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パイオニア環境分析のつもり(8/9~22)やっちゃいなよ、そんなタフ1なんか!

■はじめに

 みなさんこんばんは。日本国内でも感染拡大が進んでいますが、いかがお過ごしでしょうか。

 さて国内のMtGにおいては、緊急事態宣言の延長・地域拡大が行われた関係で、テーブルトップの大会開催は引き続き自粛される方向で進んでいます。
 「イニストラード:真夜中の狩り」プレリリース等にも影響があるかもしれません。引き続き注視して見ていきたいと思います。

 とはいえ、主戦場がオンラインとなっているパイオニアでは、イベント等によるメタゲームへの影響はもともとありません。引き続きMTGO上でのメタゲーム推移について見ていきましょう。

■メタゲームブレイクダウン 8/9~22

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 ここにきてサクリファイス系デッキが一気に躍進、全体の6分の1を占める形でトップメタに躍り出ました。メタ占有率17.8%は「ストリクスヘイヴン」以降では最大(当note調べ)です。

 逆に、前回から衰退したのは5色ニヴミゼットスピリット
 5色ニヴミゼットは単純に《影の評決》が間に合うかどうかの戦いになりますが、速度差やワンターンキルの存在が響き苦戦を強いられているようです。前置きでコンボ成立をある程度抑止できる《ヤシャーン》を投入するリストが増えています。
 スピリットはタフネス1のクリーチャーが多く、《波乱の悪魔》がとにかくきついデッキになります。また《ボーラスの城塞》を打ち消す手段に乏しいのもマイナスポイントです。

 他には、サクリファイス同様に大きく躍進したのがラクドスアルカニスト。序盤のサクリファイスの攻めに豊富な除去手段とハンデスで対抗でき、さらにサクリファイス側が《死の飢えのタイタン、クロクサ》への対抗手段に乏しいため、一度着地してしまうとかなり有利になります。サクリファイスへの対抗馬として頭角を現してきました。

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 便宜上サクリファイスをアグロ、ラクドスアルカニストをミッドレンジと分類していますが、サクリファイスには最近「《パンくずの道標》型」や「《大釜の使い魔》&《魔女のかまど》型」などの亜種も出てきています(後述)ので、そこまでアグロ偏重な環境ではありません(特に《パンくず》型はボードコントロール重視)。ただ、環境全体の速度が上がっていることは間違いなさそうです。

■注目デッキ1:サクリファイス

KASA (1ST PLACE)
PIONEER PREMIER 12331004 ON 08/21/2021
 
creature (30)
3 《金のガチョウ/Gilded Goose》
3 《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
2 《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4 《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》
4 《裕福な亭主/Prosperous Innkeeper》
4 《悲哀の徘徊者/Woe Strider》
4 《波乱の悪魔/Mayhem Devil》
4 《地下墓地の選別者/Catacomb Sifter》
1 《運命の神、クローティス/Klothys, God of Destiny》
1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》
 
instant (4)
4 《集合した中隊/Collected Company》
 
artifact (4)
4 《ボーラスの城塞/Bolas's Citadel》
 

land (22)
3 《草むした墓/Overgrown Tomb》
1 《血の墓所/Blood Crypt》
1 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4 《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
4 《闇孔の小道/Darkbore Pathway》
4 《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》
4 《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》
1 《沼/Swamp》
 
sideboard (15)
1 《再利用の賢者/Reclamation Sage》
1 《打ち壊すブロントドン/Thrashing Brontodon》
1 《運命の神、クローティス/Klothys, God of Destiny》
2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》
3 《致命的な一押し/Fatal Push》
2 《思考囲い/Thoughtseize》
1 《自然に帰れ/Back to Nature》
2 《暗殺者の戦利品/Assassin's Trophy》
1 《真っ白/Go Blank》
1 《思考のひずみ/Thought Distortion》

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 前回も簡単に紹介しましたが、《波乱の悪魔》&《ボーラスの城塞》による一撃必殺コンボが勝ち筋のデッキです。《裕福な亭主》のライフゲイン能力を《ボーラスの城塞》の支払いコストに充当することで、ライブラリートップをひたすら唱えて《ボーラスの城塞》起動条件を満たし、一気に相手のライフを削り取ります。

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 ライブラリートップが土地の場合は《地下墓地の選別者》《悲哀の徘徊者》(や《忘れられた神々の僧侶》)の能力起動で回避できるので、延々とライブラリーを掘り進めることができます。これらのクリーチャーは戦場に出た際にトークンを出すので、2点分のライフを得られる点でも重宝します。

 体感的には《裕福な亭主》2体+占術パーツが揃えばほぼ半永久的にライブラリーを掘り進めることができるため、リカバリー、ワンターンキルも容易です。《波乱の悪魔》《失われた神々の僧侶》でクリーチャーは適宜排除できるので、ヘイトベアーへの耐性が高いのも特徴です。

 クリーチャーによるビートダウンでライフを削る戦略を取り得ることが、対戦相手の対処が難しくなる要因です。3マナ域(《波乱の悪魔》《悲哀の徘徊者》《地下墓地の選別者》)の性能とシナジーは生半可なクリーチャーデッキでは太刀打ちできません。

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 マナクリーチャーや占術を駆使してとにかくコンボ成立を早める「コンボ特化型」が主流ですが、一方で、コンボを無理に狙わずに《パンくずの道標》と《魔女のかまど》《大釜の使い魔》でじわじわとアドバンテージを得ていくボードコントロール型も見受けられます。大型生物への対処手段として《アクロス戦争》の採用も目立ってきました。

GUL_DUKAT (2ND PLACE)
PIONEER CHALLENGE 12331038 ON 08/21/2021
 
creature (24)
4 《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》
4 《金のガチョウ/Gilded Goose》
4 《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
4 《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》
4 《波乱の悪魔/Mayhem Devil》
4 《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》
 
artifact (4)
4 《魔女のかまど/Witch's Oven》
 
enchantment (6)
4 《パンくずの道標/Trail of Crumbs》
2 《アクロス戦争/The Akroan War》
 
land (26)
2 《草むした墓/Overgrown Tomb》
2 《血の墓所/Blood Crypt》
3 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4 《闇孔の小道/Darkbore Pathway》
4 《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》
4 《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》
2 《ハイドラの巣/Lair of the Hydra》
2 《寓話の小道/Fabled Passage》
1 《沼/Swamp》
1 《山/Mountain》
1 《森/Forest》
 
sideboard (15)
1 《湧き出る源、ジェガンサ/Jegantha, the Wellspring》
4 《致命的な一押し/Fatal Push》
2 《古き神々への拘束/Binding the Old Gods》
4 《殺戮遊戯/Slaughter Games》
4 《精神染み/Stain the Mind》

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 数の上ではトップメタ、上位成績にも食い込むなど、存在感を増してきています。各種イベント参加の際は対策を怠らないようにしましょう。

 勝ち手段を封殺する《殺戮遊戯》《精神染み》《漂流自我》(※《失われた遺産》は《ボーラスの城塞》に効かないためやめておきましょう)、《中隊》《城塞》を一気に睨める《墓掘りの檻》などが有効です。全体除去は《神々の憤怒》など早めに繰り出せるものがおススメです。

 ただし相手はサイドボードから《再利用の賢者》《古き神々への拘束》などで置物対策をしてくるので、過信は禁物です。

■注目デッキ2:ジェスカイコントロール

VFS_ (1ST PLACE)
PIONEER CHALLENGE 12328703 ON 08/14/2021
 
planeswalker (3)
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》
 
sorcery (8)
4 《表現の反復/Expressive Iteration》
4 《至高の評決/Supreme Verdict》
 
instant (16)
4 《吸収/Absorb》
4 《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》
2 《マグマのしぶき/Magma Spray》
1 《巻き直し/Rewind》
4 《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》
1 《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》
 
artifact (2)
2 《ポータブル・ホール/Portable Hole》
 
enchantment (6)
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
4 《サメ台風/Shark Typhoon》
 
land (25)
4 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4 《蒸気孔/Steam Vents》
4 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4 《硫黄の滝/Sulfur Falls》
1 《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
1 《鋭い突端/Needle Spires》
4 《ラウグリンのトライオーム/Raugrin Triome》
1 《アーデンベイル城/Castle Ardenvale》
1 《ヴァントレス城/Castle Vantress》
1 《島/Island》
 
sideboard (15)
2 《戦導者オレリア/Aurelia, the Warleader》
2 《ポータブル・ホール/Portable Hole》
2 《侵襲手術/Invasive Surgery》
1 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
2 《霊気の疾風/Aether Gust》
4 《神秘の論争/Mystical Dispute》
1 《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》
1 《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》

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 《思考囲い》&《致命的な一押し》環境のパイオニアでは、コントロール系デッキも黒を含むデッキ(ディミーアコントロールやエスパーヨーリオンなど)が活躍していましたが、最近はイゼット系が活躍していて、白を足したジェスカイ・コントロールが主流になってきました。

 イゼット系の一番の強みはMtG史上屈指のドローカード《表現の反復》。さらに最近は追放除去の必要性が増していて、《ポータブル・ホール》は汎用性の高い除去。《マグマのしぶき》《焦熱の竜火》《神々の憤怒》と選択肢も多く取り回ししやすいものが揃っています。

 以前は《不屈の独創力》コンボのハイブリッドが主流でしたが、今はインスタント除去も多く妨害もされやすいため、ノン・クリーチャー(あるいはアドバンテージが確約されたクリーチャーのみ)で構成されることが多くなりました。

 オールフォーマットで活躍する《ドミナリアの英雄、テフェリー》を据えるデッキが多いですが、《奔流の機械巨人》+《マグマ・オパス》のパッケージ採用も人気です。《アーベンデイル城》《サメ台風》のトークンも決定力が高く、この2種はほぼすべてのデッキに採用されています(枚数にはばらつきあり)。

 リストはメイン《安らかなる眠り》でラクドスアルカニスト、イゼットフェニックスなどの墓地利用系デッキを強烈にメタっています。サクリファイスの《悲哀の徘徊者》の脱出や《地下墓地の選別者》の占術封殺、同系の《奔流の機械巨人》も意識しているのかもしれません。

 ジェスカイの流行は、《表現の反復》がそれだけ強力だということの裏返しでもあります。イゼットフェニックスやジェスカイの隆盛コンボを支える1枚でもあり、今後も活躍が期待できそうです。

■注目デッキ3:ティムールフラッシュ

FOLERO (3-1)
PIONEER PRELIMINARY 12331008 ON 08/18/2021
 
creature (9)
2 《森の女人像/Sylvan Caryatid》
4 《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》
3 《奔流の機械巨人/Torrential Gearhulk》
 
instant (20)
4 《検閲/Censor》
2 《否認/Negate》
4 《成長のらせん/Growth Spiral》
3 《神秘の論争/Mystical Dispute》
2 《悪意ある妨害/Sinister Sabotage》
2 《プリズマリの命令/Prismari Command》
3 《マグマ・オパス/Magma Opus》
 
enchantment (4)
4 《サメ台風/Shark Typhoon》
 
land (27)
4 《繁殖池/Breeding Pool》
3 《蒸気孔/Steam Vents》
3 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4 《内陸の湾港/Hinterland Harbor》
4 《硫黄の滝/Sulfur Falls》
2 《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
4 《ケトリアのトライオーム/Ketria Triome》
2 《島/Island》
1 《森/Forest》
 
sideboard (15)
2 《運命の神、クローティス/Klothys, God of Destiny》
3 《長老ガーガロス/Elder Gargaroth》
3 《マグマのしぶき/Magma Spray》
3 《霊気の疾風/Aether Gust》
2 《神々の憤怒/Anger of the Gods》
2 《終局の始まり/Commence the Endgame》

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 今回の集計期間では3件のみ登場したデッキ、ティムール・フラッシュをご紹介します。イゼットカラーながら《表現の反復》を用いない珍しいデッキです。

 2年前頃のスタンダードで登場した「シミックフラッシュ」に動きが近く、その名の通りインスタントタイミングの行動に特化、相手に合わせてターンエンドに仕掛けるのが基本的な動きになります。

 相手が動けば合計11枚の打ち消しを当て、目立った動きがなければドローや除去、クロック展開をしていきます。緑を加えたことでマナ加速、クロック展開要素を追加していて、《夜群れの伏兵》《成長のらせん》というパワーカードを採用できるようになっています。

 《サメ台風》でのクロック展開、《マグマ・オパス》のマナ加速、《ケトリアのトライオーム》サイクリングによるドローなど、打ち消されない行動の選択肢もあります。《霊気の突風》は「打ち消されない」行動にも対処でき、《終局の始まり》は打ち消されずクロックとドローを展開できるなど、サイドボードから相手に合わせたよりよい選択肢を採用できるのも大きな利点です。

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 他のサイドボードは高速アグロ対策が多めにとられていて、《マグマのしぶき》《神々の憤怒》という除去に加え、アグロの突破が難しい《長老ガーガロス》を採用しています。《森の女人像》も黒単のタフネス2を止める手段として重宝します。

 各種コンボやミッドレンジのほか、ジャンドサクリファイスは1~2マナ域が弱いため結果として大振りな動きをしないと勝てず、立ち周りによっては優位を築くことができます。
 反面、《思考囲い》デッキ、具体的にはラクドスアルカニスト黒単アグロという細かい動きとハンデスを組み合わせたデッキは不得手です。

 この手のデッキは細部調整が非常に難しいため、使用の際はメタゲーム動向を見ながら各パーツやフィニッシャーを細かくカスタマイズしていきましょう。(例えば、8/15のPioneer Challengeでは《世界を揺るがす者、ニッサ》をフィニッシュ手段のひとつとして採用しています)

■終わりに

 さて、8/25(水)午前0時のの「マジック史上「最大規模」となるアナウンス・デー」まで間もなくとなります。

 一体何が発表されるのか現時点では判明しませんが、パイオニアに関わる発表となった場合は環境そのものが変わる可能性もありますので、現時点で記事をお届けさせていただきました。この記事が無駄にならないことを祈ります。

 それではまた。

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