東京五輪で金メダルを目指す「世界チャンピオン」 高山勝成の世界一への挑戦(19年7月12日の記事)

プロボクシング元世界4団体ミニマム級王者高山勝成(36)=名古屋産大=が、2019年7月6日と7日に行われた全日本選手権愛知県選考会のフライ級に出場し、初戦はフェリペ・ロペス(21)=立命館大=に、第2戦は藤原幹也(22)=中大=にそれぞれ判定勝ちを収め、優勝した。
高山は17年4月にプロを引退して、アマチュアに転向し、現在東京五輪への出場・金メダル獲得を目指している。17年に名古屋産業大学に進学した際、「皆さんにご報告がありまして、自分は本日をもちまして現役のプロを引退いたします。東京五輪を目指して、金メダルを獲得できるように」と、東京五輪を目指すためのアマチュア転向を表明した。プロ経験者のアマ選手登録には日本ボクシング連盟前会長の山根明氏が断固反対していたが、その山根氏は昨年8月に辞任。同10月に国内で初めて元プロボクサーでアマチュア選手登録が認められた。
なぜ東京五輪の金メダルにこだわるのか。そこには常に世界最強を目指し、挑戦し続けるボクサーとしての高山の原点がある。09年当時ミニマム級ではプロ・アマ無敗を誇る最強王者ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)が君臨していた。WBAの王座を失ってから再び王座獲得の為にローマン・ゴンザレスに挑戦した当時の高山はパワーに圧倒され、なすすべがなく判定負けした。その後すぐにローマン・ゴンザレスは階級を上げることになる。その時に強い王者と戦わず、その王者が階級を上げるまで待った方が得策だったという周りの声に疑問を持つようになる。「挑戦者でありながら強いチャンピオンを避け、王者でありながら強い挑戦者を避ける。僕の目指していたチャンピオンとはそういうものなのか?」
本来世界チャンピオンの称号はその階級で最強のボクサーに与えられるものだ。しかし世界には4つの団体、WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(世界ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)が存在し、各団体に1人ずつチャンピオンがいるのが現実だ。そこで高山は4団体の全てでチャンピオンになれば、それはまさしくその階級で最強であるという証明であると考え、4団体制覇を目標とするようになった。そしてすでにタイトルと取っていたWBC、WBAに加えて、IBF、WBOのタイトルの奪取に焦点を合わせ、見事に13年にIBFの王座、15年にWBOの王座を獲得し、4団体制覇を成し遂げた。
アマチュアボクシング界では、16年に国際ボクシング協会(AIBA)が初めてプロの五輪出場解禁を決定し。五輪史上初めてプロ選手の参加が認められた。しかし16年のリオ五輪に参加した元世界チャンピオンの成績は振るわなかった。元IBFフライ級王者アムナット・ルエンロン(タイ)は2回戦で敗退し、村田諒太とも戦った元WBA世界ミドル級王者エンダムは1回戦で敗退した。同じボクシングとは言え、競技としては異なるとも言われるほどプロとアマでは違いがあるといわれる。プロで活躍してもアマチュアで勝ち上がるのは難しい。それは、アマチュアの場合試合が3分3ラウンドしかなく、また判定の基準も違い、手数を多くし、より相手の顔面やボディーにパンチを多くあてた方が多くのポイントを稼ぐからだ。ダメージを与えた方にポイントが与えられるプロとは根本的に異なる。
それでも、無謀と言われながら、高山はアマチュアボクシングの頂点を目指している。「最高の舞台でその国を背負った最高の選手たちと拳を交えて、その先にメダルと言う勲章がある。僕はそれに照準を定めたのです」今はまだその第一段階を突破しただけに過ぎない高山の挑戦であるが、高山のその熱い思いを応援したくなる。


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