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Scaphoid Fracture-舟状骨骨折-2

前回の続き



図5

最新の統計,文献,実践に基づいた
さらっと解剖 なぜ偽関節?
文献から見た特徴的所見の裏側
(前回11/21掲載)

エコー,固定法
初期対応~医接連携
👈(今回12/21掲載)

図2
メインメニュー

・XpとCTとMRI・・・
・文献から見た舟状骨のエコー
・固定(動画あり)
・医接連携

図2


画像2

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図2

XpとCTとMRI・・・

X線検査

X線検査
舟状骨損傷の懸念があり指標となる
X線検査が診断難しい場合があり
最近のAsanka R.の報告(2019)では
「最初のX線で不明確な舟状骨骨折を最大16%見落とされている」
とされておりX線では不顕性骨折など
完全に骨折が否定できないことが多いです

画像19

それじゃあ
CT・MRIじゃないとわからないの?

こんな👇報告がありました

画像18

CT・MRI
実は両者は大きな差はなかったりします

でも
CTでもわかりにく
不顕性骨折や骨挫傷がわかる
MRIがゴールデンスタンダードでは?

たしかにそうなんですが
文献には大多数でどの検査よりも有用であり
ランニングコストがかかる以外は
CTの放射線被ばくと違い
人体には何のデメリットもありません

だがしかし

MRIにもこんなネガティブデータが存在します

臨床的に舟状骨骨折が疑われ
整形外科により
MRI検査を依頼された患者の統計です

画像25
画像24

137症例のうち骨折がみられたのは22%だった
それ以外は正常(27%)であり
43.4%が軟部組織損傷だった

私も最終的にはMRIならと期待していましたが
紹介した以外の文献以外は
圧倒的にMRI有用性を謡われてきました
他の文献が主戦場「ER」でした
この「整形外科より紹介」
この部分が
このような結果を導いていると思われます

こういうネガティブな要素もあるということだけ
抑えておいてください

ここからはCTについて

CTよりすぐれているCBCT!

CBCT感度特異度

EmmaらのCBCTを用いた報告では
CBCTが舟状骨骨折に対し
感度87.7%特異度99.2%とされています
こちらも同一文献に報告されていたので
他の手根骨骨折の場合
感度90.6%,特異度100%
橈骨遠位端骨折の場合
感度90%、特異度は100%

CBCTについて

画像16

医科と同じCTですが
方式被ばく量に大きな違いがあります

・ファンビーム方式(一般CT)
一般の医科で行われている

・コーンビーム方式(歯科用CT)
歯医者でよく導入されている

画像16

コーンビーム方式と比較され
低被ばく量
そして検査の簡易化
考慮されてきており
Ta-Wei Yang(2021)らの発表でも
舟状骨骨折には
CTよりもCBCT代替となる検査法として
台頭してくるといわれています

私見ではありますが
日本では,一般的なCTでまかなえる以上
CBCTは浸透しないと思っています
悲しいですが😂
現職のERでは,被ばく関係なしに
老若男女
バンバンCT撮りまくっているのが印象的です

超音波はどうなん?

舟状骨骨折って,エコーどうなん?

図5

さぁ結論から行きます
めっちゃ使えます👇参照

らの

さらに Olivierらの報告によれば
超音波観察時の骨皮膜の破壊が診断の鍵となる。
軟部組織の異常だけでは特異性に欠けると
言われている

観察方法

舟状骨は背側,外側,掌側
3方向から観察でき
微細な骨折であっても
そのほとんどに対応することができます

プローブ走査範囲

一番スタンダードで観察しやすい
掌側走査 長軸の観察法を紹介します

コツとしては
中央の特徴的なS字のラインを描出してください

掌側走査

掌側走査 短軸 動画

実症例のエコー画像

基本的には掌側からの観察となります

👇症例内容です

過去,高校在学時(3年秋)
学校の体育授業中,体育館の床に手を衝き受傷
患者曰く「すごく痛かった」とのこと 
大学入学後に当院(整骨院)を受診時19歳
 患肢は左手 利き手は右手大学受験の為
患肢は特に使用せず
大学入学後
バスケットボールプレイした時に疼痛出現した

この件完全骨折ではなく不全骨折でした
上記を見ていたらわかる通り
骨折部が癒合せず、癒合不全を起こしていました

背景(バックボーン)はそのくらいで

エコーを見ていきましょう

まずは基本 前記事で
お伝えした身体所見で見当をつけてから
健患側と比較すること
👇線状高エコーが離断されているのがわかる

エコー掌側より観察

レントゲン画像👇

レントゲン

CT検査👇

画像34

後に撮影したMRI👇

MRI レントゲン

その後はサムスピカ型プライトンシーネ固定
そしてLIPUSを施行しました

掌側より観察 川島

4週もすれば疼痛は軽減し
スナッフボックスの圧痛も減少してきました

舟状骨骨折

患者も疼痛が減少してきたら
固定にわずらわしさを感じてきます
そのため
必ずエコーで経過を一緒に観察しながら
アドヒアランスを得て
固定のレベル・強度を調節していきましょう

図5

アドヒアランス Adherenceとは

舟状骨骨折

病気に対する治療方法について
患者が投薬・手術・リハなど

理解・納得した上で
自主的に実施、継続することを指す。
元来の医師や薬剤師が主体となって
決定された治療方法を患者が守る
というコンプライアンスの考え方が変換された

患者が治療法について積極的に参加することで
治療の中断や不規則な使用が減ることが
期待されている
さらに
医師と患者の関係が良好であるほど
継続され効果が非常に可能性高い

図2

ここではよく観察できる
 掌側走査 短軸のみのご紹介となりました
きちんと解剖を理解しエコーに励めば
必ずできるようになります

固定

図5

舟状骨って,転位の度合などで
いろんな固定方法があります

過去の文献から
どのようにして固定を議論されてきたか
見ていきましょう

short or long  thumb spica cast
どちらがすぐれている?

舟状骨骨折 (1)

・Long thumb spica cast
上腕遠位~手関節MPまで)
・Short thumb spica cast 
前腕近位~手関節MPまで)

最近では,Longはあまり見ないが!なぜか?

Gellmanらは,long thumb spica castと
前腕からのshort thumb spica castを比較して
骨癒合までの期間は
有意に前者(Long)が短かったと報告.

このとき考察されたのが
前腕回内回外時の舟状骨骨折部に与える影響だ

回内回外

付随するように
また,Russeら, Eddelandra
どちらもLong thumb spica castを行って
良好な結果を報告している

だがしかし,これに対して

 Falkenbergらは
cadaver(ご献体)を使った実験で
前腕回内外運動は舟状骨骨折部の可動性に
影響がなかった
ことを報告

患者に寄り添ったレビューを集めた
Saedenらの報告でも
LongよりもShortを推奨している
なぜなら!
長期間このタイプのギプスは
患者にとって苦痛であったため
患者への満足度(satisfaction)の
向上を図る必要性を重視したためです

そのため
Short thumb spica castを推奨されている

母指も固定は必要?

舟状骨骨折 (1)

指も止める必要性があるのか?

いつも考えます

皆さん!ココ何となく
手関節背屈位・母指外転位で!
思考停止してませんか?

一緒に文献から固定を考えましょう

手関節肢位から考えましょう

手関節固定肢位
Yanniはcadaver(ご献体)の実験および
舟状骨偽関節の手術中の所見で
「骨折部は掌屈で閉鎖し背屈で開大する」ため
手関節中間位 or 軽度掌屈位での
Scaphoid castを勧めていた

解剖学的には👆のほうが骨折部には良い状態だったと考える

一方,lambidgejは患者を用いた報告で
手関節掌屈20°と背屈20°での
Colles type castの比較で両者には
骨癒合に差はなく
6か月後のリストスコア(手関節評価)では
掌屈位固定群の背屈制限の残存が強かったため
手関節軽度背屈位での固定を推奨している

臨床的には 背屈制限残存はかなり嫌ですね
上記二つを合わせると
手関節 中間位~軽度背屈位が良いということになります

続いて

母指外転位固定はどうか

clayらは
Colles type castScaphoid castを比較して
両者に骨癒合の差はなく
固定後の機能回復にも差はなかった
ギプス固定中の手の機能
前者のほうが良かったと述べている.
上記の理由により
McQueenHerbert’iHambidgel
Colles type castを推奨している.

だがしかし

Yanniらは,転位の仕方によっては必要性があることをあげている

母指外転

なぜなら
母指外転は
骨折部を閉鎖する作用があるためです

保存 手術

保存と手術の境目で

我々は手術はできませんが
どのラインで手術に移行するのかは
知っておいたほうが良いです

まずは保存療法成績を少しだけ
 骨癒合率は88~95%,97%など
骨癒合率の高さが報告されています.

Herbertらはギプス固定期間を6週間までとして
癒合しない場合には手術が必要と述べている

McQueenGunalVinnars
6~8週間固定を行い
骨折型によっては
12週間までを限度として保存療法を続けている

Dias6~8週問のギプス固定後
X線写真と必要な場合には
CTも行い骨癒合を判定
離開がみられるようならば
手術治療に変更する
と述べている

その他文献
症例報告では6週のX線写真で離開
もしくは骨嚢胞変化がみられても
8週のX線写真で縮小してくる症例

多く紹介されている

多くの場合は
骨癒合または骨癒合傾向の判定は8週間で行い
骨癒合傾向にあると判断した症例では
さらに3~4週間固定を続けられている
平均ギプス固定期間は8週間であったが
12週間以上行った症例も多数みられた

近年では

8週間のギプス固定後のX線写真で
骨癒合が得られないと判断した場合は
経皮的内固定術に切り替えることが推奨されてる

対診医により手術適応といわれる前には
柔整師として結果を出したいですね

やはり

やはり手術が多い

スクリューを用いた低侵襲の
経皮的内固定術の代頭により
保存療法より経皮的内固定術が
選択される傾向が高い

ある文献での報告

32年間で治療を行った
新鮮舟状骨骨折は254例であり
保存療法が119例,経皮的内固定術が135例
現在拮抗しているが,圧倒的に増加傾向である

経皮的内固定術の症例は135例,
そのうち3例で骨癒合に失敗し偽関節となった
両者には骨癒合率
最終的な手関節機能に差はなかった
骨癒合までの期間,社会復帰までの期間は
経皮的内固定術が有意に短かったと報告

Vinnarsら
肉体労働者では非肉体労働者と比べて
社会復帰は経皮的内固定術が
保存療法より早かった
が,
医療費に関しては非肉体労働者では
保存療法が経皮的内固定術より安かった
と述べている.

医療費安い
保存療法が唯一優っている所ですかね

柔整師にできることは
・丁寧な固定(取り外しできる包帯など)
・患部の清拭,きめ細かな患部のチェック
適切な固定への変更など
(治癒に応じて固定強度・範囲を縮小していく)
保存療法を選択された患者には
自信をもって対応したいですね

実践固定

実践固定法


ここでは,私が接骨院時代にしていた
固定を紹介します
私が遭遇した舟状骨骨折は
勤務4年で6例(4例が新鮮,2例が偽関節)

そのうちの1例(偽関節)のみ
short thumb spica castを行いました

それ以外は👇の
サムスピカ型 プライトンシーネを行いました

今回はプライトンシーネをご紹介します

舟状骨固定サムスピカ

固定の範囲は上記の通り

舟状骨固定サムスピカ (1)

穴が開いてるのは気にしないでください

舟状骨固定サムスピカ (2)

固定は一日おきに来院いただき
その都度,巻きなおす形になります
なお,前記したとおりLIPUSも来院毎に照射しております

👇一連の動作を解説した動画になります

舟状骨骨折 サムスピカ型 プライトンシーネ

初期の固定はいつもこの固定を行っております
私の経験では
対診医の判断で,固定の強度が上げてと指示され
整骨院でキャスト固定をしました

さらに固定の動画です
これは海外での固定の一例です


医接連携

図5

今回は身体所見やエコー・固定法より
先に誰でも記載できる
施術情報提供書の
簡単にテンプレートを作成しました

・施術情報提供書

私が実際に使用した紹介状(施術情報提供書)
(👇画像参照ください)

舟状骨骨折のテンプレートおいておきます
上記にマネて,あなたの患者に合わせた
患者情報・症状・処置などを添削すれば,即座に使用できます。
※ほかの骨折や外傷以外の慢性疾患にも!

何度も言いますが,誤字・脱字はもちろんのこと
柔道整復師として分不相応な言葉はダメ絶対です

患者に,整骨院での対診も可能なこと
エコー,物療,固定,治癒計画,等
上記を伝えることにより医科で確定診断後
あなたのところで施術を望んでもらえると思います

最後に

私見ですが
前記事の身体所見,評価法
そして,今回のエコー観察を行えば
見逃すことは無いと思っております

参考文献もリンクを貼れるところは
貼っておりますので
後学の為にも一度赴いてみてください

本年もご購読くださいまして
ありがとうございました
来年も外傷マガジンのライターとして
皆様に有益かつ
リアルな情報お伝えしていきたいと思います

良いお年をお迎えください

舟状骨骨折 (2)

参考文献

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. 2014 Feb;21(2):101-21. 

上肢骨折の保存療法 :武田 功, 竹内 義享 , 大村 晋司
Ultrasound for the early diagnosis of clinically suspected scaphoid fracture:Jeffrey A Senall,JosephM Failla, J Antonio Bouffard, Marnix vanHolsbeeck:2004 May;29(3):400-5. doi: 10.1016/j.jhsa.2003.12.012.
Examination tests predictive of bone injury in patients with clinically suspected occult scaphoid fracture:Koray Unay , Bahadir Gokcen, Korhan Ozkan, Oguz Poyanli, Engin Eceviz, 2009 Dec;40(12):1265-8.doi:10.1016/j.injury.2009.01.140. Epub 2009 Jun 13.
Detecting scaphoid fractures in wrist injury: a clinical decision rule
✅受傷時に見逃された舟状骨遷延治癒骨折に対して,低出力超音波パルス(LIPUS)治療を行った1例:伊佐 智博, 安里 英樹, 高江洲 美香, 大城 朋之, 勢理客 久, 金谷 文則,整形外科と災害外科,2012 年 61 巻 1 号 p. 41-44
嚢胞型を呈する舟状骨骨折に対する低出力超音波パルス療法の効果,池田 和夫, 納村 直希, 多田 薫, 富田 勝郎, 骨折 (0287-2285)32巻4号 Page676-678(2010.12)
Herbert TJ, Fisher WE. Management of the fractured scaphoid using a new bone screw. J Bone Joint Surg Br. 1984 Jan;66(1):114-23. doi: 10.1302/0301-620X.66B1.6693468. PMID: 6693468.
The role of ultrasonography in the diagnosis of occult scaphoid fractures
What is the role of ultrasonography in the early diagnosis of scaphoid fractures?
Occult fractures of the waist of the scaphoid: early diagnosis by high-spatial-resolution sonography
Systematic Review of Diagnosis of Clinically Suspected Scaphoid Fractures
Treatment of scaphoid waist nonunions with an avascular proximal pole and carpal collapse. A comparison of two vascularized bone grafts
 ✅受傷時に見逃された舟状骨遷延治癒骨折に対して、低出力超音波パルス(LIPUS)治療を行った1例:伊佐 智博,etal,整形外科と災害外科 (0037-1033)61巻1号 Page41-44(2012.03) 
✅恵木 丈,手関節骨間靱帯損傷の理学的所見: Orthopaedics (0914-8124)32巻10号 Page36-40(2019.10)
✅井上 五郎,舟状骨骨折治療のボーダーライン:Orthopaedics (0914-8124)31巻11号 Page73-80(2018.10)
 ✅田上 学, 阿部 靖之,骨折部の形態に基づいた舟状骨骨折の治療経験:骨折 (0287-2285)35巻2号 Page250-252(2013.05)
✅井上 五郎,舟状骨骨折と保存療法:Orthopaedics (0914-8124)23巻2号 Page33-38(2010.02)
✅小嶋 豊英, 藤岡 宏幸, 小山 智士, 田中 寿一, 吉矢 晋一, 西川 哲夫:青少年スポーツ選手における新鮮安定型舟状骨骨折および骨挫傷に対する治療,日本臨床スポーツ医学会誌 (1346-4159)24巻2号 Page283-288(2016.04)
Emma Fitzpatrick etal:The use of cone-beam computed tomography (CBCT) in radiocarpal fractures: a diagnostic test accuracy meta-analysis,Skeletal Radiol. 2021 Sep 20. doi: 10.1007/s00256-021-03883-9. Online ahead of print.

✅Bayesian Statistics to Estimate Diagnostic Probability of Scaphoid Fractures from Clinical Examinations: A Meta

画像引用および参照

Sobotta's Anatomy plates
上肢骨折の保存療法 :武田 功, 竹内 義享 , 大村 晋司
Anatomy of the Human Body:Henry Gray


最後に


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