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成田先生感傷日記(11/21〜30)

11月21日(火)

ペドロ・コスタ『溶岩の家』をYouTubeで観ながらご飯。めっちゃクレール・ドニぽい。イネス・デ・メディロスの破壊力すさまじすぎて激ヤバ。真っ暗で何も見えない画面も横移動撮影も好き。マジでDVDほしー。誰か譲ってくれませんか…。てか再販してくれ。

なんかいつの間にか午後になっててびっくりした。ほんとに記憶ない。気絶してたのかもしれない。何もしないまま時間になったので電車に乗り込んで渋谷へ。

ヒューマントラストシネマ渋谷で柴田聡子似のフォロワーと合流してクライヴ・バーカー『ヘル・レイザー 4K』試写会。割とスカスカだった。映画めちゃくちゃ退屈で結構つらい。ずーっと室内で撮って、切り返しの会話がつづくので映画舐めとんのか?とキレてた。一緒に行った人に終わった後どうだったか聞くと微妙な反応で安心。てか上映前におばさんがアピチャッポンと仕事してるとか言ってて羨ましかった。そっちの話もっと詳しく聞きたい。

ガスト行って解散。よければまた遊びましょうと言ってくれたけど社交辞令かどうかギリギリの感じで分からなかったな。なんかまだ帰りたくなかったので池袋駅から歩いて公園行ったりブラブラ歩く。終電近くなったのでぼちぼち帰る。

11月22日(水)

ボーッとしてたらいつの間にか午後になっててビビった。怖くてずっと見てなかったポスト開いたら電気止めるぞーみたいな紙入っててまたビビる。立て続けにWiFiも繋がらなくなって落ち込んでくる。原稿まだ1ミリもやってない。

そんで追い打ちをかけるように1年くらい付き合ってた恋人に別れを切り出される。24日から泊まりに来る予定だったのに。25日に行く予定だった柴田聡子のライブも無しになって、めちゃくちゃショック。おれがいつまでたっても働かないのが嫌だというのはずっと言われてて、やはりそれが理由で別れるらしい。圧倒的に彼女が正しすぎて、大人で、へこむ。どう考えたって僕が悪い。

踏んだり蹴ったりで完全に気力がショートして、夜までベッドでぐったりする。原稿なんて出来るわけがない。死にたい。ららら古墳群の2人と通話する約束をしてたのでdiscordを開く。混乱しすぎて最初「初めまして…」とか言っちゃう。2人に話を聞いてもらう。バイトしたら全部解決するんじゃない?と正論。そりゃそう。はよバイトするべき。山中美容室が美味しいご飯でも食べに行きますか、と言ってくれて優しい。明日作業会することに。針金マキはちょっと歳上だから、まあそんなもんよ、と軽い。僕の話を聞いて、こりゃダメそうやな、地獄の1年になるで、ほな風呂入ってくるわ〜と先に出てって、冷たいなあと思うけどこれはこれで嬉しかったりする。

11月23日(木)

通話終わったあとやっぱり悲しくてやるせなくて、しばらく寝れずにベッドでくねくね。ちょっと落ち着いてきて、起き上がって外に出る。コンビニで食べたいもの買ってきて食べる。最近あまりご飯がおいしくない。ご飯食べた後もぐでーっとして、Twitter無限に見て、朝方になってようやくシャワー浴びる。山本英の新作が東京フィルメックスでかかるらしく、美容室を誘って行くことに。準備して電車に乗り込む。

豊島区中央図書館で作業しようと思ったけど気分が落ち込んで手につかない。しばらくブラブラして友達と電話する。

時間になったので有楽町へ向かう。有楽町朝日ホールに着いて山中美容室と合流。デカくてテンション上がる。舞台挨拶の後で山本英『熱のあとに』鑑賞。めちゃくちゃおもんなくて残念。脚本を韓国の別の人が書いてるらしく、山本英に全然合ってなくて可哀想なくらいひどかった。深刻なドラマは難しいのだよ。セリフが物語に直接寄与しすぎてて、演技もセリフをはっきり言うことに注力しているのでわざとらしくなる。めちゃくちゃ叫ぶし泣くしセリフで全部言いすぎるし、ほんとに最悪だった。

がっかりしつつ丸亀製麺へ。

久しぶりに食べてめちゃうまかった。天ぷら2つでよかったな。食べ終わったらドトールに入って、閉店まで作業する。隣のおじさんが生産性みたいな会話ばっかしてて嫌だったからイヤホンで音楽聴く。ちょっと進んだ。時間かかりまくり。間に合わなそう…

電車乗って帰宅。爆睡。

11月24日(金)

起床してすぐ号泣。しばらくベッドの上で動けなくてクネクネしてた。何も出来ない。

何もしないままあっという間に午後に。マイナンバーカード取りに行く予約してたけど書類足りなくてキャンセル。領収書とかすぐ捨てちゃうけど取っといた方がいいのかも。ずっと無視してた年金の手紙を開けてみたら8万ちょい請求きててビビる。一旦見なかったことにする。夕方近くなってようやく原稿やる気出てきたのでマック行って作業。アップルパイおいしー。

すぐに集中途切れて(そもそも集中できない)店を出る。帰ったら疲れてすぐ寝てしまう。

11月25日(土)

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい全然原稿進んでない!!ヤバいヤバいヤバいヤバい…と思いつつ飯を食い、散歩をし、ちょっと映画みて、本を読んでしまう。アホー!

ずっと読みたかった中平卓馬『なぜ、植物図鑑か 中平卓馬映像論集』を序文?だけ読む。面白すぎて線引きまくった。美しい文章。

私はけっして私のものではない事物を、まさしく事物であることによって事物であるものをまず確認することから出発しなければならないのだ。世界が在り、私もまた在るのだということ。

なぜなら世界が未完であること、また私が未完であること、その認識が彼らの根底にある以上、彼らの表現が未完なのはある意味で当然すぎる位、当然なことであるからだ。未完であること、それは開かれてあることと同義である。

散歩してたらふと思った、Twitterって風景なんだ、それも散歩して向こうからトコトコ歩いてくる犬としての風景なんだって。すれ違う犬を可愛い〜と思うのがファボ/いいねで、可愛いですね〜と話しかけるのがリプライで、写真を撮るのがブックマーク。ツイートがタイムラインをスクロールして過ぎていくように、散歩中の犬も見て過ぎ去っていく。そしてまた前を向いて歩き続ける。だからバズとかも価値が無い。動いて過ぎ去っていく風景としての犬だから。みたいな。

ウダウダしてたら夕方になってしまった。自分、死ね! 家ではどうしても描けないのでマックに行って120円のコーヒーS頼んで1時間ちょっとだけ作業する。ほんとにどうしようもない。俺、死ね! マック出て、寒空の下なぜか普段あまりしない自撮りをしまくる。顔面が判別不可能になるくらいスマホ振ってブレブレの写真を大量に撮って、ほとんど消去する。なんでこんなに可愛くて魅力的なのにフラれたんだ!死ね!ほんとだったら今日柴田聡子のライブ行く予定だったのに!クソ!俺、キショすぎる!!しね!!!!!

家かえってシャワー浴びてちょこちょこ観ていたヴェルナー・ヘルツォーク『グリズリーマン』を見切る。クマを愛するあまり、クマに殺されてしまった男のドキュメンタリー。クマがケンカして取っ組み合いながらウンコ垂れ流すところで笑った。男が奇人でおもしろい。あとキツネめっちゃ可愛い。

ご飯食べて寝る。

11月26日(日)

起きてご飯食べて電車に乗り込む。アラームより先に目が覚めると気持ちいい。良質な睡眠が取れてる証拠だと思う。久しぶりにベボベ聴いてノスタルジーの塊みたいなメロディにやられる。ダサいけどかっこいい。親の車でかかってそうな音楽、かかってなかったけど。

笙野頼子『金毘羅』読み終わる。安藤礼二の解説が全部言ってる。

「私」を突き詰めることは「歴史」を突き詰めることであり、「私」を解体し再構築することは「歴史」を解体し再構築することでもある。00年代の笙野頼子の関心はその一点に絞られていく。「私」小説がそのまま「歴史」小説にならなければならないのだ。しかも、笙野が造形する「私」には、一元的な「私」に抗い「私」を分裂させ複数化させてしまうようなアンチ「私」が、笙野が造形する「歴史」には、一元的な「歴史」に抗い「歴史」を分裂させ複数化させてしまうようなアンチ「歴史」が含み込まれている。

ずっと自分の性の煩悶が描かれる。だからこそ大文字で「金毘羅だ!私は金毘羅になった!」と書かれるのではないか。メタ的な記述を挟みながら自分の歴史を振り返り立ち返り、言語を使用して「私」は、飛ぶ! 小説ならどこまでも飛んでいける、笙野頼子の作品は勇気を与えてくれる。

東京フィルメックス。ホン・サンス『水の中で』観る。前情報どおりピンぼけの画面。技法がどうのこうのより映画はディティールなので、今回のサンスはだいぶオモロかった。てか劇場サンス初めてかもしれない。ご飯食べる時に無言でクチャクチャ言わすのうれしい。一欠片のピザをハサミで縦に3等分しててキモくて良かった。年間ベストで詳しく。

続いてワン・ビン『青春』。212分ふつーに長くて死にそうだったけど前半とかめっちゃオモロかった。ケンカしたり女の子にちょっかいだしたり小学生みたいで、ぜったい激鬱な労働も笑顔で楽しそうにこなす。確かに青春。後半だらーっとしてきて、終盤年月の経った哀愁が感じられる。

ワン・ビン来た!

観終わって銀座から池袋に移動してフレッシュネスバーガー入ってちょっと作業する。全然身が入らない。もうダメかもしれない。帰りの電車で高橋源一郎『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』読む。

嫌な気分になって、帰って酒を飲む。

11月27日(月)

無気力すぎていかん。ベッドから起き上がれない。スマホを見るのすらダルくてしばらくボーッとする。原稿間に合わないかもしれない。いや、最後まで諦めたくない…

YouTubeでムルナウ『都会の女』みながらパスタとおにぎり食べる。おにぎりだけでよかったな。途中で映画止めて、部屋の片付け。

ネクライトーキーの新曲MVめっちゃ良い。

電気の件で、色んなところに電話かける。契約していたところに電話するともうここでは契約不可能なので別のところで契約し直してとのこと。別のところで契約手続きして、しばらくたつと電話がかかってきて、前の契約がまだ続いてるので契約できないとのこと。なんやねん! どうすりゃええの!?

ゴミまとめたり部屋掃除したり。原稿ちびちび描いたり(ほんとにちびちび)。

いつの間にか夕方になってて電話できないので今日はこれで終わりに。結局全然原稿進んでないし電気も空回りして終わってやるせない。無限に散歩する。散歩しかおれを救わない。

鬱々としてきて、つい別れたばかりの元恋人に連絡してしまう。しつこくLINEし続けるとゴリゴリに拒否られて無理とダメ押しされ、おそらく完全に終わった。俺がいつまでもだらだらとキショいだけだが…… ずっと一緒がいいって言ってたじゃんかー!!!!!!!どうなってんだよお!!!!!!!!泣泣

感情が終わって1つ目の高校の、美大浪人生の友達に電話する。もう写真とかも消して関係切った方がいいよ、ともっともらしいことを言われる。そりゃそう。でもつらい。めそめそ。酒飲んですべて忘れたいという気分だが、原稿やらねばなのでグッと我慢してウーウーうなる。

まだつらいので2つ目の高校の友達にも電話して話を聞いてもらう。そいつも今年恋人と別れたというので共感して慰めてもらった。ほんとにありがたい。世界って優しいかも。

11月28日(火)

徹夜して原稿すると決めたけど中々作業に入れない。これなら1回寝て起きて描いた方が絶対に効率いいのに。アホ。

結局寝ることに。昼頃起きる。しばらくベッドでボーッとする。無気力すぎてヤバい。今まで付き合ってたときはなかったのに、別れた途端夢に出てきて無駄に悲しくなる。

散歩。散歩しまくる。何も出来ない。無限に散歩する。何も手につかない。酒買ってきて飲みながら電気の件で電話かける。契約は続いたままらしい。なんだったんだ…。

あっという間に日が暮れる。マジで何もしてない。虚無すぎる。散歩。

夜になってららら古墳群の2人と通話。軽く打ち合わせ。山中美容室に匿名潟さんは『PPPPPP』とかああいう少年マンガを目指した方がいいと言われ、確かに唯一結果出てる(2回程紙面に名前が載った)のはジャンプだしな…と納得。たしかに僕は感情的だし、キャッチーなキャラとか、もっとベタなテンプレみたいなことから出発した方がいいのかもしれない。針金マキには「正直、匿名潟さんの描くマンガより匿名潟さん自身の方が面白い」と言われてしまい、ショックだった。マキさんいつも辛辣でありがたい。おれは傷ついて傷つかされて、逃げずに壁を乗り越えて頑張らなければならない。自分のやりたいことはできるようになったらやる。だって会議通って雑誌載らなきゃなんにもならない。

11月29日(水)

我慢できずに元恋人に電話してしまう。すると、別れたあとすぐに単発バイトで知り合った男の先輩と飲みに行って、その流れでホテル行って寝たというカミングアウトをされ、発狂→無になる。キャパオーバーして頭が逆に冴えてくる。二日酔いみたいな感じだったけど、目も頭もギンギンに覚めて清々しい。まあヤケクソみたいな感じでチューも避けてたらしいし、結局相手が萎えて最後までしなかったらしいけど、それを笑いながら見下すように話してきたので一瞬で真顔になって、LINEブロ削してさようならした。

辛すぎてそのあとすぐ山中美容室に電話して話を聞いてもらう。当事者の僕より解像度高く言語化してて余計傷を抉られた気がしたけど、だいぶ楽になった。こいつ優しすぎる。彼女はセックスに価値がないからこそ簡単に寝てしまったし、失恋を傷として処理&精算するために好きでもない男を利用したんだと速攻で解釈してきて、安易な共感とか慰めしてこないのやっぱ賢いなあと感心。

てかめちゃベタな「どしたん話聞こか? うんうん、それは彼氏さんが悪いね。じゃあ挿れるよ」で胸糞悪い。キツイ。キショすぎる。

寝れないので別の友達にも電話して、しばらく話して切って朝方寝る。

1回寝たら落ち着いた。でも何もできずベッドでくねくねしたりボーッとしたり散歩したりする。いつの間にか夜になる。

TVerでザ・ノンフィクション「山本さんちの食卓〜笑いと涙のサポートハウス〜」を見る。障害者とか身寄りのない人たちのシェアハウス。田舎の優しさとか親密さが激鬱すぎてめっちゃ面白かった。

YouTubeでムルナウ『都会の女』を途中から最後まで見切る。英語読めなくて話全然分かんなかったけど、みんな言ってる小麦畑を男女が駆け抜けて抱きついてキスして倒れ込んでまた走っていくシーンがヤバすぎる。小津安二郎『晩春』の男女が自転車こいで並走するシーンみたいな多幸感がある。『サンライズ』のキスシーンもめちゃくちゃ気合い入ってた。背景でずっと人が動いてるのとか、ムルナウすごい。

11月30日(木)

起きて洗濯回して買い物行って洗濯物干してキャベツ食べて電車に乗り込む。もうコミティア原稿は間に合わないの確定なのでゆっくりしてまう。毎日描いていきたいけど。今日は国会図書館でマンガ読んで、帰ってから描くことにする。

電車で会田誠『げいさい』を読み出したけど文章が下手というかなんでもなさすぎて読むのがキツイ。

僕はビールを飲みながら高村のバンドを聴いていた。ペコペコと凹む大きな透明プラスチックのコップの中で、小さな泡の粒々が西日を浴びて黄金色に輝いていたのをよく覚えている。その日最初に飲んだその一杯は、妙にヒリヒリと胃袋に沁みた。

書き出しでわかる退屈さ。ちゃんと読んでから買えばよかった…。30ページくらいで閉じて、多和田葉子『百年の散歩』を読む。

国会図書館着いて本5冊申し込んで食堂でカレー食べて待つ。人におすすめされたユズキカズ『枇杷の樹の下で』読む。「黄金時代」が特に良かった。雨が降ってきて図書館で服を脱いだ子供たちが全裸になって絡み合い舐め合う。『台風クラブ』的な。マジでサイコー。そのあと森に行って追いかけた女子高生をみんなで襲いかかる。すごい。続けて『ヤナギホールで会おう』を読む。ユズキカズはケツが好きなんだなということが分かった。

そのあとも数冊読んで、電車乗って家帰ってあったかいものが食べたくなったのでトマトスープパスタを買う。やなことありすぎて意気消沈でなにも頑張れない。うおーーー

オススメされた高階匠『Good bye,Eric!』を観る。自主制作のインディーズ邦画の最低ラインって陽気に作れるかどうかなんだと思う。省略と移動。成田空港クレジットされてたけど、お金払ったのかな?

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