天を仰いだ日

玄関でいつものように鍵を握ると
いつもより重たく感じた。

鍵が重たいのか、手が重たいのか

そんな、どうでも良いことを考えながら
真意と逆方向のエレベータのボタンを押す。

昨晩の木枯らしに舞った枯れ葉を
ざわついた心で踏むと
沈黙を割る警告音が鳴り響いた。

冷たい匂いと灰色の地面に
耐えられなくなって
空を見上げる。

巨大な白い翼竜が飛んでいた。
巨大な卵を食べる瞬間だった。

どんな風に卵が飲み込まれていくのだろうか

ぼっーっと立ち止まって見ていると、
翼竜は横目で視線を送ってきた。

そして、こう言った。

俺が見えるなら、お前も空を飛べるってことだな
こっからの眺めは最高だぜ

卵は新鮮なうちに食えよ
好きなもんは、さっさと食わねえと、
また木枯らしに攫われちまうぜ

いつだって選べるのは今だけさ

翼竜は素早く卵を飲み込むと
北風に乗って遠くへと旅立っていった。

深く息を吸う。
じわじわと身体中が染みていく。
歓喜と拍手の波で揺れているのを感じる。

軽くなった手を天にかざし
白い翼竜の跡を追って、また歩きだした。



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