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【自分語り注意】TWENTIETH TRIANGLE TOUR 「戸惑いの惑星」 観劇

Date:2017/1/27  東京グローブ座

開演前、数音の金管楽器の音出しが聞こえてくる。音階をロールするように聞こえるそれはたまらなく懐かしくて、胸が疼いた。


 楽器音痴だった私は、小中学校と1人の金管楽器奏者の同級生が好きだった。
視力が良く背も大きめで、教室の後方。席がいつも近かった。

 彼を何時も目で追っているうち、音楽を聴くのは大好きになった。
学年全員参加のマーチングバンドで、有りもしない勇気を振り絞って人生初めて打楽器オーディションに立候補したのは、彼の近くに行きたかったのもあった。

 希望とは違ったが打楽器隊に滑り込み、金管バンドと合流練習が始まる。
県で受賞常連の金管バンドとの練習は厳しく、緊張に充ちていた。
西日が当たる準備室で、練習前の待機。金管バンドはパート毎に分かれて自主練。
彼の楽器の音が聞こえる。滑らかに音階をロールして、リズミカルに単音の確認。それの繰り返し…


ステージの裏から聞こえる、あの音は今大好きな彼等が出してるのだと気付いた途端、ゾクゾクした。始まる前から戸惑う。

どんな演目か、説明し辛い。見る人によって印象がかなり違うのではないか。
人生の物語だ。ラブストーリーだ。喜劇で悲劇だ。ストレートプレイでもミュージカルでもある。リピートすると、また印象が変わると聞いた。


 音楽の原体験が憧れの同級生なら、芝居の原体験は学校訪問公演の四季と、友達の演劇部だ。
当時の演劇少女のバイブルはキャラメルボックスの「銀河旋律」で、ダビングを繰り返した画質ザラザラのビデオを見せて貰った。

ーそんな古い記憶が、怖い位にやたら溢れてくる。

トニセンをよく知る人程、思考の深みに嵌まりそうな多重構造で、ファンでラジオリスナー程度の自分でもレイヤーの狭間で迷子になったような、不思議な感覚でした。

逆に、全くトニセンを知らない状態でも観てみたい。客観的に楽しめるのか。
いや、テーマが普遍的だからやはり自体験を重ねて迷い込んでしまうのか?
構成だけで言えば「君の名は。」が好きな人にはオススメできそう。

初見の印象は「スリリング」でした。
「深淵を覗き込んだら、深淵と目線があった」ような感覚。
クライマックスの場面の1つに、背筋が寒くなりました。まるで「不惑」の歌い出しのように。

発表済みの曲が使われているのが、また記憶の引き出しを引っ掻き回してくれて、それぞれの曲への思い出や思い入れがグワーって渦巻いて脳内カオス。それはきっと演者の三人もあるのかしら。


いのっちの、声色に驚いた。「吹き替えじゃないよね?」と周りの方も戸惑ってた。
特徴的で耳触りの良いあの声が、別者になる技術。それが、より役の存在をふわふわさせる。

長野くんの、明瞭な芝居。たった3人の演者の舞台を長野くんの明瞭さが、綺麗にレイヤーを色分けして重ねていく。

坂本さんの、真っ直ぐな存在感。芝居の確かさブレなさが今にも四散しそうなあやういレイヤーを、3人をしっかり繋ぎとめて、クライマックスで爆発する。

歌の力が凄い。現代劇で軽妙に進む中、差し込まれる歌が次々に空気を入れ替えていく。
力強いハーモニーが。困惑を、深淵を、人生を奏でる。


「不惑」がテーマです。
そう聞いて、正直「かくあるべきだ」的な話かなあと思ったけど、我等がトニセンが勿論そんなはずはなく。G2さん、傑作です(号泣)

乗った電車は走っていくけど、選択は自分でするんだせ!余韻に浸りながら、子供のお迎えに間に合うように急いで帰るんだぜ!!
笑って、泣いて、すっきりした頭で、暮れゆく空を眺めながら、戸惑いながらもがんばろうと思った。

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