僕らの光

#カァドゲェマァ君 第一話


 サブタイトル  ペルソナ5 ロイヤル ED

7月


某CSの調整会に手伝いとして参加する前のことだった。

あることがきっかけで、自分は約2年の交流のあるプレイヤーと晩飯を共にすることになる。


「シグレさん、初めて会った時、すっごい親切だったよね」

「……そう?」

彼にとっても、自分にとっても、初対面という時期の記憶は残っている。

「……俺は人間関係が苦手なんだ」

「人間関係で失敗した時にうやむやにするために、……最初は親切なんだろうね」

こんな事を直に言ったのは、学生時代以来である。

誰しも苦手なことがあり、それを克服するか、上手い具合に隠して仮面をつけて生活している。

そして、話題が徐々に本題へ。

「……悔しくないの?」

そう、7月、自分は結果を出せていない。

裏目に出ることの方が多く、猛者には歯が立たない。

ラビュリンスの次元障壁から始まり、ピュアリィの完全体勢とアーゼウス。
そしてレスキューの安定性と、強襲、妨害。

「うーん……どうだろう?」

……

「嫉妬とか、無いの?」

……。なるほど。自分は彼に話すのは、以下のことだった。

「嫉妬はさぁ、めんどくさいよね。」

嫉妬というのは、人間にとって一番、面倒で、根強いもの(受け売り)

才能ある素晴らしい人間が、何故失敗するのか。

それは嫉妬という存在に苦しめられているから(受け売りの要約)

嫉妬する側に陥れられるか、嫉妬を抱き破滅するか。

それを根絶出来た者はいない。(受け売り)

そして自分も、過去に嫉妬と承認欲求で多くの時間と金を浪費した人間だ。

だからこそ、

「これは受け売りなんだけど、嫉妬というのは、人間にとって一番、面倒で、根強いもの。それを根絶出来た者はいない。(受け売り)」

「だからこそ、……絶ちきれた時、かっこいいと思わない?」

いま思えば、端からみて、これは嫉妬ではなく、傲慢の方だった。

「だから自分は嫉妬をせず、結果を出してる人を称賛し、(以下略)発信する側の味方(クリエイターの創作物をRTする)だよ。」


 そして彼が、多かれ少なかれ、他者への嫉妬に苦しんでることを見抜いての、言葉。


******


遊戯王という趣味。

競技としての遊戯王。

それを通じて交流すること。
結果をだすこと。

今の自分があるのは、これまでの失敗の積み重ねだった。

『シグレ君の尻拭いはもううんざり』


これまで知らず知らずの内に迷惑をかけてしまった人への償いは、自分の周りにあるコミュニティを大切にすること。

帰り道の途中。自分の話から、今度は彼の話になった。

そして、これまでの会話から、

「……劣等感に苛まれてたの?」

自分の確信めいた問いに、彼は珍しく声を沈めて、頷いた。

彼の生きざまと、言葉。

競争社会を生きて、期待されども、どこかで大きな挫折をしたもの。

常に競争と闘争のなかで、どこかで壊れ、枯れていた彼。

「……貴方は、まるで俺が学生時代に読んでた小説のヒロインみたいだね」

「なにそれ」

「そっくりだからびっくりしてるよ」

歪んだ小説だった。

ヒロインは名家のお嬢様で、嫉妬と競争のなかで枯れて荒んだ、どこか諦めている女と、それを見守る男の。

歪んだ愛の物語。

「もっと、教えてよ。学生時代のこととかさ」

公園のベンチに座る。

時間はもう21時以降だ。

そして彼の話を聞けば聞くほど、その意外性に驚くばかりだった。

大袈裟でも、真剣なニュアンスだった。

「……本当は、皆に忘れられて消えたいんだ」

「ふーん」

誰がそれを望むだろうか。
きっとそれは、思ってもいないことなのかもしれない。
例えそれが本音の一部でも、そう単純なものだろうか。

「それはもう無理だね」

軽く否定した。

「……どうして?」

「俺が書いてるnoteには、貴方との会話が少なくともあり、ネットにあがってる以上、インターネットが無くならない限り、消えることはないよ」

そして、『俺が忘れる訳ないだろう』という、青臭いセリフなんてのは、『流される』のだから。


影響を与える、与えられる。

創作意欲に溢れていた学生時代の自分を言葉に例えるならそうだ。

人の心に、忘れられない、刻みつけるぐらいの何か。

人生と向き合うための、何か。

それに突き動かされていた時期は、確かにあったし、今の自分の中にも僅かに残っている。

『忘れられるというのは、存在の消滅、命に反すること』

彼の、喉の奥から漏れただけの言葉に、【例えそうでも、俺は貴方のことを忘れない】

と返したつもりだった。

「帰ろうか」

彼はまた普段通りの声に戻った。

「また調整会で」

彼と話している自分は、ありのままだっただろうか。

「貴方が広島を去るとき、俺も遊戯王引退かな」

「どういう基準!?」 

笑顔で別れる。

あぁ、本当に……。

初めて運命を、呪った。

******

8月の最中。

福岡で0-3を犯した自分に待っていたのは、先月とはまた別の調整会後の飲み会だった。

集まった者達の、楽しい話がきけた。

界隈でのやらかした人達や、自分の天然?(言葉足らずの会話)に突っ込みをいれられて、笑いが絶えない。

「俺はあの時誓ったんです。必ずトナメに上がって優勝するって!!」

「それで結果は!?」

「0-3」

皆、爆笑。

明日CSだというのに、アルコールがこめかみ部分をジーンと重く響かせる。

皆の様に、自分も立派に成れるだろうか?

あぁ、成れるハズだ。

前向きになれた、一夜限りの飲み会。

翌日、二日酔いに悶える朝。

なんとか水を大量に飲み、ケアをして、挑む。

予選から2敗して終了。

その後のサブトーナメントで何度も挑戦し、ようやく優勝。

次は……岡山のCS

******

予選の中で、マッチングした相手は、広島のCSで何度も優勝している猛者だった。

使用しているのは、レスキューエース。こちらはエクソシスター。

「ディアベルスターSS効果」

そして原罪発動、

「うらら」

それでも止まらず、マスカレーナとリトルナイトが並ぶ。

こちらにターンが一度やってくる。

握ってるのは、初動と墓穴。

こちらの展開に、うらら、増G

しかし、墓穴をうつタイミングはそこではない。

ミカエリスを立て、「サーチ効果を発動」

チェーン。相手のインパルスが手札から発動。

そこで止める。チェーン。墓穴。

手応えを感じた。

しかし、やはりカード手数が足りなかった。

一本目、敗北。

二本。先行を選び。

自分が伏せた魔封じを相手スタンバイに発動。

相手はチェーンで速攻魔法のリクルート。

それにチェーンし増G。

通る。ドロー。

その後相手はすぐに投了し、三本目。

相手先行、原罪にうらら。

初動が他にないのか、すぐにターンが来た。

相手の誘発も少ないのか、そして、たんたんとエクソシスターが並ぶ。

ニビルを食らえば負けに直結するが。
マニフィカまで行かなければ、負ける。

そして、相手の手札を増やさないこと。

墓地にある《“罪宝狩りの悪魔”》をミカエリス効果で除外。

しかし、ロンギヌスが飛んできた。

「……受けます」

墓穴はない。

しかし、猛者故のその反応速度を、逃すことはしない。

ダメージを与え、

手札のリタニアと無限をセット。

そしてスタンバイフェイズ。

相手の手札は二枚。

だからこそ、リタニア発動、対象は今度こそ、《“罪宝狩りの悪魔”》。


通る。

手札補充が出来なくなった相手が召喚したのは、インパルス。

そのインパルス効果にチェーンして、無限。

通る。

ならば処理後に、マニフィカの効果で。




……残り手札1枚はなんだ?



ドローしたカードはインパルスだろうか。
ならば、前のターンで温存していたカード。

つまり、汎用か、事故か。

しかし、止まる。

無限が通ったインパルスはリリースしても効果は無効になっている。

動くな。

そして相手が最後の手札でだしてきたのは、タービュランス。


チェーン、マニフィカ入れ替わり効果、そして、チェーン、選んで除外。

インパルスを除外。

そしてミカエリスに変化した処理、すぐにタービュランスを除外。

相手のサレンダー。

一瞬一瞬の判断が問われるスピードのある相手。

不思議にも、【楽しい】と感じた。

そして勝利した余韻のなかで、思い返すのは、

 お互いに顔と名前はしりつつも、初の対戦で、一手一手の押し合い。

トナメに上がれず。サブトーナメントを楽しんだあと。遠征同伴と別れ、家に戻る。


「もう二度とあれ以上の決闘はないのかもしれない」


更には、先日の飲み会でさえ、あれ以上に楽しい時間がやってくるのは、確かだろうか?

遊戯王の環境が変わるように、知り合い達の生活も変わる。

そして自分も、いつかは変わっていく。

そう考えれば考える程に、

「俺が遊戯王でやりたかったこと、全部やってしまったのか」

CS、調整会、飲み会、遠征。

自分独りではなく、皆と共にいた瞬間。

「俺が……まだ、やりたいことは、何だ?」

これから、新しい思い出をつくること。

頭に浮かんだのは、【彼】だった。

『……来年には遊戯王をやっているか怪しい』

『だから貴方と思い出を作りたい』

『一緒にチームやらない?』

彼は断るだろう。そして、真に受けないだろう。

「自分もやりたいことがあるから、お断りします」

そうだ。それでいい。





それでいい。


『分かってたよ』

『そうだな。それなら、今日で俺達のやり取りは最後だ』

『またリアルで会うんだから、そんときはよろしくな』

『お元気で』

お互いに気が早い。

******






******



この涙はいつ以来だろう。

顎が震えた。

瞼は何度も開閉し、睫に涙が染みていく。

目の奥が熱い。小さな涙が頬を伝う。

仰向け、腕で視界を覆う。



必要なのは、いつもそばにいることではない。
永遠ではないと分かっている。

今問われているのは、共にいた日々を胸に秘め、より高見へ飛び立つことだ。

「ありがとう」



9月9日 ダクロCS個人戦



エクソシスターを使った自分は、予選を通過し、4位へ。

その日はただの運だったかもしれない。

1位から3位の実力のある者には、遠く及ばなかった。



それでも、大きな一歩だったのかも知れない。


ダクロCSという名のHERO島杯にあやかり

『ガッチャ。楽しいデュエルだったぜ』

本当に、本当に楽しい日々だった。






























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