競馬連載022

「残り400~200m11秒0からの急坂では……」

「先週の重賞を回顧してみた」
編集部Kによる重賞回顧。
レースをあらゆる角度から読み、
独自の視点で語ってみる。次走狙いたい馬、危険な馬を指摘しつつ、
なんとなく役に立ちそうなコーナー。ときに自らの馬券の悔恨と反省も。

基本、競馬が終わった、ちょっと寂しい月曜日に掲載。



【第4回紫苑ステークス】回顧

2019年9月7日(土)3歳牝馬、GⅢ、中山芝2000m

 

 競馬が中山に帰ってきた。
 秋とはいえない厳しい暑さのなか、幕が開いた4回中山開催。年間でもっとも気候に恵まれる開催だけあって、朝から大勢のファンが来場。1Rから中山らしい声援が飛び交っていた。
 恵まれるのは気候だけではない。今開催の芝コースは野芝のみ、例年中山とは思えないような高速決着が続く。洋芝をオーバーシードした力が要る馬場とは分けて考える。それが4回中山必勝法だ。
 朝から頭数が少ないレースが多かったせいもあるが、スローペースから速い上がりが記録されるレースが続き、全体の上がり3ハロン34秒台という決着も見られ、内枠が優勢な終い勝負のスピード馬場。

 メインは秋華賞のトライアル紫苑ステークス。重賞格付け後は関西馬の遠征も増え、本番で結果を出す馬が続出、ラヴズオンリーユーの秋華賞回避により、想像以上に混戦模様、注目が集まるレースとなった。
  そのレース中、ウイナーズサークルから離れた日陰にYシャツ姿の男たちの集まりがいた。最後の直線で外からカレンブーケドールに襲いかかった8枠パッシングスルーが抜け出し、インをさばいたフェアリーポルカと鼻面を並べてゴールを駆け抜けると、たちまちその集団は落ち着きをなくした。
 「どっち、出てる?」
 「待って、ダメじゃない?」
 口々に写真判定を不安げに見守る集団。やがて、掲示板に写真判定の結果が出ると、歓喜の叫び声に変わった。
 それはパッシングスルーの一口馬主たちだった。もう競馬場の日常ともなった大勢の馬主たちの輪。早くも秋華賞当日のことに話は移っていた。それにしてもシャッターカメラの映像を見てもよく分からないほどの僅差の決着。緊張はハンパじゃなかっただろうし、歓喜もまたしかり。最後のクビの上げ下げ、馬の執念だ。


 紫苑ステークスは勝ち時計1分58秒3(良)、前半1000m60秒5のスローペースから後半1000m57秒8の急流。すぐ隣にいたカレンブーケドールの先行に合わせて好位に収まり、きっちり捕らえ、同じ位置のインにいたフェアリーポルカをギリギリしのいだ。この2頭の評価は互角で、目標にされたカレンブーケドールは性能上いたし方なしの印象。
 チェンジオブペースに対応できるような器用なギアチェンジは多頭数の本番でも活きる。4角から坂下の残り200mは11秒0、この時点で勝負あった。このラップを後方から追い上げて差を詰めるのはほぼ不可能。そこで抜け出したカレンブーケドールと捕らえた1、2着馬は秋華賞でも通用しそうだ。
 オーバーシードされた上にほぐされた中山では開幕週から差し馬の出番もあるが、野芝で雨の影響がない場合はやはり先行馬優勢。後半に速い上がりが繰り出され、急坂があるコースでは後方一気はそうは決まらない。

編集部K


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