n❀不器用なカップル»⑤(fin)

⑤『不器用な伝言』

それぞれ、もらえたモノを早速身に付けることにした。
我ながら…イイ感じに付けたな、と満足しながら真砂の方を振り返ると…
まだ悪戦苦闘の御様子。
「なぁ~に・・・まだ付けられないの?」
「普段、こんなモン付けねぇ~し!リン、手伝ってやぁ~」
ハイハイと半分お母さんのようなキモチで、それを引き受けた。

「真砂って…案外、首太いんだね」
「オトコですから!」
何を今更っ!!そう言いた気な口調。
確かに…そうなんだけどさ~これはあたしが意識しなさすぎ?
などと思案してると、チェーンも止まり、お互い向かい合ってみた。
「「案外…似合ってる」」
口を揃えて言うと、また笑い出して…あたしは心の何処かでホッとした。
「あっ…わりぃ。今から職員室に行かんきゃアカンねん、5分くらい待ってくれるか」
「あぁ~うん、分かった」
じゃあ、わりぃ!そう言って真砂は教室を後にした。

敢えて用事が何かは聞かなかったけど…提出物でも出しに行ったのかな。
相変わらず外からは活気のある声、青春してるなぁ~なんて少し窓から傍観してみたり。
そんなことをして時間を潰していると…ケータイの着メロが流れた。
「うわっ!朝、慌てたからマナーモードにしてなかったんだ」
表示を見てもっとビックリしたのが…真砂からの『メール』ではなく『着信』だった。
「もしもし」
『あっ…マジわりぃな。こうでもしないとケジメつかなくてよ』
「ケジメ?何のよ」
教室に戻って話せばイイのに、と言いかけると真砂はそれを遮った。
『誕生日プレゼントありがとう。まさかもらえるとは思わんかった…
チロル一個くらいかとは思ったが…』
「あははっ、それはコッチの台詞。よく、あたしの誕生日なんて知ってたわね」
普通に聞いたつもりだった。
なのに…真砂はひどく照れてる様子だった。
『ぁっ当たり前や、そりゃあ…』
「そりゃあ?」
あたしはからかい半分で、真砂の言葉を反芻した。

『リンが好きやから・・・』

「あたしっ…!?」
『あぁ~もう………俺と付き合って下さい』
まるで目の前で頭を下げてる様子が浮かぶように、真砂の言葉は…心を揺らした。
「もうっ…先越されちゃったね」
『………?』
「あたしも好き。ヨロシクお願いします」
その時、廊下からドン!と何かが落ちたような音が聞こえた。
あたしは咄嗟に電話のことを忘れて、廊下に向かった。

「真砂!!」
「はははっ、マジかよ…リンのせいで寿命が縮まったわ」
情けねぇ~とかブツブツ言ってるけど、あたしは気が動転してて…
まともに彼の顔は見れなかった。
「ホント…あたしたちって…不器用なカップルね」
「お似合いやろ?似たモノ同士」
「そうかもねっ」
そうして真砂と並んで…また笑い合った。
この人は気付いてくれたかな?
あたしの左腕には…真砂と同じデザインのブレスレットがあるってことを…。

fin

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