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パイオニア環境分析のつもり(10/10~18)新コンボ、対コンボの苛烈な争い

■はじめに

 こんばんは。他の記事を書いている間に、環境分析のほうのスパンが空いてしまいました。楽しみにしている方がいれば、申し訳ございません。

 「ゼンディカーの夜明け」実装直後のメタゲームは前回記事の通りですが、皆さんにもお馴染みの「あの」コンボデッキがパイオニアを席巻し始めました。それに対応するかのように、コンボに強いデッキも復権の兆しを見せています。

 以下いつものメタゲームブレイクダウンです。

 ※今回は集計イベント数およびデッキ数が多いため、各イベントの上位デッキのみ掲載します。

▼Pioneer Preliminary 10/10

5-0
Spirit
Orzhov Human
 
4-1
Spirit
Naya Winota
Gruul Aggro
4C Omnath
Niv-to-Light


▼Pioneer Challenge 10/10

6-X
Spirit
 
5-X
Mono-B Aggro
Seleznya Aura
4C Omnath
Niv-to-Light
Niv-to-Light
Lotus Combo

▼Pioneer Challenge 10/11

6-X
Esper Yorion
 
5-X
Mono-B Aggro
Orzhov Aura
Boros Aggro
Spirit
Jeskai Fires
Spirit

▼Pioneer Champ Qual 10/11

7-X
Spirit
Orzhov Aura
Gruul Aggro
Jeskai Fires
Jeskai Fires
The Spy
 
6-X
Mono-W Aggro
Mono-B Aggro
Mono-B Vampire
Mono-B Aggro
Mono-G Devotion
Orzhov Aura
Orzhov Aura
Orzhov Aura
Rakdos Arcanist
Rakdos Arcanist
Esper Yorion
Niv-to-Light
Niv-to-Light
Niv-to-Light
Lotus Combo
Lotus Combo


▼Pioneer Preliminary 10/12

5-0
4C Omnath
 
4-1
Gruul Aggro
Esper Yorion


▼Pioneer Preliminary 10/13

5-0
The Spy
 
4-1
Gruul Aggro
4C Omnath
4C Omnath
The Spy

▼Pioneer Preliminary 10/14

5-0
The Spy
 
4-1
Mono-B Aggro
The Spy
The Spy

▼Pioneer Preliminary 10/16

4-1
Mono-B Aggro
Boros Aggro
Boros Aggro
Niv-to-Light

▼Pioneer Challenge 10/17

6-X
Jeskai Fires
Jeskai Fires
Sultai Delirium
4C Omnath
Niv-to-Light
 
5-X
Mono-B Aggro
Spirit
Orzhov Aura
Orzhov Aura
Gruul Aggro
Esper Yorion
Jeskai Fires
4C Omnath
The Spy
The Spy
The Spy
Lotus Combo

▼Pioneer Challenge 10/18

6-X
Sultai Reclamation
 
5-X
Spirit
Boros Aggro
Dimir Control
Dimir Control
Sultai Dredge
4C Omnath


■メタゲームブレイクダウン

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 2週間弱の集計期間において、実に多様性のある結果となりました。トップメタの黒単こそ15%弱を記録していますが、使用率3%以上のアーキタイプは13種類。

 その中で大躍進したのが新顔となるコンボデッキ・The Spy。元々はレガシーやパウパーなどで使われていた「1枚コンボ」デッキですが、「土地として使えるスペルカード」の実装でパイオニアやモダンでも使用可能になりました(後述)。

 前回の禁止改訂によって環境からコンボデッキが一括で締め出された後に、ティムール再生やファイアーズのような「踏み倒し」系、またロータスコンボなど、コンボ勢力はしぶとく生き残っています。
 しかし《思考囲い》が恒常的に使用されるフォーマットである上、「対コンボ」的な立ち位置のアグロデッキもあり、そこまでの勢力を築くには至っていません。

 総じて、現時点ではバランスのとれたメタゲームとなっています。今後コンボが増えていくかどうか、要注目です。


■注目デッキ1:The Spy

SANPOP (1ST PLACE)
PIONEER CHAMPS 12216020 ON 10/11/2020
 
MDFC(26)
4《絡みつく花面晶体/Tangled Florahedron》
3《ブラックブルームのならず者/Blackbloom Rogue》
3《カザンドゥのマンモス/Kazandu Mammoth》
3《ペラッカの捕食/Pelakka Predation》
4《バーラ・ゲドの復活/Bala Ged Recovery》
4《海門修復/Sea Gate Restoration》
4《アガディームの覚醒/Agadeem's Awakening》
4《変わり樹の共生/Turntimber Symbiosis》
4《ハグラの噛み殺し/Hagra Mauling》
3《巨森の補強/Vastwood Fortification》

 
creature (25+10)
4《地底街の密告人/Undercity Informer》
4《欄干のスパイ/Balustrade Spy》

4《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam》
2《銀打ちのグール/Silversmote Ghoul》

3《楽園のドルイド/Paradise Druid》
4《森の女人像/Sylvan Caryatid》
2《憑依された死体/Haunted Dead》
2《世界棘のワーム/Worldspine Wurm》
 
sorcery (19+19)
4《思考囲い/Thoughtseize》
3《集団的蛮行/Collective Brutality》
3《新生化/Neoform》
4《異界の進化/Eldritch Evolution》
4《這い寄る恐怖/Creeping Chill》
1《悪戦/Driven》 // 《苦闘/Despair》
 
instant (0+7)
 
sideboard (15)
1《エメリアのアルコン/Archon of Emeria》
1《再利用の賢者/Reclamation Sage》
2《強迫/Duress》
3《濃霧/Fog》
4《突然の衰微/Abrupt Decay》
4《神聖の力線/Leyline of Sanctity》

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 レガシーやパウパーでお馴染みの即死コンボ・The Spyです。様々な記事で特集が書かれているため詳細はそちらに譲りますが、パイオニア版の動きは概ね下記のような形です。

1.(黒)を含む4マナを捻出して、「《地底街の密告人》キャスト+能力起動」or「《欄干のスパイ》をキャストしEtBを解決」のどちらかを行う。能力の対象は自分、ライブラリーがすべて墓地へ。
2.《這い寄る恐怖》の能力誘発で枚数×3点のライフドレイン、《世界棘のワーム》がライブラリーに戻る。
3.ライフを得たことで、ターン終了時に《銀打ちのグール》が誘発型能力で戦場に戻る。
4.相手のターン終了時に《秘蔵の集合体》が墓地から戦場に戻る。
5.返しのターンで総攻撃、勝利。※ライブラリーアウトは手順2.の《世界棘のワーム》で回避可能。

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 相手を攻撃する必要があり1ターンの猶予がありますが、ハンデスによる妨害が可能な事に加え、ソーサリースピードのスイーパーが効かないため、対処手段は限られます。

 なお、デッキは60枚で組むことができますが、パイオニアでは80枚型が主流です。コンボパーツのうち手札に入ってほしくないものが多いため、ライブラリーを多くすることでその確率を低く抑えています。

 パイオニアで活躍する(した)コンボデッキの例にもれず、コンボ一辺倒ではなく、途中からはミッドレンジとしても振る舞える器用さが売りです。デッキの性質上、マナフラッドとは無縁なことも長期戦の強さを支えています。

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 上記リストでは《新生化》《異界の進化》でコンボパーツを無理やり引っ張りだすことでキルターンを早めています。最速3Tで決まるコンボのため、相手の対策が間に合わない事も多く、インバーターコンボとはまた違った異次元の強さを持つデッキです。

 とはいえアンタップイン12枚(しかも3点ライフロス付)はマナベースとしては脆弱で、高速デッキや《思考囲い》にコロッと負けてしまうこともしばしば。サイドボードは《虚空の力戦》《安らかなる眠り》という2大天敵置物の対策、ハンデス対策の《神聖の力戦》、アグロ相手の時間稼ぎ《濃霧》などで構成されています。

 今後存在感を高めるであろうコンボデッキ・The Spy。今後の動向に注目です。

■注目デッキ2:グルールアグロ

WIZARD_2002 (2ND PLACE)
PIONEER CHAMPS 12216020 ON 10/11/2020
 
creature (33)
4《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
4《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》
3《終わりなき踊りのガリア/Gallia of the Endless Dance》
4《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》
4《軍勢の戦親分/Legion Warboss》
4《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
2《無謀な奇襲隊/Reckless Bushwhacker》
2《探索する獣/Questing Beast》
2《栄光をもたらすもの/Glorybringer》
 
instant (4)
4《アタルカの命令/Atarka's Command》
 
artifact (2)
2《エンバレスの宝剣/Embercleave》
 
land (21)
4《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
6《森/Forest》
6《山/Mountain》
 
sideboard (15)
2《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
2《マグマのしぶき/Magma Spray》
2《レッドキャップの乱闘/Redcap Melee》
3《引き裂く流弾/Rending Volley》
4《破壊的な享楽/Destructive Revelry》
2《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》

 オルゾフオーラやボロスアグロが復権した理由の一つに「両面土地によるマナベースの安定化」がありますが、一番恩恵を受けたのは友好2色のテンポデッキです。具体的にはセレズニア、ディミーア、そしてグルールです。

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 友好2色は《港町》などの俗称「シャドウランド」、あるいは《灌漑農地》などアモンケットの「2色サイクリングランド」というタップイン土地が多く、アグロ向けのマナベースが構築できませんでしたが、今回の両面土地で一気に強化されました。

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 グルールアグロはその恩恵をフルに活かしたデッキで、マナクリーチャーからの「8ラブル」を軸にしつつ、《炎樹族の使者》による横並びからの《無謀な奇襲隊》《アタルカの命令》《エンバレスの宝剣》で、速いターンの決着を狙います。

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 ミッドレンジやコントロールが打ち消しを使うことが少なく、総じて相手のターンに動くことが少ないパイオニアでは、「速攻」持ちが額面以上の働きを見せます。各種ゴブリントークンに加え《終わりなき踊りのガリア》、《探索する獣》、《栄光をもたらすもの》とつながると相手は対処が難しくなります。

 サイドボードも軽く効果的なカードが多い印象です。《燃えがら蔦》よりも《破壊的な享楽》と打点、テンポ重視。上記リストの他にも《レッドキャップの乱闘》なども採用候補に挙がります。

 コンボには速度勝負が必須です。《大歓楽の幻霊》が使えるボロスアグロも勢力を伸ばしていますが、ライフゲイン手段の多い上陸系相手に息切れするシーンも見られます。継続打点を求める場合はグルールアグロも有力な選択肢のひとつでしょう。

■注目デッキ3:スゥルタイ再生


MRCAFOUILLETTE (1ST PLACE)
PIONEER CHALLENGE 12218059 ON 10/18/2020
 
creature (3)
3《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
 
sorcery (2)
2《絶滅の契機/Extinction Event》
 
instant (24)
4《選択/Opt》
2《致命的な一押し/Fatal Push》
4《検閲/Censor》
2《否認/Negate》
1《熟考/Deliberate》
1《無情な行動/Heartless Act》
1《取り除き/Eliminate》
4《悪意ある妨害/Sinister Sabotage》
3《薬術師の眼識/Chemister's Insight》
1《巻き直し/Rewind》
1《タッサの介入/Thassa's Intervention》
 
enchantment (6)
4《サメ台風/Shark Typhoon》
2《荒野の再生/Wilderness Reclamation》
 
land (25)
1《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
1《ヴァントレス城/Castle Vantress》
1《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
4《寓話の小道/Fabled Passage》
1《森/Forest》
4《内陸の湾港/Hinterland Harbor》
3《島/Island》
1《伐採地の滝/Lumbering Falls》
1《草むした墓/Overgrown Tomb》
1《沼/Swamp》
3《湿った墓/Watery Grave》
4《ゼイゴスのトライオーム/Zagoth Triome》
 
sideboard (15)
1《厚かましい借り手/Brazen Borrower》
1《概念泥棒/Notion Thief》
2《致命的な一押し/Fatal Push》
1《減衰球/Damping Sphere》
3《神秘の論争/Mystical Dispute》
1《魂の粉砕/Soul Shatter》
2《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》
1《絶滅の契機/Extinction Event》
1《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
2《永遠神の投入/Enter the God-Eternals》

 スゥルタイカラーの《荒野の再生》デッキが登場しました。《ウーロ》をタッチしたコントロールの亜種としてみた方がよさそうです。《発展//発破》という一撃必殺兵器の採用を捨ててまで、黒をタッチした理由、それは「確定除去」です。

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 メインデッキの黒要素は《絶滅の契機》《致命的な一押し》《取り除き》《無情な行動》といった黒の除去です。従来のティムール再生では《神々の憤怒》などの点数除去がメインとなり、相手のキーとなるクリーチャーを打ち漏らすことがありました(黒単の《騒乱の落とし子》、上陸の《オムナス》、各種デッキの《ウーロ》《クロクサ》、《サメ台風》トークン、etc)。
 環境的に《致命的な一押し》が腐る場面が非常に少ないため、この変更は理にかなっています。また、《絶滅の契機》(や、《影の評決》)はトップメタの黒単アグロに劇的に刺さります。

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 基本は《ウーロ》から《荒野の再生》を早期に設置、各種ドローで手札を増強しながら土地を伸ばし、12枚採用した打ち消しのバックアップを受けた《サメ台風》でフィニッシュします。ディミーアコントロールと違い、消耗戦には《ウーロ》で強く出られる点もポイントです。

 繰り返しになりますが、パイオニアではコンボ、ミッドレンジ、コントロールのほとんどが《思考囲い》に頼り、打ち消し要素を削ったリストが多いメタゲームです。こうした環境ではトップデッキで逆転されることもしばしば。
 このデッキはそうしたメタゲームを受け、敢えて《思考囲い》を削り、インスタントタイミングでの行動を重視しています。加えて、確定除去を採用することで、コンボやミッドレンジに対応できるコントロールを目指しています。

 サイドボードには対アグロや対青系コントロールを見据え、除去や打ち消しの増量オプションパーツが採られています。対アグロパーツの《永遠神の投入》は重く隙が大きいものの効果も大きく、その隙を消してくれる《荒野の再生》とは相性がいいカードで、納得の選択ですね。

 ティムール再生にも良さがあり、同イベントではどちらも入賞しています。今後スゥルタイカラーが流行るかどうか、注目したいところです。

■終わりに

 今回は合計224デッキの集計を行いました。意外とメタの流れもゆるやかで、既存デッキと新デッキが程良い比率でメタゲームを形成しています。その中でThe Spyとどう向き合うかが課題となっていきます。使う側、使われる側ともに研究途上であり、今後イノベーションも起きてくるのではないでしょうか。

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 また、モダン同様、《創造の座、オムナス》+《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が使えるフォーマットとして一定の需要がありそうです。
 パイオニアは比較的参入障壁も低く、禁止も一服したため、「手持ちの《オムナス》を使いたい」というニーズにも(今のところは)応えてくれます。テーブルトップの大会開催も増えてきましたので、ぜひパイオニアへの参加をご検討ください!

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