見出し画像

パイオニア環境分析のつもり(9/19~10/7)未完成ナヤ色ウィノータ

■はじめに

 皆さんこんばんは。先月『イニストラード:真夜中の狩り』がリリースされました。奇しくも緊急事態宣言中のリリースとなりましたが、その後解除となり、ショップにも客足が戻り始めているようです。
 私も10月に入り、久しぶりにショップに足を運び、パイオニアのフリープレイを楽しむことができました。

 久しぶりの更新になってしまいましたが、『イニストラード:真夜中の狩り』(以下『MID』)後のパイオニア初期環境の分析を行なっていきます。

■メタゲームブレイクダウン

画像1

 前環境から一定の勢力を保っていたイゼットフェニックスが一気に一番手に抜け出しました。入賞デッキ中18.8%と高い使用率を誇り、他のデッキと一線を画しています。続いてボロスアグロアゾリウスコントロールと続きます。アゾリウスコントロールの9.4%は集計史上最も高い数値となります(アゾリウス・ヨーリオンを除く)。

画像2

 分類が怪しいデッキ(ナヤウィノータ、ラクドスアルカニスト、ジャンド城塞など)もありますが、基本的にはミッドレンジ(5色二ヴミゼット等)が減少、その分テンポ系デッキ(イゼットフェニックス、スピリット等)やコントロール(アゾリウスコントロール等)が増えています。コンボ(オムナス隆盛、ロータスコンボ)も一定数を維持しています。

画像3

 なお、《弧光のフェニックス》やフラッシュバックによる墓地活用の機会が増えたことで《安らかなる眠り》の価値が高まっています。メインから採用するジェスカイコントロールのリストも見られました。
 それを受け、イゼットフェニックス側もサイドボードに《永遠の災い魔》を採用するなど、早くも「対策の対策」が行われています。

■『MID』による強化パーツ

 『MID』がパイオニアにもたらしたものは何かを見ていきましょう。特定のデッキの強化に寄与したものは後述するとして、まずは汎用性のあるカードを挙げていきます。

・スローランドサイクル(《さびれた浜》他)

画像4

 今回、他の何よりも強化されたのはマナ基盤でした。基本的にマナベースの安定性が友好色<<<<敵対色だったパイオニアにおいて、友好2色の取り回しの良い土地はまさに福音。序盤こそタップインですが、3ターン目以降は基本的にデメリットのないアンタップインの2色土地ということで、友好色のデッキの安定性が大幅に強化されました。

 今回では特にアゾリウスコントロールやディミーアコントロールを強化した格好となります。一方で、序盤から動きたいラクドスアルカニストやアゾリウス魂込めでは不採用のケースが目立ちます。

・《運命的不在/Fateful Absence》《記憶の氾濫/Memory Deluge》《黄昏の享楽/Sunset Revelry》:青系コントロール他

画像5

 アゾリウスコントロールが躍進した要因がこの2枚。コントロール、特に白青系のコントロールデッキが欲しかったカードが一気に増強されました。

 《運命的不在》は白い《英雄の破滅》。インスタントスピード、かつ2マナで繰り出すことができます。相手にドローを与えてしまう点では、どちらかというと《悪意の熟達》に近い使用感ですが、即時ドローにつながらない点は高評価。いずれにしても対応範囲が広く、ほぼ腐りません。破壊されそうな自身のPWに対して使うことで疑似的なサイクリングも可能です。

 《記憶の氾濫》は、パイオニアにおいてはほぼ2回打てる《時を超えた探索》といった形のスーパードロー。素打ちだけでも効率は《多元宇宙の警告》を超えるレベルで、さらに《思考囲い》や《襲来の予測》で対処されても潜在的なドローとなる、使い勝手の良いドロースペルです。コントロールミラーでも威力を発揮します。
 ただし、マナコストを支払わないとカードが引けないので、《奔流の機械巨人》やコピー各種とシナジーしないため注意が必要です。

 そして一気に白いコントロールを強化したのが《黄昏の享楽》。《機を見た援軍》に近いですが2マナと軽く、相手と場合によっては1ドローも狙えるなど汎用性が増しました。基本はアグロデッキ相手のサイドボードですが、メインから採用するデッキも見られるなど、マナコストに対するバリューが際立っています。

 コントロールデッキにおいては、従来は《悪意の熟達》など取り回しのよい除去を持つディミーア系、《表現の反復》を使えるジェスカイ系が主流でしたが、最近のエキスパンションで白いカードの選択肢が増えた結果、アゾリウスコントロールが主流になってきています。

・《火遊び/Play with Fire》:ボロスアグロ、イゼットフェニックス他

画像6

 ほとんど「獰猛」しないため「高級《ショック》」と揶揄されてきた《乱撃斬》に代わる1枚として、多くのデッキで採用されています。クリーチャーに撃ち込む分には《ショック》そのものですが、本体に撃つと占術1のおまけが付いてきます。

 ということで、本体に撃ち込む機会の多いデッキにおいて真価を発揮するカードで、ライフを詰めていくことが多いボロスアグロやイゼットフェニックスを強化しました。《舞台照らし》や《表現の反復》《考慮》を併用する都合、占術1のもたらす潜在的なアドバンテージは意外と大きいものになります。

・《考慮/Consider》:青系デッキ各種

画像7

 ほぼ《選択》の上位互換として使うことができる軽量ドロー。《弧光のフェニックス》を墓地に落としたいイゼットフェニックスはもちろん、《記憶の氾濫》や《奔流の機械巨人》などとのシナジーが期待できる青系コントロール、コンボパーツを探しに行きたいオムナス隆盛で採用されています。

 採用されたカードを見ていくと、特徴として(1)「汎用性が高い」(2)「インスタントタイミングで使用できる」(3)「効果の割に軽い」、といった特徴のあるカードが採用されていることが分かります。(当たり前ですが)
 今後のエキスパンションでも、この3点に注目すると、流行るカードが事前に予測できるかもしれませんね。

■注目デッキ1:ナヤウィノータ

SPICYLECHE (1ST PLACE)
PIONEER CHALLENGE 12344227 ON 10/02/2021

 
creature (31)
4 《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
4 《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
2 《ヤスペラの歩哨/Jaspera Sentinel》
4 《裕福な亭主/Prosperous Innkeeper》
2 《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter》
1 《復活の声/Voice of Resurgence》
4 《粗暴な聖戦士/Brutal Cathar》
2 《不吉な首領、トヴォラー/Tovolar, Dire Overlord》

4 《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》
4 《トヴォラーの猟匠/Tovolar's Huntmaster》
 
artifact (4)
4 《エシカの戦車/Esika's Chariot》
 
enchantment (2)
2 《レンジャー・クラス/Ranger Class》
 
land (23)
4 《枝重なる小道/Branchloft Pathway》
4 《岩山被りの小道/Cragcrown Pathway》
4 《寺院の庭/Temple Garden》
3 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1 《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
3 《感動的な眺望所/Inspiring Vantage》
1 《ハイドラの巣/Lair of the Hydra》
2 《森/Forest》
1 《平地/Plains》
 
sideboard (15)
1 《復活の声/Voice of Resurgence》
4 《エメリアのアルコン/Archon of Emeria》
3 《精鋭呪文縛り/Elite Spellbinder》
2 《スカイクレイブの亡霊/Skyclave Apparition》
2 《引き裂く流弾/Rending Volley》
3 《安らかなる眠り/Rest in Peace》

 イニストラードといえば狼男!と思う方も多いと思います。人間と人狼の間を行き来する変身メカニズムは今回も健在――ということで、人間と非人間を生かす《軍団のまとめ役、ウィノータ》と手を組む格好となりました。

画像8

 《ウィノータ》から、さながら《墓所のタイタン》といった形の《トヴォラーの猟匠》が出てくるのもびっくりですが、破壊不能状態で出てくる《粗暴な聖戦士》も実質的な除去に等しく厄介な存在です。

画像9

 そして、《不吉な首領、トヴォラー》。伝説のクリーチャーなので枚数は抑え目ですが、出てくるときは人間、狼が並んでいれば自ターンに攻撃するときは非人間、と、《ウィノータ》との相性が抜群。しかもドロー能力やトランプル付与をこなすなど、このデッキのために生まれて来たのでは?と思いたくなるような相性の良さです。

 リストはまだばらつきがあり、今後の調整によってはパーツの入れ替えも予想されます。
 今年に入ってから《エシカの戦車》《レンジャー・クラス》《裕福な亭主》と強化パーツに恵まれているナヤウィノータ。「人間」という汎用的な種族によって強化されるため、今後もエキスパンションごとに強化パーツを探す楽しみが出てきますね。

■注目デッキ2:オルゾフヨーリオン

LAA11 (6TH PLACE)
PIONEER CHALLENGE 12345855 ON 10/09/2021

 
planeswalker (3)
2 《太陽の宿敵、エルズペス/Elspeth, Sun's Nemesis》
1 《蜘蛛の女王、ロルス/Lolth, Spider Queen》
 
creature (6)
4 《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》
2 《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》
 
sorcery (16)
4 《思考囲い/Thoughtseize》
4 《忘却の儀式/Rite of Oblivion》
2 《真っ白/Go Blank》
3 《ケイヤの怒り/Kaya's Wrath》
3 《エメリアの呼び声/Emeria's Call》
 
instant (6)
4 《致命的な一押し/Fatal Push》
2 《パワー・ワード・キル/Power Word Kill》
 
enchantment (17)
3 《メレティス誕生/The Birth of Meletis》
4 《野望の試練/Trial of Ambition》
3 《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》
4 《裏切る恵み/Treacherous Blessing》
3 《ケイヤの誓い/Oath of Kaya》
 
land (32)
4 《神無き祭殿/Godless Shrine》
4 《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
4 《秘密の中庭/Concealed Courtyard》
4 《陽光昇りの小道/Brightclimb Pathway》
1 《アーデンベイル城/Castle Ardenvale》
2 《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
1 《フロスト・ドラゴンの洞窟/Cave of the Frost Dragon》
2 《目玉の暴君の住処/Hive of the Eye Tyrant》
4 《寓話の小道/Fabled Passage》
4 《平地/Plains》
2 《沼/Swamp》
 
sideboard (15)
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》
1 《耳の痛い静寂/Deafening Silence》
4 《強迫/Duress》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
1 《パワー・ワード・キル/Power Word Kill》
1 《無情な行動/Heartless Act》
2 《真っ白/Go Blank》
1 《八方塞がり/No Way Out》
1 《ケイヤの怒り/Kaya's Wrath》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ/Kaya, Orzhov Usurper》

 ヨーリオンといえばアゾリウスやエスパーといったイメージが強いですが、今回入賞のリストはオルゾフカラーでまとめた2色デッキです。今回フィーチャーされたのは『MID』の新カード、《忘却の儀式》です。

画像10

 もともとヨーリオンデッキは「EtB能力の使いまわし」を軸としますが、《ヨーリオン》で明滅しない限りは戦場に残ったまま、他の有効活用方法がありませんでした。
 そこで今回登場した《忘却の儀式》。ソーサリースピードではありますが、戦場に残ったパーマネントを利用することで2マナの万能除去として機能します。各種エンチャントやクリーチャーだけでなく、手がかりトークンなども利用できる優れもの。追放除去なので《弧光のフェニックス》をはじめとした「墓地から戻ってくる」相手にも対処可能です。

 上記リストはコントロール然としたデッキで、《ケイヤの怒り》の採用枚数からもわかる通り、クリーチャーデッキを極端にメタっています。現在のメタ上位はイゼットフェニックスやボロスアグロが占めていますが、コントロール相手への無駄牌が多い点が気がかりです。
 今後、メタゲーム上でコントロールやテンポ系が優勢となれば、クリーチャーやPWを活用したミッドレンジへのシフトが進みそうです。そのあたりの変化にも注目したいところです。

■終わりに

 『MID』の加入でデッキ内容は大きく変化、特にアゾリウスコントロールが大幅に強化されました。しかし、新たなアーキタイプの創出にまでは至りませんでした。既存のデッキをまだまだ使い倒せるのが、パイオニアの魅力です。

 さて、早くも次のエキスパンション『イニストラード:真紅の契り(英語名:Innistrad: Crimson Vow)』は11月19日発売/11月11日MO、MTGA上でリリースと、MtG史上最も短い発売スパン(53日)となります。
 おそらく近日中には新情報のリリースがあると思います。パイオニアにブレイクスルーが生まれるのか、という観点からもご覧になってください。

※※更新モチベーション維持のため、サポートでご支援いただければ大変ありがたく思います。ぜひ記事末尾の「気に入ったらサポート」からご支援をよろしくお願い申し上げます。

原則、全記事全文無料で公開していますが、モチベーション維持や更新頻度の向上、家族サービス費用、コンテンツ精度の確保等のため、あなたからのサポートを随時お待ちしております。たとえ少しずつでもご支援いただければ、これほど嬉しいことはありません。よろしくお願いします!