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歩む!五行歌募集 入賞&入選作品発表

十色のうた実行委員の水源純です。
#五行歌30周年を祝おう  の一環として4月に募集しました「歩む!五行歌」にたくさんのご応募ありがとうございました。
8名の審査員による審査を終え、各賞が決定しました。

審査方法は、審査員のお互いの選を反映し合う加点形式ではなく、それぞれの審査員が応募全作品と対峙し、たった一首を選ぶというシンプルな方法です。きっと孤独かつ真剣なひとときだったと想像しています。選評を読んで頂くと、ひっそりと、けれどしっかり伝わって参ります。受賞作品と共におたのしみください。
また、8名の審査員にはそれぞれ、次点と思う1~2首を上げていただき、それらを佳作入選作品としました。15作品は順不同に並べています。

なお、月刊『五行歌』7月号にもこれらの入賞&入選作品を選評と共に掲載します。加えて、ここには載せていない各審査員の選後感想(総評)も掲載いたしますので、ぜひぜひ雑誌を入手されてお読みいただければ幸いです。読み物として十分に読み応えのあるページになっていると思います。
下記リンク先フォームから申し込めます。
(7月号希望とご明記ください。)


鮫島龍三郎 賞

人は、皆、語りえない哀しみを抱えています。
人は、いつ、語りえない哀しみを持つのでしょうか。人との別れ、過去の自分との別れ、夢の挫折、ひとりひとり、哀しみの内容は、異なります。それでも、人は、生きていかねばなりません、歩いていかねばなりません。
短いことばの五行に、思いがしっかり表現されています。
すばらしい歌です。

選評/鮫島龍三郎 


紫野 恵 賞

犀は群れないという。
世の中は「絆」を大切にし、孤独であってはいけないとされがちである。
遠い国の、ほぼ身近には存在し得ない一角獣のような生き物として犀を空想させて、景色も詩的に呈してくれた。仏教の教えとしてもあるようだが、孤り歩む犀の姿は憧憬の象徴であり、のっしのっしと力強く歩む時間を共有させてもらった。
人は共に歩みながらも、決断するときは孤りである。
 

選評/紫野 恵


工藤真弓 賞

実際に種を蒔いている人の実感に身を置いて、風と光と土の匂いを味わってみる。踏みしめてはいけない。有機質に富むふかふかの黒土は、まるでだれかの心の中のようだ。そこに求められるのは強さではなく、一歩一歩のていねいさと、まっすぐな誠実さ。しずかな祈りにも似た思いは、種にもきっと届くだろう。読み手の心にも、そっとなにかの種が蒔かれてゆくような、なんとも言えない豊かさがあった。

選評/工藤真弓


野田 凛 賞

玄孫と庭の散歩ができるという稀有な体力と境遇に、思わず気持ちがほころんだ。『「トコ」が「トロ」になる時は』と表現した4行目に、肉体以上にお元気でチャーミングな精神の有り様に気づく。一番素晴らしい点は、単に玄孫の幸せを願う歌ではなく、どんな五行歌を作るかなと想像している所だ。そこに、どんな試練もユーモアを忘れず乗り越え、歌に表現してきた婆ちゃん自身の長い歴史が透けて見え、心を打たれた。

選評/野田 凛


漂 彦龍 賞

「木の芽風」という言葉の印象は爽やかだが、この歌では「そわかそわか」と吹くので、何やら穏やかではない。「念う」ことは思いを深めることでもあると同時に、思いの深みにはまることでもある。呪いと祝いは、いわば双子の兄弟であり姉妹なのだろう。つい理屈っぽくなったが、私は二面性を持つ歌を好む傾向がある。歌を吹き抜ける風が、吉と出るか凶と出るか、得体の知れないところが、この歌の魅力だ。

選評/漂 彦龍


仲山 萌 賞

「かつーんと」…何と小気味よい響きなのでしょう。一読し、次に声に出して読み直したときの爽快感。音のようであり、しかし平仮名表記としているところに、作者の心の柔軟性を感じます。テーマ「歩」から、「蹴ったら飛べるのでは」と、進む先を前方ではなく上に向け、過去や未来ではなく、たった今を見つめて行動しようとする心意気が感じられます。歌のリズムも軽やかで、憧れの「あのハイヒール」を履き、諸々を吹っ切って活躍してゆく女性の、明るい呟きのように響いてきます。

選評/仲山 萌


山崎 光 賞

大切な存在を確かめるために、ひとは手を繋ぐものでしょう。しかし目の端にうっすらといるだけで、その存在と愛が満たされる。これほどの幸せがあるでしょうか。相手を尊重しながら進むふたりが目に浮かびます。
五行歌としての「形」も好きです。行の切れ目は息の切れ目。心のなかの一呼吸もそうです。「だけで」と残すことで幸せの大きさと広がりが見えてきます。

選評/山崎 光


水源カエデ 賞

私の小学生の時の通知表が「あゆみ」だったので懐かしく、定かではないがきっとテーマの歩むとかけたのではないかと思う。
一行目の大人だってという部分に、作者が子供の頃から努力していい成績を取っていたことが分かる。そして三行目からは大人になった今でも日々頑張っている、それを誰かに見ていてほしいと言える素直さが素敵だと思った。大人になればなるほど「評価してほしい」というと痛々しい人になりがちだが、この歌の言葉の選び方と素直さが承認欲求的なものを感じず、とても綺麗な五行歌だった。

選評/水源カエデ


佳作入選作品

おわりに

8名の受賞の皆様、そして佳作入選の皆様、おめでとうございます。
今回の審査方法ですとダブル受賞もあり得ると思っていましたが、8作品が重なることなく選ばれました。

応募はおひとり二首以内でしたが、二首とも入選している方もいらして、これには唸りました。審査員の皆様も驚かれていると思います。

今回ご応募いただいた作品は、8名の審査員と審査にはかかわっておりませんが主催の私も、もちろん、ていねいにていねいに拝読しました。
これだ! という思いで作品を送ってくださったのだと感じております。
残念ながら今回、賞に入らなかった作品は、ぜひ自分賞をあげてください。

さいごに、当企画を支えてくださった皆様、応援してくださった皆様、お力添えくださった審査員の皆様、本当にありがとうございました。

十色のうた、次の公募はいつでしょうか。
またきっと開催しますので、楽しみにお待ちいただければ嬉しいです。


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