腰椎に関する基礎知識:大腰筋と腰神経叢の位置関係について

今回は、大腰筋と腰神経叢の位置関係に関する報告です。

Lumber Plexus and Psoas Major Muscle : Not Always as Expected.
Lukas Kirchmair M.D
Regional Anesthesia and Pain Medicine Vol.33 No.2 2008

対象と方法


32体(63側)の献体を用いた(男性14体、女性18体)。年齢は平均78歳、身長は平均165cmであった。開腹後に全ての臓器を摘出し、大腰筋周囲の結合組織を除去した。その後、大腿神経(FN)および閉鎖神経(ON)の大腰筋内から出てくる部位を観察し、FNは後方、後外側、外側に分類した(図1)。また、L4横突起の先端と各神経までの垂直距離とL4・L5横突起の前縁から各神経までの前後距離を測定した。(図2)
※シェーマは論文を参考に作図

結果


腰神経叢は63例中61例が大腰筋内を走行していた。大腰筋からのFNの出現部位は、外側2例、後外側24例、後方21例であり、ONの出現部位は、後方が60例であった。L4横突起の先端と各神経までの垂直距離とL4・L5横突起の前縁から各神経までの前後距離は表1(右)に示す。

感想


臨床上、椎体の側面を走行する大腰筋に圧痛を認める症例を良く経験します。椎体に骨棘や椎間板に変性などを認める症例では、ほぼ必発です。本報告を参考にすると、大半は大腰筋内を腰神経叢が走行するため、同筋の柔軟性の低下は腰神経叢に何らかの影響を与える可能性があります。そのため、大腰筋の柔軟性を回復させることで、腰椎のみでなく股関節の可動性や大腿神経・閉鎖神経症状の改善に繋がることが多い印象です。今後も注意深く確認してみたいと思います。

次回予告


4月8日(土) 小林博樹 先生
「肘外側部の機能解剖とバイオメカニクス」

投稿者:石黒翔太郎

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