今年は一味違うカヌーの羽根田 強靭な体幹でテクニックに回帰し、世界最強へ

山口県萩市の阿武川特設カヌー競技場で、カヌー・スラロームの日本代表最終選考会が4月21日に行われ、男子カナディアンシングルはリオデジャネイロ五輪銅メダルの羽根田卓也(ミキハウス)が96.94点で優勝し、’19年度の代表に選ばれた。
高校卒業と同時に日本を離れ、カヌー・スラロームの本場、スロバキアの地でトレーニングを続けながら、大学・大学院へと進学している羽根田は、北京五輪では14位、ロンドン五輪では7位と少しずつではあるが、実力を伸ばしていった。’13年にミキハウスとスポンサー契約を結ぶと、資金面での心配がなくなり、’16年のリオデジャネイロ五輪ではついに銅メダルを獲得した。
 激流の中でカヌーをコントロールするのは難しく、ゲートを素早くしかも、減点の対象となく、接触や非通過を避けなければならない、実に過酷なルールが課されているこの競技では日本人がそれまで大きく活躍することはほとんどなかった。しかし、羽根田はヨーロッパで学び、そして自分で創意工夫しながら一つ一つ実績を積み上げ、今では東京五輪の金メダルも夢ではないところまでに来ている。
 カヌーのオフシーズンに入ると羽根田は器械体操などのトレーニングで自分の体を鍛え上げていく。努力も必要であるが、一方において羽根田は環境も重要だと言っている。日本では、そしてアジアでは満足にコースを持てないが、ヨーロッパには練習環境が整っているので十分に実力をつけることが出来るというわけだ。そこには人種や国籍が問題ではなく、環境さえ整えば必ず勝てるようになるという羽根田の信念を感じることができる。
 リオデジャネイロ五輪では、タイム自体は全体の7位と伸びなかったが、一度も旗門に接触せずにすべてを通過したので、旗門の減点が0であった部分で差がつき、3位と言う結果になった。その後課題であるスピードに取り組んできたが、昨年の4度のW杯では一度も決勝へ進むことができず、予選敗退と言う辛酸をなめた。
 しかし羽根田はどうして結果が出ないのか冷静に分析しながら、シーズンの終盤になり、結果が出ない理由がわかったと言っている。弱点であるスピードを気にするあまり、本来の長所であるテクニックがおろそかになって、ミスが増えてしまったのだ。世界ではむしろスピードよりもテクニックにトレンドが移っていて、自分自身の本来の持ち味のテクニック重視に回帰する必要を感じた。
今ではトレーニングでも実践を想定したものをするように心得ている。ウエートトレーニングなども立ってせずに正座で、出来るだけカヌーの姿勢に近い形でし、また新潟県の十日町でクロスカントリーをしながら心肺機能を高めるなどである。
 日本代表最終選考会で、レース全てにおいてノーペナルティで通過し圧勝した羽根田は絶対王者の貫禄すら見せていた。パドルも3センチ長いものにし、シートも前にして、スピードの問題も克服し、下半身を強化することでコントロールするテクニックも技術をつけた羽根田の目には世界最強への道が見えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?