逢瀬の空
接吻×薄暮(日が暮れようとする頃)
たとえ濃い時間が僅かであっても私は倖せで
反比例する指先に滲む緊張は興奮を含みつつ
ただ助手席に居れる時間が好きと確信をする
重ねる度に更新される我儘認定試験も佳境に
難易度を上げられてしまえば伸びる影を羨む
休むこと無い時計の針は接吻で口止めしよう
凝視×夜天(夜の空のこと)
他愛のない会話で埋め尽くされてしまっても
季節の変わり目は本性を曝そうと牙を向ける
瞳に宿る変化が貴方を困らせる一因になる日
些細なことも掬い上げられて眼光が鋭くなる
交わるよりも貫こうとする視線に私は敵わず
白旗の代わり貴方の耳元で延長戦を申し出た
微睡×払暁(あと少しで夜が明ける頃)
向き合うことを許され見つめる先に佇む貴方
本能のままに頬を口唇を貴方の指先がなぞる
残り香を燻らせ無意識に伸びる指先は迷子で
また過去から途切れず続く想いに触れるとき
記憶の底に保存して重なる体温が証明をする
戯れの余韻が一筋の痛みを伴って自覚をした
抱擁×東雲(夜明け頃に現れた日の出)
夢現の眠りから続く終わりなき痛みが蔓延る
変わらず出来る瘡蓋と舌に残る麻痺の所為で
寝惚けた思考の末端は僅か静かに訴えかける
貴方の腕に無意識に塞がれ阻まれてしまえば
アラームが鳴る迄は無抵抗に鼓動に耳を傾け
夜明けの流星群を眺め目覚めを待っていたい