事会で開催国枠が審議され、日本が男女とも(5人制)五輪に出場することが決まった。 

  
 五輪の開催国でありながら、日本バスケットボールの実力が疑問視されていたため、これまで五輪の出場を約束されていなかった。男子バスケットにおいては2017年の11月から始まっていたFIBA・W杯1次予選で最初から4連敗して、窮地に立たされていた。背水の陣で臨んだオーストラリア戦で、日本国籍を取得し、この試合から日本代表として参加したニコラス・ファジーカスが、25得点12リバウンドという大活躍をし、日本代表は79-78の奇跡の勝利を成し遂げた。


 本場アメリカでNBAも体験し、日本にはない得点力とリバウンドの強さを持つファジーカスが日本代表に参加し、そののちまさに「救世主」としてチームを牽引した。彼の加入以降の日本代表は、今まで負け続けていたチームとは思えないくらい自信に満ちていた。その後、日本代表は破竹の勢いで勝利を重ね、ついにW杯出場権を得た。この実績が日本の五輪出場の追い風になった。


 ファジーカスは母国アメリカでは、ネバダ大学リノ校に入学し、母校をNCAAトーナメントまで導く活躍を見せた。通算得点やシーズン得点の大学新記録を更新し、WACのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも3年連続で輝くなど、まぎれもないスタープレーヤーであった。その後、ドラフトでNBAのダラス・マーベリックスに入団したが、膝を負傷した影響からか、NBAではそれほど活躍しないまま、他国のリーグに移籍してしまった。


 日本には2012年に来日し、東芝(現:川崎)ブレイブサンダーズに所属。日本でのキャリアを始めたファジーカスは、前年最下位だったチームを準優勝に導くなど大きな活躍を見せた。以後4度の得点王、一度の年間MVP獲得している。日本ではNCAAで見せたものと同じく、個人での活躍もさることながら、チームを常に優勝争いに加わる強豪に押し上げた。ファジーカスは日本でプレーを続けるうちに日本が好きになり、もう「第2の故郷」と考えている。それ故、国籍を日本国籍に変えたのも、本人曰く「自然の流れ」だそうだ。


 ファジーカスは身長210㎝、体重110㎏の長身で、ポジションはセンター。どこからでもシュートを苦もなく放つことができ、またたまに見せるふわっとしたシュートなど実にバリエーションに富んだ形でフィニッシュに持ち込むことができる。また3ポイントシュートも正確で、そのシュート力は日本一だ。実際、彼一人で40点以上の得点を取る試合がBリーグ、代表戦を通して数多くある。そして体格を生かしたリバウンドの能力も高く、攻守にわたって相手にとって常に脅威でありつづけている。


 ファジーカスの良いところはそれだけでなく、常にフォア・ザ・チームの姿勢である。まずチームの勝利を優先し、チームの為に貢献するその姿勢が周りにもいい影響を及ぼす。バスケットはコート上にいる5人がお互いの事を良く知り、チームワークを重視するスポーツである。少しのチームワークの解れから流れが一瞬にして相手側に移ることがよくある。だがファジーカスの場合は、出場した試合を見ればわかるが、彼ゆえに流れが相手側から味方に移されていくことが多々ある。私事ながら筆者が子供を連れて見に行った3月31日の対横浜ビー・コルセアーズ戦でも、第2クオーターまで10点近くのリードを許していたが、ファジーカスの巧みな攻撃によって第3Qにあっという間に逆転してしまった。横浜ファンである我々もファージ―カスのプレーに思わず拍手を送ってしまった。ファジーカスは「運を呼ぶ男」であるわけだ。成績が悪かったチームをアメリカでも日本でも常勝軍団に変えてしまう不思議な力を持っている。


 アメリカ生まれの「日本人」、救世主ファジーカスの加入によって男子バスケット日本代表も常勝軍団に変わることを期待したい。

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