頚椎に関する基礎知識:頚多裂筋の頚椎椎間関節包への付着形態について

今回は、頚多裂筋の頚椎椎間関節包への付着形態に関する報告について紹介します。
 
An anatomical investigation of the human cervical facet capsule, quantifying muscle insertion area
Beth A, et al.:J anat.198:455-461.2001

概要
頚椎椎間関節障害は、頚部痛の一要因とされています。また、椎間関節包には頚多裂筋が付着しており、腰椎と同様に椎間関節と多裂筋との間には密接な関係があると考えられます。今回の論文では、頚多裂筋の椎間関節包への付着形態を組織学的手法を用いて明らかにしています。方法は、マッソン三色染色した組織切片をコンピューターで画像解析し、C4/5およびC5/6椎間関節包への頚多裂筋の付着部面積を算出しています。結果、筋付着部は椎間関節包面積の22.4%を占め、平均面積は47.6mmであったとしています。このことから、筋の遠心性収縮により椎間関節包には、51Nの力が作用すると推測できるみたいです。著者らは、交通事故などの外傷時に頚多裂筋の収縮が椎間関節包を伸張させ、組織損傷を引き起こす可能性があると報告しています。

※1N:0.102kg → 51N:5.202Kg

感想
慢性頚部痛患者は圧倒的に頭部前方位を呈しており、これにより様々な組織に対する力学的なストレスが増大します。頭頚部伸筋群は、頚椎屈曲方向への動的支持機構として作用し、特に頚多裂筋は非常に重要な組織であると考えます。本報告の解剖学的知見より、頚多裂筋の筋収縮は椎間関節包を緊張させ、より分節的な安定化を担っていることが推測できます。慢性頚部痛患者のMRIを確認すると、圧倒的に頚多裂筋の脂肪変性を認めることが多い印象です。今後も、同組織に対する評価方法など試行錯誤しながら臨床に臨みたいと思います。
報告者:石黒翔太郎

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