2018年を振り返る。「TikTok」の大元はチャップリンだった!?

動画で早送りはなぜ多用されるのか?

今年大ブレークをした動画サービスに「Tik Tok」が挙げられます。10代を中心に小学生まで利用するようになったこの動画コミュニケーションサービスは中々テクノロジーの塊です。一方で動画自体は「早送り」を多用したコンテンツの面白さに溢れています。

「C CHANNEL」でも当初から早送りを利用した動画を制作していました。
スマホで多く再生される動画には、この「早送り」技法を使ったものがたくさんあることは、皆さんもご存知だと思います。
以前、動画の本質は「変化率」の大きさに左右されるという話をさせていただきました。早送りは、それ自体が変化率をもたらす手法であり、それが「Tik Tok」などのショート動画にエンタテインメント性を与えていると思っています。

変化の山を築けないと動画を見てくれない

それはなぜなのか? これは「C CHANNEL」で蓄積されたデータとして証明されているのですが、変化率が高くない動画は、離脱率が高いのです。ですから、1分の中にどれだけ「変化の山」を築けるかに日々心血を注いでいるわけです。
特に10—20代の女性に顕著ですが、たくさんの中から興味を持ってもらった動画であっても、面白いか面白くないかの判断を即座に(だいたい開始3秒が大事です)行なっているために、1分程度の動画でも「完了率」はそれほど多くはないのです。
映像の変化率を変える手法としてテレビで多用されるのはスローモーション再生です。一瞬の出来事も、スローによってディテールが再現できるので、視聴者の納得や共感を得られやすいからでしょう。その一方で、早送りはあまり使われませんでした。例えば、花が咲いて閉じるまでだったり、夜空の変化だったりといった、長い時間を短縮するのには多用されていましたが、それ以外の表現は生み出せていなかったように思います。

60秒のショート動画ですら変化率は重要に

それが、スマホでタイムラプス機能が加わったりしたことで、ショート動画にも長い時間の変化率を楽しめるような仕掛けが多く生まれました。
それがさらに進化して、スマホ動画における早送りは生まれたように感じています。
その理由として考えられるのは。
画面が小さいこと
近い距離感でよく見えること
そして、圧倒的に時短になること

です。
例えば、「C CHANNEL」が躍進したきっかけに料理動画があります。これも60秒程度の限られた時間の中で、料理一品を完成させるためには早回しで見せるしかなかったのです。
ただ、そこに副次的にエンタメ性が生まれました。
「野菜を刻むという行為」
「煮焼きするときに素材の色が変わっていく過程」
など、すべての工程を見せつつも、短い時間で楽しめるよう心がけた結果、スマホ動画における新しい編集の形が誕生したと考えています。
それに刺激されたのでしょうか、テレビでも早送りを使った料理シーンが多くなりましたが、僕はあまり成功しているとは思いません。それはやはり画面の大きさの違いによるものだと考えています。小さいスマホで視聴するからこそ「早送り」は生きるのだと。

チャップリンのドタバタの現代的表現が早送りだ


僕なりにまとめてみますと、変化率を求められる動画にとって、リアルタイム視聴はともするとかったるいですし、飽きてしまう。それによって、全てを再生せずに離脱してしまう人が増えてしまいます。それを克服する手段として早送りで短縮したけれど、それがかえって新しい表現に繋がったのではないでしょうか。
同時に思うのは、過去のチャップリンの映画を見たときの滑稽さです。
あのドタバタは早送りのように見えることで増幅されています。もちろんこれは昔のフィルムの限界によるものでした。でも、あのテンポだからコミカルな表現に見える、という認知は多くの人にあります。それを今の時代のスマホ動画は再発見したのではないでしょうか。

無論、大映画人である尊敬すべきチャップリンと同じように語ることに「けしからん」と思われる方も多いかと思いますが、時代を超えて映像表現における人間の「感覚」は実は変わらないのではないか、と感じるのです。
そういうわけで、スマホ動画のルーツはチャップリンにあり、と思う今日この頃です。

「Tik Tok」の持つテクノロジーについては改めてじっくりと触れたいと思います。


コンテンツプロデューサーの三枝孝臣です。メディアの現在と未来を僕なりの視点で語ります。ベンチャー企業経営者としての日々についても綴って行きます。