n❀キラキラひかる

いつも通りの会場と異なっていたのは、先生の教室開校五〇年という節目の所為もあったのだろう。
こじんまりしたホールではなく、招かれたのは…いつもの白い箱。先生の教室だった。

~~ Twinkle,twinkle, little star,
How I wonder what you are!〜〜

「それでは、恒例の満場一致ではありますが、柊音さん来てください」
アナウンスされて、ステージへと向かう。
今は最後の演奏者たちの連弾が終わり、喝采の拍手もどこか終幕へと向かっている最中であった。
今日は、身内だけの集まった定例演奏会。下は三歳になったばかりのマドンナの卵から、上は壮麗の人生を音楽と共に歩んだレディまでと幅も広い、そんな音楽教室に、全くピアノとは縁のない自分が観客として何故か招かれている。
いや、既にそんな「観客」を二〇年近くやっていれば「どうして来ないのか?」と、何処からともなく反論されそうで、未だこのことは招待状をくれる幼馴染以外に知らない。

~~ Upabove the world so high,
Like a diamond in the sky.〜〜

それに、何か技術を競うわけではない、穏やかな年末の演奏会であるから、ひとりでも一般人がいる方が、演奏する側にとっても、選曲の幅が広がりワクワクする、と何年か前にポツリ呟かれたことがあった気がする。
「先生、すみません。プログラムにある曲ではないものでも、構いませんか?」
「あら、曲目変更ですか?」
マイクは無いが、五〇人程度が入る、いつもは閉鎖しているホールの中で、場違いな僕は、幼馴染と指導者であろう先生との会話に聞き耳を立てていた…が、其の甲斐空しくよく聞こえはしない。
ふぅー、と一息付けば、途端に脳裏を現実が支配する。
きっと今年で、この演奏会へ顔を出すのは最後にしたい、あと数日で訪れる「来年」には、進路や将来のことをずっと考えて、ずっと悩んでいかなければいけない。
( そうだ、もう明後日には終業式で、クリスマスがあって、すぐに大晦日か・・・ )
まるで年寄りの思考だと、同級生には笑われるが、先見の目があるということだ。
そう自分に言い聞かせる反面、僕は幼馴染の進路を知らない。毎日、一緒に帰っている筈なのに、一切その話題は触れないでいる。
臆病者! そう罵られた小学校時代。何故か柊音は率先して、いじめっ子を懲らしめにいっていたのは、考えればほんの数年前のこと。

~~ Twinkle,twinkle, little star,
How I wonder what you are!〜〜

「それでは、柊音さんに準備して頂きましょう。曲はプログラムとは異なり…モーツアルトの『きらきら星変奏曲』です」

もうとっくに、幼馴染は遠くへいると思っていたのは自分だけで。
白い鍵盤と黒い鍵盤が織りなす懐かしいメロディライン。
疑う余地はない。どんなに歳を重ねても、制服を卒業しても、僕は君と変わらない関係でいたい。
思わず今夜は、夜空の星に願ってみようかと思ってしまった。

いつも通りの会場と異なっていたのは、先生の教室開校五〇年という節目の所為もあったのだろう。
こじんまりしたホールではなく、招かれたのは…いつもの白い箱。先生の教室だった。

~~ Twinkle,twinkle, little star,
How I wonder what you are!〜〜

「それでは、恒例の満場一致ではありますが、柊音さん来てください」
アナウンスされて、ステージへと向かう。
今は最後の演奏者たちの連弾が終わり、喝采の拍手もどこか終幕へと向かっている最中であった。
今日は、身内だけの集まった定例演奏会。下は三歳になったばかりのマドンナの卵から、上は壮麗の人生を音楽と共に歩んだレディまでと幅も広い、そんな音楽教室に、全くピアノとは縁のない自分が観客として何故か招かれている。
いや、既にそんな「観客」を二〇年近くやっていれば「どうして来ないのか?」と、何処からともなく反論されそうで、未だこのことは招待状をくれる幼馴染以外に知らない。

~~ Upabove the world so high,
Like a diamond in the sky.〜〜

それに、何か技術を競うわけではない、穏やかな年末の演奏会であるから、ひとりでも一般人がいる方が、演奏する側にとっても、選曲の幅が広がりワクワクする、と何年か前にポツリ呟かれたことがあった気がする。
「先生、すみません。プログラムにある曲ではないものでも、構いませんか?」
「あら、曲目変更ですか?」
マイクは無いが、五〇人程度が入る、いつもは閉鎖しているホールの中で、場違いな僕は、幼馴染と指導者であろう先生との会話に聞き耳を立てていた…が、其の甲斐空しくよく聞こえはしない。
ふぅー、と一息付けば、途端に脳裏を現実が支配する。
きっと今年で、この演奏会へ顔を出すのは最後にしたい、あと数日で訪れる「来年」には、進路や将来のことをずっと考えて、ずっと悩んでいかなければいけない。
( そうだ、もう明後日には終業式で、クリスマスがあって、すぐに大晦日か・・・ )
まるで年寄りの思考だと、同級生には笑われるが、先見の目があるということだ。
そう自分に言い聞かせる反面、僕は幼馴染の進路を知らない。毎日、一緒に帰っている筈なのに、一切その話題は触れないでいる。
臆病者! そう罵られた小学校時代。何故か柊音は率先して、いじめっ子を懲らしめにいっていたのは、考えればほんの数年前のこと。

~~ Twinkle,twinkle, little star, 
How I wonder what you are!〜〜

「それでは、柊音さんに準備して頂きましょう。曲はプログラムとは異なり…モーツアルトの『きらきら星変奏曲』です」

もうとっくに、幼馴染は遠くへいると思っていたのは自分だけで。
白い鍵盤と黒い鍵盤が織りなす懐かしいメロディライン。
疑う余地はない。どんなに歳を重ねても、制服を卒業しても、僕は君と変わらない関係でいたい。
思わず今夜は、夜空の星に願ってみようかと思ってしまった。
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