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【県社協シリーズ】No.14

【県社協シリーズ】No.14 父子世帯の実態

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昭和4 4 年度
県社協シリーズNo.14
父子世帯の実態
民生委員の社会福祉モニター活動による
徳島県社会福祉協議会
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発刊にあたりて
昨年県下の民生(児童)委員が寝たきり老人の実態調査をして大きい成果を
あげた。ことしは同じ社会福祉モニクーとしての立場で父子家庭の実態を調ペることを決めて苦労のあげく結果がまとまったわけである。
最近の変ほうする社会の中で父子家庭の実情が昔と違ったニュアンスをもつ
ようになったのもこの”まとめII の中にうかがわれ,生活の安定ができている
はずの父子家庭が案外低所待ラインにあることも知らされた。
また子どもがのぞむものは,やはり岳親の愛情とわかると,今後のわたしたちの活動の分野が幅広い人間形成の上にもウエイトが置かれることも考えさせられる。
とにかく鈷子家庭と違った感覚で,父親と子どもを,どのように指導し面倒をみてゆくかが今後の大きな課題といわねはならない。
このまとめた調査結果をなるべく多くの人にみて戴き,その立場で力強い協
カ体になってほしいと願うものである。
昭和4 5 年1 月1 0 日
徳島県社会福祉協議会
事務局長町禰一
-1-
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父子世帯実態調査の結果
I 調査のねらい
父子世帯に対する福祉施策は,過去何ら援護の手がさしのべられていない
現状にあった。
一般に母親がいなくても父親がいるということは,経済的には恵まれている
と考えられ.また対策のきめてがないために見逃されてきたのかもしれない
が,家庭に母親のいないということは,じつvc 味けなく,淋しいものであろ
う。子どもや老人の世話は十分になされないであろうし,健康管理や家庭教
育のうえでも大きな欠陥を生じていると思われる。
そこで昭和4 4 年度の民生委員社会福祉モ=ター活動としては,本県にお
ける父子世帯の実態を明らか匠し,今後こうした欠損世帯の福祉対策を向上
するための資料としたいと考えた。
:r 調査の対象
県下市町村の「父子世帯」を対象とした。
ここでいう父子世帯とは, 1 8 オ未満の子どもと父親または祖父母などが
住居を共にし,家計を1 つにしている世帯をいう。
これは母親がいない1 8 オ未濶の子どものある世帯ということになる。
m 調査の時期
昭和4 4 年9 月1 日~ 3 0 日の1 か月間とした。
w 調査の方法
(1) 調査員は,本県1, 5 6 3 名の民生委員とした。
(2) 民生委員が担当地域の父子世帯を訪問し,父親またはこれに変わる者に
面接質問のうえ調査票に記入した。
(3) 調査は無記名方式とした。
V 調査の結果
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父子世帯の実態
(1) 父子世帯と世帯主の年令
市町村名
世帯主の年令
市町村名
世帯主の年令
20~ 30~ 40~ 5昌計20~ 30~ 40~ 5昌計
2 兌オ5 刃― 4 吋2 兌才3 兌才4 冴
徳島市1 1 7 27 16 61 板野町2 4 1 7
鳴門市2 , 5 16 上板町1 3 4 8 16
小松島市1 3 , 6 19 吉野町1 4 4 3 1 2
阿南市7 1 0 4 21 土成町1 1 6 8
勝浦町 2 8 3 13 市場町 5 4 3 12
上勝町2 1 3 阿波町2 5 2 ,
佐飼内村1 2 2 5 鴨島町1 6 2 ,
石井町1 3 4 川島町2 3 5
神山町1 8 1 0 6 25 山川町1 5 3 ,
那賀川町5 1 6 美郷村1 1 2 41
羽ノ浦町4 1 5 木屋平村1 1 1 3
鷲敷町 1 1 脇 町 3 5 2 10
相生町1 1 美馬町2 5 4 1 1
上那賀町2 3 1 6 半田町1 1 3 5 1 0
木沢村2 3 5 貞光町2 3 5
木頭村 .z) 1 4 一宇村 5 1 6
由岐町5 4 2 , 穴吹町5 1 6
日和佐町1 I 1 2 三野町2 4 6
牟岐町1 2 6 , 三好町3 1 3 7
海南町3 2 4 , 池田町 3 13 18 34
海部町1 1 2 山城町1 3 6 2 12
宍喰町2 2 井川町3 3 7 13
松茂町2 1 1 4 三加茂町1 4 3 8
北島町2 1 1 4 東祖谷山村6 1 3 1 0
藍住町1 5 6 西祖谷且村1 5 8 14
市町村別
, 101 207 1 71 488
2% 21% 42% 35% 1 0 0%
-3-
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図1. 父子世帯の世帯主の年令
488 世帯
ニ50 オ以上ご\
55%'
県下の母子世帯は推計7, 0 0 0 世帯といわれる。
三一」
これ(疋比較して父子世帯が県下に4 8 8 世帯というのは,余りにも少な
すぎる。これは民生委員の調査が十分に徹底して行なわれなかったので
はないかとも思われるが,—-応父子世帯の対象を, 1 8 オ未満の子ども
-4 -
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のある世帯と限定して調査し,また母子世帯と違って,.再婚するケース
も多いので当然であろうが,それにしても4 8 8 世帯では余りにも少な
すぎるような感がする。
徳島県の昭和4 4 年1 0 月1 日現在の推計人口は, 8 0 3, 9 2 2 人,世
帯数は2 0 3,6 1 D 世帯となっているが.父子世帯は約4, 2 ~- D 世帯に
1 世帯の割合であることになる。郡市別にみてみると,三好郡.勝浦郡
に多く,市部は他町村に比べて非常に少なくなっている。
父子世帯の世帯主の年令は区l(1) の通りであるが,働きざかりの4 0~
4 9 オに一番多く42% を占めているが.これは成長する子どもの関係
で再婚がむつかしい年令と思われ.次いで5 0 オ以上VC35%,30~
3 9 オに2 1 %となっている。2 0~2 9 オに2 % (9 世帯)あるが,
これは事情が許すなれば.早くよい母親を迎えてもらいたいものだと思
う。
(2) 世帯主の職業
(3i
農業1 4 6 (3 0)
事務・販売などのつとめ2 7 (5)
工員4 4 (9)
商工業などの自営2 7 (5)
労働者・日雇1 7 5 (3 6)
その他6 9 (1 5)
圭ロT' 488(100%)
1 世帯あたり1 か月の収入
20,000 円以下1 1 4 (2 3)
20,000~39,000 円2 2 9 (4 7)
40,000~59,000 円7 1 (1 5)
6 0,0 0 0~79,000 円1 5 (3)
8 0, 0 0 0 円以上8 (2)
不定。不明5 1 (1 0)
計488(100%)
世帯主(父親)の職業は労働者,農業従事者が多く,全体の約7 割を
占めている。事務系統の会社員とかエ員は案外少なく,また商工業など
の自営業者も少ないのに注目をしたい。
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図2. 世帯主の平均月収
世帯主の収入を調べてみると, 2 万円から4 万までの者が約半数の
4 7 %を占め, 4 万円以上の収入がある者は2 0 %しかなく,特に最近
の物価高の折,いわゆる安定した生活ができると思われる, 6 万円以上
の収入のある者は,たった5% であることは,父子世帯は大部分が低所
得世帯といえよう。
収入が2 万円以下である者が23%, また収入不安定である者が1 0
佑もあり,母子世帯と同様陀,いやそれ以上匠きびしい毎日の生活に追
われているのが父子世帯の実態であることを特に注目したいと思う。
-6-"
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(1)
(2)
配偶老(妻)はどうなったか。
なぜ父子世帯になったか。
妻の死亡1 3 4 8
(7 1)
妻と離婚9 6 (2 O)
妻と別居1 9 (4)
妻の家出1 9 (4)
その他6 (1)
計4 8 8 (100%)
父子世帯となってどれくらいになるか。
1 年 未 ;、lが呵七 8 7 (1 8)
1 4 年1 8 3 (3 8)
5 , 年1 3 6 (2 7)
1 0 年以上8 2 (1 7)
計4 8 8 (100%)
II なぜ父子世帯になったか// II 奥さんはどうされましたかII と聘ぺて
みると,妻の死亡が一番多く7 1 %.次に妻と離婚が20% となってい
る。妻の死亡とか離婚が多いのは当然であるが,最近は複雑な人間関係
とか夫の出稼ぎ,妻の出稼などから夫婦間に問題を起して妻と別居,妻
の家出が多くなっているといわれるか,時代の進展,消費革命の影孵が
父子家庭を今後はますます多くつくり出すのではなかろうか。
また,妻かいなくなってから5 年以内であるというのが多く全体の
56% を占めており, 1 0 年以上というのは1 7 %であった。これは母
子家庭と違って父親は再婚する機会は多いものと考えられる。
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父子家庭の子ども
(1) 父子世帯の家族構成
世帯人員
父子世帯数
その他合計
平均世帯人員
子 ど も
男女計人人人
4 8 8 世帯人人人
523 478 1,001 671 1,672 3.4
(6 0) (4 0) (100%)
(2) 子どもの状況
—-8 -
総数未就学児小学生中学生高校生就業者
人人人人人人
1, 0 0 1 70 278 272 137 244
(100%) (7) (28) (27) (14) (24)
家族構成を調べてみると平均世帯人員は3.4 人で子どもが6 割,その
他老人などが4 割の構成となっている。
ところで,この子どもの年令であるが,すでに就職して手のかからない
子どもが2 4 %あり,また自主活動ができる高校生が1 4 %あった。
しかし問題となるのは,未就学の幼児が7% と,現在小学校,中学校
へ通っており,子どもの養育,家庭教育に一番力を入れなければならな
い子どもが半数以上の5 5 %もあることは注目すべきである。
両親が健在であっても,現在の子ども教育は多くの問題をかかえている
にもかかわらず,まして母親のいない家庭にあっては,子どもをとりま
く環境は非常に不しあわせであり,きびしいものがあると考えなければ
ならない。
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(3) 未就学の子どもをどうしてんヽるか。
保育所にあずけている
親せきに面倒をみてもらっている
近所の人に面倒をみてもらっている
その他

図3. 未就学の子どもの世話
近所の人が世話する
未就学のいわゆる6 オ以下の子どもをどうしているだろうか。
親せきの者が世話をするのが23 tf;.保育所へあずけているのが27%
で半数を占めている。ところが”その他II 4 7 %となっており,これは
親せきにも.近所の人にもあずけることかできず,また近所に保育所が
ないとかで.これもできないで多分自分自身で直接世話をするとか、家
族の老人などがその世話をしているのではなかろうか。全体の4 割の家
庭には,父と子以外に家族がいるようであるが,もしもこれが父親直接
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に子どもの世話をしなけれはならない世帯で,これがため匠十分なる収
入が得られないとか,また父親が病気になった場合などを考えると,一
時的に児童養護施設へ入所させるとかの方法を検討しなければならず,
この「その他」4 7 %の実態を調査し,民生委員の指導を強化しなけれ
ばならない。
(4) 母親がいなくなって,子どもの性格が変わったか。
変わらない
暗くなった
乱暴になった
明るくなった
1 0 0 %) I
母親かいなくなって,父子世帯となって子どもの性格はどうなったか
”変わらない//73% と大部分の者が答えている。
れは父親の教育がよいのか,家族間のいたわりが強化されて,子どもの
を調べてみたが,
性格は以前と変わりがないのかしれないが皇もっとこまかく調査すると
鈷親がいない程,淋しいものはないと思われる。従って性格は次第忙暗
くなり, 2 1 %が前よりも暗〈なったと答えている。
反対に”明るくなった//と答えた2 %の父親は立訊だと思う。
(5) 子どもがいま何を一番望んているか。
母親の愛情が欲しい2 5 1 (5 1)
よい社会人になりたい1 0 4 (2 1)
父親の健康7 6 (1 6)
明るい家庭2 8 (6)
その他2 9 (6)
I
言i· 4 8 8 (100%)
-10-
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図4. 子どもの希望
子どもがいま何を一番希望しているかを調べてみた。
これは直接陀子どもから答を聞くべきであるが.この調資は父親もしく
は家族の者の代弁した場合が多いと思われる。
もず第一匠”母親がいて欲しかった,1 //母親の愛情が欲しい//とすぺ
ての者が答えるであろうが,ここでは何か1 つを答えてもらった関係で
「母森の愛惰jは5 1 伶にとどまっている。
次侭母親がいなくても”ょい社会人になりたい// //よく勉強してりっ
ばな社会人になりたい//と2 1 %が答え,母親がいたいので特に”お父
さん頑張ってねII II お父さん体して気をつけて長生きしてね//と答えたの
か1 6 %であった。
この外忙は”明るい家庭妬しよう// 6% などとなっており,なかには父
親の再婚を子どもから希望している者も若干あったようである。
ー1 1 -
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  1. 夕食はどうしているか
    (世帯主)がつくる2 4 4 (5 0)
    もがつくる1 4 1 (2 9)
    きの者かつくる4 3 (9)
    の人がつくる4 (1)
    7 (1)
    他(外食など) 4 9 (1 0)
    計4 8 8 (1001>) I
    夕食をどうしているだろうか。父親もしくは世帝主がつくっているのが
    50%. もう子どもが大ぎくなってつくっているのが2 9 %.税せきの者
    がつくるのが9 %.となっている。
    お手伝いさんを雇ってつくってもらう世帝は非常妃少なく1 茄.外食など
    をしている世帯は1 0 %であるが.ともかくも父子•世帯の夕食は淋しい味
    けないものであろうと思われる。

再婚をするか
再婚をする(1 3)
再婚したいが相手がいない(2 5)
(3 6)
再婚しない1 2 5 (2 6)
計4 8 8 (100%)
ー1 2-
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区5. 父親の再婚
再婚する
再婚しない
261,
父子家庭は,母子家庭に比べて再婚はしやすいと考えたが,いろいると
問題がある。まず”子どものことを考えると再婚はできない//と3 6 %が
答え.”再婚をしたいが相手がいないII と2 5 %が答えている。これは子
どもがいるために,成長する子どものことを考えると再婚ができないし.
また再婚をしたいが条件がなかなかむつかしくて再婚できないと訴えてい
る者が半数以上の6 1 %占めていることになる。
もう年もいっているし再婚の希望は全然ないといいきっているのは2 6 茄,
再婚すると元気のある父親は1 3 %であるが,ぜひとも家庭には母親がい
て欲しい。
子どもたちともよく話し合い,子どもの養育と教育をするために,よい母
親を向える努力はしてもらいたいと思うし,また子どもが成長すれば,老
後のしあわせのためにも,父親の再婚は実行してもらいたいものである。
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父子世帯の父親が特に希望すること
子どもがりっばな社会人しこなること1 1 5 (2 3)
家族の健坂8 7 (1 8)
母親の愛情2 6 (5)
子どもの家庭教育7 6 (1 6)
その他1 8 4 (3 8)
計4 8 8 (100%)
母親のいない父親の願いは,とうしても子どもの成長と将来のことであ
る。よく勉強をして,よい就職ができることを2 3 %が希望し,また家庭
妬茶ける子ども教育をよくしたいと1 6 %が答え,子どもの健康と家庭全
員が健康であることを1 8 %が希望している。子どもが明る<,すこやか
匹成長することは親の願いであるが,特匠毎親のいない欠損家庭にあって
は,愛情の欠如と健康管理が一番心配なことであろうと思われる。
VI 父子世帯の福祉対策暇後の日本の社会福祉は,父親を失なった職争未亡人,戦災て両親にはぐれた孤児などを中心にして諸施策か万蒋ぜられ,孤児は児童養護施設iこ収容し,限争未亡人は未亡人会活動を基磐にして母子福祉法が制定されるまで匠進展しているが,この父子世帯忙ついては,なんら援護の手がさしのぺられていなかったものである。
これは父子世帯の数が少なく,その実態も明らかにされていなかったし,また父親は経済力もあり,再婚も可能であると考えられたためであろうが,今回民生委員の社会福祉モニター活動として実態調査を実施した結果は,その数こそ少いが,多くのむつかしい問題をはらんでいることが明らか匹された。
子どもの養育と家庭教育の立場で考えると,母親は父親よりもその果す役割は大きく,欠損家庭としては母子家庭よりもウエイトを大きくしてこの父子家庭対策を今後は推進しなければならないと思う。
そのためには,父子家庭の実態をもう少し堀り下げて調査する必要がある。喘特に母親が
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いない家庭の子どもの諸問題をこまかく追求調査を行ない,子どもの養育
と人間教育にどのような欠陥があるかを明確にしなければならないと思う。
また父子家庭は再婚の機会もあるのでその実数を常妬把据して姦くため,
少くとも隔年に1 回はこうした実態調査を実施したいものである。
2. 母子家庭は未亡人会が組織されて,適切なる組織活動が行なわれている。
父子世帯の組織化は非常にむつかしいと考えられるが,父親の生活と意見
を交換する場はぜひ必要であると考える。
3. 父子世帯VC 対する法的な援護対策を考える必要がある。これは単独で母
子福祉法のようなものはむつかしいと思われるが,父子世帯を準母子世帯
と拡大解釈して,現在の他の法律,制度の中で援護するような働きかけが
必要でなかろうか。
4. 社協活動の中では,当然父子世帯は欠損世帯であり,福祉に欠ける人た
ちであるから.暖かい地域ぐるみの援護活動を推進すぺきである。
再婚できるのであれば再婚の相手を捜し,特に子どもの問題を中心にして
明るい家庭つくり妬協力すべきである。
今後民生委員のしあわせを高める運動の選定世帯として大きくとりあげ,
父子世帯のネ苗祉向上IfC 具体的な運動を展開すべきである。
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