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成田先生感傷日記(12/11〜20)

12月11日(月)

二日酔い。カップラーメン食べて吐いて食べて吐いてを繰り返す。水がぶ飲み。だんだん気分よくなってくる。髪アイロンかけたけどもう右側の外ハネは直らないみたい。山中美容室から電話かかってくる。毎日電話してる気がする。俺のこと想ってくれてるのか。

電車乗って市役所へ。マイナンバーカード今度こそ(3回目)受け取ろうと思ったら肝心のハガキ?忘れてきた。明日また来ることに。トホホ…。年金の免除猶予申請もする。全額免除されてくれー。市役所出たら友達から電話かかってくる。おまえは沈んでるときめんどくさいし元気なときつまんないーとか、普通にバカとか言われて嫌な気持ちになる。俺が優しいだけ傷つくシステム、おかしくないですか?  保育園と小学校と中学校が連なってたり、街路樹とか道路がデカくて、すげー!この街すべてがデカいー!小学校と中学校あるー!保育園までー!?学校でけー!って1人でテンション上がってたら急にニ"ャ"ー!!と叫んできて、しばらく沈黙が続く。嫌な気持ちのまま電話切られる。なんだよーっ。

駅の本屋でユリイカ長谷川白紙特集買って、家に帰って履歴書かいてバイト面接へ。間違って支店の方に行ってしまい、ちょっと遅れて本店に行く。70近いジジイ店長が優しく迎え入れてくれて一安心。なんでこっちきたの?と聞かれたので、ポジティブなことを…と思い、こっちでやりたいことがあったのでと、何やりたいの?→マンガ描いたり…つったらマンガじゃ稼げないだろーと。来年、映画の専門学校に行きたい〜と話したら、意味ないよ!無駄!と完全否定されて面食らう。まあでもこんな人もいるよなーと凪みたいな気持ちでいる。今ならこの世の全てを許せるかもしれない。俺はこれから社会に出てくんだからね! 興味ない世間話とかで茶を濁しながら。でも色々話してくうちにシフトとかお金の話に。あれ、いけるかも? 詳しいことは後日電話するからね、と。いけるんじゃね?帰り際、厨房で働いていた女の人にぼくを紹介して「あいつ売れない地下アイドルやってんだよ」と嬉しそうに。彼女は「もー!言わないでくださいよー!」と上手い。ここから出入りするんだよと裏口を教えてくれる。これで落ちたら全部ウソだ。受かれー。

なんか嬉しくて隣駅まで散歩する。家帰ってサイゼいく。もう受かった気になってハンバーグ食べる。いやもう受かったっしょ。

帰って疲れ果てて爆睡する。

12月12日(火)

起きてウダウダ。ユリイカ長谷川白紙読む。起きて数時間は世界のことなんでも許せるみたいな寛容さがあって無敵だったんだけど電話で色々言われて憂鬱になる。シャワー浴びて準備して出かける。

市役所に言ってようやくマイナンバーカードを受け取る。これでタイミーができる。ちょっとだけ近くの図書館覗いて、ぶらぶら。激鬱なってきて友達に電話する。隅っこの方にしゃがんで泣く。1人じゃ生きていけない。

美大浪人の彼は人付き合いとか疲れるからめんどくさいというけど、俺はじゃあ本当に人のことが好きなのかもしれないと思う。だって人間関係でめんどくさいとか思ったこと1度もないし。彼みたいに、クラスで1番楽しくなさそうなやつと仲良くなるのは、おれが優しいからか。でもそういう楽しくなさそうなやつが面白かったりするし、絶対優しい。

電話してたらだんだん気分がよくなってきたけどもう今日は何も頑張れそうにないし疲れたので、バイト面接キャンセルのメールを送る。これから千葉まで行く元気はさすがに無い。母親から脅しのLINEがきてたのでコンビニで頼まれてた住民票のFAXを送る。

ちょっとカフェで作業していこうかとも思ったけど全然帰りたいのでそのまま帰宅。家に着いて山中美容室と電話。ずっと部屋に1人で狂わないの?と聞いたら、さすがに狂ってきて、数学の問題とか解いてるらしい。

電話おわってしばらく布団にくるまってボーッとする。何もできない。そのうち眠っていて、起きると電話がきてたので折り返しかけるとパン屋の店主が酔っ払いながら、採用することになったと報告。うれしー! 初めてちゃんとしたバイト受かった。本当に嬉しくて憂鬱な気持ちが全部吹っ飛んだ。betcover!!聴きながらマック行って色々買って雨の中走って家まで戻ってきて映画見ながら食べる。ダブルチーズバーガーの倍マックとシチューパイとナゲット、食べすぎて苦しい。がはは!

船曳真珠『錨をなげろ』。濱口竜介と瀬田なつきの同期。すごい。人物がフレームインアウトしながらめちゃくちゃ動く。分かりやすくシネフィルという感じ。『彼方からの手紙』と比べたらやや劣るけど、それでも編集とかすげー遊んでてキレッキレで楽しい。

12月13日(水)

寝るまでユリイカ長谷川白紙読む。起きてからドトール行ってまた読む。笙野頼子と松浦理英子の対談本読み終えた。だんだん仲良くなってく2人。良い。ユリ白、青島もうじきの論考「『エアにに』言葉のオブジェクティビティ テクスチャの豹と歌詞空間の庭を作る」が面白い。最後に"えびのビスク"を作って食べたという報告を書き綴っていてそれが論考全体のまとめになっている。美しい。

下書き1ページ描いて店を出る。こんな速く描けるのに(たぶん20分くらい)全然進まないのおかしいと思う。がんばりたいのに!

ご飯食べて宮台真司『私たちはどこから〜』第四章を読む。だんだん社会のこと分かってきたかもしれない。

12月14日(木)

ユリイカ特集長谷川白紙だいたい読み終わった。伏見瞬の論考「からだのきらいなわたしのからだ 『夢の骨が襲いかかる!』から聴き取る、「編まれ直し」としてのクィア・ファンク」がとても良かった。『ファイアパンチ』トガタのセリフ引用がぴたっとハマってる。

堀江敏幸『その姿の消し方』「波打つ格子」「欄外の船」「履いたままおまえはどこを」
中平卓馬『なぜ、植物図鑑か』「グラフィズム幻想論」読む。寝る。

起きて洗濯して干して扇風機かけてサイゼ行って小砂川チト「猿の戴冠式」読む。「家庭用安心坑夫」もそうだったけど、移動し続けるのが好き。あと共通するのは男性への不信感(ちょいミサンドリー?)、母親とのいざこざ、父親の不在、かな。人間世界での生きづらさが非人間の存在によって救済される。この読みにくい文章も嬉しい。最近の新人の中だとトップクラスにすごいと思う。競歩選手の妹の運動がボノボの姉の運動に仮託・連動していく。感動した。

12月15日(金)

長い時間散歩してたら小学校と高校を見つけて、登校する高校生たちとすれ違いながら歩いてだいぶ恥ずかしいというか悲しい気持ちになった。高校ちゃんと卒業したかったー。

ちょっと寝て面接へ向かう。埼玉から千葉まで2時間くらいかかる。ダルい。最近ずっとcero聴いてる気がする。『WORLD RECORD』めちゃくちゃ良い。

デカイ工場あるとこに着いて、電話する。中に入って会社の説明を受ける。オリンピック会場とかポケモンのイベントとかジャンプフェスタとか、ビッグサイトのイベントの設営とかする会社らしい。今までは派遣会社に頼んでて、今度から自社で直接雇っていく、その第一号だと。なんか受かりそうでどうしよう。無職から急に忙しくなっちゃう…。

矢野顕子ききながら帰る。帰ったら疲れて何も出来ず。明日は原稿がんばりたい。久しぶりに浴槽にお湯ためて入るとポカポカしすぎた。あつい。友達と電話して寝る。

12月16日(土)

15時間寝た。3度寝、途中で山中美容室と電話した記憶だけある。

12月17日(日)

蓮實重彥『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』のドゥルーズの章を読む。フーコーの章はちんぷんかんぷんだったけど今回はなんとなく分かった気がしてよかった。

作業。ナメクジみたいなスピードでしか描けない。ドトール行ったけどジジババが増えてきてなんかイヤになってすぐ帰った。寝る。

起きてLINEきてたら嬉しいけど、撮影する予定のキャンセルだったので落ち込む。まあろくな撮影機材も無いしいっか。シャワー浴びてNHKでやってる昭和のラグビー部ドキュメンタリー見ながら髪乾かす。こういうの嬉しい。

12月18日(月)

ぽにゃぽにゃしてたらもう出勤の時間に。初日から早朝5時に来いってなんなんですか。

店入って5分くらいですぐパンを作らされてびっくりした。当たり前だけど上手くできない。あんパン、生地にあんこを詰めるのがムズい。あんパンはなんとかなってもカレーパンはムズすぎて「それじゃあダメだよ」って言われて違う作業することに。色々説明受けながら言われたことを脳死でやる。始まって30分も経たずに辞めたいと思ってた。労働しんどすぎる。パンの表面に卵黄塗ったり、ゆで卵の殻を剥いたり、シュークリームにカスタードやら生クリームやら入れたりetc.…

4時間くらいで解放される。これをこの先ずっとやっていくのかと思うと憂鬱な気持ちになった。家に帰ってしばらくボーッとする。

所持金も1000円を切って(なんで?)つらい。なけなしの金でスーパーでご飯買って映画見ながら食べる。吉井和之『緑川の底』塩田明彦と相米慎二の劣化版みたいな映画でつまらなかった。インポをデカ石で治すというヘンテコ設定はちょっと良い。

しばらく散歩する。音楽を聴く。ボーッとする。シフトとか何も聞かされてなかったので店長に電話すると明日と明後日も朝5時からということで落ち込む。なんとか続けなければ…。

12月19日(火)

昨日とだいたい同じ仕事をする。シュークリームにカスタードとかホイップ注入する作業、なんか中出しみたいだなと思ってニヤニヤ(最悪)。4時間働いて、パンをもらう。味はそこそこだった。金がない。キムチをちまちま食べる。寒い。

金が無さすぎるのでブックオフに行ってマンガとかCDとか売って1000円ちょっと稼ぐ。ドトールで本読んで、武蔵美へ。正門で武蔵美の友達と合流してしばらく歩く。東村山駅まで、どれくらい歩いたろ、1,2時間? 友達はデカイ荷物もってたので大変そうだった。所沢まで電車で移動、餃子の王将でご飯。疲れたみたいで全然喋らなくなったので寂しい気持ちになる。まあずっとこの後ひとりになることを考えて寂しかったけど。空中をボーッと見つめて全然目を合わせない。歳を取ってる人は経験とか年齢によるアドで話がたくさん出来てズルいから色んなものを見て色んなことを考えて加速していきたい、みたいな話をしたら「そうなんだ」って軽く流されて悲しい。

店を出て彼氏にあげるというクリスマスプレゼントの買い物につきあって、駅で別れる。「おまえは健康だよ」とか「どうすればいいか分からない」とか言い続けて困惑させてしまったけど、本当にどうすればいいか分からなかった。俺は他人に多くを求めすぎなんだと思う。ぼくのこと全肯定してくれてずっとうーん…と思ってた。優しいけど、その優しさをまっすぐ受け取る度量が自分に無い。この人とはガチでケンカをしてスクラップアンドビルドしないと仲良くなれないのかなとかキショいこと考える。でもたぶん実際そうなんだけど、まあケンカはしないだろうなとも思う。仲良くも仲悪くもなれない関係性を、それでもやっていかなければいけない。過剰さを求めるのは暴力なんだ、たぶん…。

蓮實重彥『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』のデリダの章とあとがきと解説読んで読了。ムズかったけど面白かった。これからどんどん哲学書も読んでいきたい。

12月20日(水)

起きたら友達から電話の誘いがきてたので電話する。2時間くらい。バイトの話とか、最近あったこと、考えてることとか。この人は珍しく俺のことバカにしたり見下したりしないし、むやみに厳しくも優しくもしないので話してて楽しい。ユリイカ特集長谷川白紙の感想とかも話す。青島もうじきの論考が1番よかったと言ったらそいつも1番よかったらしく、嬉しかった。この辺りからシンクロ感がやんわりあってゾーンみたいな感覚。ダレてきてお互いぽつぽつと話して、ふーん、そうなんだ、みたいな惰性の会話さえここちよい。

バイト行く直前にお腹壊してめちゃくちゃ痛くなって死ぬかと思った。なんとか治って小走りで職場に向かう。ずっとそうだけど今日もしんどくて、うつむいて固まってたら「もう帰るか?帰っていいよ」と言われ、学校のことを思い出して泣きそうになりながらなんとか頑張る。1回言ったら覚えるんだよ、とかそんなん無理だろ。パン作りを好きにならなきゃいけないって言うけど、労働なんだから好きになれるわけない。好きとか生活みたいな感じになったら飲み込まれて村田沙耶香の『コンビニ人間』みたいになって、死ぬ。

ちょっと早めに終わって、焼きそばパンもらって帰る。帰ったら寒くて疲れて布団にもぐって動けない。これやめたい。そのまま眠ってしまう。

起きたら夕方で、お金がマジで無いので祖父に催促の電話をかける。タイミーで当分の生活費を稼ぎたいのだけど、交通費すらない。パン屋のバイト決まったーと報告したら、もうちょっとなんか違うの無いの…と言われて落ち込む。なんだったらいいんだよ。慰めてもらおうと友達に電話したら死ぬほど冷たくされて、泣きながら電話を切る。泣いてたらいつの間にかまた眠ってて、激鬱になりながら焼きそばパン食べてゴミをまとめて部屋を片付ける。誰も助けてくれなくても、1人で色々頑張っていかなければ。そんで早く原稿もやらねば…。


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