パイオニア環境分析のつもり(1/5~20)収穫祭中隊再建を
■はじめに
いよいよチャンピオンズカップ・サイクル3が開始となりました。
サイクル3はパイオニアでの開催ということで、再びパイオニアに取り組んでいる方も多いと思います。MTGOの情報をまとめつつ、最新のトレンドをお伝えしていければと思います。
■メタゲームブレイクダウン
なんと、久々にRakdos Midrangeが首位から陥落しました。約2か月ぶりの出来事です。2か月前はIzzet Phoenixが僅差で抜いたのですが、今回は宿敵・Mono-G Devotion、そしてじわじわと勢力を伸ばしつつあったAngelsに抜かれました。メタゲーム分析については次項に詳しく書きます。
3強に続いてはAzorius Control、Lotus Comboのコントロール・コンボ各代表も堅調です。特にAzorius ControlはAngelsのような横並べ系アグロ、Lotus Comboにも強く出られる点で評価を上げています。一方で、Gruul Midrangeは得意相手のRakdos Midrangeが減少したため少し勢力を落としています。
Rakdos Midrangeの減少に伴い、その勢力の一部が前回紹介したMono-B Midrangeへシフトしている兆しも見えます。それ以外ではアグロやラクドス系に強いSacrificeが徐々に増加しています。
今回から最近好調のLotus ComboとAzorius Controlを加えました。Spiritsは低調な期間が続いたため削除しました。Rakdos Midrangeのパフォーマンスが下がり、Mono-G Devotionのポジションが上がっている様子が見えると思います。
Lotus Comboは使用率が上がりつつありましたが、苦手のMono-G Devotionが伸びると落ちる、という分かりやすい関係にあることが、グラフから見て取れます。
■メタゲーム分析:Rakdos Midrangeへの回答を得たメタゲームにシフト
さて、メタゲームの推移ですが、Rakdos Midrangeへの現環境でのひとまずの回答としては、「スケール勝負で挑む」ことがあらためて正解として示されたようです。
上記動画でも触れられていますが、ラクドスミッドレンジには正攻法で挑むのではなく「スケールという見方で挑む」ことが一つの解となっています。
ただし緑単信心は《苦難の影》《ヴェールのリリアナ》による早期マウント、独創力コンボは早期クロック&《思考囲い》+αによる手札破壊マウントと安定性の差で、大きく差をつけることが難しい構築になっていました。
しかしここにきて、《ヴェールのリリアナ》がメタゲーム上弱体化したことで、採用率が激減。これにより、トップ叩きつけ合い勝負の際に「マナの差」が出せるようになりました。いままで捨てていた手札(の土地)を、両者しっかり置くようになったということです。
この恩恵を受けたのが、まずは緑単信心。マナさえしっかり伸ばせば《収穫祭の襲撃》からのチェインで圧倒的な盤面をつくることができます。
そして、図らずもこの恩恵を受けたのが、8カンパニーこと白緑天使。《カイラの再建》はマナさえ伸びていればトップデッキからそのまま致死量のクロックを生み出す可能性を秘めており、劣勢を1ターンで覆せるポテンシャルを秘めています。
ラクドスミッドレンジは基本的にカードを1対1交換しながら、アドバンテージ源(《鏡割りの寓話》《採骨の巨人》など)で優位を築いていくデッキなので、こうしたスケールの大きなカードは苦手としています。《ヴェールのリリアナ》不在でそうしたカードの価値が大きく高まってしまったことから、環境トップから引きずり降ろされてしまいました。
とはいえ、別の方法でこうしたカードと1対1交換を取ることができます。いわずもがな打消し呪文がそれにあたり、青白コントロールのポジションが伸びているのは、そうした大振りな動きのデッキが増えたことに他なりません。もともとが全体除去や打ち消しを基調とするデッキのため、スケール勝負に付き合わずに済むのです。
このような背景から、青白コントロールのポジションが徐々に伸びてきているようです。ラクドスミッドレンジとも大きく有利不利が付かない点も、使用を後押ししています。
その次はというと、過去の実績から、フラッシュ系のデッキ、具体的にはイゼット系やスピリットが勝ちやすいメタゲームにシフトします。そうすると、それに強いラクドスが……という循環が見えてきます。非常に健全なメタゲームながら、どの位置かを読むのは難しい状況になっています。
まずはその日の仮想敵を明確にすること、そして苦手な相手に勝てる構成のサイドボード構築を研究することが求められます。苦手は苦手で割り切ることも重要なのかもしれませんが……
■注目デッキ
・注目デッキ1:Izzet Control / イゼットノーフェニックス、Izzet Pyromancers / 8パイロマンサー
筆者が(Explorerですが)とあるデッキを調整している際、全く歯が立たないデッキがありました。それが今回紹介するIzzet Controlです。1/7のPreliminaryが直近の初出ですが、基本的に年初はPhoenix型が主流でした。
デッキの大部分を1マナのスペルが占める、ゼロックス系のデッキでありながら、《弧光のフェニックス》が入っていません。《帳簿裂き》をクロックに据えつつ、他のクロック要素は《鏡割りの寓話》、そして《弾けるドレイク》のみ。このことから、基本的に軽量スペルによるコントロールデッキとしての性質を持っています。
《帳簿裂き》《鏡割りの寓話》《弾けるドレイク》に共通するのは、単純な1対1交換にならないクリーチャーであること。つまり、フィニッシャー要件としてラクドスミッドレンジの求める1対1交換に容易に応じないことを意味しています。
またデッキ全体を軽量に構成し、2マナ域以降を主戦力とする白緑天使、構えるデッキながら動きが大振りになりがちなアゾリウスコントロールにテンポの差で勝つ戦略を取っています。物量さは《宝船の巡航》で押し返せばよい、という割り切りです。
デッキの性質上マナクリーチャー擁する緑系デッキに先行されると厳しい戦いになりがちですが、戦略的には今のメタゲームに合致しているように見えます。ただし、このようなデッキやスピリットが増えてくるなら、ロングゲームを苦にしないイゼットフェニックスへの回帰が起こりそうです。
パイオニアの環境も1枚1枚が重いカードになってきましたので、こうした軽快な動きのデッキを持ち込むのも面白いかもしれませんね。同様の思想で組まれたIzzet Pyromancersもご紹介しておきます。
・注目デッキ2:Uw Spirits / 青単スピリットt白
スピリットは青単氷雪型、バントカンパニー型の2種類がありましたが、一時期流行し、一昨年のチャレンジャーデッキにも採用された青白型が散見されるようになりました。ただし、青単タッチ白の構成で、基本的に青単を基軸とし、メインとサイドにごく少数の白いカードが入っているのみです。
メインには青白の一番の強みである《呪文捕らえ》がフル採用。青単では《とんずら》以外で対処不能な《至高の評決》に対応できるカードで、汎用性も高いためあらゆる場面で腐らない優秀なカードです。
またメイン唯一の白単色カード《クラリオンのスピリット》は、スピリットシナジーもさることながら、青単特有の「行動回数の多さ」を打点に結び付けられる貴重なカードです。
白単アグロ的なデッキで運用した場合「自分のメインフェイズに全力展開、その返しでスイーパー」という情けない結果になることも多かったのですが、このデッキでは《鎖鳴らし》から相手のターン終了時に繰り出せるため奇襲性抜群。《鎖鳴らし》1体の場から《クラリオンのスピリット》《至高の幻影》と出すだけで、総打点は3+3+2+1で9点。他のカードも絡むともっと打点が出せます。
青単氷雪型の《隆盛するスピリット》が採用できないのが多色型のデメリットですが、ある程度育てる手間が必要なことに加え、ラクドスには《致命的な一押し》、グルールには《引き裂く流弾》で対処され、緑単や天使にはサイズ不足、とメタゲームに対応できていない部分もありました。
強力なクリーチャーではありましたが、白を足すメリットの方が大きいと判断されているようです。《不詳の安息地》の変わりは《変わり谷》が務め、隙の無い攻防に一役買ってくれます。
サイドボードは、速いデッキ(緑系や白単アグロ)対策の《ポータブル・ホール》、継戦能力を高める《救出専門家》、高タフネス生物や置物対策として用途の広い《邪悪を打ち砕く》など白のユーティリティを加え、主に序盤の対応力を高めています。
奇しくもイゼットと同じく軽量スペルでまとめたクロック・パーミッション構成となっています。対ラクドスには他のデッキほどの優位性がありませんが、メタゲーム上に大振りなデッキが多ければ多いほどチャンスなので、勝てると判断したらこうしたデッキに乗り換えることも検討すべきでしょう。
・注目デッキ3:Seleznya Company / 白緑カンパニー
思わず「デスタク?」と思ってしまうようなクリーチャーの選定。ユニークな白緑のカンパニーデッキが見つかったのでご紹介します。
白緑天使は2マナ域以降の横並びシナジーを重視するミドルテンポに近いアグロ、グルール機体はマナクリーチャーから機体を押し付けるプロアクティブな戦略が持ち味のデッキでしたが、こちらのセレズニアカンパニーはその両者の中間を縫ったようなデッキです。
基本はマナクリーチャーからの《集合した中隊》ですが、打点よりも相手の妨害や行動制限効果を持ったクリーチャー群で構成されています。
重い動きの相手に手札を縛る《精鋭呪文縛り》
相手のスペルを重くして妨害する《サリア》《レーデイン》
相手に行動制限をかける《復活の声》
上記3つの幅広い役割を担う《選定された平和の番人》
万能除去《スカイクレイブの亡霊》
墓地対策《漁る軟泥》
こうしたヘイト系生物を軸に相手の行動を縛り、相手のデッキが本領を発揮できないうちに勝つ、という思想です。これもクロックパーミッション戦略の一部と言えなくもありません。
打点重視ではなくあくまで相手の手を潰していく戦略がメインなので、非常にプレイングがタイトですが、多くの相手に対応することができ、対応力も高いデッキに仕上がっています。腕に自信のある方はぜひ使ってみてください。
■終わりに
サイクル3の最中ですが、もうすぐ『ファイレクシア:完全なる統一』が発売となります。
毒カウンターや複数の「完成化」PW、油カウンターなど、様々なギミックが仕込まれています。英雄譚のカウンターを「増殖」させる動きはどこまで実戦レベルになるのでしょうか。あれこれ想像を巡らせるのが楽しみですね。
発売間近ではありますが、それまでしっかりと現環境を走り切りましょう!
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