ワクチン保管庫をwebカメラで監視するのはダサい!？
こんな記事がありました。
ワクチン保管庫、温度異常はメールで自動連絡…ウェブカメラ監視システム導入
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210611-OYT1T50100/
内容は、ワクチン保管庫の温度計をwebカメラで監視して温度異常を監視して異常が起きた時にはメールで通知するというものです。最近温度異常が発生してワクチンがxxx回分廃棄になったなどのニュースが多発しているのでその防止対策の1つですね。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210301-OYT1T50202/
この温度監視のニュースに対してネットでは以下のような反応が多く見られました。（多少文章は変えています。）
・PDFファイルを印刷して捺印してスキャンしてメールで送る日本が考えそう。
・爆笑した。
・デジタル機器をアナログで使っているw
・これはあり得ない。IT後進国日本。
ITネイティブな人たちから見るとさぞおかしく見えるのでしょうね。
でもこれは本当に笑ってしまうようなおかしな対策なのでしょうか？
温度監視をするには
この記事を嘲笑っている人が指摘するのは、保管庫にデジタル温度計があるんだからその信号を飛ばせばいいとか、ネットに繋げば一発とかそういう類のものです。
でも想像してみてください。あなたの自宅にある体温計、37.5℃以上を計測したらメール飛ばすなりLINEに通知するなりする機能追加できますか？
最初からそういった機能を持つ体温計を作るのは簡単です。おそらく保管庫メーカーであれば外部に温度異常を通知する機能を持った製品を作ることは可能でしょう。
でもすでに外部通信機能を持たない製品として完成しているものに外部通信機能を追加するのは容易ではありません。
外部通信機能を持った保管庫を新たに用意しろというのは簡単ですが、この非常事態で全てのワクチンを保管する病院に、すでに通信はできない保管庫はあるのに、そのような機能を持った保管庫を新しく調達することは優先されるとは思えません。
また既存の保管庫に外部通信機能を追加するには、とても簡単に書いても以下の手順が必要になります。もちろん製品の改造になるので保管庫の保冷機能に影響がないとは言い切れません。
1. 保管庫の温度データの形式を調べる
2. 保管庫の基盤を改造して外部通信の機構を追加（そもそも基盤に追加のI/Oをつなぐ端子があるとは限らない）
3. 無線でデータを飛ばす機器の取り付け、もしくは信号配線工事
4. データを受信するコントローラーを用意もしくは既存の中央監視装置に接続しシステム連携する
5. 動作テスト
まずこんなリスキーなことしないですよね。
また無線の温度センサーを保管庫に設置して温度データを飛ばすということも考えられます。しかしマイナス70℃で正常に動作し、保管庫の中においても十分な強度の電波で温度データを送信できるセンサーが保管庫の数だけ確保できるでしょうか。調べてないですが、そんなセンサーは少なく見積もっても1つ数万円はします。
コロナ禍での対策としては最適解では？
もちろん最初から外部通信できる保管庫でしっかりと監視機能を実装し温度管理も自動でできればそれがいいでしょう。しかしご存知の通り、ワクチンの供給、接種は短い時間の中で医療関係者が必死になって対応しているものであり、かつこれは一過性のものです。ワクチンの接種はおそらくインフルエンザのように毎年続いていくでしょうが、今の状態のような数ヶ月で国民全員にワクチンを打つような対策を実施することはありません。
そのような状態における対策は、
・既存の機器にできる限り影響を与えず
・単純なシステムで短時間で構築でき
・撤去も容易に行える
ことが求められます。
そう考えるとこのwebカメラの監視はとても有用ではないでしょうか。
お金と時間が十分あればどうぞ素晴らしいシステムを作ってくださいという感じですが。
このwebカメラシステムの費用予測
このwebカメラシステム、コスト的には監視する保管庫が10台と仮定して、
webカメラ：数千円 x 10台
webカメラの電源＋通信配線：数万円〜数十万円
データまとめてメール送るシステム：製品で数万円〜数十万円
くらいじゃないでしょうか。構築の人工もほとんどないでしょうし。無線センサーの調達費用よりも安く構築できると予想されます。
まとめ
一見するとおかしな対策のように見えてしまいますが、時間的、人的、お金的なコストやコロナという事情を総合的に判断すれば全然おかしくありません。
嘲笑う前にちょっとそんな事情に思いを馳せてもらえると嬉しいです。
まぁこのIoT時代、どんな機器にもちょっとした追加部品などで外部監視できるようになって欲しいですけどね。使うか使わないかは置いておいて。
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