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【県社協シリーズ】(育成協)Ⅱ

【県社協シリーズ】(育成協)Ⅱ 明るく健康な町づくり社会調査報告

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県社協シリーズ(育成協) Ⅱ
明る<健康な町づくり社会調査報告
小松島市坂野地区、和田島地区の診断書
財団法人保健福祉地区組織育成中央協議会
徳島県社会福祉協議会


目次
I 診断についてのあらまし・・・1
1.どんな目的で行ったか
2.坂野,和田島地区とはどんな所か
(1) 地域はどのように構成せられているか
(2) 生活と文化については
(3) 地域における教育,文化施設
(4) その他
Ⅱ 家庭福祉と所在する問題・・・3
1.家庭のもっている問題には何があるか
2.病気とか欲求に溺れることからくる問題
3.家族の人間関係の問題
4.くらしからみた福祉に問題はないか
5.現代生活からみた家庭と樅祉の問題
6.家庭の民主化からみた問題
Ⅲ 保健幅祉と所在する問題・・・8
1.どんな病気が多く,また,どの位の人が羅っているか
2.栄養からみた病気の問題
3.保健環境に問題はないか
(1) 仕事と病気の関係
(2) 保健と手についてみると
(5) 地域の人達の病気に対する関心
(4) 寄生虫と駆虫剤
4.お産と休養の問題はどうなっているか
5.お産や乳児に問題はないか
Ⅳ子供の福祉と所在する問題・・・13
1.この地域では,子供の将来にどんな望みをかけているか
2.子供の勉強はみてやれているか
3.地域の子供は大人の目にどう反映しているか
V 地域の偏祉環境と所在する問題・・・15
1.くらしの改善にどんな考えを持っているか
2.結婚改善をどうみるか
3.休養の問題をどう考えているか
4.主婦の社会活動についてはどうか
5.保健知識をどのようにして吸収しているか




VI 地域の住民がもつニードの問題・・・19
VlI この地域を明る<,健康にするための対策・・・21
1.まず,家庭の福祉を考えよう。
2.それには,各家庭の生活の実態をよく知ろう
(1) 低所得階層については
(2) 生活設計の問題については
5 .実施は,地域の誰もが,全世帯が参加できる方法で
(1) 地域における各種行事や慣行の統一と改善
(2) 食生活に無駄と不合理はないかの改善
(3) 社協服と福祉時間
(4) 金のかからぬ健全な遊びと安い金で楽しむ余暇
4.家庭福祉と人間関係は,こうして
5.家庭にも,地域にも話し合いの場を
6.みんなが健康になるためには
7.こうして,胃病を追放しよう
8.検査という科学のメスも
9.母体の保護と保健にも
10.優れている児童の対策
11.地域の福祉環境については




I 診断についてのあらまし
1.どんな目的で行ったか。
小松島市坂野,和田島地区は,保健幅祉地区育成中央協議会から推進地区として指定せられ,市及び地区社協が一
体となって各種の組織活動を推進し,優れた事蹟を挙げつつありますo 然し,地域の全住民が参加して行いますこう
した事業は,多くの場合利害関係が地域の人と直結しているだけに容易なことではありませんo 殊に本県の場合も地
域の組織活動は,上意下達式の上からの権力により他動的に行う消極的,反意志的方法で長年にわたって行われてき
ましたものですから,地域の人達は自主性と意慾を欠ぎやすく, このために従来地域社会に対する盛上りは少なかっ
たといえます。
殊に社会福祉に個人福祉を優先する考え方や,福祉といえば特定個人のために行う慈恵とみるむきもあったりし
て,地域の組織化は補助金獲得を第一義とするような見方もありました。
また,保健についても拝金主義から人命を軽視する思想が伝統的に培われてきたものですから,傷病についても軽
視されがちであったといえます。
それに地域という社会は,小さい集団でありながらいろんな幾多の問題を根強く内蔵している場所ともいえます。
そこで,その内蔵している問題に科学のメスを入れながら,地域の幅祉と健康を守ってゆく上にどんな問題が所在し
ているか,地域の人達は何を考え何を望んでいるか,この地域の幅祉と保健を増進するためにはどうすればよいかを
知ろうとしたのが,この診断だといえます。
即ち,
1.地域の保健と福祉に欠げるものはないか。あるとすればそれは何か。
2.それを充して行くためにはどうすればよいか。
5.その間に在って地域の社協は住民の間にどう受けいれられ,その関係づけはどうなっているか。
4.地域社協はどう在るべきか。
5.地域の推進力と地域との関係は現状ではどうか。どうすればよいか。
について知ろうとしたのが,この診断だといえます。
2.坂野,和田島地区とは,どんなところか。
この地区は小松島市の東端にあって,面積は7.5 平方キロの農村形態の小集団を形成していますu 北は紀伊水道に
面し,遠く和歌山,兵庫の両県を眺望のうちにおき,僅かではあるが漁業に生計を求める世帯もありますが,東は那
賀川,南は羽ノ浦町と接し,阿波の穀倉地帯の一部でもありますので,農業が多く,最近では小都市周辺の混合社会
形態に移りつつあります。
生産物は,米麦を主要生産物としますが,最近特に青胡瓜, 苺などの促成栽培が農業経営の中に大きく取入れら
れ,市場も6 大都市に及びつつあるし,筵臥の生産では名をなしていますo 漁獲はイワシ, シラス,ィカが多く,煮
干イワシの加工も盛んです。
(1) 地域の構成は次のようになっています。
職業の上からみると,
坂野地区和田島地区
-1-



なお前表中無職戸数や人口が目立っていますが,季節労務,生浩保護,内職世帯などが無職世帯の中に含まれてい
ます。
人口構成からみると
坂野地区 和田島地区
人口 人口
男 女 男 女
農業 1,075名 1,181名 661名 876名
商業 181 248 82 121
工業 75 92 192 281
サービス業 87 119 93 123
その他 338 467 117 149
無職 221 294 178 258
漁業 35 56
合計 1,983名 2,401名 1,358名 1,864名
(2) 生活と文化については,
普通生活の層が厚く
人並み以上の生活層 4.5%
人並みの生活層 68,5%
普通以下の生浩層 27.0%
それでも人並以下の生活層は27.0%あり,恵まれた生活地域ではないといえます。
層別にみた生活水準
生活を場の面からみますと,
自宅94.8% 借家3.0% その他2.2%
自宅が94.8 %を占めていることは,戦前よりの固定生活者の多いことを示しますが,それだけ伝統と慣行の根強さ
がうかがわれますo 住宇については荒廃,老朽度を次のように分類されます。
これでよい41.3%
まずまず今の住居で辛棒できる48.0%
このままでは困る10.7%
即ち地域の9 割までは現状で生活の維持に支障ないといえて,他の地域に比較してやや恵まれているといえます。
生活の文化内容をみますと, ミシンの所有は坂野地区では2.1 戸に1 台,和田島地区では2.2 戸に1 台だし,ラジ
オの聴取家庭は,坂野の1.8戸,和田島1.9 戸で,新聞の購読も坂野の1.7戸,和田島の1.8戸に1 戸という比率で高
い方ではないようです。電気器具などについても普及率は低く,生活文化は傾いているといった実状のようです。
然し,備貯蓄は多く,
坂野農協7,500万円
和田島農協2,000万円
子供銀行坂野小学校120万円
和田島小学校61万円
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といったように,生活の堅実さがみられます。このことは,地域の人達が生活の建設に意欲的であるということが
できます。
(3)地域における教育,文化施設
教育機関
小学校 3 中学校 1
保育所 4 公民館(学校併設) 4
医療機関
一般医 3 歯科医 1
娯楽機関
映画館 3
(4)その他
両地区とも子供会活動は極めて盛んですo 適当な指導者を得ていることもその原因ですが,環境から子供を守ろう
とする保護者の意慾は強く,親子一体となっての活動は他の地域ではみられない積極さと自主性があります。こうし
た処にこの地域における集結力の強さが認められます。
Ⅱ家庭福祉と所在する問題
1.家庭のもっている問題には何があるか。
地域の椙祉は,その地域に住んでいる人のすべてが世間一般の人並み又はそれ以上の生活ができ,
ることです。
その為には地域の基礎的な集団であるそれぞれの家庭の福祉が守られなければなりませんo 然し,現代の生活は大
きな社会集団である地域においても,小さな家庭集団においても,なんといってもやりにくくなりました。
というのも,集団内における人間関係が複雖になり,親子,兄妹といった近親者の間においても,調整に人並み以
上の苦労がいるようになったし,一方又生活文化の水準が一気に向上しましたが,それも人間が裸のままの欲求を充
してゆこうとするものですから,仕計費は加速度的に増加して, くらしは良くなったが金足らずといった現象さえみ
られて,人並みの幸梱な生活をしてゆくことが困難になってきました。その上,幸福とか不幸とかいっても,その人
の主観によってきまることであって,その人その人が持っている欲求や背景的な条件によってもちがってきます。
従って,地域内住民の各家庭が幸幅であるかどうかを知るためには
(1) 家庭内の家族関係に福祉を阻害しているものはないか。
(2) 現代社会における人間的欲求がどの程度充されているか。
(3) そうした家庭生活を営んでゆくだけの経済的な裏付けが確保できているか。
(4) 家庭生活を破壊しやすい病気などの要因はどうか。
の因子が必要であります。そこでこの因子によって地域の人に自分で自分の家庭を診断してもらいました。
次表がそれです。
診断項目 地区別構成比
板野地区 和田島地区
1.普通以上のくらし 3.7% 2.6%
2.くらしは普通以上だが福祉に欠けるもの 1.2 1.1
3.普通のくらし 51.2 67.7
4.くらしは普通だが幅祉に欠げるもの 14.4 7.4
5.普通以下のくらし 21.5 16.9
6.普通以下のくらしで非常に福祉に欠げるもの 8.0 4.7
(備考 回答数 坂野地区340世帯, 和田島地区189世帯)
-3-



この診断によって2 つのことが教えられます。その1 つは生活そのものは普通又はそれ以上であっても,家定の福
祉という面では欠げるものの案外多いということです。第2 は生浩は人並み以下であっても梱祉に欠げると思ってい
ない者が多いということです。
従って,地域の社脇が住民各戸の福祉を考える場合,経済や地位,構えだけで尺度をあてることは誤りであって,
それぞれの欠げると思われる梱祉を充して行くことが必要で,そのためには各家庭について充分知ることが大切にな
ります。この両地区住民の希望意見の中にも,社協は住民の実態を知り,その上に立って活動せよという声も多くみ
られます。
そこでどういう梱祉に欠げているか,またその比重はどうなっているかというと(次表1 参照)
両地区共に50%以上収入不足による生計困難が占めています。勿論牧入不足には,適職がない,適職があっても能力
がたりない,充分収入をあげているが収入が·だいつかない,生活設計とか生活技術の不足などいろんな条件はあると
思いますが,地域の福祉のためには,地域内の各家睦が普通以上の生活が出来るだけの収入増加,生活設計の指導が
必要であることは事実です。
2.病気とか欲求に溺れることからくる問題
その点では,病気は収入の減少と支出の増加を来しますから,たとえ幼小な家族の1 人に病人があっても,経済的
にも精神的にも家庭の椙祉をこわします。その点地域の福祉活動の中で病気のもつ要素は多いといえます。さらにこ
の両地区では,病気以上に比重の重いものに飲酒の問題が共に25%以上の数値を示しています。現代人は裸の人間で
ありたがり,巧利性の強さを持って,欲求に溺れやすく, このために家庭の幅祉が破壊せられる場合が沢山ありま
す。酒好きの家族がいるということによって,家庭経済が脅かされ,かつ,家族関係に不調整をつくり出ま所に問題
があるといえます。このことは,地域福祉は些細なと思われることについても疎外してはならないということになり
ます。
3.家族の人間関係の問題
老人と若者,夫婦,小姑,かかり人,子供の問題など,どの家庭にも人間関係を困難にするような要素は沢山あり
ます。どちらかというと現代の生活では家庭経済の問題よりも福祉の面では比重が高いといえます。それであり乍ら
地域福祉の活動とは何だか無関係でもあるかのように取扱われてきたものですが, このことは夫婦喧嘩の1 つにも福
祉活動の接点はあるといえます。
1 つの問題は更に新らしい問題を生み,全体の福祉を破壊するo 貧乏と病気,それに犯罪は幅祉を破壊する3 つの
巨人とせられてきたように, くらしに困るとぐちの1 つも出るから家族の人間関係も悪くなるo 気分が悪いと仕事に
精も出ないから収入が減る。収入が減って手元が悪くなると栄養も悪くなるし,身体の無理もするから病気になりや
すいといったように,常に悪循環します。そのことは何かの問題を持つ家庭は次々に新らしい問題を持って行きま
す。このことは逆に1 つの福祉を阻害する問題を除去したら,多くの問題を予防したことになります。ー善は社会善
に通ずるといえますo 社協は何からでもよい実行することです。
表1 家庭がもつ問題とその比重
所在する問題の内容 地区別問題び構成比
板野地区 和田島地区
1.老人と若い者の仲がうまくゆかない 26.0% 22.5%
2.夫婦の不仲 10.7 7.3
5 .家庭内に病人がある 20.5 25.0
4.小姑が多すぎる 15.8 5.0
5.義理の仲の家族がいる 0.7 10.0
6.収入不足による生計困難 53.6 57.0
7.酒好きの家族がいる 25.6 27.1
8.子供のことでいざこざがある 17.9 11.0
9.悪い遊びをする家族がある 0.5 5.0
10.隣近所との不仲 0.1 0.3
11.その他 − 0.3
(1以上問題を持つ世帯があるので, トータルは 100 以上となる。)
-4-



4.くらしからみた福祉に問題はないか。
くらしの困難が家庭福祉の大きな障害であることは前述の通りですが, この両地区では,どんな理由でくらしの困
難を招いているかを調べたのが表2 です。
表2 生計困難の原因別指数
1.生計中心者の収入不足 49.3%
2.主婦の収入不足 27.8
3.労働力の乏しい多子 35.7
4.生計中心者又は家族の傷病 44.9
5.生活費の増加 28.5
6.義務教育以上の教育費 12.8
回答者140名の全員があげているのが,生計中心者又は家族の収入不足であります。この点では政治的に或は社会
政策的な何等かの施策を必要としますし, 25%がその理由として政治が悪いと答えています。
消極的ではありますが,地域社協活動の中に,主婦に対する内職絵旋,多子対策についての対策が望まれるし,傷
病対策についての施策の緊急性が認められますo 社協と交通事故防止といえば何だか無緑のようですが,傷病対策か
らみれば大きな椙祉活動であって,地域社協が事業に困るということは実行の無力性を偽装するようなものだといえ
るでしょう。
次に収入対策の必要と同時に収入に仕活を適応させて行くための生活設計や生活技術も幅祉活動の領域から除外で
きませんo 家計の予算化,家計簿の使用はそのために意義を持ちます。そこで家計は記録せられ,計画のもとに運用
せられているか,また,家計の担当は家庭内で誰が当っているかをみてみたのが次表の3及び4です。
表3 家計は家族のうち誰が担当しているか。
主人 主婦 おばあさん おじいさん 息子 嫁 わからない
坂野地区 37.5% 48.4% 8.4% 3.1% 0.1% 1.6% -%
和田島地区 26.1 57.7 9.7 3.3 1.1 1.1 1.0
表4 家計簿をつけいてるか。
つけているもの 大きな支出だけつけるもの 全々つけないもの わからない
坂野地区 53.2% 26.5% 18.2% 2.1%
和田島地区 48.7 18.8 32.5 -
家庭の民主化が促進せられるに従って家計の担当者が家長の座から生計中心者とか主婦に移りつつありますo 農家
の場合サラリーマン家庭とちがって牧入の不安定が伴いやすい為,家計の計画化がやや困難であり,主人の家計担当
が目立っているといえます。
家計簿については,つけているものの大部分が収入安定家庭や主婦が家計を担当しているものに多く,大きな支出
だけを記入しているのは,農家に多いのは収入の不安定に基因しているものと思われますo 全々つけていないのは,
低所得階層に多くみられますo 収入が低いとか不安定な場合, それだけ生活の適応についての思慮が必要だといえま
す。
その点,両地区とも収入不安定世帯,低所得世帯に対する働きかけが必要だといえます。特に住民ニードなどから
みても,農業者と給料生活の間に課税,生活態度などについての不融和点が認められるので,生活改善,住民話合い
の場造りに社協の新らしい方向付けが望ましいものです。
5.現代生活からみた家庭と福祉の問題
ここでは,家庭民主化及び現代の生活が地域の各家庭にどんな影轡や変化を与え,それが福祉の面からみてどのよ
うな問題を内在しているか,また,そのために地域社協はどう在るべきかについてながめてみることとします。そこ
でまづ民主化が家庭に及ぽした影署と変化ですが,
-5-



表5 家庭の民主化が家庭へどんな変化をきたしたか。
1.食物に栄養を考えるようになった.
2.生活か派手になった.
3.くらしに金が沢山必要である.
4.みなりがよくなった.
5.家庭に槻械器具がふえた.
6.外へ出ることが多い.
7.家を美くしくする.
8.木を植えたリ花をつくる.
9.子供の教育をよくする.
10.レジャーを楽しむようになった.
11.若い者が家に居つかない.
12.老人が気の毒になった.
13.家族の中が以前より冷たい.
14.変化したと思わない.
備考 黒線坂野地区(回答220), 白線和田島地区(回答311)
この表でも判るように,民主化による家庭影響はくらしに金が沢山かかるという現象を第1 に挙げることができ
ます。特に漁村社会の性格をもつ和田島地区では61 %までがそれを認めていて,股村社会の坂野地区よりも10 %以上
を上網っているのは地域社会のもつ特異性によるものでしょう。そうしてこうした生活費の非常な増加の原因として
食生活における栄養の考慮や生活全体が派手になったことがありますo 中でも服装面或は身だしなみがよくなったこ
とが目立っています。また,急速な現代化は家庭の電化や機械化ともなって現われているし,家を美化したり,草木
を愛したり,教育関心の高まりなども各家庭に根を降しつつあるといえるでしょう。
ここで地域社協の問題として考えなければならないのは, 48.6%までが認めている食物に栄養を考えるようになっ
たという,その食物の栄養化に一翼を担う必要があるということです。ややもしますと,栄養を摂ることは変った食
物を食すことであり,既製の食料品購入のふえることだと誤解されやすいことです。両地区における食生活の抽象調
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査の結果からみますと, 食料油,ソース, 乳製品などの使用よりも,板付,竹輪, かまぽこの使用が目立っていま
す。住民食生活の経済化,栄養化に1 つの役割を持つべきでしょうo 地域に多い原材料を, どのように安く栄養化す
るかの技術や知識の普及が必要だと思われるし,このことは地域家庭と社協との紐帯ともいえます。
次に住民の39.2%がレジャーを楽しむようになっているが,地域で求められるものが少ないということですo 地域
に即した遊びの創造と工夫も社協の今日的在り方といえます。
また, 17.1 %と数値の上では少ないようですが,老人が気の毒になったとか,家族の仲が以前より冷たくなったと
いう人慨関係の問題は,現象が家庭民主化の奇型児的性格を持っているだけに,椙祉の面から放任できません。こう
した人間関係への働きかけも地域社協の新課題といえます。そこでこの問題の追求に一歩深めたのが次表の6 及び7
です。
6.家庭の民主化からみた問題
表6 家庭の民主化が,主人(夫)にどのような影響を与えたか。
1.主人としていろんなことがやりにくくなった。 30.2%
2.子供の教育,就職,結婚,家族との調和や近所づきあいに気をつかうことが多くなった。 30.6%
3.いろんなことを勉強しなければならぬようになった。 16.3%
4.集りや外へ出る事が多くなり忙しくなった。 48.3%
5.支出が多くなったので,収入をはからねばならぬので苦しい。 55.5%
(備考1 人で1 問以上に答えているので,計は100 %以上になる。)
この表は,家庭の民主化により生計の中心者である家庭の主人には負担が増加したことが判ります。新しい事態に
処してゆくための勉強もそれだし,集会や外出増加による仕事の多忙もそれです。それにも増して大きいのは,もの
いりのふえた事に対する収入を満たすための責任といえるでしょう。そうした負担の上に対家庭,対社会的な精神的
負担,それも家族発言の増加により更に重くなっているようです。
表7 家庭の民主化により主婦はどう変ったか。
1.集りや外へ出ることが多い。 52.3%
2.子供の勉強に気をつかうようになった。 46.5%
3.金が多くかかるようになった。 43.5%
4.言葉づかいが良くなった。 22.0%
5.夫のことや家庭のことに発言が多くなった。 24.1%
6.夫にすなおでなくなった。 31.8%
主婦の場合をみると,ここでも集りや外へ出ることが多くなっていますが,それでも指数からみると,家庭内へ引
ごもり勝ちな主婦の多いことが判ります。子供の勉強についても,従来主婦の持つ分担は多かった訳ですが,約半数
にしか過ぎないが,関心の強まりを認められたのは価値の再認識ともいえるでしょう。また, 24%にしかすぎないが
家庭内の発言権が確立せられていますが,総体的にみて両地区の主婦の民主化はやや遅れているようです。この点社
協の地域婦人及び婦人団体との結びつきや共同企画,共同事業については,夫にすなおでなくなった問題を含めて一
歩を踏み出すべきでしょう。また,負担過重の家庭の主人本位の活動組織についても考慮するものが在っても良いと
いえます。
次に,斯うした家庭の民主化を地域の人達はどうみているかというと,両地区を通じて積極的賛成は40.8%しかな
く,少し位の民主化ならよいという消極的賛成が21.4%しかなかった現状からみて,地域社協が地域における民主主
義の取り上げ方と受入れ方を住民と共に考えてみることも必要でしょう。
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III 保健福祉と所在する問題
1.どんな病気が多く,また,どの位の人が罹っているか。
いままでに病気にかかったり,また,今病気に罹っている世帯や人数を調べたのが次の表です。
表8 罹病世帯及び罹病人員ならびに世帯の罹病率
坂野地区 和田島地区
回答世帯数 426戸 240戸
罹病世帯数 154戸 48戸
世帯の罹病率 36.6% 20.0%
罹病人員 217人 58人
日本の罹病世帯は48.1 %ですから,世帯数でも人員でも全国平均をかなり下廻っていて,両地区とも病気が多いと
はいえません。小地域別にみますと,目佐地区が39.2%で全国平均より低いが,両地区の中では目立っています。
また, 1 世帯に何人罹病者があるかというと,坂野地区では1 世帯に2 人以上の罹病者のある世帯が55戸あって,
羅病世帯の21.4%, 和田島地区でも20.6 %ありますが,小地区の中では坂野は70.5%の世帯に2 人以上の罹病者があ
って,病気が一部の世帯に集まっているようです。この点では,特に坂野地区では,罹病世帯の特別な指導が必要だ
といえるし,この地区からは保健婦の活動促進の要望が多く出ています。
どんな病気が多いかというと,
表9 どんな病気が多いか
傷病名 板野地区 和田島地区
罹病人員 成比羅病人員 構成比
胃の疾患 72名 34.1% 19名 32.7%
高血庄 30 13.8 8 13.8
神経痛 30 13.8 6 10.5
心臓 22 10.1 4 6.9
肝臓 16 7.4 5 8.6
腎臓 7 3.2 4 6.9
その他 40 17.6 12 20.6
胃,胃かいよう,胃下垂などの胃の疾患が断然光っています。両地区とも胃の病気が全部の病気の3 割以上を占め
ていて,全国傷病件数の構成比では,消化器系の疾患は17.4%ですから,両地区とも胃の病気の上に腸疾患,肝臓な
どを加えると,坂野地区では45.3%, 和田島地区では41.3%となり,全国より2 倍半以上も多いことになります。
次いでは,高血庄も多いといえます。これと反対に,この地区では呼吸器系疾患の極めて少ないことが目を引き
ます。
2.栄養からみた病気の問題
ここで病気との関連をみるために,この地区における食生活の状態を取上げてみました。(全世帯についての調査
が日時の関係で困難であった為に上,中,下の3 階層より抽出しました。)両地区共に白米食が主であって,白米彙
は1 日1 人当り3 合1 勺で,麦を混食する場合も麦の使用量はl/10程度ですo 乳製品の使用は極めて少なく,ついで
食料油の使用量もやや低いようですが,地域の地勢的な関係から魚類及び加工品の使用は多いです。そこで,この地
区は1 日にどの程度の栄養量を摂取しているか。また,それだけの栄養量で充分であるかをみたのが次の表ですo
-8-



表10 1人が1 日にどの位の栄養量をとっているか。
V·A が50lu栄養基準量を下廻っているが,これは調査において野菜の種類把握が困難であったから平均値を求め
たことによると思われるし,その他は基準量をやや上廻る伏態であった。ただ食塩の摂取量が4 倍強を上廻っている
点に特異性が認められた。
そこで,社協としてはこの地区に多い胃疾患についての掘下げと原因把握及び対策の確立が必要だと思います。そ
の方法として胃疾患のみを対象とする診療の実施,食生活の診断など考慮すべきだといえるでしょう。
3.保健環境に問題はないか。
(1) 労働量と病気の関係
現在の仕事の量がどんな影響を与えているかを開ぺてみました。坂野地区では30.9%, 和田島地区では28.3%の
世帯が現在のままでは身体にさわるとか,病気になりやすいとか,もっと栄養を取らねばならぬとみています。
表11 現在の仕事の量がどんな影響を与えているか。
坂野地区 和田島地区
このままでは病気にかかりやすい 14.0% 18.0%
このままでは身体にさわる 27.0 32.0
もっと栄養を摂るべきだ 26.0 25.0
休養がほしい 33.0 25.0
今の仕事の量のままでは病気になりやすいとか,身体への支障を国配している人は,和田島地区では回答者の半
数,坂野地区でも4 割に達していますo 然し,その原因が仕事の盪だけにあるのか, また,そこまで働かねばなら
ない生活そのものにあるのかについては,この調査では正確に捉えられていませんが,栄養とか休養の希望が共に
半数以上あるのは,ややもするとこうした面を社会教育面での取上げに委ねて地域の社会福祉活動が閑却しがちで
あったことの反省とすべきではないでしょうか。また,地域社協の活動は,形式や地域の統一におきたがるもので
すが,それとは別に住民の生活の実態を充分捉え,住民の生活の上に根を降したものでなければならないといえま
す。
-9-




表12 食事前の手洗いはどうか。
(2) 保健と手についてみると
保健と直結している手と衛生についてみてみたのが上表です。食事前に手洗いがどの位行われているかがわかり
ます。即ち,両地区共全々食事前に手を洗わないのは僅か5 %ですが,家族全体をこの問題から眺めた場合,洗っ
ている者もあったり,洗っていないものもあったりして家族全体が家族保健のため, また,生活のしつけとして行
われていないのが両地区共に20%あります。このことはいつも家族全体が洗うという数値の低さとともに,将来の
保健椙祉活動の指際とすべきでしょう。即ち,食事前手洗いの関心と習慣付けは,地域社協の目標として取上げる
べきです。
次に食事前の手洗いがこんな現状なのに照して,便所の手洗い設備はどうなっているかを次表13でみることにし
ます。
表13 便所の手洗い設備はどうか。
坂野地区 和田島地区
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共に陶器の容器に水を入れておいて,これを手洗いとする世帯が55%あることが判ります。この場合,汚染した
容器の水を1 回1 回取替えることは大変なことだけに,長期にわたり幾人もの家族が何度も用いるということにな
りますから,保健瑯境からいって適当でないといえます。
勿論家の構造や便所設備の問題もあると思われますが, この点現在の便所は保健衛生上改善の必要があるかどう
かというと,必要がないものは坂野地区で17 .7%,和田島地区では27.2%しかなく,その他は改善を計画したが,
計画通りできていない世帯とか,改善はしたいが家庭経済の関係で実現できないでいる世帯となっている。従って
現状では手洗設備にも幾多の問題はあろうと思われますも,手洗器は当面のこの地区における1 つの課題といえます。
(3) 地域の人達の病気に対する関心
ここでは地域の人達の病気に対する関心をとりあげてみます。
病気でなくても健康相談や集団検診に積極的に行くかどうかを醗べたのが表14です。
表14 病気でなくても健康相談や集団検診に子供を連れてゆくか。
坂野地区 和田島地区
連れて行って居る 44.3% 40.4%
連れて行っていない 55.8 55.5
わからない 1.9 6.3
連れて行っているのは2 地区とも40%程度で低いといえます。然し,健康相談や集団検診の機会も少なかったよ
うで,実施を望む声は住民の声の中にも多数となって現われています。保健幅祉の環境としてここにも問題の処在
はありそうですo 保健活動の行事化が必要となります。
では相談や検診を誰が提唱したかをみてみますと
坂野地区 父36.6% 母50.0%
和田島地区 父41.0 母50.0
このように両親が90 %以上を占めています。それについでは祖母という順序になっていて, 隣人, 医師, 保健
婦,その他によるものは殆んどみられませんo 保健活動や保健のPR は生計中心者やその妻を目標にすることが必
要だといえるでしょう。
それでは,罹病時における措耀をみましょう。
坂野地区 426世帯 中買薬だけでゆくもの 20戸 おき薬だけでゆくもの 25戸
和田島地区 240世帯 中買薬だけでゆくもの 13戸 おき薬だけでゆくもの 14戸
あり,願掛け,百度参り,祈祷,占いなども一部では行われていて,保健環境の近代化も要請せられています。
然し,分娩の場合は非常に改著せられ,お産はいつも軽いからというので,医師にも助産婦にもかからないもの
は坂野で3' 和田島で5 しかないことは結構なことですが,お産の前後における栄養の摂取については
表15 お産の前後には栄養に注意しているか。
板野地区 和田島地区
栄養に注意している 38.8% 45.0%
注意していない 22.4 11.0
どちらとも言えない 37.2 36.5
わからない 1.6 7.4
15表の示すように,無関心の度が高いようである。然し,回答者の中には年代の古い人が多かったので,自分の
経験による回答であって,世代の人達の間では可成り改善せられていると思えますが,若い世代に対する分娩,育▲
児への働きかけも,保健活動の大きな分野であることが判ります。
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(4) 寄生虫と駆虫剤
駆虫剤(虫下し)を服用しているかどうかで保健の関心をみてみましたo というのは,両地区共農業を主体とす
る地域構成で,駆虫剤服用が必要だといえる地域だからです。
また,大場傍示がS 26.12.21 日に170 名の検便を行っていますが, 61.8%に回虫,鞭虫,十二指腸虫が発見せら
れています。
坂野地区 和田島地区
毎月飲んでいる 7.1% 6.1%
時々飲む 53.6 70.1
飲んでいない 39.3 23.8
飲んでいない家庭が坂野地区で4 割近く,和田島地区では2 割強で,坂野地区に服用していない世帯が多くみら
れます。この点,集団検便とか駆虫剤斡旋も地域社協へ施策を要請せられているといえるでしょう。
どんな場合に多く医師にかかるかによって,保健への関心を捉えてみましたが,長くつづく激しい下痢,歯痛,
高熱,激しい腹痛といった直接身体に著しい痛みとか不快を与える場合の受診率が高く, 自覚症状に乏しいとか,
自覚症状はあっても顕著な身体的変化の伴なわない場合はなおざりにされているようですo 殊に,いらいらしてす
ぐ腹がたつとか,ねむれないことが続くなどの内面的なものに対する関心の低さがうかがえますo 病気に対する知
的開発と,早期発見,早期診療へ地域の福祉活動が積極的であることが,保健揺祉の焦点ともいえるでしょう。
4.保健と休養の問題はどうなっているかo
保健福祉に休養の必要なことは論をまちませんが,地域の人が余暇を楽しむことについてどう考えているかを見て
みました。
表16 余暇を楽しむことをどうみているか。
坂野地区 和田島地区
1.働くだけでなく,遊ぶことも必要 64.1% 68.2%
2.金のある,生活にゆとりのある人だけがやるべきだ 8.5 1.5
3.よいことだが,生活が楽でないとできない 22.7 15.7
4.よいことだが,やり方は考えた方がよい 2.1 13.1
5.そんな必要はない - 1.7
この表で判るように,積極的な賛成はそれぞれ60%以上です。このことは,保健上又は現代生活においては,余暇
を楽しむことの必要性が地域で認識されだした証拠といえますo 然し,考え方や目的には賛成であるが,家計との関
係で実行を躊躇している世帯が坂野地区で22.7%, 和田島地区で15.7%あり,方法に考慮の余地を残している世帯が
和田島の場合13.1 %あります。
地域における休養活動は,全住民が容易に参加でき,経済的で疲労を残さない楽しめるものでなければならないと
言えます。従って,地域には地方色のある独自なもので,然も行事として固定したものが欲しいものです。
5.お産や乳児に問題はないか。
まず,家族計画はどうかについて受胎調節をみますと,坂野地区では回答者の43.7%を実行していて農村としては
実行率は高いクラスにはいりますが,和田島地区の実行率は39.2%で坂野より4.5%だけ低いようです。そこで,実
行の必要があるのに実行していない坂野地区の56.3%, 和田島地区の60.8%についてその理由を調べてみますと,
1.薬や器具を買いに行くので恥かしい 29.3%
2.面倒くさい(煩らわしい) 25.1%
3.方法がわからない 17.5%
4.相手方の無理解 15.0%
5.家屋の事情 7.6%
6.金がないから 5.6%
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経済的な事由によって実行できないものは僅か5.6%で,地域的な事清もうかがえますが,購入の差恥から実行し
ていないものが3 割近く占めていたり,面倒くさいとか,方法が判らないという42.6形に対しては理解と知識の普及
が必要でしょう。この点では無理解だという15.0%の相手方のあることも含めて,家族計画の在り方,進め方につい
て保健活動に期待するものがあります。ややもしますと,福祉活動は青壮年を切離して考え勝ちですが,全住民のも
のでなければならない理由はここにもあるようです。
妊娠中絶はどのように行われているでしょうか。
坂野地区では78世帯に中絶が行われており,全回答世帯の18.3%が妊娠中絶の経験を持っていることになりますが
中絶回数からみると, 2 回が5 戸, 3 回が1 戸であって,殆んどが1 回です。和田島地区はうんと率が低く,全回答
世帯の5.4 %です。
では,流産や乳児の死亡はどうでしょう。
和田島地区では,全回答世帯の10.4%25世帯に流産がありますo 回数は1 回以上が3 世帯あるだけで,他は1 回で
す。坂野地区は8.3%と流産率は低いのですが, 2 回の流産世帯が7 戸, 5 回が1 戸と回数の頻度が高くみられま
す。
1 年未海の乳児の死亡も和田島地区が高く, この地区では全回答世帯の15.8%に1 年末満で死亡した子供がありま
す。その上, 2 人死亡世帯8 戸5 人死亡世帯1 戸がみられ, 日本の乳児死亡率は1,000人に付き40人ですから,全国
平均より4 倍も高いことになり,回答に誤りがないとすれば,この地域における保健活動の焦眉の急務にこの問題が
あるといえます。勿論,調査に時点を置いていなかった為に,その世帯における長期間の死亡を回答したもののある
ことも想像できないではありませんが,それにしても,その素因が世帯や環境に内在することもいなめないと言えま
すので,特にこの地区では,流産と乳児死亡に焦点をしぼって,原因の解明と対策の樹立を急ぎたいものです。特に
地域社協では,目に見えない現実に対しては疎外しやすいので,本質的な問題についての検討をゆるがせにできない
反省ともしたいものです。
llI 子供の福祉と処在する問題
1.この地域では子供の将来にどんな希望をかけているか。
この地域の子供の問題を捉える前に,子供達にとって最も大切な環境である親たちが子供の将来に何を期待してい
るかを調べたのが次の表17です。
表17 子供の将来にどんな願いをかけているか。
坂野地区 和田島地区
1.親孝行の人になって欲しい 28.2% 25.5%
2.人に迷惑を掛けなければよい 23.8 24.4
3.立身出世して名誉や地位のある人になれ 15.5 13.1
4.金持ちになってもらいたい 14.8 6.1
5.まじめに働く人になる 4.4 17.8
6.あまり考えない 4.4 4.2
7.子供まかせにする 8.9 8.9
備考 回答数 坂野地区 386 和田島地区 213
多くの親は自分の苦しかったことや困ったようなことは子供にさせたくないし,自分の楽しかったことや嬉しかっ
たことは子供にもさせてやりたいものです。親は子供に対して自分で出来なかった理想を実現してもらおうとする願
望を持っています。従って,親の子供にかける期待は大きく,また,親本位の巧利主義にも陥りやすいものです。
然し,戦後の教育改革や人生観の変化などは,親の子に対する希求をも変えつつあり,現に変っています。この問題
は,現代の新しい時代感覚から焦点を合わせることにしました。
戦前では80%以上を占めていた子に対する親孝行の期待は25%~28%と減少はしていますが,今もなおこの期待は
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一番多いようです。
次に,英雄主義からくる立身出世してもらいたいという数値も低くなり, 13%~15.5 %になっていて戦前との差が
みられますo 然し,金持になってもらいだいという黄金主義の児章観は, 和田島地区では6.1% と低い数値ですが,
坂野地区では14.8%もみられます。
他人に迷惑をかけねばよいとする新しい児童観も両地区ともに24%もあるし,和田島地区では,まじめに働く入で
あればよいとする勤労主義の児章観が坂野地区の4.4%に比較して13.4%も高く,両地区の児章観には差がみられま
す。
両地区とも子供に対する関心の高まったことは充分うかがえます。その点では地域の活動を子供との結びつけで行
う,例えば, 「布団千しは子供の手で」とか「食事前の手洗いは子供に負けないで」などが,この地区では効果的な
活動方式だといえるでしょう。
2.子供の勉強はみてやれているか。
ここでは,さきのように子供に対し願いをかけている親達が子供の人格の形成や陶冶に対し,どんな努力を払いつ
つあるかを,子供の勉強とか遊びなどの,所謂,子供の面倒をどうみているかをみてみました。
表18がそれです。
表18 子供の面倒はどの程度みているか
坂野地区 和田島地区
1.いつもよくみている 24.2% 8.6%
2.暇な時だけみている 31.0 37.9
3.時々はみてやる 31.0 39.9
4.みてやれない 5.1 3.2
5.子供の好きにさせてある 6.0 8.6
6.その他2.7 1.8
回答世帯数 坂野地区 355 和田島地区 220
いつもよくみてやれている世帯は,坂野地区では24.2%で農村社会では大体この程度である。適当とはいえないが
そうかといって関心度が他の地域より低いとも言えないと思います。和田島地区では僅かに8.6% しかないようで
す。職業構成や生活環境によるものも多いとは思いますが,みてやれないという世帯をも含めて何等かの対策が欲し
いものです。子供まかせといった放任世帯は両地区とも10 %以内ですが, ここにも第2 の問題の処在がみられます。
親の暇な時だけみてやるとか,全々みないのではないが時々しかみていないという世帯は断然多くて,坂野地区で
,61.0%, 和田島地区では坂野を16.8%上廻って77.8%もあります。
子供の校外指導及び余暇の普導が痛切に感じられる環境といえます。
このことについては,両地区とも子供会が非常に盛んで,その効果を挙げていることは,社協の事業の取上げ方が
必要に即したものであったといえます。ただ前記のような環境実態からみると,子供会活動の在り方も余暇善導とか
遊びでなく,教育的思慮と要素を持つことも必要だといえます。
また,名家庭で充分子供達を顧みることができない現状だけに,大人のすべてが子供のよい環境となり,子供にと
ってのよい地域環境を作り出して行く社協の活動にも期待する幾多のものがあります。
3.地域の子供達は,大人の目にどう反映しているか。
今の子供達は非常に変ったといわれます。
自分達の受けてきた教育内容と現今の教育との違いからくる教育観,処世観,人生観の相異もありますo 然し,何
れにしても地域社協が,地域の子供達が地域の大人達や家庭でどのように見られているかを知ることにしました。
この診断には,坂野地区300, 和田島地区200の回答を得ました。
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表19 今の子供を大人はどうみているか。
(該当のものにいくつも○を入れたので100 %以上)
良い面 板野地区 和田島地区
素直である 27.0% 22.0%
しっかりしている 35.0 46.0
よく勉強する 19.0 25.5
手伝いをよくする 17.3 20.5
友達がよい 15.0 13.5
悪い面 板野地区 和田島地区
理くつが多い 45.4% 45.0
素直でない 9.3 10.0
金づかいが荒い 13.6 18.5
親や大人を馬鹿にする 15.0 19.0
悪い遊びが多い 5.6 8.5
友達がわるい 0.5 0.3
いまの子供達の忘れているものに,素直さがあるとまでいわれていますが,この面では,両地区とも素直さが乏し
いとするもの10 %以下に対し, 24%以上素直であるとしています。子供っぽさに大人びた一面のあるのも,いまの子
供達といえますが,ここでも35%~46%までがしっかりしていると認めています。また,多くの地域では,交友関係
が問題にせられていますが,その友人関係でも友達が良いとみている世帯が13.5%~15.0%あるのに対し,悪いとす
るのは両に僅か0.3%であって,この点他の地域と異ってよい友人環境に在るといえますし,子供会活動の成果が大
人の安心感を助成していると思われます。
更に,子供の問題と関連して,不健全娯楽とか悪い遊びが多く,このために親や大人の防波堤的役割を要請せられ
ているし,関心の一つでもありますが,両地域共悪い遊びが多いと警戒的なのは,坂野の5.6 %と和田島の8.5%と低
いことも,子供会活動によるものともいえるでしょう。一箸は社会善に通ずるという社会福祉の鉄則が,子供会活動
に見られるといえるでしょう。
子供達が理くつっぽくなったと見ている世帯は両地区とも45%ありますが,理くつっぽいとみるか,批判的で意志
的になったとみるか世代の相異はみられますが,新しい教育の効果が浸透しつつあるともいえるでしょうし, このこ
とは深く問題として掘り下げなくともよいようですo 然し,金づかいが荒いとか親を馬鹿にするという66.1 %にみら
れる行為は,子供会活動を通じて更に棚り下げるぺきだと思われます。
一つの方法として,社協関係者と学校関係との話合いの場など施策したいものです。殊に両地区のように,子供を
かえりみる暇の少ない地域では,杜協を紐帯とし又は潤滑油として,地域全体を子供のための健全な環境とし,又,
教育の場とする活動方式も考えてみましょう。
V 地域の福祉環境と処在する問題
1.くらしの改善に対し,どんな考えを持っているか。
保健福祉にしろ,社会福祉にしろ,これを推進し実行するためには,地域の福祉的環境を作ることが必要ですo 福
祉的環境は,住民の意志とニードと実状に即して作っていかねばなりません。
そこで,この両地区の福祉環境を捉えることにしました。
先ず,地城の各種行事の統一をどう考えているかみてみます。
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表20 祭礼や正月の統一をどう考えていろか。
坂野地区 和田島地区
長い慣行を改善することは容易なことではなく,雰囲気の成熱を待つことが肝要です。そのためには,長期にわた
って住民の意志診断を行うべきです。そうした意図のもとで,祭礼と正月の統一についてどう考えているかを捉えた
のが表20 です。
坂野地区515 世帯,和田島地区214 世帯の回答を得ましたが,両地区とも住民の70%が賛成していて,不賛成とは
っきり意見を打ち出しているのは,坂野で9.1%, 和田島で11.2 %です。
不賛成の理由は,両地区を通じて「1 .行事やしきたりは尊重した方が良い」とする習慣性に根ざすものが一番多く
「2 長い間の習慣だから」と漸次改善を主張する尚早論もあります。また, 「5 .休日や行事の多いことは,仕事の能
率を高め,休養もできる」と仕事の生産性と,休養の面からの反対もあります。これを比率で比較しますと,
1.35.7% 2.20.5% 3.35.6%
となっていますが,この外に行事の統一を時代かぶれとみて,時代かぷれはよくないときめつけているものも8.2%
ありますo 統一に賛成する理由をみますと,
むだを省くため統一に賛成 62.4%
時代のなりゆきだからとするもの 14.5%
他の地域ではしているからとするもの 12.3%
仕事の必要上良い 6.2%
その他 3.4%
すすめられるから賛成するもの 1.2%
他の地城ではしているからとか,すすめられるから賛成するといった消極的なものや,意志と反する追従といったも
のは少なく,冠費節約や生活合理化の意志によるものが62 .4形,時代適応を考えるもの14.5%, 仕事の計画化から必
要とするもの6.2% といったように, 83.1 %までがその必要を認めていることは,地城の福祉活動に対して共感を呼
びやすい層の厚さを示すものといえます。
地域活動はこうした層を主軸として,他の層への小波状の働きかけが大切といえるでしょう。
2.結婚改善をどうみるか。
正月や祭礼に比べて,更に結婚の問題は身近かであり, くらしの経済に直接ひびくものだけに,いろんな面の住民
の意志把握ができるからです。
表21 結婚の改善については,どう考えているか。
坂野地区 和田島地区
改善した方が良い 70.5% 76.0%
今のままで良い 12.9 9.0
どちらでもよい 16.6 15.0
(回答数 坂野地区 295世帯,和田島地区 200世帯)
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和田島地区が5 %ほど上廼ってはいますが,両地区とも改善に賛成するものが70%以上みられ,結婚改菅に対する
意見のほどかうかがえます。そこで,一歩を進めて賛成の理由をさぐってみました。
1.従来は結婚に費用がかかり過ぎた71.0%
2.夫婦の理解と愛情があれば形式はいらない10.4%
3.金がないので質素にしなければならぬから賛成する10.3%
4.時代のなり行きだから8.0%
5.近所が改善しつつあるから0.3%
従来の悪習に対する改革的意志から出ているものが大部分を占めています。この点,地域の椙祉活動は地域の福祉
を阻害する問題を発見し,この問題の除去改著から着手することが,より住民に直結し効果的だという反省ともなり
ます。
また数値の上では1 割程度ですが,夫婦の愛清と理解を基盤にする形式不要の意見のあることは,地域の感覚にも
新しい波の寄せつつあることの認織を要請せられるものであって,指導階層は時代と共に歩き,その時代の感覚に立
って施策し,推進することの必要性を示唆しているともいえるでしょう。
金がないからとか,時代のなりゆきだからとする消極的賛成も18%みられました。
更に,賛成もしないが不賛成でもないという,所謂,どちらでもよいとする層が15.0%~16.6%ありますが,どん
な事業や活動についてもこうした層はつきものですが,地域の福祉活動でこうした層をどう持って行くかは一つの課
題といえます。社協指導者に根気が要請せられるのもこのためだといえます。
3.休養の問題をどう考えられているか。
保健と休養の問題については,一部を先きに取上げましたが,ここでは,農家における農休日,商店の定休日とい
った意味の家庭の休養日を捉えてみました。即ち,全地域に休養とか安息日又は主婦の日とか家庭の日といったもの
を設けることについて,住民はどう考えているかをみてみました。
表22 家庭に公休日をつくってはどうか。
板野地区 67.5% 家庭にも公休日があっていい 66.0% 和田島地区
13.4% 家庭にはいらない 14.0%
19.1% どちらでもよい 20.0%
(回答数 坂野地区283世帯,和田島地区200世帯)
家庭公休日の問題は,どちらかといえば新しい地域の問題に属し,県下でも実施にまで進んでいるのは一部の小地
域にしか過ぎませんo 然し,保健という立場から提唱せられつつある訳です。そこで,こうした新しい働きに対する
地域住民の関心と尺度として調べたのが前表22表です。
この表で判るように,家庭にも公休日があっていいとするのが66.0%から67.5%あり,関心と理解の深さはここに
もうかがえます。従って,不必要とする世帯も14%以下ですが,さすがにどちらとも言えないとする世帯が20%あっ
て,地域の活動においては知ること以上に知らせることの重要さがうかがえます。
そこで,必要と不必要の理由を掘り下げてみました。
必要とする理由 不必要とする理由
1.働くためには休養が必要だから35.0% 1.休んでいたら生活に困る50.0%
2.休養は仕事の能率を高める24.4 2.公休を作るほど常に働いていない21.8
3.健康を保っために必要だ22.6 3.休むと遊びに金がかかるので困る14.6
4.身の廻りの整理ができるので必要13.0 4.家族の間に反対がある3.5
5.そんなにまで働かないでよい2.4 5.その他10.1
6.その他2.6
100% 100%
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必要の理由では, 日常の仕事と休養を結びつけている考え方が60%以上を占めていて,この地域においては,現在
の職種と仕事の量からみて,休養の必要なことがうかがえますし,健康保持の見地からも22.6%が必要としていま
す。
この問題については,新しい意見として,身辺の整理ができるから必要だというのが13.0%あることです。このこ
とは,地域社協が新しい事業なり活動を取上げる場合には,地域の世帯への働きかけは勿論ですが,そのことに直接
関係のある世帯構成員との関係付けを考慮すべきだといえるでしょう。
不必要の理由の中では,生活に困るからというのが50%あり,こうした家庭経済と直結する問題については,社会
保障のそこまで行届いていない日本の現状などでは止むを得ないことでありますか,方法上考慮すべきものがあると
いえますo 方法の問題では,休むと金がかかるからというのも14.6%あり,地域に於ける休養の問題は,方法を示し
て協力を得るというやり方も必要といえます。
4.主婦の社会活動についてはどうか。
幅祉活動の一翼に主婦の社会活動があります。
その主婦の社会活動が家庭でどのように認容せられ, また,どう珪解されているかについて, 坂野地区410世帯,
和田島地区215 世帯に答えてもらったのが23表です。
表23 主婦の会合や催しものへの出席や社会活動をどうみているか。
坂野地区 和田島地区
65%前後の家庭が賛成して,主婦の社会活動,社会進出に理解の深まったことがよくわかります。
然し,和田島地区では51 形,坂野地区では18.8%の世帯が条件賛成といいますが,場合によるといっています。こ
のことは一つの反省と考えるべきでしょう。社会福祉に限らず,市町村の行政でも,また,職能活動の面でも婦人に
主体を置いた呼びかけは非常に増加し,偏重の向きさえもあります。従って,婦人としての主婦の動因領域が拡大せ
られ,当の主婦達にしても,これをどう処理して行くかに苦悩とまでいえるものがあるようだし,逆に主婦の社会活
動をセープしている面さえみられます。
即ち,場合によるという世帯の数値が高く現われたのは,こうしたことに対する反映ともいえます。その反面,地
域活動で主婦に負担してもらう分野は多いといえます。そこで,地域社脇の在り方としては,事業なり施策に当って
地域のどの階層に働きかけることが効果的であるかを分析解明する仕事の相手選びを行うことが必要だといえます。
5.保健知識をどのようにして吸収しているか。
仕事の相手方選びに関連して,保健衛生のPR 活動をどういう方法と経路で行うことが, より効果的であるか知る
ことにしてみましょう。
次表24 はそれです。
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表24 衛生についての知識はどうして吸牧したか。
(単位世帯数)
デしピ,ラジオ
講演会,座談会
学校及び学童
印雁i」物酉E布
1尿健婦の巡麺
部落団体からの通知
映画
回覧板
備考 黒線 坂野地区 白線 和田島地区
テレビ・ラジオが断然抜きんでていて,マスコミの偉大さがわかりますo 然し,ラジオ,講演会,座談会など耳か
らはいるものが効果を挙げているとも言えます。住民ニードの中にも有線放送の設備を要望する声が多くみられまし
たが,肯づけることですo 講演会,座談会では,坂野地区に比較して和田島地区の低さがみられるのは,出席率とS
関係が講師や題目の選び方によるのではないか検討すべきでしょう。
次いで多いのは,学校や学童を通じての呼びかけですo 教育の場,尊敬の場と地域の結びつきは,信憑性と安全感
及び普及性で非常に親密感があります。この点,社協活動が学校との関係付けを持つことは必要だといえます。
回覧板方式で効果的でないというのは,回覧板濫用による食中毒で, どうもただなんとなく廻すといった事務的処
理が多くなったからです。
従って,知らせるためには耳と目と足によることが必要だといえますo 地域の声の中に保健婦の活動促進が多くき
かれるのもむべなるかなと言えます。
VI 地域の住民がもつニードの問題
この地域の人達が,自分達の住んでいる地域社会をどのようにすれば幸福になり, また,どのようにすればみんな
が健康になれるかということについて, 「どう考え」, 「どうありたく思い」, 「どうして欲しがっているか」を知
ることにしました。
回答率は40%程度で,全住民の声にふれることのできなかったことは残念であったといえますが,真面目な建設的
意見の多くあったこと,おいおいこうした調査につきものである,調査を機会にして不平不満をぷちまけたり,その
意見が自己本位な身勝手に陥っていると思われるものが比較的少なかったことは, この地域の人柄が知れるといえる
ものでしょうo 意見を大きく3 つに分類しました。
保健福祉についての問題48.6% 社会福祉についての問題27.4% 社協の活動についての問題24.0%
50%までが保健福祉についての希望ですが,この地域は,昭和27年頃までは肺結核とトラコーマが多いといわれ,
また,伝染病の指定地になったこともあったようですが,その後,住民の保健関心は漸次高まりつつありましたが,
保健福祉の指定地区となってからは更に急激に関心と努力は高まり,昭和36年度では両地区を通じて20名となり,小
学校児童962名中トラコーマは発見出来なかったようです。参考までに昭和36年の伝染病の発生状況をみると,次の
通りです。
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伝染病発生の状況昭和56年度
シヨウコウ熱
ジフテリア
結核
中毒
百日咳
梅毒
備考 黒字 坂野地位,白字和田島地区
そこで保健福祉についての意見をみてみますと, 27.7 %が健康相談や巡回診療の実施を強く望んでいます。また,
保健婦の活動を望む声も可成りの数値を示していて,予防衛生に対する関らの高さと期待のほどがうかがえますし,
保健衛生についての講演会やPR による知的向上を望む声の高さに,住民の積極性がみられるといえるでしょうo 寄
生虫に対する声の余りきかれなかったことは,必要を認めないという理由からではなく,検便などが行きわたってい
ないからではないかと思われる面もあります。また,共通の問題として,保健幅祉のことを全地域の全員関心と全員
参加で実施し,効果付けようとする意図がみられます。
次に社会福祉についてみますと,道路の改修とか清掃といった全住民と直結したものが多く,各種行事の統一を取
上げた意見が15.3%あり,食改善について栄養講演や講習により,食生活の厚みを作ることにより,地域の福祉を守
って欲しいとする意見がみられたり, レクリェーションの研究,即ち,もっと地域の娯楽や余暇の共同利用,共同の
計画,それに身近かな地域で親しめる遊びを研究し,こうした面からも,地域の福祉を図って欲しいとすろ意見がみ
られる処に,この地域における幅祉活動の新方向がみられるともいえます。6 %強であるが,内職斡旋の声があると
いうことです。不安定職業階層の厚いこの地区では,こうした生活と直結する牧入増加の問題も閑却できないといえ
ます。
また近代のような人間関係の複雑な環境下では,この人間関係についての関心を高めることに,社会福祉の方向を
求める意見や奉仕精神こそ地域椙祉の基幹だとして,奉仕精神を地域住民に知らしめようとする意見も出ています。
役所に親切さを求めるとか,生活改善も社会福祉の面での取上げが望まれる事は,地域社協の活動が広い範囲にわ
たっていることからくる認識の増加からともいえるものであって,地域活動には領域と限界がないともいえます。
このことは, 24%に達する社協活動についての意見や希望によってもみることが出来ます。
社協活動についての問題では,地域の社会福祉脇議会の活動の強化を望む声は46.3%で5 割に達しています。それ
ではどのような社協活動が期待せられているかといいますと,社協は掛声だけでなく実行に徹せよとするものが50%
を上廻って強い希望として現われています。ややもしますと,地域における小社協の活動は専従者を持たないために
中核体となる役員の関心と,関心と意識は高くとも推進に経済力と労働の余力を必要とするものですから,ややもし
ますと,伝達係,掛声係に陥りやすく,従って実行力の弱さが出やすいものだといえます。従って,実行に期待する
声は一つの反省とすべきでしょう。また,役所の民主化を社協が促進せよとの声もありますが,社協が公私事業の潤
滑油的活動をすることは当然ともいえるでしょうo 幅祉講演会を都度社協が主催して住民の関心を高めよという声も
あります。このことは,住民に褪祉思想を養えという8 %の声としても表現せられています。この場合,反省すべき
はこうした声の多く出ることは,反面社協活動に非協力者が多いから,これ等のための要望ともみられますが,地域
の関心の深さは認められます。
次に,住民話合いの場を作れとか,家族話合いの場を作れとか,住民の意見を聞けという希望が20 .7%あります。
人間関係の地域における重要性がこうした声となって現われたともいえるし,社協活動における役員の独りよがりに
対する声ともいえるでしょう。福祉という仕事が住民の全部のものであればあるだけに,住民の声をきいて反省しな
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がら前進するという社協には襟度も望ましいものです。
10%までが生活改善についての社協の指導を望んでいることは,社捺活動が地域に直結しつつあるという現われと
もいえるでしょう。こうした住民の意見をすとめたのが次表です。
表24 地域の人達はこう望んでいる。
1.保健福祉についての問題 48.6%
地域別 事項 板野地区 和田島地区 主たる内容
健康相談,巡回診療の実施 28 22
保健衛生知訛の普及 14 4 講演会開催,保健広報
禦境衛生 16 12 瞑埃処理,全地域の注意換起,清描
そ族駆除 11 7 駆除剤の無料配付,地域の一齊励行
上・下水道殷備 26 5 上水道設備,排水設備
保健活動の促進 17 4 保健組合の設立,地域住民の活動促進
保健行政の推進 13 3 保健婦の活動促進,衛生行政の強化
125 57
2.社会憾祉についての問題 27.4%
各種行事の統一 11 5
道路の改善 9 9 道路改修,愛護
税の引下げ 8 5 課税に対する不平
栄養知識の普及と向上 6 4 栄養講習会開催,栄養知識のPR, 食改善
レクリェーションの研究 7 6 余暇の共同利用,娯楽設備,遊びの研究
有線放送実施 3 4
内職斡旋 3 5 内職の斡旋,指導
その他 6 15 人間関係調整,役所民主化,禁酒奨励,PR徹底 保育料引下げ,生活改善,生活保護の適正
3.社協活動についての問題24.0%
社協活動の強化 26 12 実行に徹せよ,役所の民主化促進,福祉講演会開催
住民話合いの場を作れ 14 3 住民の意見を多くきけ,住民との話合いを考慮せよ,家族話合いの場を作れ
家庭の実状を把握せよ 7 4 住民の生活実態を知れ
住民に褪社思想を養え 6 2 福祉に住民参加,奉仕精神の教育
生活改善を指導せよ 5 3 生活改善の推進
58 24
備考単位は件数を示す。
VII この地域を明る<健康にするための対策
1.まず,家庭の福祉を考えよう。
地域は各家庭の集まりですから,地域の人達全部が幸福で健康に一•日一日を明る<楽しく暮してゆくためには,そ
の集まりである個々の家庭の福祉が守られないでは,地域全部の人や家庭が幸福になれないといえます。
馬鈴薯の中にほんの1 つだけ腐敗しかけたのがあっても,それをすてておくか,そんな馬鈴薯のあることを忘れて
放任しておくと,いつの間にか貯蔵薯が沢山くさってしまったという経験を持っている人達も多いでしょう。地域の
福祉や健康もちょうどそれと同じことです。お隣りに病人が出たとします。その人が伝染病であったとしたら,感染
するようなことはないだろうか。もう感染しているのではないだろうかと随分気をつかいます。それだけでなく,予
防薬を買う,注射をする,食事や飲物も考える,まるで自分の家に病人が出たほどの騒ぎをします。そして,それに
は精神的,経済的負担がともなって現われます。
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幸いお隣の病人が伝染病でないにしても,直ぐにお見舞ということになります。これもお見舞に行っている間は労
鋤による牧入の低下となり,入院でもした場合なら交通費もいりますo 勿論お見舞品の経済負担もあります。
これは,自分の家に病人が出ないでも,お隣に病人ができると,自分の家までお隣の病人の影響をうけるという例
ですが,地域というのはまさにこの通りであって,いくら幸福で健康になろうとしても,地域に不幸な人や病人家庭
が出ると,自分の家だけがいくら幸福で健康であろうとしても,その影稗をうけないではいません。
そこで,地域の明る<健康な町づくりには
1 地域を作っているどの家もが幸福で健康になるI
ことです。
その点この両地区には, 回答世帯529世帯のうち,経済的に普通以下の生活しかできていないと言っている家が
38.4%で4 割近くもあり, くらしが人並み以下で,その上椙祉に欠げるという世帯が12.7形もあります。その上生活
は普通又はそれ以上であるが,幸椙という点では欠げるものがあるという24.1 %の世帯があります。これ等は回答世
帯の75.2%にも達しますが,この両地区ではこれ等の世帯のあることを見逃すことはできません。
2.それには,各家庭の生活の実態をよく知ろう。
その対策を大きく次のように分けることにします。
(1) 低所得階層対策については
牧入が少ない世帯,牧入よりも支出が多くて生活が楽でない世帯のためにどうすればよいかということです。牧入
の少ない世帯でも,働き手が体が弱くて働けない世帯もあるでしょうo 働こうとしているし,働いているのに良い仕
事がないので牧入の低い世帯もあるでしょう。低所得を原因別に分類しますと,次のようになります。
(1) 牧入の少ない世帯イ,生計中心者が傷病又は老衰。
ロ,安定した職業がない。(季節又は臨時的仕事)
ハ,労働意慾の欠除。(怠け)
二,地理的条件(遠方には良い仕事があっても,遠くは出られない)
ホ,能力の欠除(技術がないとか,仕事を代りたがる,腕がたたぬ)
ヘ,失業·失敗(仕事がない,事業の失敗)
(2) 牧入より支出の多い世帯ィ,家族に傷病者がいる。
ロ,消費家族が多い。(多子,飲酒,遊興,不労家族)
ハ,生活の無計画(奮孟哀信嬰派手な,あればあるように食う,遊びが多い,交)
二,災害(復1日に支出を伴う)
ホ,借財(金利,元金の支払いで牧入がおっつかない)
この地区でも以上のようなことが考えられます。更に,両地区とも職業構成で無職又はそれに近い世帯が多く,坂
野地区では99世帯で: 4.5%, 和田島地区では80世帯で12.7%あります。(注,この調査は小松島市坂野支所の調査に
よる。)
そこで,これ等の低所系尋階層の対策として,まず地域の社協殊に地域を担当する社協役員は,自分の地区内には「
低所得世帯はないか」「どんな理由で低所得を招いているか」についての生活の実態を充分把握し, また,把握した
ものの分析なり診断を行って, 「なぜ」「どうすればよいか」を取上げることです。さしあたってこの地区では,
低額世帯のために,考え,かつ,施策する
が明るい町づくりの第一段階といえるでしょう。
内職斡旋,共同作業,技術講習,受託者開発3 原材料の共同購入,製品の共同販売,小資本融資,地域の産業開発
なども方法として考えられますが,不安定な職業群の安定化がなんといっても急瀦といえるでしょうo 勿論,こうし
た強度の政治性を伴い,強い行政的な処置の必要な仕事については,地域だけで解決することは非常に困難だし,案
外局地的になると実行を伴なわない場合が多いので,市の行政当局者に資料を提供して協力を求める資源活用を閑却
しないことが大切といえます。
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(2) 生活設計の問題については
近代の生活のように自分と意志だけでなく,瑯境が剌戟や時代の推移からうける影轡の強い生活では,その「]その
日の生活だけでなく, 1 ケ月叉は1 ケ年といったように,半長期にわたって自分の生活を計画的にやってゆく必要が
あります。生活の殷計化とか予算生活がそれです。
然し,このことは理論の上ではよくわかるが,実行は仲々出来ぬくいもので,有れぼあるように生活するし,足ら
なければどうせ足りないものをということになりやすいものです。従って,サラリーマンのように岱月固定した収入
のある世帯では,収入に基盤をおいた計画化も容易ですが,不安定な収入世帯の場合は殊に困難が伴います。
家計領を全々つけていない坂野地区の18.2%世楷,和田島地区の32.5%の世帯及び生活菱の増加により,生且での因
難を来している世帯に対しては,生活の在り方についての国び掛けがこの地区では必要といえます。
ものいりをおさえて,楽な明るいくらしのできる対策
この地区の明るい町づくり対策の第2 段階はここにあります。
その方法として先ずとりあげたいのは「聾かな世帯の渦の中に乏しい世帯を捲き込まない地域の環境作り」です。
こうした地区でも地区の慣行や行事は上の方の層を標準にして計画されるものです。それに生活の模(故や順応も上に
ならうのが人間の心理でもありますo 陰口を言ったり,こごとをいいながらもやせがまんを張るくらしのあることを
忘れてはなりません。
5 .実施は地域の誰もが全世帯が参加できる方法で
ということが重要になってきます。特に両地区とも水準生活層が非常に厚く,貯蓄思想に富んでいるし,生活内容な
どでも質朴さがうかがえるだけに,地方色を活かした現境作りは容易ではないかと思います。
さて,この地域では生活と結びつけた環境作りにどんな方法が考えられるかといいますと,
(1) 地域における各積行事や慣行の統ーと改善
慣行として部落には各腫の行事が沢山あります。勿論こうした行事は地域の人達の生活を温める点では存在の意義
をもっていますが,本質的には現代のように余暇の活用が多くなり,食生活の内容が豊かになった生活様式のもとで
は,なんといっても価値付けがうすくなった事は確かです。そうした現実に対する声が行事(特に正月と祭礼)の統
ーを70%までの住民が望み,その理由にも60%以上までが消費の無駄を省くためと答えているといえますo 従口:て,
この地区では敢果にこの問題を取上げるべきだといえます。結婚という慣行の改善も同時に実行したいものですo 殊
に,消費の王座を占める結婚についても,改善を望む声は80 %以上に達し,経済的理由による支持層の厚さを見逃し
てはなりません。
(2) 食生活に無駄と不合理はないかの改善
ほんの一部抽出にすぎなかったのですが食生活の内容をのぞいてみましたが,熱源不足よりもこれほどの熱源を利
用しながら内容の陳腐さを覚えました。また,住民ニードの中にも改普の指導を望む声も聞かれましたo 次には,節
句,盆,祭,正月等に過度の消費がみられました。
例えば,この地方では醤油,味噌の消費に対し,ゾース消費のおどろくほど少ないのは,食事内容に変化が少ない
現われともいえます。菓子の消費よりも果物の消費の少ないことも挙げることができます。
そうした点から無駄な消費を押えて,食事の栄養化を図ることが重要であるといえますo 然し,ややもしますと遂
に食生活の改善は消費を拡大するおそれがありますo 早い時間においしく,栄養のあるものをという考え方は,材料
買って都会風にという考えに陥りやすいからです。従って,地区で自家生産せられ,どの家庭でもで容易に出来て,
安くて,目先きの変ったものにすることが必要で,例えば,坂野カレー,和田島飯といったものがあってよいと思い
ます。これも決して困難なことではなく,専門家では容易にできることなので,社協の新しい活動方式として,是非
この地区では取上げたいものです。
(3) 社協服と福祉時間
主婦の社会活動についての考え方は,他の社域に比較してやや消極的なようで, 65 %以内の支持しかありませんで
したが,現実の姿として日増しにふえつつありますo 外出が多い,外出に伴う支出も多いというのが家庭の問題とし
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て内在しつつもあるようです。そこで,学校の会合にしろ,婦人会の集りその他にしろ,婦人の本能と心理を活かし
ながら無駄を省くために,簡素な社協服(主婦服といったもの)といったものを作り,これを利用することはどうで
しょう。このことは,どんな家庭の主婦でも肩身のせまい思いをしないで,手軽に簡単に外へ出れるという結果にな
ります。
資本いらずの時間励行も,この地域では強く望まれるようです。従って,ここらで目先きを少し変えて,両地区で
は福祉時間の提唱もいいのではないでしょうかo 即ち,時間の無駄省きは労働の無駄省きにもなり,他人に迷惑をか
けない点でもまさに大きな幅祉の行為です。「社脇服で身軽に時間励行」こんな呼ひ掛けも大切といえるでしょう。
(4) 金のかからぬ健全な遊びと安い金で楽しむ余暇
両地区とも健全な遊びに恵まれた地帯ではないようです。それに地理的にも小都市の周辺地帯であるために,余暇
には金のかかる地域ともいえます。かつ, 39%の世帯が余暇を楽しんでおり,また, 金がかかりすぎるとしていま
す。この地区においても,地域福祉のため余暇の問題は課題といえます。また,余暇の利用が思い思いに行われ,遊
びに主眼がおかれている点も問題といえるでしょう。
映面館は地域に5 ケ所ありますが,テレビ,ラジオの普及も今一歩という段階にあるだけに,経済的な健康な楽し
める余暇が必要といえます。そのため4 つの方法が考えられます。その1 つは,地方色を充分いかした新しい地域の
遊びをつくりだすことです。運動会でも,また,祭礼の鎮守の森ででも,誰でもが飛込んで遊べる踊りなどもいいで
しょうo おらが国さぶりの民謡や舞踊について,社協が音頭取りになって婦人,青年団体へ呼びかけてみたらどうで
しょう。第2 は,子供の輪の中へはいって行く親の遊びもいいと思います。子供会活動を親子活動への方向に持って
ゆくこともよいことです。第5 は,地域の集団遠足の方法です。ほんの僅かあて積立てて貧も豊める世帯もが年に何
回かの家族慰安をすることも意味のあることです。社協は特にこの地域では,健康と幅祉上重点施策として行事化ま
でしたいものです。この問題の研究を住民から期待せられていることも,住民ニードの中に充分とうかがえます。
第4 は,地域の休日づくりです。両地区とも65%以上の支持がありますが,反対意見には,休日をつくると生活に
困るという50%の声もききのがせません。従って,休日づくりは漸進的でありた<,各種の行事を統一する代りに月
に1 度の家庭の休日をつくるといった方法を選び,然も,部落内の各種の会合や催しを,休日を利用することによっ
て,生活と経済との調整を図ってゆく工夫がありたいものです。
4.家庭福祉と人間関係は,こうして
生活の経済を離れて家庭や地域の福祉を阻害しているものに,人関関係の問題があります。
実際現代の社会は神径社会ともいえます。買物に出るにしても,神経をビーンと張っていないでは, いつ交通事
故に見舞われるか知れないo ぽやぽやしていては損をする時代でもあります。その上,家庭や社会の先に自分を考え
ようとする身勝手な風潮のもとだけに,人間関係は一層複雑に微妙になるばかりですo 純朴で明けすけのことが誰に
でも話せて,誰もが相手の立場に立って物を言い,行うといった農村の美しさは消失されつつあるともいえます。
椙祉という立場からみた家庭の問題の中でも,老人と若者との不仲,夫婦の不仲,家族問の不仲,近隣との不仲な
ど人間関係の調整を必要とするものの比重が重く,坂野地区では71.2%, 和田島地区では56.1 %を占めています。ま
た,家族しか地域住宅の話しあいの場づくりを希望する住民の声の多いのもここに原因があるとみることが出来ま
す。そこで,地域の明るい町づくりの第5 として,
みんなが仲よく,気持ちよくくらす対策
が必要となってきます。
5.家庭にも地域にも話しあいの場を
場と場作りを両地区とも積極的にとりあげたいものです。特に地域の職業構成からみても,労働の繁閑に大きな差
があり,忙しい時には家族が必要なこと以外は話しあいの暇もなく,そうかといって暇な時には体のやり場や常時鼻
をつきあわせるような時間が多いことからくる相手の欠点の目につきやすい生活様態では, 人間関係に不必要な配慮
やこじれが伴いやすいことも事実です。また一方,幅祉を支配するのは経済力でもありますが,それにも劣らず身心
の負担になるものに,気をつかう生活が地域にもあることは閑却できません。それにもかかわらず,地域幅祉では余
りにも華やかさと,直ぐ目にみえる効果をわらおうとする名利主義からして疎外してきたのがこの問題だともいえま
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すが,地域の人みんなが仲よく,気持ちよく暮すための福祉施策は,現代生活の様相からみても第一線に拝出すべき
地域の対策ともいえます。
そこで,その方法として考えられるものを挙げてみますと,次のようなものがあります。
ィ,部落の集りは生計中心者主義でなく,しようとする事業や方法からみて, 各家庭では誰が中心の拒当者に
なるかを考えて,その担当者主義にしよう。
例えば,蚊,蝿の駆除の相談の場合は,ご主人か奥さんがご出席下さいといった内容にする。
検便の場合,主婦に呼びかける。
ロ,社協の協議や集りは役員主義でなく,住民本位にしよう。
役に間でf目談がまとまったら,小地域へ出掛けていって小地域毎に集りを持つ。
ハ,特別な話題を捉えて小地域で多くの住民と話しあおう。
例へば,両地区共に消化器系疾患が多いが,このために「どうしたら胃病にならぬか,胃病はどうして
おすか」を話題にして,胃病たいじの話し合いをするなど。
二,時には家族総出の話しあいも考えよう。
子供会の行事の時など, 「子供と一緒にと」他の家族の参加(見せるだけでもよい)も考える。
老人だけの集りでなしに「お年寄りの手を引いて」として嫁と姑の集りを企図するなど。
ホ,話しあいの家庭進出も実行しよう。
時には社協の役員が住民の家庭へ出掛けて行って,家族全部の人と話しあう。特に出席の悪い世帯,問題
の多く内在する世帯などから手をつけることも効果的である。
ヘ,話題を地域の人達に提供しよう。
ねたみと蔭口,悪口と他人の批評,地域ではこうしたものが話題の中心となりやすく, このために人間関
係を困難にもしている。話題の少ないことがこんな変則をつくりやすい。そこで,社会記事,町内・県内
ニュースなどで関係のあるものや特異なものを広報して回覧板などで流す。こうした事業は学校,公民館
の協力を得て,児童の手によって行うことが効果的だといえる。また,健康相談の結果などを広報する。
ト, 「夕食は家族そろって楽しく」を習慣づけよう。
夕食は家族そろって時間をかけて話しあいをしながらする運動を起し習慣付けを行い,家族話しあいの場
づくりを作り出す。特に両地区とも「早食撲滅」は地域の健康上も必要である。
チ,いろんなものを見せたり,聞かせよう。
この声は住民ニードにも多い。この場合,堅苦しいものに陥入ってしまはないで,柔剛おり混せる注意は
望ましい。例えば,受胎調節の映画と講演の場なども「良い子をちっと産んで,老後を楽しく」といった
キャッチ・フレーズにも注意する。人間関係の椙祉講演会を開く場合, 「易者でなくても, 自分の心が見
とうせるお話」といったように。
6.みんなが健康になるためには
地域にしても,それぞれの家庭にしても,まず,そろって健康であるということで大きな幸福です。最近のように
医学が長足の進歩を来したことによって,病気による死の恐怖の少なくなった時代でも,病気は身体的に不安,恐l布
といった精神的な困難をきたすだけでなく,身体的な苦痛を伴うだけに,福祉を阻害する大きな社会悪であることに
は変りありません。
その上,社会保障制度の未熟な日本などにおいては,医療費の増嵩ということが病気からくる経済負担を過重にし
て,病気は身心的にも,経済的にも個人や家庭,ひいては地域や社会にまで困難をつくり出して行きます。
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この表は,病気が福祉をどれほど阻害するかを表わしたものです。即ち,病気は第1 に犯罪を中にして貧乏といつ
も悪循環をしているばかりでなく,第2 表のように,これも犯罪と結びつつ家庭の福祉をいつも脅やかしているわけ
です。病気,貧乏,それに犯罪を家庭や地域から追放することこそ,地域や家庭の大きな福祉への道といえます。そ
こで,この両地区をみますと,坂野地区は和田島地区に比較して罹病率が16.6%高く, 中でも目佐地区は高いようで
すが,何れも全国の罹病率より低い所をみると,両地区とも健康に恵まれた健康世帯だといえます。然し,今までに
病気にかかったり,現に羅っている人が一部の世帯に片寄っているようです。従って,この地区では,
2人以上の罹病世帯に対する対策
が必要となって考ます。そこで先ず,羅病の分布をみてみましょう。
坂野地区 和田島地区
一家に病人はあっても1 人の世帯 121世帯 48世帯
一家に2 人の病人がいる世帯 25 17
一家に5 人の病人がいる世帯 5 -
一家に4 人の病人がいる世帯 3 -
計 154 65
1世帯に2人以上罹病者のあるものの比 21.4% 20.6%
(注 1部再掲)
1 世帯に2 人以上病人のある世帯が,坂野地区では罹病世帯の21 .4%,和田島地区では20.6%となっていますo 殊
に,坂野地区の坂野では,罹病世帯の70.5%までに2 人以上の罹病者があるようです。勿論, こうした世帯のための
対策は,病気の種類,発病原因,既・現症状,診療及び療養状況などの分析の上に立つべきであって,寧ろ専門家に
委ねるべき性質のものだといえます。
然し,保健婦の活動を促進して,特別訪問の方法を講ずることも必要だし,医師や看護婦を混えてこうした家庭の
家族だけの「家族がそろって元気になる話しあい」の場をもつこともいいでしょうo 住民の要望の中にある保健組合
をこうした地区から結成してゆくことも,社協の施策として取上げることも大切だといえます。
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次に,両地区の保健幅祉上大きく取上げなければならない対策に
地域から胃病を追放する運動と対策
があります。
7.こうして,胃病を追放しよう。
農村社会では,消化器系,殊に,胃の疾患はどこの地方でも多いようですo 然し,両地区とも意想外に多く,全国
平均を2 倍以上も上廻っているようです。両地域の人が罹った病気の坂野地区で34.1%, 和田島地区で32.7 %と3 割
以上を,胃かいよう,胃下垂,胃炎,胃カタル等の胃の疾患が占めておりますし, 1 世帯に1 人以上の胃の病人のあ
る世帯の数値も高いといえます。この点,この地域から胃病の追放を図ることは,保健福祉の焦眉の急務とさえ考え
られます。そこで,追放対策として
1.胃病ぐらいと軽視することを改めよう。
本県では「胃病と梅毒(かさ)けの無い者はない。」とか「胃病とかさけは病気のうちにはいらない。」といった
胃の疾患を軽視する悪い風習があります。
この地域にもこうした軽視の風習があるとすれば,是正の運動を展開するほどの事はあってよく, それほどにない
にしても,胃疾患のもつ保健上の軍要性を強調することが望ましいものです。
2.食事の悪習慣を一掃しよう。
「早食いは三文の得。」とか「早食いの大食い」という言葉がある位に,早食いを食事の礼儀のように誤解され,
叉,小さい時から食事礼法ででもあるかのように「もの言わずに早よう食べるのが良い子」と習慣付けられてきた
過去を多くの人は持っています。農繁期の農業従事者や殊に職人の間では早食いの大食を誇りのように思われた
り,軍隊生活の経験で早食いを誇示する向きも残存しています。
こうした食事の悪習慣が,胃病を多くつくり出していることも事実です。そこで,食事のこうした早食いの大食い
習慣を一掃すべきです。また, 「食事の後ですぐ寝ると牛になる」という迷信も一考すべきです。むしろ,漸く横
になるほどの食事の新しい礼法も普及すべきです。
3.腹いっばいよりも,カロリー主義を普及しよう。
粗食の大食主義を改善してゆくのは容易な事でないといえますが,胃の疾患の温床はここにあるともいえます。こ
の為の方法として杜協がそれぞれの生活能力によって取入れることのできるような社協食c 又は地域の標準食)と
いった数種の献立表を配付して食生活の改著を図ることもよい。
4.胃を守るための健康相談を実施しよう。
胃の疾患追放の,胃を守る無料の健康相談班を作って小地域を巡回し,食事指導,療養指導を取上げることもこの
地区では軍要といえるでしょう。
8.検査という科学のメスも
水質検査と検便の実施
両地域とも水道ふ設がないため, 100%を井水によっています。勿論,このことは農村社会における普通の形態で
もありますが,多くの場合,便宜的に井戸の近くに「流し場」「洗い場」といったものがしつらえられています。ま
た,労力上の利便から,井戸は炊事場の近くの背戸にありますが,こうした関係で住居の近くに設けられた外,便所
と接近するのもよく見受けられ,同時に洗罹場所ともなっています。その上,排水が完備せられていないので,井水
を汚染しやすい環境のもとにもあるようです。
この地域については,井戸の場所,便所の場,汚水の排水設備等についての診断ができなかったことは遺{惑ですが
汚水と井水,更に便所と排水についての調査を環境衛生の面から是非取上げるべきでしょう。坂野地区では,昭和36
年度に飲料水の調査をすでに実施せられていて結構ですが,この場合,アンケート方式だけでなく,社協推進員によ
る実地についての調査まで竿頭一歩を進めてみるのも効果的ではないでしょうか。
さらに地城ぐるみの水質検査を実施したいものです。
次に取上げたいものに寄生虫の問題があります。参考までに坂野小学校における検便結果をみてみますと,一注昭
和36年度保健福祉活動をすすめるためによる一
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被検査児章数 回虫 十二指腸虫 鞭虫 その他 計 なし
518名 353名 12名 71 名 2名 418名 173名
被検児518名中陰性は35.4 %で, 66.6 %までが1 以上の寄生をうけていることになり,寄生率は高いといえます。ま
た,大場地区が実施した地域ぐるみの検便の結果をみても,一注昭和36年度保健福祉地区組織活動1 ケ年のまとめに
よる一
被検者数 寄生虫なし 回虫 鞭虫 十二指腸虫
170名 81名 71名 19名 15名
被検者170 名中寄生していない者は47.6 %で, 52.4 %までが寄生虫をもっていて,寄生率は高いと言えますo 然し
この面についての社協活動は活発で,駆虫剤の使用率は高く,坂野地区では60.7%, 和田島地区では76.2%で,他の
地区に比較して優れていることは,社協の保健活動に負うものが多いと言えます。
所が現代人の意識からしますと,地域に寄生虫が多いから駆虫剤を服用するというのよりか,実際に寄生している
かどうかを知らしめ,その上で駆除対策をたてるといった科学性に裏付けを置く対策を受入れやすいともいえるし,
更にさきにも取上げたように,両地区共に胃の疾患の多い地域でもあるだけに,これも地域ぐるみの検便実施が望ま
しいものです。
然し,地域活動を龍頭蛇尾に終らせたり,実行の伴なわない理論の遊戯にしてしまうものに,検査などのように地
域だけで解決のできない問題のあることを閑却できません。
では,こうした場合どういう方法を考えるべきか。
1.市の行政処置を推進しましよう。
地域の実態を資料として提供し,行政処置を強力に推進することによって,事業に伴う経費の問題,他の行政機
関を地域のために動員する困難さを解消する。
2.関係行政機関へ実態をよく知ってもらおう。
水質検査,検便については,行政機関としては直接的なものに地区保健所があり,間接的なものに県立衛生研究
所,県衛生課などありますo 行政処置を必要とする場合,上級機関を動かす資源活用は是非考えたいものです。
3.「病気の予防は水から」「寄生虫追放運動」等の座談会や地域連動による住民意識の盛りあげも大切でしょう。
さらに,飲料水環境からみて,手洗い設備についてのエ夫もありた<,便所の手洗い設備について零細な毎月の健
康積立を実施し,手洗いから「カメ」を追放することも社協活動の一つの方向といえるでしょう。特にかって伝染病
とトラコーマのまんえん地域であっただけにこうした恒久化も考えたいものです。
9.母体の保護と保健にも
流産と乳児死亡対策
両地区の保健福祉の課題にこの対策があります。
さきにも一応取上げておいたように,流産は和田地区では回答者の15.0%世帯に流産があり,坂野地区では8.3%
と流産世帯の率は低くなっていますが, 1 世帯の頻度は高いようです。
流産には幾多の原因があり,母体の疾病,母体の虚弱,妊媒中の労働の過重,妊娠中の栄養不足及び偏重なども考
えられ,どちらにしても母体が健康でないといえます。従って,母体の健康の保持とか増進の立場からも,対策に期
待するものが多いといえます。
本県では,一種の社会慣行として流産や乳児死亡の多い世帯を「髪の甘い家」と呼んで,髪の堅い家(子供の健康
な家)から新生児に命名してもらったり,生毛をもらったりして,所謂,子供にひようしが悪いと諦めたり,平気で
すませたりして母体について余り考えない風習が多くの地域社会ではみられてきたものですo 勿論, こうした流産軽
視は前世紀的なことであって,地域の健康福祉のため科学的なメスいれを必要とします。
また, 1 オ末満の乳児死亡をみても,
100人当りの死亡数
全国平均 坂野 和田島
4人 8.5人 15.7人
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坂野地区では2 倍,和田島地区では4 倍にも達していることに,原因の抜本的な解明が望まれるといえます。
従って,これが対策として,
1.流産怪視の風潮を是正しよう。
2.妊婦教室を開いて,お産,育児の知識を広めよう。
この場合,現代の若い女性は医学的関心と同時心理探求,栄養と生活について知識慾も旺盛なので,広い乾囲の
知識の吸収を企図することが効果的といえるっ
3.乳児死亡についての原因の探求をしよう。
4.保健婦の活動を促進して妊産婦の指導をしよう。
5.妊婦の健康相談を実施しよう。
さらにこうした流産,乳児対策と併行して多子家庭の指導も必要といえます。昭和56年度保健幅祉活動を進めるた
めにだされている市社協と坂野社協の資料にみられるような出生率の高い世帯の地区例へは目(左では34 年度の出生率
は1,00'.:l人付26%で全国平均の18% より8%も高く,かつ, 26人の出生児中15.2 %の4人も死亡している地区に対して
は受胎調節の知識と器具の容易に,こつそり,入手出来る方法の考慮も望しいものである。そこで若妻グ)レープ,又
は母親ゲループを中心として家族計画のす口め方を推進する対策も必要だといえます。
10.優れている児童の対策
児童問題の多いことに近代文明の1 面があるともいえるし,現代生活の中に占める児童の問題は数多くあります。
その点では両地域とも環境的にも関ら的にも恵まれた地域とはいえないと思いますが児童問題の少ないことは子供
会活動の実効がそうさせたともいえるし,地域の児童福祉活動が結実しつ口あるともいえて,両地区とも児童対策は
優れているといえます。然し,所在する問題の中でも1 部ふれてきました66.1 %の子供にみられるグ金づかいのあら
さ、グ親を馬鹿にする行為、はこの地域だけの問題ではなく他の地域においても多く問題にせられている「今の子供
」の問題ではありますが何等かの施策が望まれるし,ゃともしますと子供会活動が活発となり,また,地域に子供達
をまかせることの出来る指導者が居る場合親の気持として何もかも依存しようとする親の依存を責任感に結びつける
ための思慮は必要だといえます。
従って,
みんなで,子供とともに,地域の,環境づくり
が必要となってきます。また,さらには1 歩を進めて子供達による明る<健康な地域作りにまで発展してもい口の
ではないでしょうか。その対策として次のようなことも考えてみましょう。
1.「親子会」又は「大人と子供の輪」といったように,子供の輪の中へ両親も融け込ませる活動を推進しょう。
子供のレクリェーションには両親を客として招待する。両親に聞いてもらう集い等もいいでしょう。
2.「大人は子供のよい手本」という意識を高めよう。
子供の行為は大人の行為の縮図という意識を高めるため,グこれでは子供が笑うでしょう、といったタイトルで
子供の環境として不健全なものを広報板などで地域へ流してみるのもいいでしょう。
3.子供活動を通じて地域の改善を盛上げよう。
布団干,手洗鉢の水の入れ替え,食事前の手洗い,食事礼法の改箸等を子供を中核体としてはどうでしょう。
4.子供や学校を通じて行う地域の篠祉広報
福祉や保健のP.R や伝言は子供を通じてしましょう。
この場合印刷物を持帰らせるよりか,口答の方がよく,更に翌日学校でその結果を確認するとより効果的といえ
るでしょう。
両地区とも現在のように1 歩優れている状態の下では,子供を通じて,或は子供と共にといった方法が望ましいよ
うです。
11.地域の福祉環境については
両地域とも地域の組織化とか,社会改善とか,環境作りといった面からしますと理解層は厚いといえますが,仝時
にどちらでもよいとか,わからないといった無関らな層や,周囲まかせといった層のあることも見逃せません。従っ
て地域の事業についても全住民の1 体化は困難であるし, 1 体化のためには指導者に非常な努力と寛容が要請せられ
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るともいえます。そこで地域の福祉環境をクどう見クグどう考えるべきかクをみますと,
1.教善は掛け声だけではなく,実行可能なものから着実に実施しょう。
2.保健福祉の活動には,科学性の基礎付けにたって必要性を地域の人達全部に先ず知らせよう。
3.仕事の選び方や進め方については,時代の感覚の上に立って支持層,協力層を厚くしょう。
4.仕事の相手方選びを先ず考え,できれば世帯中心者だけへの呼びかけでなく,必要によっては世帯の構成員をも
対象にしょう。
5.目的だけでなく方法のP.R こそ重要,然も, P.R は耳,目,足によろう。
6.地域住民の目と耳,口を身近なものにしょう。
と,いったことが考えられます。
そこで住民のニードからみますと,地域の人達のニードを分類すると,次のように分けられますo
1.健康相談,巡廻相談の行事化
2.保健活動の活発化
3.保健婦の活動促進
4.道路の改修及び上下水道の完備
5.余暇づくりと地域に即した研究と工夫
6.住民とか家族の話し合い場作り
7.社協は公私事業の潤滑油となる
8.各種行事の統一
9.社協活動の強化
10.栄養知識の普及と啓発
といったことに要約できます。さらに,この対策については,所在する問題や対策の中にふれておきました。
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