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【県社協シリーズ】第一集

【県社協シリーズ】第一集 明るく住みよい地域社会の建設

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県社協シリーズ第一集
明るく住みよい地域社会の建設
★市町村社協活動は如何にあるべきか
★脱皮する小池地域社会の福祉事業
1958
徳島県社会福祉協議會



●第2表紙●
まえがき
市町村に社会福祉協議会が設立されて、かれこれ六年近くになります。この間関係者の努力で着々その 成果を収めつあることを深く感謝致しております。
然し、市町村の合併等で改組中のものや、いまだ活動を今後に期待するものも少くないようで、本書は市町村社会福祉協議会の活動を指導者の方々に充分納得していたゞき今後一層活発な運営をお願いするための資料としてつくつたものです。
勿論完全なものではなく、どこまでも市町村社会福祉協議会が実際活動を展開してゆくための一資料に過ぎません、この資料が今後の社協活動の上に少しでもお役にたてば、誠に幸とするところであります。
なお本書を書くにあたって、牧賢一氏の『社会福祉協議会読本』、全社協の木村副会長、並に厚生省佐野事務官の講話より借用したものが多いことをお断りすると共に、謹みて三氏に対し感謝したいと思います。
昭和三十三年十月
徳島県社会福祉協議会



☆当面する地域社協活動の課題
一、社協活動の方向
1、上から下へと組織作りを指導していること。
社協活動が、今后どのような方向へ進むかについては、社協は過去 において何をしてきたかを省みることによつて、明らかにすること ができる。
昭和二十六年に全社協が生れたが、その活動内容を検討してみると 三団体の業務を引きついだものが多く、現実には三団体統合(日本 社会事業協会,同胞援護会、日本民生委員連盟)の感が深いまた全 社協を構成する理事、評議員中にも、必ずしも社協の在り方につい て統一した考えを持っているとはいえず、おそらく各人各様に解釈 しているのではないかと考える筋がある。現在もまだその各自の要 求が多く持ち出されており、結成当時の姿が残っているのではなか ろうか。
昭和二十七年には、全国の都道府県社協が結成され、現在は市町村 社協の結成と育成をやかましく呼びかけている。
本当の社協は、地域住民の民主的な組織化された小地域の社協がま ず結成され、続いて市町村社協、県社協、全社協へと結成されなけ ればならないのに、現在は上から下への組織作りを指導しているこ とである。
2、社協活動の最も大きな課題は、民主的な組織化にある。 社協活動の最も大きな課題は、地域の民主的な組織化であるといわ
れてきた。
しかも『組織』ということについては、ありとあらゆる機会にとり あげられ、繰返して主張されてきたことであるが、ふり返ってみる
と、市町村社協の具体的に進めるべき地域の組織化については、余 り掘り下げて検討されていなかったように思う。 その現れが住民からいろいろの要求があるにもかわらず、あまり
住民の核心にふれることが出来ず、毎年ありきたりの行動がくり返
されたり、しなければならないことが沢山あるが、自分一人ではど
うにもなくないという声がでたり、又一方『こんな仕事なら役場の一 職員がやるべきでないか』など、せっかくの努力の実績にミソをつ けられてしまうような結果がでたりしたと思われる。 形だけの組織、役員会が年一回~二回開かれただけで、あとは年中
行事で終っている市町村社協に問題があると思われる。
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☆社協活動の問題点
一、社協の法制化について
市町村社協の現状は、市町村の財政再建のために引しめを行ってい るので、社協に専任職員をおく経費さえ補助してくれない。 その必要性を市町村当局で認めても現実に支出できない事情を打開す る手段としてまず社協の法制化がのぞましい。たとえ法制化が早急に むづかしいとしても、せめて市町村社協の重要性を認めさせるために 次官通牒なり、市町村条例設定なりの手が打てないだらうかという意 見が多い。
法制化の利点としては、結成並びに育成が促進され、社会的信用が 出来るだろうが悪い点としては、社協活動はあくまで民間の社会福祉 活動であり、その自主制が失われはしないだろうか。又どの法律で規 定するのか、現在の都道府県社協は社会福祉事業法で共同募金会と関 連して設置することになつているが、市町村社協はその活動があらゆ る面に発展して行われるべきもので、その範囲も、厚生省全般と、農 協関係で農林省、文務省等に関係しており、なか〜立法化は難しい のではないかと厚生省では考えているようだ。社協はあくまで民間の 自主的な組織化であり、社会福祉審議会でも、立法化を検討している が時期早々でないかとの意見もあるようだ。
このことはなか難しい問題で、地域社協の将来を考えると、関 係諸団体、一般住民の世論と、行政機関、政府の充分な理解の上で動 く社協をつくるために、何かの施策を講ぜられたいものと思う。
二、補助金の交付について
社協活動を助長するために、前堀木厚生大臣は、昨年末国会へ予算 獲得の働きかけをしたが成立しなかつた。
本年度に入り、鉄道弘済会等から約三千万円の資金を、国民の健康 と福祉を高める運動として支出されることになったが、社協活動に予 算の少いことは周知の通りで、何かと資金獲得に努力している。 国並に県より補助金が交付されるとよいが、現在は貸付費金関係のみ 一 で一般社協活動にも交付されるべきである。 2
然し、社協自体の考えからすれば、社協は自主的な民間団体であり 一 その活動も当然民間の社会福祉活動である。従って補助条件を余りに も厳格にして活動を制約しないような補助金が交付されるよう、特に 厚生省の配慮が望ましい。又そのような補助金が交付されるよう世論 を起すべきである。
市町村社協の経費は、共同募金と構成員からの会費をもつて充てら れるべき性質のものであるが、その活動は町村の福祉を増進し、住み よい環境をつくることを目的としているものであるから、結局町村の 行政目的と一致し、これを助長する役割をも果たすものであるから。 分担金は勿論、補助金、委託金等を出すべきである。
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三、共同募金との関係について
共同募金始められてから十二年になるが、最近住民の声を聞くと強 制割当だとか、微收令書を出さない税金の一種だと云われている。極 端な町村では町の予算の中にこの割当額を組み込んでいるところさ あると聞く。共同募金が現状のまでゆくと、これ以上発展すること は勿論ないし、次第に消えゆく老兵と同じでなかろうか――という意 見さへある。
全国的に現在行われている一般募金を調べてみると、三月=緑の羽 根、五月|児童福祉月間(カーネション等) 五月=白い羽根日赤募金 六、七月=慰霊祭、九月老人の福祉月間、十月共同募金、十二月 年末たすけ合い運動、この外にもPTAとか村祭だとか全く募金々 々で年中追い立てられ、民生委員,部落会長、婦人会長は毎日の如く 募金の御手伝ばかりさせられている。このような一般募金はなるべく 止めて、共同募金一本にしようと、この共同募金が始められたのである。
ところがこの共募が難しくなつていることは、共募は勿論社協にも 問題がある。社協の行事はすべて共募の啓蒙宣伝活動であるべきであ るか、共募と事務局が一本になつていないところは、現実にはこの活 動が出来ていないところもある。
共募と社協とは『田島と作物の関係』にあるもので当然一本となる べきではなかろうか。従って共募の行きずまり解消は、地域社協活動 の活発化以外にはないと思われる。
共募は社会が負担して、社会が使用するものであり、与える性格の ものでなく、自分達の村や町を明るく住みよいものにする募金だとい う理解を深めなければならない。共同募金の募金額に限異が来ている とは考えられない。共同募金を行うについての理解が限界に達してい 一 るのである。
これを解消するのは、地域社協活動以外にはない。
市町村社会福祉協議会の組織構成
市区町村の小地域社会福祉協議会は、どのような人たちが組織し構 成するのか、『社会福祉協議会組織の基本要領』では一般論として。 『社会福祉協議会は、公私社会福祉事業施設及び団体、関係の官公庁 部踝代表者、民生委員、保護司等のほか政治、経済、教育、文化、労 働、報道等社会福祉に関係のある団体や機関の代表、社会福祉に関心 をもつもの、学識経験者等広く専門家と非専門家、各方面のものをもつて構成されるべきものである。』としるしてある。
一、社会福祉協議会組織上の第一の特徴
社会福祉事業法第七十四条第二項において『関係行政庁の職員は、 協議会またはその連合会の役員となることができる。たいし役員の総 数の五分の一を越えてはならない』とし、公私責任分離の主旨から同
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法第五条において、一般には関係行政機関の職員が民間社会事業関係 の役員になることを禁じているのに対し、特に社会福祉協議会の場合 にはこれを認めている。協議会自体は民間団体でありながら公務員の 立ち場にあるものが、民間人と一緒に参加し組織するのが第一の特徴 である。
二、社会福祉協議会組織上の第二の特徴
公私社会福祉事業の関係者だけでなく、間接的にでも社会福祉の増 進ということにつながりをもつような団体の代表者たちが参加すると いうことである。婦人会、青年団その他こういった団体や組織の代表 者、または個人として社会福祉に関心を寄せるもの、学識経験者等が 参加して組織することである。
要するに広く社会福祉の専門家も非専門家——しろうとも参加する ことである。これをいいかえると、結局一つの市町村における住民の 各階各層の人たちの社会福祉に関する利害を代表し、意見を代弁する 立ち場の者が集って、社会福祉協議会を組織し、構成することにな る。これが第二の特徴である。
三、社会福祉協議会の性格
市町村社協は自主的な民間組織であるが、その会員には公私両方の 関係者を含み、更に社会福祉事業以外の関係者も包含して組織するこ とは前述の通りであるが、この場合、それらの機関や団体や組織を代 表する者たちは、いずれもその背景としている公私集団、もしくは組 織体の意志を代弁する立ち場にあることはいうまでもない。
従って、もし従来の常識的な考え方をもってすれば、社協の会議なり活動において、これらの人たちは常に個人的な自由な言動は許され ず、ことに重要な責任のある事項については、その組体の意向をまと めてからでないと発言できないということになる。ところが、それで は出てくるものが窮屈であるし、又社協自体が働けなくなるのではな それにはどうしたらよいか
いかと心配される。
1、社協は、法律的な議決機関ではなく、相互に話し合い、意見を交 え、常識的にも納得できるであららと思われるような、最もよい考
えをまとめてゆく場所である。
従って会員は、それぞれ代表する組織体の利益を主張したり、擁睦 したりするための場所ではないと考えなければならない。
2、代表者はその背景とする組織体の利害を代弁したり、主張するた めの代表者ではなく、それぞれ組織体の事情を他のものに深く理解 4 せしめ、又協議会の話し合いの様子をその組織休に伝えて理解せし める伝達役であると考えなければならない。
四、社会福祉協議会における
民生委員の立場
『社会福祉協議会組織の基本要領』はその第十二項に『小さい地域の 協議会組織に当たっては民生委員とその組織が中核となり、将来民生 委員はこの社会福祉協議会を通じて自主的奉仕活動を強力に推進して いくことが期待されると述べている。
いうまでもなく民生委員は、その地域に長く居住してそこの事情に 精通し、しかも人格識見共に高まいな、衆望を荷なつた指導者である。没我奉仕の精神に貫かれ、愛人救援の情熱に燃えて社会福祉の仕
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事に長く挺身をして来られた民生委員は、わが国の現在の段障におい ては、社会福祉の率仕家であると共に専門家である。
従って、これまで長い間の経験と精進とによつて社会福祉と技術を 身についている民生委員は、専門家としての資格において社会福祉社 協議会の指導者となり、活動力となることが当然期待されるわけで ある。
ところが社会福祉協議会の仕事は、従来各市町村にあつた民生事業 後援会の仕事に一見きわめて類似している。しかし従来多くの民生事 業後援会の主旨は、民生委員のなすべき仕事を他の有力者たちが後援 し協力することであり、それによって民生委員の、あるいは民生委員 を主とした集団としての福祉事業を行うことにあった。従って一般市 町村民は社会福祉事業に対する後援者立ち場にあった。これに対し社 会福祉協議会は、一般市町村民自身の組織であり、地域全体の市町村 民自身の福祉増進を図ることを目的としている。何も民生委員の仕事 のためにとか、要保護者のためにとかいった第三者的立場で考えたり 行ったりする主旨ではない。そこでは民生委員はむしろ一般市町村民 とその協議会に対する指導者であり協力者なのである。現在の段階に おける実際はそこまで行っていないとしても、少なくとも主旨とし建 て前とするところはこのように全然逆である。
以上のように、民生委生委員に期待される重要な立ち場は、民生委 員の肩書をもっているからというのではなく、実質中核たるにふさわ しい値うちをもっていることである。
従って民生委員が中核ということは、何も必ずしも協議会の会長や その他のはなやかな役名をもつて表面に立つことを意味しない。若し そのような役名を他の者に与えることにより協議会がうまく行くと考えられるなろ、民生委員はそのような設計を裏です、め、自分は陰にかくれた縁の下の力もちで甘んずるところに中核たるの本領がある。 どこまでも社会福祉を推進することを眼目として、その真の原動力と しての役割を果たすところに、民生委員が社協の中核たる真意がある ものである。
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構成分子の名称は例示である
斜線は社協と関係する部分 (社会福祉に関係ある活動)
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市町村社会福祉協議会規約(準則)
(名称及び事務所)
第一条 この会は何町村社会福祉協議会と称し、事務所を何町村役場内におく。
(目的)
第二条 この会は共同社会における隣保協助の念をたかめ、町村の実
情を機宜に即した援護を行うとともに、社会福祉事業の振興をはかり、民政安定に寄与することを目的とする。
(事業)
第三条 この会は目的達成のため左の事業を行う。
一、生活相談並に生活困窮者の法外援及び自立助長
二、公的福祉事業に対する協力
三、経済保護及び指導
四、環境衛生の改善及び医療保護
五、児童保護
六、教化指導及び社会事業教育の滲透
七、各種の調査及び相談
八、その他社会福祉のために必要な事務の実施
(会 員)
第四条 この会はその地域内における町村代表者、議会議員代表者,
社会福祉施設及び団の代表者ならびに民生委員学識経験者、そ の他経済、文化機関代表者ならびにこの会の趣旨に賛同する個人をもつて組織する。
(役員)
第五条 この会には次の役員をおく
会長
一名
(目的)
副会長 理事
二名
一〇名 (ないし十五名)
監事
二名
評議員
若干名
第六条 会長、副会長は評議員会において選任する。
会長はこの会を代表し、会務を総理する。
副会長は会長を助け、会長事故あるときはその職務を代理する フ 第七条 理事及び監事は評議員の互選とする。理事は理事会を組織し 一
て会務に当る。
監事は会務を監査する。
第八条 評議員は第四条の会員たる各種機関及び団体施設の代表者、
その他特に評議員会で選定したものをこれにあてる。
第九条 役員の任期は二年とする。
但し、再任を妨げない。
補欠によつて選任した役員の任期は前任者の残任期間とする。 役員の任期満了後であっても後任者の就任するまではその期間職務を行ものとする。
第十条 評議員会は左の事項について議決する。
一、才入才出予算に関する事項
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二、決算の認定に関する事項
三、事業計画に関する事項
四、規約の変更に関する事項
五、資産並に基財産処分に関する事項 六、その他会長が必要と認めた事
(会議)
第十一条 会議は会長が召集しその議長となる。 第十二条 会議は半数以上の出席によって成立する。
議事は出席者の過半数によつて決し、可否同数のときは議長の
決する所による。
第十三条 この会に職員をおくことが出来る。
職員は会長が任免する。
(経費)
第十四条 この会の経費は共同募金の配分及び町村分担金、町村委託 金、会費その他の資金をもつてあてる。
第十五条 この会の会計年度は毎年四月一日に始まり、翌年三月三十
一日に終る。
(補則)
第十六条 この会の事業及び予算決算は、これを会員に周知せしめな
ければならない。
(附則)
この規約は昭和年月日から施行する。
社会福祉協議会の運営
一、よい指導者を得ること
社協は衆意を集めて運営される民主的組織であるから、特定の個人 の力ではなく、みんなの協力で動かしてゆくべきのものであることは いうまでもないが、それにはやはり誰か中心になり、何かと世話をや き、起るべき障害を除いて、順調な発展の途をつけてゆくような指導 者が必要である。
この指導者は二種類にわかれる。
第一は会長とか理事とかいつた立場で、内部的には全体をとりまと め、円満な協力体制を保ちながら対外的には熱意ある接衝に当り、社
協発展の大方向を導いてゆく、いわば政治力をもった指導者である。
第二は社協の常務を担当し、市町村内の諸般の事情に通じ、よく解 決を要する問題をつかみ対策の原案を企画し、幹部指導者に適切な意 見を進言し、また絶えず関係者間の理解を深め、市町村民の啓発に努 めるといったような推進指導者あるいは幹部職員ともいうべき指導者 である。
市町村社協はこの二つの立場の適格な指導者を得て、しかも両者が 意気相通じ、完全な協力が行われるときこそ、始めて順調な発展を期 することができる。
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二、上手な会議をもつこと
社協活動は、理解と納得による協力と、自主的な行動意欲とをもり 上げてゆくためには、どうしても役員会、委員会、総会とか研究会等 のいろな会議や会合を開く必要がある。又これらの会議は度々開 かなければならないし、その会議をもたなければどうしても指導者の 独走になり、独裁となりやすい。そこで祉協活動の成否は、その会議 の効果いかんによつて決定するといつても過言でない。
会議もまた一つの仕事であるから、無計画、無準備、思いつきでは 成功するはずがない。上手な会議をもつことは、それ自体一つの専門的な技術といつてもよい位で、社協指導者はこのことに十分な注意と 研究を必要とする。適当な会場で、十分な計画と準備がなされ、よい指導すなわち進行 が行われ、出席者の全員がそれく討議し、相談できる会議が開かれるよう企画すべきである。
三、記録と報告
社協活動を発展させ、成長させるためには、そのあらゆる動きにつ いて記録をとっておくことが非常に助けになる。これは大変めんどう な仕事であるけれども、だれか責任を決みておいて是非とも実行する ことが必要である。その記録を適時検討し、研究することによつて、 過ぎた経験を反省し、同じ失敗をくり返えすひだをふせぎ、更に建設
的な新しいみちを見出すことができるのである。 記録は単なる日誌でなく、会議についても具体的なその内容を記録 しておきたい。又報告についても、どんな会合、どんな結果をその関係者並びに一 一 般大衆に十分理解してもらうために必要であり、この報告が社協活動 のより発展への道へ導くものとならなければならない。
市町村社会福祉協議会の財政
市町村社協が活発な活動をするためには、当然経費が必要である。 仕事はしたいが金がないというのが、どこの社協でも悩みの種である その経費をどこに求めるかを考えてみよう。
一、金がなくてもできる仕事もあるということ。 社会福祉の仕事は、必ずしも経費を要するものばかりとは限らない 社会福祉の仕事は広範囲にわたるものであるから、人々のもの考え 方、心のもち方で、いろの実践活動が考えられる。
庭に咲く一輪の花、不用になった一枚の古着、一わんの食糧、一時 間の労力奉仕等、住民の分に応じた拠出があるならば、もつとよい仕 事ができるであろう。
例えば、一年間の毎月の行事表を作り、これこれの活動を全町村, 全戸で実行しようというふうに暦式に配列し、計画的な運動を推進し てみることも一方法である。
子供による清掃運動、日光ぼし運動、時間を守る運動、公有物愛護
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運動、迷信打碳運動、敬老運動と考えてみるといくらでもあると思う まず、何かをしてみてよい結果をあげてみせて、社協とはそのよう によいことをするものかという理解をひろめるときに、やがて必要な 経費は集まるようになる。
二、必要な仕事のために、必要な金は 必ずできるということ。
何か一つ仕事をしようとする場合、その仕事が町村民の福祉のため になり、関係者が是非それを実行しようという強い決意をもち、町村 民も理解をもつてくれるようになると、必要な経費は必ず生み出され るものである。
◎鳴門市里浦小学校の六年生は、理科の勉強でカやハエをどうすれば なくするかを先生に数えられた。そこで子供会で、自分達の町、里 浦はどうだろうか考えてみた。カやハエは多くいる。そこでもつと 専門的な話を聞きたいと、鳴門保健所の技師を呼んでいろ~と話 を聞いた。カやハエをなくするには、下水、便所等、カやハエがわ くところを薬品で消毒しようということになり、市長にこの経費を 出してくれるようにお願いした。然し予算が少いということで、出 してくれない。そこでこの問題を帰って父母に話し、PTAもこん な大きな仕事は子供達だけでなく、町全体でやるべきだと、市長に 交渉の上、四万円を支出してもらい、カやハエのいない町にと立ち上つている。
又婦人会からも貸衣裳代として貯蓄したお金一万二千円を出して協 力している。
◎埼玉県の某社協では、全村で廃品回收運動を行って、古新聞紙、あきかん、あきびん、古ぎれを集め、約四万円の収入を得た。 また農繁期託児所設置のため、各戸から一握りのモチ米と小豆の寄 附を求める運動をおこし、これでおしるをつくり学校の運動会で売 り出して一万円余の收益をあげた。
◎長野県の某村社協では、婦人会と青年団とが中心となり、二年にわ たって『緑の週間』の植林作業を村当局から踏け負って、その得た 貸銀十万余円を各部落の児童遊園設置費に当てた。
◎徳島県社協でも、本年度内に『希望の鎧』を市内緑地帯に高サ三十 米の鉄塔の上で鳴らし午后入時『子供は早く家に帰って寝ませう』 と呼びかける設備費二百万円、徳島新聞社の協力を得て、全国の知 名の士から書画の揮どうを求め、又東郷青児、鈴木信太郎氏の画家 より絵を製作費代だけで求め展示即売し、その利純からこの経費を 作らうとしている。
三、共同募金の配分を受けること。 市町村社協は、今後ます発展しなければならない恒久的な組織 であり、一時的な不定收入だけでなく、一定の固定した恒久的財源が なければ困る。これには毎年行われる共同募金の配分を受けることである。
従来共同募金は、毎年県の共同募金会から各市町村の募金の目標額 が示され、それを集めて募金会に提出し、募金額は主として民間社会 福祉施設あるいは団体に配分されている。ところが町村では、この拠 出した金が一部の都会地や、町村の社会福祉事業に使われて、自分たちの町村には何の役にもならないではないかという不満が多い。勿論理解の乏しいことから出た不平不満であるに違いないが、この町村から出た仕事に失敗したり、病気になったり、不運不幸に陥って
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結局それらの施設団体のやつかいになっている者が多いことを考える べきである。
ればならない。
しかし、そういうことがわかっても、共同募金は強制割当とか税金と同じだとか文句をいいなから出した金、出させられた金の全部がよ そに行ってしまうのではおもしろくないという感情が残るのは自然で ある。
そこで、今まで市町村が募金した額の二~三割小募金手数料とか募 金費といった意味でその市町村に返されている。これを還元配分など と呼んで、市町村役場、民生委員協議会、共同募金分会等へ還付され ていたと思う。そこで市町村社協ができれば、この社協は、その市町 村の福祉を増連するため働くものであり、又市町村全体を代表した形 でつくられた組織なのであるから、そこへ共同募金で集めた金の何割 かを配分すれば、事実その市町村の福祉のために直接役立てることが できるし、筋も理屈もすっきりして不平や不満も解消できるというこ とになる。
又徳島県では、目標募金額をオーバーして拠出した場合、そのオー バーした額は全額その市町村へ配分されることになっているので、強 力な組織をもつ社協は、共募が目標額以上に集り、その金が全額社協 活動に使えるわけで、益々共募と社協が発展して行くことになる。 四、市町村から公費の支出が当然受けられること。
市町村社協は公私の合体組織であることはすでに述べた通りである 従って市町村役場は当然構成分子の一員であるべさはずである。又市 町村の行う公的社会福祉活動は、それ自体では完全な目的達成は不可 館であり、常に民間私的の福祉活動の協力補てんがなければならない。 そうだとすると、市町村社協の必要な経費は、何かの形で市町村当局が支出し分担することは当然であり、また合理的であるといわなければならない。
ところが市町村社協は市町村当局の命令監督を受けるところのいわ ゆる『公の支配に属する』組織でなく、純民間団体であるから、憲法 第八十九条の『公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体 の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教 育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供して はならない』という条項は、市町村費を社協に支出する場合にもやは り抵触すると考えられる。このような憲法の条項は今日の日本の実情 ことに社会福祉事業に対しては、はなはだ実際的でないということは 各方面でわかっていながら、憲法がある以上どうにも仕方がない。
そこで県社協でも、県は『社協に対し、補助金を交付することは不一 可である』と解し、その代り会費とか分担金とか、あるいは事業委託 費とかいろの名目によって、県社協に公表による協力を事実上行 一 っているのが実情である。なかには補助金とか交付金を出していると ころもある。
そこで現在、いずれの市町村でもその社協に対し、何等かの名目で 公費支出をしているのであるが、それか当然できるという根拠は、
(一)『社会福祉協議会に対する公金支出について』
通ちよう(昭和二七年十月三十日厚生省社乙第一五〇号厚生省社会 局長名、各都道府県知事宛)
(二)『小地域社会福祉協議会組織の整備について」
通ちよう(昭和二七年五月二日厚生省社乙第七七号厚生省社会局長 名、各都道府県知事宛)を参照されたい。
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五、町村社会福祉協議会の予算の実例
町村社協の才入才出経費の予算は、その社協の発達段階に応じてま
ちまちであり、町村の場合少ないものでは年額三、四万円のものから多いところでは三、四〇万円、例外的には百万円を越しているところもある。大体に云って年額十万円から二十万円位までの予算をもって
いるのが標準のようである。
その実例として、高知市小高地区社協の昭和三十三年度の予算を掲げておきます。
地区社会福祉協議会の予算の実例
高知市小高地区社協の昭和33年度予算
歳入の部
款項 本年度予算額 前年度予算額 增減(△印減) 說明
円 円 円
1.会費收入 地区社協会費收入
2.事業收入 30,000 24,000 6,000 各種事業收入
3. 金 共同募金配分金及び交付金 30,600 28,998 1,602
市社協交付金 7,600円
水泳補導所 7,000円
共募配分金 15,000円
共券取扱費 1,000円
4.寄附金 35,000 36,500 △ 1,500
水泳監視寄附 5,000円
年末同情金 30,000円
5.雜收入 6,500 3,580 2,920
予金利子その他 500円
過年度收入 6,000円
6.繰越金 4,300 8,720 △ 4,420
歳入合計 106,400 101,793 4,602
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歳出の部
款項 本年度予算額 前年度予算額 増減 說明
円 円 円
1,事務費 15,400 16,000 400 △600
(1)会議費 2,400 2,000 400 1回200円 12回分
(2)諸給 6,000 3,000 3,000 書記手当 1ヶ月 500円 10ヶ月分
(3) 消耗品費 3,000 2,000 1,000 諸用紙その他
(4) 通信費 1,000 1,000
(5) 雜費 3,000 8,000 △ 5,000 諸雑費
2,事業費 89,000 82,000 7,000
(1)調查広報費 5,000 4,000 1,000 社協便り発行
(2) 水泳補導費 12,000 12,000 水泳監視人手当その他
(3) 年末同情費 20,000 18,000 2,000
(4)組織活動費
(5)研 修 費 6,000 6,000
研修諸費 (6) 民生委員活動費 6,000 6,000 会議費 3,000 研修費 3,000
(7) 保育協力費 (8) 婦人児童対策費 7,000 10,000 △ 3,000 婦人児童対策諸費
(9)社会教育対策諸費 7,000 10,000 A 3,000 社会教化対策諸費
(10)慰霊祭費
(11) 敬老 費 4,000 8,000 △ 4,000 敬老会諸費
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(12) 法外援護費 20,000 10,000 10,000 準要保世帯貸付金
(13)雜 費 1,000 1,000 諸雑費
(14)民生児童委員部会費 3,000 △ 3,000
(15) 共同募金協力費 1,000 0 1,000
3.雜支出金 1,000 1,000
(1)雜支出 1,000 1,000 諸雜費
4. 予備費 1,000 2,798 △ 1,798
(1 )予備費 1,000 2,798 △ 1,798
歲出合計 106,400 101,798 △ 4,602
市町村社会福祉協議会のしなければならぬ
基本的な仕事
一、必ず問題はある。
市町村社協がどんな社会福祉事業を行うにしても、まず自分たちの 市町村の中にある解決しなければならないどんな問題があるかを調査
してみる必要がある。
私たの町には問題はないのだ。またあったにしも、その問題を解決
するには、町長や町議会がするべきであって、無理に社協が横どりす
るように問題にすることはないと云われるかも知れないが、公的社会 福祉事業には能力の限界があること、現在行われている程度の社会
福祉事業で十分なのか、それがうまくいっているのか、その他に解決 し、改善をしなければならないようなことはないのか、皆の意見を聞
き、また皆で調べてみなければ今まで気がつかなかったこと、気がつ
いても平気でいたことあるいは、仕方がないとあきらめていたことが
沢山あるはずである。
二、まず調べてみることが必要だ。
このような問題はその多くが皆慣れこになっていて気がつかないの が普通であり、又かりにそれを市町村民のたれか個人として気づい
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ていたとしても、それは極少数の特別のもの個人的問題であると考 えられていたり、自分たらの市町村だけのことではなく、何処も同じ だと考えられるようなものは問題になつていない。
ところが社協活動が全然行われないために、また事実問題があつた 決問題があつた にせよ、それを解決への方向にもつてゆけないために、この多くの問 題が、問題とされない場合も非常に多いと思われる。 そこでこの問題を見出すために
1、市町村民が集って話し合うことである。
2、世論調査式に、全町民なり代表的な立場の者より問題を書いて集
めることである。
3、他町村の活動を比較対照して、自分の村の問題を見出すことである。
三、社会福祉問題地図を作る。
問題を集めた統計資料を更に一歩すめて、それらの問題や、事項 の所在とか分布の状態を示すために社会福祉問題地図をつくると、解 決の立案企画に大いに役立つことになる。
各市町村別に、そこにもつているいろな問題(老人、母子世帯 非行少年,被保護世带、保育児童、長欠児童、結核患者等)を色彩や 符号で白地図の上に描き込むと、社会福祉の問題や、その対策の現状 が一目りよう然となり、誰でも自分たちの村には必ず問題があることを気付く大きな資料となる。徳島県社協でもこの社会福祉地図を作成し、各市町村へ送付した。
市町村社会福祉協議会の具体的な事業活動
各自の市町村内にある社会福祉の問題を見付けだし、それを選択 して対策を計画立案し、そしてその実行担当者を選定する――その結 果、これは社会福祉協議会自ら実行せよ、あるいは何々の団体と共催 して実行せよ、ということに決まったものはとりも直さずその社会福 祉協議会のしなければならない具体的な事業活動すなわち仕事になるわけである。
次に市町村社協の具体的事業活動のおもなるものについて簡単に説 明してみる。十分な解説をすることはもちうん望むべくもないが、そ こから何かのヒントを得られば幸いである。
一、生活援護の仕事
社会福祉協議会がいくら美しい理想的なお題目を並べてみても、そ の市町村内に、生活の困窮に泣き、あるいは特別な不幸な問題をもつ て悩んでいる人たちが、省みられることもなく放っておかれているの では意味がない。勿論それらの人々には、福祉三法その他の法律があ りまた役場の対策もあらう。然し公的社会福祉事業がそれのみで問題 を解決し得ないことはすでに述べた通りである。だからこそ、生活 保護法の被保護者は長く被保護者であるにとどまつて、そこから自立
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更生し得ず、困窮の生存をかろうじて続けているに過ぎないし、それ だからこそいくら社会福祉の法律が新しく生まれても、依然として法 外援護の活動が必要とされているわけである。これらの人が早く普通 の一般市町村民と同じように、明るい気持で、肩を並べて生きられる ようになるためには、それを法律や規則の公的活動だけに任せておか ないで、市町村民があたたかい、心で助け、励まし、何の気がねちな く暮らせるような生活援護の仕事を社協は行わなければならない。
昨年の正月、雪の山形県のY村で起った一家六人心中の非劇は、県 社協が問題としてとりあげたことによって、全国に大きな衝撃を与え たが、厳寒のさなかというのに一家親子六人が夜具もなく、夏の蚊帖 をかむつて枕を並べて死んでいつた。それほどの窮迫を隣り近所のだ れ一人して気がつかったということにこそ、この悪劇の原因が潜んで いるのである。不必要にまで他家のことに関心をもつ農村の中で、隣 りの一家が死を求めるほどの困窮には関心をもたなかった、このような非劇は二度とくり返したくものだと云つている。
母子世帯や遺家族の援護、身体傷害者の福祉更生についても、公的 福祉事業への協力活動として活発に行うべきである。
二、老人福祉の仕事
毎年九月十五日『としよりの日』老人の福祉月間が全国的に催され るようになり、各市町村でも、敬老会、老人クラブの結成が活発に行 われるようになった。本県でも十月一日現在老人クラブは県下で五四クラブ、会員は入千 名となり昨年九月県老人クラブ連合会発足以来急速にこの老人クラブ は発展している。
現在県下には六十五才以上の老人は入万名もあり、年を重ねるに従 つて増加しついあるので、この老人の福祉と健康を高める運動を当然 市町村社協で行わなければならない。この方法として、次のようよう
な運動をすべきである。
1、老人クラブの結成並に育成 2、老今年金、敬老年金の早期実現実施
3、老人の集団検診と老人病対策
4、養老院、老人ホームの増設、有料養老院の設置
5、老人大学の開設
三、兒童福祉の仕事
昭和二十六年に大変立派な児童憲章が制定された。この児童憲章に 定められたことは、勿論政府が国家として保障すべきことである。 然し必ずしも怠慢ばかりでなしにすぐにはできないこともあるし、や一 つてもなかなかうまくゆかないこともあるにちがいない。そのような ことをほっておかないで、今すぐ私達がその気になり、力を合わせた 案外うまくゆき、子供たちを少しでも率に、立派にしてやれることが 沢山あるのではあるまいか。
子供の問題は、多くすべての人達に共通の問題がある。従って誰で もが理解し、関心と興味をもちやすい問題である。市町村社協はこの 問題をとりあげ、仕事を見つけなければならない。そのために、
1、産児調節の仕事
2、乳幼児保護の仕事
3、母親の保護の仕事
4、農繁期保育所について
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5、常設保育所について
6、児童遊園について
7、子供会、母親クラブについて
8、青少年対策について
9、長期欠席児童の対策について
等沢山の事がある。
県社協でも特に現在、子供の遊び場設置を呼びかけ、県下の各地で 続々とこの遊び場がつくられ、「子供の広場」としての看板を県社協 から送っている。又『青少年の心に灯をともす運動』として『希望の 鎧』(徳島市内に高さ三十米の鉄塔にミュジックサイレンをつける) を造り、子供が自主的に夜早く家に帰るよう、そしてこの鐘を聞く度 に、その日、その日の反省をうながし、又明日えの希望をもたす為の 仕事、或は不良化防止の運動の一端にしたいと企画し、実行に努めて いる。
四、医療及び保健衛生の仕事
生活の幸は、まず健康な肉体と快適な環境から始めて確保される。 従って医療と保健衛生の仕事は社会福祉協議会が見のがすことのでき ない重要な仕事である。県社協でも昭和三十二年度から、医療費貸付金の貸出しを行い、 病気による悩み、生活費にくい込む医療費を、低利息で、しかも五年 という長期償還で成績をあげているが、この医療については、具体的 な問題の取り扱いや計画については当然医師、保健婦、助産婦等専門 家の数示と指導を仰ぎ、その協力を得なければならないが、この専門 家の活動に非専門家である一般市町村民が協力して対策の実践に当らなければ真の医療と保健衛生の仕事はできない。 1、病気を発見する仕事
健康診断、集団検診、検便、健康相談等
2、愛窮病人の救療
貸付資金のあつせん、長期入院者の慰問入限患者家族の救援等
3、衛生的な生活環境をつくる仕事
衛生組合設立、か、はくをなくする運動、ごみ箱、便所の改善、満 掃運動等
五、生活改善の仕事
明るい暮しは合理的な生活からつくくり出さなければならない。古 い伝統と保守的な農漁村では、たくさんの不合理な生活環境が多い。 衣食住についても、生活習慣についても、特に冠婚葬祭については、 実に多くの無駄と不合理がある。
この生活改善に関する社協活動は、婦人会、青年団と協力し、時代 にめざめつある婦人や若い者達と保健、衛生、生活、児童、文化等 に関する理解を深め、自覚を高めてその福祉計画に参画してもらうと 共に一般の人達がこの婦人や青年の行動を束縛しないように、更によ き理解をもち、援助を与えるように気運をたかめる努力をしなければ ならない。
六、文化、レクリエーションの仕事
最近窮迫化しつある農漁村が自主的に立ち上るためには、又保守的なからを破って民主化されるためには、その生産を高め、生活を豊
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かにしなければならないが、そのためには、農漁村もまた都会と等しい文化の恩恵をうけ、明るい生活の楽しみをもつことが必要である。
1、新聞の購読と家族全員が読む運動
2、図書館、巡回文庫の設置
3、映画会、講演会、討論会の開催
4.相撲大会、野球大会、各種運動会を全市町村が参加してできるよ うにする。
5、老人学級、青年学級、母親学級の開設 6、社協大会、農業技術研修会等を開催する。
七、社会福祉事業施設への協力の仕事
現在の各種の社会福祉施設は、その施設経営の私有物あるいはその 独裁物ではなく、その施設の所在する地域のために、その地域の人々 が自分たちの責任によってその施設が運営されるべきだと考えられる ようになっている。従ってその施設と地域の人々は常にお互いの理解と連絡をとり合はなければならなない。
1、小中学生や、地域住民の施設見学、敵問を行い理解を深めること
2、施設出身者の適職あっせん運動
3、施設児童と地域児童の交換野球大会等の開催
4、施設の建物や設備の改善、職員の待遇改善、処遇の向上などのた
めに手伝い協力する。
八、共同募金を推進する仕事
共同募金は前述のとおり、社会福祉事業の必要な資源を集める仕事 であり運動である。従ってその経費を保証しようとする共同募金は
第三者が自分とは別の他の不幸な人達や社会福祉事業施設のためにお 金を集めて補助してやらうというような『与える』性格のものではな い。割切った云い方をすれば、市町村地域社会が、自己の福祉を高め るために必要な経費を負担し拠出することなのである。
共同募金は強制当だとか、税金と同じだとか、もうこれ以上は無理 だとか、いろいろの不平や非難がある。しかしこれは多く共同募金を 他人のためにしてやることだと思っている無理解からきている非難の ようである。募金額の限度がきているということは、何も負担する経 済力の限度がもうこれ以上は無理だということではなく、理解が限度 まできて行き詰まったということである。
一世帯当り、わずか一ヶ年にタバコの『ひかり』二、三個の代金し かならないお金を出せないという限度ではなく、要するに共同募金の一 主旨や社会福祉についての理解の限度ということである。
社協活動は全住民の意志によってその地域社会において必要な社会 福祉対策の計画をたてるのである。そしてその実行に当っては住民自 らが当然負担し、支弁する責任をもっと考えるところに共同募金が行 われるわけけである。十月の募金がきたから、民生委員や部落会長の 顔で募金をおいするというのではなく、年一回自分達の町や村を明る くするための資金を、自由な意志によって拠出されるのだという趣旨の共同募金を行うよう、社協活動は発展しなければならない。
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市町村社協と公民館との関係
市野村社協の組織及活動については、よく公民館との関係が問題に なる。既に公民館があるから似たような社協を設ける必要はないとい う反対論をもつ市町村当局者も少なくない。よく公民館はかくあるべ きものだから、こういう建てまえだから、社協は不要だというように 一般論で反対するものが多いが、大事なことはそうではなくて現実に 自分の市町村では公民館がこれこれの活動を現にやっているから協議 会はいらないだろうというのでなければ理由にならない。そしてもし その公民館が社協がやろうとしていることを申し分のない活動をして いるなら、そこに重ねて社協をつくることは確かに不要である。別に 改めて社協をつくる手数をはぶさ、公民館に『社会福祉部』のごとき 部とその企画にあたる委員会だけを新に設け、××村社会福祉協議会 という看板だけを公民館の玄関にかけて済ましているところも二、三あると聞いている。
しかしこのような公民館はきわめてまれで公民館本来の仕事すら十 分でないところが大多数であり、公民館があるから社協は不要だとい うのは、市町村の現実がそれを不必要とするほど万事うまくいってい るというのでなく、単なる反対のための反対論、やめたいための反対 論である場合が多い。
それで公民館と社協とは、その目的なり活動が同じか違うのかそれを比較してみると、
一、公民館は社会教育法に基づいて設置され、運営されているが、県社協の場合は社会福祉事業法によつて設立されている。
二、社協は直接『社会福祉の増進を図ること』を目的としているのに対し、公民館は直接には『住民の教養の向上、健康の増進情操の純化 を図る』ことを目的としており、それによつて間接的に『生活文化 の向上、社会福祉の増進に寄与する」ことをねらっている。
三、社協は市町村当局をも含めた全地域的な全員組織による民間団体 であるのに対し、公民館は市町村条令によつて直接経営する公的施設であり、公立学校と等しい。四、社協は自由な会員の協議によって運営されるのに対し、公民館は 同じく市町村の条令による『公氏館運営審議会』によって運営され しかもその審議会の委員は教育委員会の任命による公的性格をもつ た特定人に限られている。
五、社協は市町村の『地域』を活動の場として全住民大衆を対象とし ているのに対し、公民館はその事業の項に示されたとおり『施設= 建物・設備』を活動の場とし、そこに集まる住民を対象としている 以上、社会福祉協議会と公民館との差異を無理なことも承知の上で一 広明らかにしながら、両者の間に緊密な関連のあることをも暗示して きたが、解釈のしようによれば、これは一般論であり理屈たと云われ 必ずしも個々の町村の具体的な場合に当てはまる説明でないかもしれない。
要するに公民館と社協はその目的も活動も必ずしも相等しくはない しかしきわめて近似した部分が確かにあり、しかも両者は相反発し相対抗すべきでなく、それどころか相い協力するところに両者のそれぞれの目的の達成が期待され、そして両者の成功によつて市町村地域社会の完成、すなわちよき郷土の建設が可能になるのである。
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町村地区社会福祉協議会で実施すべき主な事業
一、町村地区社協の活動方針策定の基礎
1 町村地区社協は当面の事業目標をその地域の「福祉に欠ける状態」を克服する諸活動の推進におく。 2 町村地区社協はその事業、活動が地域住民の生活に直結するも
のであること。従って当面する福祉問題の対策をたてる際には、 ひろく問題に関連性のある者に協力の機会を与え、また小地域ご とに地区社協あるいはこれに準ずる「福祉活動の推進組織を結成する」などの配慮がのぞましい。
二、地域社協の主要な具体的事業
1 更生に必要な資金の貸付業務
2 共同募金運動への協力
3 歳末たすけあい運動の展開
4 生活相談事業
5 表彰(優良母子家庭、同児童福祉、老人福祉関係及び社会事業功労者など)
6 保育所並びに季節保育所の経営
7 児童遊園の運営と設置運動
8 敬老年金制度の実施
9 老人クラブの結成と運営
10 子供クラブ、母親クラブの結成
11 青少年の保護育成運動
12 地域社会調査の実施
13 地域福祉地図の作成
14 地区保健衛生組織活動
15 法外援護活動
16 水泳監視所の設置
17 同和問題の研究協議会
18 生活改善運動
19 小口社会福祉金庫設置と運営
20 要保護階層に対する慰安激励対策
21 特殊児童の福祉増進並びに援護活動
22 母子家庭援活動と後援会の育成
23 月間及び週間行事
三、町村地区社会福祉協議会月別行事予定表
月別行事予定
四月一、社協活動総合運絡会(年度頭初あたり各部会及び関
係諸団体などと実施方針についての連絡協議)
二、町づくり村づくり座談会(この月は特に世帯更生対策について)
○要保證者に家計簿の配達及び生活指導、慰問激励
○「内職副業の手引」を中心としての研究
○習会の開催
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○生活相談所の開設
○授職所の設置の必要はないか
三、日赤募金打合会
四、新入学入園児童関係懇談会(保育園、学校を中心とし
(1)不入園、不就学児童の調査及び対策
(2)長期欠席児童の調査及び対策
(3)前二項の父兄と児童委員並びに福祉教員との懇談会
(4)被保護家庭入園、入学児童に対する金品の贈呈
五、防犯座談会(警察を中心として)
六、民生児童委員協議会
五月
一、日赤募金の完遂協力
二、町づくり村づくり座談会(子供の日を中心として)
(1)山児童祭(子供を喜ばせる会等)
(2)児童福祉思想即ち児童憲章の普及徹底
(3) 子供の遊び場の設置
(4)児童文庫(巡回文庫)の設置
(5)自主的子供クラブ、日本赤十字少年団の育成指導
(6)優良青少年の表彰
(7)里親制度の普及
(8)施設や困窮家庭の慰問実施
(9)赤ちやんコンクールの実施
(10)児童文化財の寄附運動
(11)特殊児童の実態調査
(12)特殊児童福祉に対する一金製出運動
二、母の日を中心とした行事
(1)婦人福祉の徹底
(2)家族計画の指導
(3)カーネーションの売捌き(婦人会等に連絡)
(4)母親文庫の拡充
(5)母子世帯実態調査
(6)母と子の遠足又は運動会(母子バスによる慰安会)
(7)母子生活相談所開設
(8)母子家庭後援会総会
三、世带更生資金医療費貸付審査会の開催
六月一、季節保育所の開設
二、町づくり村づくり座談会(疾病対策について)
○結核対策(診断の徹底予防思想の普及徹底伝染防止方 2
策等)
○寄生虫駆除対策 (駆虫薬の配布と共同実施の指導等)
○梅雨期の衛生について
三、農繁期栄養の事前対策(母親又は婦人学級とタイアップして)
七月一、夏季衛生講話会の開催
(1)水監視所の設置
(2)鼠族昆虫駆除徹底
(3)食中毒について(リーフレット配布等)
(4)伝染病予防について(リーフレット配布等)
二、風水害対策座談会の開催(災害救助隊の整催)
三、町づくり村づくり座談会(引揚者、留守家族、身体障
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害者、遺族等の援護について)
四、世の中を明るくする運動
五、民生児童委員協議会
八月一
、盆踊納凉映画会等の開催
二、共募事前募金運動(夏祭等を利用)
三、町づくり村づくり座談会(保健衛生に関する諸調査)
○国保の運営状況はどうか
○保健婦の活動状況はどうか
○保険税の收納率と受診率はどうか ○担当療養者の関係はどうか
○住民の体位はどうか
○伝染病中どの病気が多いか又その蔓延状況はどうか
○予防注射はよく行われているか ○薬剤撒布は励行されているか
募金の目的、募金の目標の周知
募金興行の開催
四、夏休み事故防止と不良化防止対策(不良化防止パンフレット配布)
五、世带更生瓷金、医療費貸付審査会
九月一、共同募金の打合会
二、としよりの日を中心とした行事(十五日)
(1)老人世帯調査と高令者名簿の作成
(2)老人に対する無料診察
(3)老人感謝慰安演会の開催
(4)優良老人家庭の表彰
(5)老人クラブの設置促進
三、町づくり村づくり座談会(生活改善について)
(1)諸会合に時間の励行はされているか
(2)冠婚葬祭の取りきめとその改善はどうか
(3)迷信が実生活に悪影響しているか? 影響していれば
これが対策
(4)台所特に「かまど」の改善はどうか
(5)食生活の改善はどうか、着手しているか、効果はどうか
(6)農村の働く婦人の家事負担時間はどう改善されているか
(7)同和問題研究協議会の開催
四、盛祭の実施 五、世帯更生運動の反省
十月
一、共同募金目標完遂協力
募金の目的、募金の目標の周知
募金興行の開催
二、町づくり村づくり座談会(生活保護について)
○被保護人員保護率は他町村に比較してどうか ○要保護世帶要保護児童の調査は完全にできているか
○遺族、引揚者、母子世帯はどの位か ○漏給はないか
○被保護者座談会の必要はないか
○内職の斡旋副業の奨励の必要はないか
○困窮,疾病世帯の調査 ○民生児童委員協議会の開催
三、里親デー
(1)里親家庭の慰問並に慰問品の贈呈
(2)里親を囲む座談会の開催
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四、民生児童委員協議会
十一月一、引揚援護、愛の運動
(1)傷病者慰安会の開催
(2)未帰還者留守家族敗問
(3)引揚援護愛の精神昂揚パンフレット配布
二、青少年保護育成運動行事(琴察,保護司を中心として)
(1)人権擁護に関する講演会及び座談会
(2)不良化防止研究会
(3)青少年団体の育成強化
(4)「文化の日」を中心とする諸行事の連絡調整
三、町づくり村づくり座談会(栄養問題について)
○越冬昆虫の駆除
○農繁期、農閑期の食料調査
○展示会、講習会、映画会等の開催(保健所を中心として)
○リーフレット、ポスターの配布
○栄養指導(偏食児の相談、妊産婦の指導、結核患者の
ケースワーク等)
○農繁期共同炊事の必要度の調査と対策
四、世带更生资金,医療費貸付審查会
十二月
一、社会福祉週間の実施
(1)社会福祉講演会の開催
(2)社会福祉功労者の表彰及び物故功労者の慰霊
(3)施設の慰問見学
(4)困窮家庭の問
(5)部落福祉協議会の開催
(6)保育所入所該当児の調査に着手
(7)生活相談の実施
(8)要保護者の世論調査の実施
二、町づくり村づくり座談会 (実施済諸行事諸調査につい
ての反省と今後のとるべき対策研究)
三、年末防犯対策懇談会(児童委員、教員、警察官等を中
心として)
四、歳末助けあい拠出運動展開(民生委員福祉関係者等全員)
五、要保護家庭児童へのクリスマスプレゼントの贈呈 一月 一、成人の日講習会の実施(十五日)
二、町づくり村づくり座談会(新生活運動について)
○家族計画の実際について
○予算生活の指導
○貯響運動
○生活反省運動三、社会調査(村民の社会福祉に関する
意見)の実施
四、民生児童委員協議会
二月
一、町づくり村づくり座談会(児童問題について)
○問童児室の調査はどうか ○保育所入所骸当児童の調査はよいか
○児童の健全娯楽についての調査はどうか
○長欠児童の調査はどうか
○保護観察の更生状況はどうか
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○環境調査は出来ているか
○精薄児、盲聾啞児、肢体不自由児の調査はどうか 二、優良社会福祉地区の視察(明年度計画樹立参考のため)
三、世带更生資金、医療費貸付審查会
三月一、連絡調整会議の開催
A横の連絡
(1)役員会を開き新年度の計画予定樹立
(2)関係団体との計画調整
(3)町村当局との連絡(特に予算について)
B縦の連絡
(1)県、郡、市社協との計画調整 (委託事業、補助金等に ついて)
二、保育所該当児童の決定(民生、児童委員協議会開催) 三、新入園入学児童事前懇談会の開催
四、町づくり村づくり座談会(施設の運営等について)
○保育所の運営はよいか
五、次年度予算の樹立
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