頚椎に関する基礎知識:後頭下筋群の解剖学について

今回は、後頭下筋群の解剖に関する報告を紹介させて頂きます。
 
Morphological classification and comparison of suboccipital muscle fiber charateristics
Masato Yamauchi, et al.:Anat Cell Biol. 50:247-254. 2017

概要
後頭下筋群の機能障害が慢性的な頚部痛や頭痛に関連していることは、多くの先行研究で示唆されています。今回の論文では、後頭下筋群の筋腹の変異を形態学的に観察し、抗ミオシン重鎖抗体を用いた免疫染色により筋線維の形態を断面積(CSA)の割合で比較しています。その結果、形態学的に上頭斜筋と下頭斜筋は全て典型的な1つの筋腹として観察できたことに対して、大後頭直筋と小後頭直筋は、13.6%に筋が癒合していたり、複数の筋腹が観察されたとしています。また、CSAの比較では、全ての後頭下筋群において、遅筋線維が速筋線維よりも豊富で、その中でも小後頭直筋と上頭斜筋がより遅筋線維を豊富に含んでいたとしています。筆者は、後頭下筋群に筋紡錘が高密度に存在するといった解剖学的知見も交え、後頭下筋群が頭部の安定性を機能的に維持すると同時に、弱い持続的な力で環椎後頭関節および上位頚椎の動きを繊細に制御していると考察しています。また、より豊富に遅筋線維を含む、小後頭直筋や上頭斜筋は、大後頭直筋と下頭斜筋よりも頭部の抗重力筋として作用する可能性があると述べています。

感想
今回の報告の中でより重要視されていた小後頭直筋と上頭斜筋は、解剖学的に環椎(後結節・横突起)と後頭骨に付着を持つため、大後頭直筋や下頭斜筋よりも環椎後頭関節の運動制御に優れていると考えられます。また、小後頭直筋の脂肪変性(MRIによる評価)と頚椎機能障害との関連性を示唆する報告も散見されることから、特に小後頭直筋の走行に沿った圧痛評価やMRIおよびエコーなどの画像評価は、頭頚部(環椎後頭関節)の局所的な状態を把握する上で重要であると思いました。次回は、後頭下筋群と頭部前方位姿勢との関連性について述べた報告を紹介させていただきます。

報告者:石黒翔太郎

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