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かみさま

わたしは都合がいい


良いことがあれば "神様が見てくれていた" と喜び、調子が悪いと "神様なんていないんだ" とへそを曲げ、叶えたいことがあれば "どうかお願いします、神様" と願う。

宗教や信仰は奥深いもので、歴史を振り返ってみても宗教や信仰を巡って多くの戦争が起こり、たくさんの人達が命を懸けて戦ってきた。

今もなお、"信じること" は時には人々を苦しめ、時には人々を助けている…のかもしれない。

わたしは都合がいい

初詣は神社に行くけど、お葬式はお寺のお坊さんにお世話になるし、チャペルの建築という芸術やパイプオルガンの音も好き。強く信じる宗教・宗派があるわけでなはない。人によっては眉をひそめる事案かもしれないが、 わたしは それが心地いい。

今回は、"神様ってやっぱりいるのかも"って思ったはなし。そう、嬉しかったはなし。

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大切な友達からLINEの返信がなくてもうすぐで3ヶ月。わたしの誕生日にくれたメッセージに対する、わたしの返信から未読。その時にくれたメッセージがなんとなく毎年のそれとは違った。

「最近、忙しくって、ごめんね。また落ち着いたら連絡するね」

彼女の性格はよく知っているし、関係性もあるし、信じている。頑張っている彼女を応援したいし、邪魔もしたくない。少ないメッセージから多少の違和感を感じつつ、特に何も気にしていなかった。

その1か月後、「会いたい」と送った。
待てど暮らせど、返信が来ない。

普段のわたしなら、相手の都合で連絡が途絶えても、特段取り合わない。でも、今回は少し違う。数日前に送った彼女への誕生日祝いのメッセージ。やっぱり返信が来ない。

「え、死んでないよね…?」

最近は悲しいニュースを耳にする。コロナで気持ちもなかなか晴れない。そうでなくても、明日を必ず生きる保証なんてない。

何かで気を悪くして、わたしをブロックしているならそれでもいい。ただ、生きていてほしい。

ストイックな彼女なら、忙しいと言っていたから通知を切っているのかもしない。でも、こんなに長く忙しいかな。LINEを見ていないなら、電話をしても気付かない。ブロックされていたら、それこそもう連絡のしようがない。彼女はSNSをしない。もう生存確認の方法が分からない。

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「もし、わたしが死んだら、その知らせはいつ、みんなに届くんだろう。どこまで届くんだろう。」

Facebookには追悼アカウント機能というものがあるらしい。だけど、それを操作してくれるのは生きている人。携帯のロック番号も教えてない。やろうと思えば何かしら術はあるだろうけど、どこまでやってもらえるかな。

祖父母と叔母の死を近くで見てきたわたしは、人が死ぬことを知っている。1年前には父が余命宣告を受けた。

"人は必ず死ぬ"
"いつ死ぬかは分からない"

しってる。だけど、日々このことを意識しながら生きていくのは本当に難しい。

やっぱり、なんも知らんやん。


自分の死後、公的にまたは儀式としてどんな手続きが必要かだけでなく、個人的には何を頼みたいのか。わたしの人生を豊かにしてくれた方々への最後の礼儀。考えておきたいこと。

わたしは、まだまだ死なないと思ってるんだ。

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「友達から返信が来ない」

"そんなのよくあること" きっとそう思いつつも、わたしが相談を持ちかけた彼は、時間を取って話を聞いてくれた。

『電話かけてみて、繋がらなかったら"生きてるか?"って送る』

やっぱり、それしかないよなぁ。
そして、信じて待つんだよね。


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彼との電話を切ったあと、彼女に電話を。なんだか緊張してLINEを開いたり閉じたり。覚悟を決めて勢いでボタンを押す。数回コールがなった後、

『もしもし、もしもし…どうしたの?』

あ、生きてる


涙がすーっと流れた。
もしものことがあったらどうしようって、本当にずっとずっと怖かった。

『心配かけて本当にごめんね』
普段はゲラで大声で話すわたしが、泣き声で話すのを聞いて、何度も謝ってくれる。

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いろいろなことが重なり、本当に目まぐるしい日々を送っていたと。誰からのLINEも返せず、携帯を機内モードにすらしていたらしい。

たった今、お風呂までの数分だけ携帯を使おうとして機内モードを解除したところだって。先日までの目まぐるしかった日々がようやく一段落して、溜まってるLINEは後日、時間を取って返そうと思ってたけど、なんとなくONにした通知。

そこでかかってきたわたしから電話。

いつもだったら絶対に取れなかった。
タイミングがこわいくらいによかった。

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相談に乗ってくれていた彼とは、友達から彼へ電話がかかってきたから切った。あと10分、話を続けていたら彼女へは電話が繋がらなかった。

すべてが仕組まれていたかのような流れ。
神様が魔法をかけてくれたの?

きっとあの時、電話が繋がらなくても、数日後には彼女から変わらないメッセージが届き、元気でいることを知ることができたのだろう。

きっとそこでもわたしは、どれだけ心配していたかを話し、彼女もきっとごめんねと謝ってくれる。

だけど、あの瞬間に声が聞けたこと。繋がったこと。

それはわたしにとっての特効薬だった。

*****

やっぱりわたしは、テキストよりも電話が好きで、電話よりも直接会って話したい。この文明が発達した世の中で、アナログなことを好む。この文明が発達した世の中だからこそ、その価値は大きい。

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" 神様、ありがとうございます~! "

電話越しに叫ぶわたしに彼女は笑っていたけど、わたしはやっぱり誠実に生きたいとおもったよ。

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『#2 かみさま』

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