パリピ孔明 最終話ネタバレ感想「英子式 離間の計発動」

Dreamer’s again

 英子はかつて、何の夢も抱けないほどの青春の末に自殺を図った。そこから、大勢の観客や自分の心を震わせる存在に出逢った。しかし、その夢を抱いて進む道は泥濘と闇ばかりで、雲をつかむような日々の末に引退を決意した。孔明に出会うまでは。

 英子は誰よりも天運に恵まれている。死の寸前にオーナーと出会い、憔悴の中で人生を変える出会いを果たし、そして現代に蘇った孔明と出逢った。

 六本木うどん(仮)は、英子自身が夢を抱く尊さ、藻掻く苦しみ、そんな思いを綴ったもので、6話で既に歌詞だけ出来上がっていた。

 曲として完成した改題『Dreamer』を、歌手として完成しつつある英子が歌うと、それは自分の経験談的な歌詞から一転、夢を追う者たちへのエールとして聞くものの心を引き寄せる。

唐澤の焦り

 喧騒を鎮めて英子の歌を聞こうとしたナナミの様子を見て、唐澤はストリートミュージックの相方が英子だったのだと察した。しかし彼最大のミスは、そこでナナミに新曲発表をさせなかったこと。ひいては「奇策を打ってしか勝ち目のない勝負に出てきた弱小」と英子の実力を過小評価したこと。

 孔明の最初の策は「不発で終わってこそ。全ては英子の実力を隠し、最高潮の舞台で英子に歌わせるためのフェイク」だったのだとここで私も理解した。まだ歌の1番を歌い終えた段階で、新曲を電撃発表する強硬策に打って出ようとした唐澤。理由は

「ここで止めないと流れを全て食われる」

 しかし、曲の1番時点で心を掴まされた人間が多すぎるため、仮に新曲発表しても「水を差しに来た」と大反発は免れなかった。ましてや、英子が本当にこの歌を届けたいナナミの心が歌に食われたため、この時点で勝敗は決したのである。

青春の終わりと

 夢を追う心が砕け散った者には、この歌は心の奥まで届かない。しかし僅かでも、微かでも残っているならば、英子の歌はそれを揺り動かす。

 かつて無謀にも叫んだ大きな夢を、仲間と輝いていた日々を、英子との再会の言葉をナナミは思い出して硬直している。圧倒的な歌唱力を前に震えていたがその手を、フタバがとった。別々の方向を見ていたと思っていた2人も、しっかりとあの日の夢を抱き続けていた。

 落涙する仲間たちにナナミは仮面を取って見せて「戻ろうか。あの頃に」と呼びかけて、全員マスクを外して抱きついた。

英子式【離間の計】発動

 唐沢自身、『夢に焦がれている3人がこの歌をまともに聞くと不味い』と察していたためにインターセプトをかけようとしたが、それも失敗。英子の歌による、孔明とは全く異なる離間の計が発動してしまった。

 孔明はAzaleaメンバー3人の関係性を完全破壊する離間の計を用意したのだろうが、英子はAzaleaと仮面の関係を対象に分断してみせた。

 11話でナナミは「今のAzaleaにはファンが居る。スタッフが居る。お金もかかっている。だからここでやっていくしかないんだ」と素顔に仮面をかぶせていた。この仮面は、本音を偽るものではなく、輝いている夢に蓋をするためのもの。【諦めの象徴】だ。

「そんな仮面は捨ててしまえ」と英子は全力で歌ったために、現Azaleaは完全崩壊したが、かつてのAzalea3人の関係は完璧に元通りに修復された。

アカ抜けたアザレア

 現実に存在するアザレアの花言葉。『青春の輝き』を意味しているのは、ピンク色。そこから赤を抜いて白くなったときは『満ち足りた心』。
花言葉はここから参照

 若さだけで突っ走って失敗しかけた頃の彼女たちはもういないが、苦難も掻い潜って前進し続けた彼女たちはようやく、自分の求めていたものに気づく。子供ではなくなっても、子供の夢は持ち続けられる。

 英子の歌がクライマックスに差し掛かった時、マスクのように空を覆い隠していた霧が晴れ、物凄く充実した顔のAzaleaがいる。英子の想いは無事に届いたのだ。

 天候までもが英子の演出になった以上、もうこの流れは止められない。「遅かった」と痛恨の表情を見せた唐沢はこの時、完全敗北を認めたのだろう。

10万いいね

 完璧に仕上げた歌を、完璧に歌い上げた弟子に「良いんじゃない?」と10万目のいいねを送ったキッド。この演出はマジで心が熱くなる。サマーソニア出場決定、師匠からのお墨付きという「プリンジジイに勝つ」が達成できた。完璧な幕引きです。

古参ファン

 ツインテのAzaleaファンは、仮面を付けてからのファンで、その隣りにいる「俺古参ですがなにか?」な男は売れない時代から知っているファン。

 この男性ファンには敬意を表するわ。普通のガールズバンドでやっていたのがいきなり売り込むために際どい衣装着て顔も隠してダンスばかりに傾倒するようになっても、変わらず応援し続けていたってことだから。そりゃあKABEのラップにブチキレるのも分かる。

新生Azalea

 英子の歌によって、サマーソニア出場の勝負も、Azaleaの活動方針にも決着がついた。「後で謝り倒すこと確定」でも自分たちがやりたいことをするんだと楽器を持って素顔(※)で聴衆を引き止め、超作画の元演奏を始めるAzalea。これをみた唐澤は「そのやり方じゃ駄目なんだ!」と渋い顔。

 でも。やり方はダメでも曲はいいんですよね。バリバリロックなUNDERWORLDも良い曲でしたが、コッチの『Choko Pate』も若さ溢れる爽やかな曲。でもDreamerのあとに歌うにしては少しだけパンチ不足は否めない(個人の感想です)。そしてこういう曲、結構世に出回っているからやっぱりパンチ不足(個人の感想です)。

 でも彼女たちがやりたいことを全力でやっているのは作画にも如実に現れていて、見ていると嬉しくなる。聴衆の大半は英子の歌で満足し、キャンペーン応募も済ませて麻の実コースで帰っちゃったが、まばらに残ったファン・にわかが聞いて拍手を送るのがとてもいい。売れない頃に戻った=目指すべきAzaleaのかたちに戻ったってことだから。

借りたものは返しましょう

 まあ当然だけど唐澤は怒りに来る。でも語気だけ強くて、怒り方が非常に優しい。「そんなことで音楽を続けていけると思っているのか?!」音楽が好きなら、売れない日々を過ごしたお前らなら分かるだろう。どんなに自分が満足する歌ばかり歌っても、日の目を見なければ、金を稼がねば、音楽一本で食っていくことは出来ない。現実をしっかり見つめるべきなんだという見えないセリフが聞こえてくるお説教だ。

 たじろぐナナミを、しっかり支える2人の仲間は頼もしい。

 そこに割ってはいるのが「げえっ、孔明!?」

 乱世であれば借りたものを勝者はそのまま頂戴してもいいって不文律だけども、今はそうでないため、「借りたものは返す」。しかも借りたのは7万いいねだから、利子つけて10万いいねを返した!! トイチよりひでぇ!

 駆けつけたファンの目的は100万円ではなくてAzalea。Azaleaの新しいライブスタイルをしかとこの目で見たいという真のファンたちだ。買わなくても全然良かったんだよなあ。むしろそっちで勝負してたら、聴衆の疑心暗鬼も誘発できずに英子たちは負けていたまである。

ええっ!?今日は店の奢りで良いんですか!?

 英子の様子を陰ながらずっと見守ってきたオーナー。企画達成時には静かに泣き、祝杯時には全部店持ちの奢りで大量の人を巻き込み馬鹿騒ぎを認める太っ腹。もはや英子は彼の愛娘に近い存在なんだろう、その祝祭を彩るのに大枚はたくことになったとしても何の躊躇もないのだ。最初から最後まで彼はいい人だったからもうこの作品は本当に好き。

 Azaleaもパーティーに参加していたが、それを見届けるためか唐澤もその場にいた(敵地の酒は飲まず)。孔明はかつての唐澤に付いてのお話をし、Azaleaとの和解チャンスを生み出すアフターケア。

 確かに唐澤は敗けたのだが、ギクシャクしすぎている雰囲気が払拭されただけでなく、今後は惜しみなく協力してくれるAzaleaが味方のままでいるのだ。敗北者にしては戦果リザルトがあまりにもデカすぎる。10万いいね返しの利子がえげつない。

 でも過去画像は悪いんですが草しか生えんw 左上の顎がもう特徴的すぎるんよ!!

さようなら。全てのパリピたちよ

 天下泰平の計Vol.1。

 続きはあるんですよね!!? 1話ではほとんど英子の歌を聞いていなかったフロアに、今は彼女の歌を待ちわびる大量の人がいる。良かったな英子!!! 道を舗装したのは孔明だとしても、ここまで信じて歩んだのは間違いなく君だ! この歓声も、栄光も、君のものだ! 民草のために今後も歩んでくれ!

 そしてスタッフの皆様方、続編を早く、お願い致します!


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。