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さよなら「MOCO’Sキッチン」 初代プロデューサーが語るその真実

僕が立ち上げの総合プロデューサーを務めた「ZIP!」の看板コーナーである、「MOCO’Sキッチン」が、今日の放送をもって終了しました。同時に番組開始当初からメインパーソナリティを勤めていただいた鈴木杏樹さんも卒業。僕にとっては番組の持つ時代の変化を感じさせられる出来事でした。

「MOCO’Sキッチン」ができるまでの詳しいエピソードは僕の著書「一流のMC力」に詳しく書きましたが、改めてあの頃を思い出してみようと思います。
「ZIP!」スタート前の準備段階のキャスティングの相談をしようと、彼の所属する事務所に行った時に、偶然、彼が料理に対してものすごく情熱を持っていることを知りました。そしてマネージャーの方から実際に彼のつけていた「レシピノート」を見せてもらったことがきっかけでした。

あんなにイケメンで背が高いのに料理が本格的。僕はその場で「これだ!」と思いました。彼の才能を知り、朝の番組では異例と言われる料理コーナーを作ることをみんなに提案したのです。周囲には「朝の忙しい時間帯に料理は?」と反対する人たちも多かったのですが、もこみちさんの料理に対する真摯な態度と、彼のさわやかな魅力で「MOCO’Sキッチン」は名物コーナーとしてブレイクし、通勤通学前の人たちの時報がわりの料理コーナーという地位を獲得しました。さらには、スピンアウトした書籍が、世界料理本グランプリを獲得するなど、料理上手なイケメン俳優として、日本中の人が、速水もこみちさんの魅力を改めて知るところになりました。

今回の卒業発表でも、多くの人が終了を惜しむ声を上げてくれました。一足先に、日本テレビを卒業してしまった身ですが、今回の卒業はやはり寂しい思いです。

僕がずっと番組作りをご一緒してきた速水もこみちさんは、本当に料理に真剣に向き合い続ける男です。彼ならば、永遠に「MOCO’Sキッチン」の中で新しいレシピを生み出し続けられると思っていました。8年の間、毎日レシピを作り続ける。スタッフ共々それは並大抵の努力ではなかったのではと思います。まだまだ作り続けたい。彼もそう思っていたのではないでしょうか。
どうしても時間が経つと既視感が出てきてしまいますが、アーカイブとしての価値、有用性を獲得できる可能性もあると感じています。

彼が心の底から料理を愛し、料理を作り続けられる男だからこそ視聴者の支持を得られたと思いますし、8時少し前に「MOCO’Sキッチン」を見てからじゃないと、1日が始まらないというファンを生んだのだと思っています。

「MOCO’Sキッチン」は「ZIP!」においても大変重要な役割を担っていました。朝の番組で料理コーナーを作るのは、ある意味革命的なチャレンジであり、コンテンツだったと思っていました。またそれは、ショート動画の魅力とソーシャル時代に合致して広がった、最も早い成功パターンではなかったかと考えています。

「MOCO’Sキッチン」は、僕が「ZIP!」を作るときに進めようと考えていた「メディアデザイン」(コンテンツを中心にメディアを横断してその魅力を隅々までに届ける)という文脈で、より一層の広がりを持てなかったことは少し残念です。

テレビ番組というのは「成功フォーマット」を模索していくものです。
そのチャレンジの中で、視聴者に受け入れられるコンテンツが生まれます。ただ、そうやって完成形のフォーマットを生み出したら、それを継続する苦しみも生まれます。ですから、成功フォーマットというマンネリズムをどう打破し、新たな広がりを持ち続けられるのか? ということにテレビ制作者はいつも心を砕いているものです。今のスタッフもそれに対して真摯に戦ってきたのだと思います。

「MOCO’Sキッチン」はそうした広がりの可能性を多分に持っていたコンテンツであり、速水もこみちという稀代のキャラクターを通じて、もっともっと様々な展開を発信し続けてもらえたらな、と感じています。

視聴者が求めていたのは「MOCO’Sキッチン」の成功フォーマット、つまりコンテンツの根源的な価値である、イケメンのルックスと毎日1品の美しいカラフルな料理。朝の気分を上げて一日をスタートできる、という豊かさでした。
もちろんそこには、「オリーブオイルかけすぎ」とか、「材料費いくらかかってんだろう」とか、「塩、打点高っ」とか、「ご家庭にあるローストビーフを……って家にはないわ!」というツッコミが多数あったことは事実です。そしてそれがソーシャル時代において、ツイッターを中心にコンテンツを通じての視聴者のコミュニケーションを生んでいった。そのコミュニケーションの魅力、ソーシャル茶の間の時代にとても寄り添ったコンテンツになっていったのではないでしょうか。

ドラマ以外のテレビ番組は、終わりぎわが儚いものです。しかしポジティブに捉えれば、俳優であり、料理人であり、クリエイターでもある速水もこみちの新しいステージへの挑戦が見られる可能性が広がったということでしょう。
「MOCO’Sキッチン」という枠を超えて、速水もこみちという本気で料理を愛する稀有なキャラクターが作った料理が、我々の口に実際に入るようなイベントに参加してみたり、目の前で包丁を振るう姿が見られるようになることを楽しみに待ちたいです。

僕も友人として新しいチャレンジに参加できないか。それなりにアイデアを持っているので、近々、もこみちくんとじっくりテーブルを囲んでみようかと思っています。

8年間、本当にお疲れ様でした。

#MOCO ’Sキッチン #ZIP ! #MOCO ’Sキッチン終了 #速水もこみち #三枝孝臣

コンテンツプロデューサーの三枝孝臣です。メディアの現在と未来を僕なりの視点で語ります。ベンチャー企業経営者としての日々についても綴って行きます。