n❀不器用なカップル»③

③『不器用な会話』
「もう!何でウチまで来るのかな~?」
「ええやん!気紛れや気紛れ」
まっ、学校へ行くと言っても今日は土曜日。
普通の高校ならお休み。
なのに…家を出たのはいつもと変わらなかった。

「ええなぁ~家からチャリ通って!!」
とは言っても、自転車はあたしのモノで…運転してるのはエセ関西人。
あたしは後ろに座って…必死で真砂にしがみついてた。
「なんや、リン…そないくっついて」
ぅ゛~~~~~~っ
あたしは唸るしか出来ず、早く信号待ちにならないかと邪心を払った。

―キィッ

「はぁ~~~~~~~」
やっと信号待ちになり、あたしは深く息を吐いた。
「?どないした…さっきから無口になって」
「あぁっもう!!自転車の後ろは怖いの!!!昔…落ちたことがあったから」
多分…あたしが幼稚園に上がる前だったと思う。
お父さんが調子に乗ってスピードを上げて…見事にあたしは落下した。
後から聞いたら…あたしは無傷だったらしいけど、トラウマに変わりはなかった。
「なんや、そない理由か。俺を信用しろよ、絶対リンを落とさないから」
正論というか、傲慢というか…あたしは渋々OKサインを出した。
「でも、ゆっくり走ってね。怖いから」
「了解!」

信号が青に変わると、後ろ姿からも判るイキイキとした真砂の表情。
「ゆっくりって言ってるでしょ―?!」
「はぁ?聞こえんなぁ!!もうすぐ着くから、しっかりつかまってろよ!!」
完全に真砂ペースに合わせられ…あたしは悲鳴を上げそうになった。
「やっ、やっと着いた~~~~~~」
あたしたちが脱力しながら着いた学校は、部活以外の生徒はいそうもない雰囲気だった。

「ねぇ~他に誰か来てるかな?」
階段を昇る途中、あたしは思い切って話を切り出した。
真砂は人気者だし、毎年パーティーを開いてることは耳にしていたから…
あたしはそのつもりで聞いた。
それに主役と一緒に来たなんて…今更だけど、あたしで良かったのかな・・・?

「おらんよ。誰も呼んでない・・・」
「ぇっ………なんで?」
あたしは立ち止まってしまった。
「おるわけないやろ。今日は…俺の誕生日だって…
土曜や、みんなは月曜の放課後祝ってくれるとさ」
ますます此処に来た意味が分からなくなり、あたしは頭を抱えた。
「ぅ゛~~~なんで?なんであたしは此処に来たの?」
少々ストレートだけど、遠回しな表現をしても気付いてくれるなんて期待は出来ない。
あたしは先を歩く真砂を見上げた。
「教室に行けば…その答えが分かる」
真砂はそれっきり、何を聞いても答えてくれなかった。

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