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『上から君と花火を見下ろして。』

『月夜に現れた君と。』のAfter Storyです。

あれから、1年が経った。
私と〇〇がお別れしてから1年。

1年間、眠りにつこうとしてベッドの中に身を委ねてもいつも、彼の事が頭から離れなくて。

夢の中で彼との思い出が蘇って、起き上がるとそれが夢だったと思い知らされて。

胸の中で何度も誓った
「あなたの事を絶対に忘れない」
という言葉はどこかに飛んでいって。

どう考えても遠い存在なのに心の中にもやっとしたものが残っているせいか何故か近くに感じられて。

毎日こんな感情に振り回されて、言い方は悪いかもしれないけど諦められなくて辛かった。

月の世界に戻ったあと、恋に悩む私に双子の姉の桜が言った。

「美空、疲れてるなら、悩むくらないならやめちゃえば?」

今日は花火大会の日。
なぜ知っているかって?

別れる前、彼が私に言ってくれた。
「来年のこの2日間、花火大会があるんだ。」
「最初にデートした場所だから。」
「もし忘れていなかったら、月の世界からも
見られるなら、その花火を見てよ。」
「そうすれば美空のことが見えるかもしれない。」

何言ってるのだろうと最初は思ったけれど。

もしかしたら、その一縷の思いにかけて、
私は月から出て、近くの星座のブランコに座った。



上から花火を見下ろす。久々に見た花火。


でも、あまり綺麗に感じられない。
彼と見た花火があまりにと綺麗すぎて。

今見ている花火も綺麗なはずなのに、
なにか物足りなかった。

気が付いたら涙を流していた。
その涙が落ちて、花火の日を消した。

花火を見た後沢山彼との思い出が溢れ出して来た。

2人で足先揃えて歩いた夜。
海で子供みたいにはしゃいで作った砂山。
2人で半分こしたりんご飴。

全部が全部、彼との思い出。
夜が深まって風が冷たくなった頃、2人揃って
大きな声で笑いあった、幸せな時間。

近くの星から帰ったあともため息を着く私に、
桜はまた言った。

「1度や2度くらい、そんな恋があっても
いいのかもね。」

次の日、また昨日行った星座のブランコに座った。
2日目の今日も沢山の花火が打ち上がっている。

でも昨日と同じで、上から見下ろしているから
彼と見た時とは違う。

頭の中は彼の事でいっぱいだった。
戻れるならなんとしてでも戻りたい。
でも、それは出来ない。

昨日は私の涙が花火を消してしまったから、
泣くのを我慢して最後の花火の残り火に、
その星に彼がいることを、見てくれていることを
信じて、私は手を振った。

花火が打ち上がっている間、赤や緑の綺麗な
菊の花びらのような花火を指さしながら、
彼のことを思い出した。彼の目は、いや、
彼そのものが、花火のように明るく輝いていて、
眩しかった。

そんなことを思い出すとまた、涙が止まらなかった。昨日のように涙が零れ落ちた。
でも、花火は消えなかった。

星座のブランコに乗ってまた花火を見下ろす。

そんなことをすればするほど、
彼との思い出が蘇って。
涙が溢れて。
戻りたいと切に願って。
でも、戻ることは許されなくて。

人間だったらなと何度思ったことだろう。
月の世界はこんなに素敵なのに、私にとっては
灰色の日々でしか無かった。

彼に出会ってから、彼のことで頭がいっぱいで。
彼のことを考えている時が、一番幸せで。

それでも、それでも私は月の世界に
居なければいけないから。

少しでも彼に近づこうと思って、
今日もまた手を伸ばし、精一杯振る。

彼という1つの「花火」に向かって。
いつかこちらを振り向いて、微笑んでくれることを願って。


fin.

しおりさんの企画に参加させて頂きました。
ありがとうございます。
駄作ではありますができるだけ楽曲、元の作品から乖離しないよう努力したつもりです。
もし良ければ読んで頂けたら嬉しいです。

#しおりの推し花

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